ACE-Fは、AtoZが製作する、NV200バネットをベース車にしたキャブコンキャンピングカー。
同社は、埼玉県さいたま市に本拠を置くビルダーで、カムロードベースのフルサイズキャブコンから、タウンエースベースのバンコンまでラインアップしている。2024年にスライドアウト機構を持つカムロードキャブコンのACE-Gをはじめとする新しいACEシリーズを発表、ACE-Fはそのひとつの位置付けとなっている。
NV200バネットベースのキャブコンは他社にはなく、希少な存在。現在はACE-Fでは1種類のレイアウトだが、同社の従来のアルファType1、Type2も併売されているので、そちらのレイアウトも選択できる。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
日産NV200バネットをベース車にするキャブコンキャンピングカー。現在ではNV200バネットベースのキャブコンは他社にはなく、唯一の存在となる。NV200の乗用車ライクな感覚で運転できるのがメリット。運転しやすさと広い室内が両立している。
従来のアルファType1、Type2も併売されているが、ACE-Fでは、そのどちらでもない新しいレイアウトが採用されており、ベンチシートと向かい合ってギャレーキャビネットが設置されている。
車載用セパレートクーラーがオプションで設置できるようになったが、リチウムイオンバッテリーのオプション設定は無い。
アピールポイント
・乗用車のような運転感覚で運転しやすく、かつ広い室内
・49L横開き式冷蔵庫を標準装備
・電子レンジも設置可能(OP)
・大きなギャレーキャビネット
・多目的ルームがありトイレルームとしても使用可能
・車載用クーラーを設置可能
ベース車とエクステリア

ACE-Fのエクステリア
ベース車は日産NV200バネット。2WDと4WDが選択でき、ミッションは2WDがCVT、4WDは4ATとなっている。低重心設計で、走行性能が優れており、運転しやすいのも特徴。
このベース車をボディカットして、FRPパネル製のシェルを架装している。シェル部のウインドウは全てアクリル2重窓になっており、断熱性を確保している。このシェルは従来のアルファH(High)と同じもので、外観はアルファHと変わらない。
ベース車には、衝突被害軽減ブレーキ、後方検知ソナー、踏み間違い衝突防止アシスト、などの安全機能を標準装備。もちろん、運転席、助手席エアバッグも標準装備だ。
インテリア

ACE-Fのインテリア
同社のモデルでおなじみの明るい木目調の家具色とライトグレーのシート地の組み合わせ。ただし、家具のトーンは従来モデルのアルファと少し変更されており、間接光の照明と相まって洗練されたインテリアになっている。
アルファでは2種類のインテリアが選択できたが、ACE-Fではインテリアの選択肢は書かれていない。
レイアウト
リアエントランスだが、前部にベンチシートのダイネットと、それに向かい合う大きなギャレーキャビネット、後部に多目的ルームを配置しており、リアエントランスとしてはあまり見ない構成だ。
リアエントランスで一般的なレイアウトは、アルファType1あるいはType2のような構成で、前部は広いダイネット、後部にギャレーと多目的ルームを配置するが、ACE-Fでは広いダイネットは無い。
アルファのベッドは車幅方向に就寝するため長身のユーザーが多少窮屈だったが、ACE-Fでは車長方向に就寝することに変更し、この問題を解消する目的かもしれない。
ACE-Fのレイアウトの他の利点は、大きなギャレーキャビネットと、ダイネットからギャレーや冷蔵庫にすぐアクセスできることが挙げられるが、リアエントランスのメリットである、前部の広いダイネットが無くなったのは賛否両論あるかもしれない。
将来的には、アルファのレイアウトもACE-F仕様でラインアップされることが期待される。
ダイネット

ACE-Fのダイネット
先述のように、ACE-Fのダイネットは片側のベンチシートとなっている。ギャレーキャビネットに引っ掛けるタイプの1脚のテーブルが設置できる。
ベッド

バンクベッド
バンクベッドは2200x1800mmの大きさ。これは家庭用ではキングサイズベッドの大きさに相当する。

ダイネットベッド
ダイネットを展開してできるダイネットベッドは、1900x1200mmの大きさ。 1200mmの幅は、家庭用ではセミダブルベッドの幅に相当する。ダイネットシートからベッドへの展開は、座面を前にスライドさせ、背もたれをはめ込むだけで、簡単にできる。

アルファType2のダイネットベッド
ちなみに、アルファのベッドは1850x1200mmの大きさ。こちらもセミダブルベッドの幅に相当するが、身長方向は5cm短い。就寝方向は車幅方向なので、長身のユーザーは足がつかえ、窮屈感が出る可能性もある。この点はACE-Fのベッドの方が有利だ。
ギャレー

ACE-Fのギャレー
ACE-Fのギャレーキャビネットは大きく、冷蔵庫や電子レンジも収納できる。天板にはシンクとフォーセットが埋め込まれている。コンロはカセットコンロが標準装備されており、使用する度にセットする必要がある。
天板は広く、調理スペースは十分確保できるだろう。ギャレーキャビネットの前は通路になっているので、立って調理することも可能だ。

各10Lの給排水タンクが収納される納
シンクの下には、各10Lの給排水タンクが収納される。エントランスから離れているので、車外から直接出し入れできないが、10Lなので持ち運びは比較的楽だ。
冷蔵庫/電子レンジ

49L横開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は49L横開き式が標準装備される。冷凍室もあるので、製氷や冷凍食品の保冷も可能だ。

電子レンジ(OP)
家庭用の100V仕様の電子レンジがオプションで用意されている。ちょっとした温めものや冷凍食品の調理に重宝する。インバーターもオプションなので、外部電源のないところで電子レンジを使う場合は(ほとんどそうだと思うが)1500W正弦波インバーターも選択する必要がある。

ギャレー上部のオーバーヘッド収納
ギャレー上部には、オーバーヘッド収納が設置されており、食器や調理用具を収納しておける。
多目的ルーム

多目的ルームの内部
多目的ルームは板張りで、防水処理がしてあるようには見えないが、ポータブルトイレやラップ式トイレを置いて、トイレルームにすることができる。コンパクトなボディながらトイレルームが設置できるので、クルマ旅には最適だ。
多目的ルームには外部からのドアがあり、アウトドア用具やウエアなどを車外から直接積み込むことができる。
収納

ダイネット上部のオーバーヘッド収納
ダイネット上部やエントランス上部、あるいは最後部にもオーバーヘッド収納が設置されている。ACE-Fには多くのオーバーヘッド収納が用意されているので、車内の整理整頓には大いに役に立つ。

エントランス横のシューズボックス
エントランス横にはシューズボックスが設置されている。二人旅なら十分な大きさだ。。
空調

車載用クーラーを装備可能(OP)
冷房は車載用クーラーをオプションで設置できる。設置場所は最後部で、前方に向かって冷気を吹き出すため、室内全体に行き渡る。
暖房はFFヒーターがオプションで取り付けできる。マックスファベンチレーターンもオプションで設置できる。
テレビ/ナビ

19型のテレビを設置できる(OP)
19型のテレビがオプション設定されており、ギャレーキャビネットの最後部に角度が調整できるアームで取り付けできる。ナビは、楽ナビやサイバーナビがオプション設定されているが、好みのブランドを取り付けることができるだろう。
電装系
標準では、105Ahのディープサイクルバッテリーが1個装備される。その他の電装系では、CTEK走行充電と外部100V電源入力を標準装備。外部電源用チャージャーや1500W正弦波インバーター、180Wソーラーシステムはオプションとなっている。
サブバッテリーは、105Ahをもう1個追加してツインバッテリーにできるが、リチウムイオンバッテリーのオプション設定はされていない。クーラーを十分に使用するにはやはりリチウムイオンバッテリーが望ましいので、オプション設定が望まれる。
価格(2025年2月現在:千円台切り上げ:税込)
2WDは677万円~、4WDは699万円~となっている。付けておきたい必需オプションは、外部電源用のチャージャー(58,080円)、1500W正弦波インバーター(181,500円)、FFヒーター(258,500円)が挙げられる。
その他できれば、クーラーセット(258,500円:追加バッテリー1個込)、クルマ旅をするなら電子レンジ(21,780円)、ソーラーシステム(154,880円)も付けておきたい。(ナビ関連は除く)
他モデル
NV200バネットベースのキャブコンは同社のアルファを除き他にない。ACE-Fやアルファは、NV200バネットがベース車であること自体が魅力なので、あまり比較の対象にならないかもしれないが、タウンエースベースのキャブコンも同様のサイズ感で多くのビルダーから発売されている。AtoZのACE-Sもその一つで、Type2(633万円~)には多目的ルームもある。
ただし、タウンエーストラック(姉妹車を含む)が生産終了となったのに伴い、今後タウンエーストラックベースのキャブコンは大幅に減少することが予想される。なおmACE-S
Type2はボンゴのバンを使用しているので、その対象ではないだろう。
まとめ
ACE-Fは(アルファを含めて)NV200バネットをベース車にしていることにより、タウンエース(姉妹車を含む)ベースのモデルより多少高価になる。しかし、動力性能やベース車のグレード感を考えると、それも頷ける。
新しくなったACE-Fのインテリアでは、レイアウトが限られてしまうのが難点だが、他のレイアウトが望みならアルファと言う選択肢もある。しかし、インテリアの洗練度から言うと、やはりACE-Fが魅力的だ。
今後、ACE-Fのインテリアで、他のレイアウトが追加されることを期待したい。また、リチウムイオンバッテリーのオプション設定も、同様に期待したいところだ。
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