TR550L ボレロ-V.MAXは、RVトラストが製作する、ハイエースワイドロングワゴンをベース車に、シェルを架装したキャブコンキャンピングカー。
このモデルは元来ファーストカスタムが製作していたモデルだが、同社が業務を終了した後、RVトラストが引き継いでいた。ただし、RVトラストでは常時販売されているモデルではなく、今回も9月30日で販売が終了となる。
RVトラストでは常時販売モデルとしてTR500 C-LHを用意しており、これも同じくハイエースワイドロングワゴンをベース車にしたモデル。ただし、C-LHが5mを切る全長に対し、ボレロV.MAXは5m超の全長になる。
(記事中の価格は全て税込です)
コンセプト
インテリアをはじめすべてに豪華さを求めたハイエンドモデル。二人旅に特化して作られたレイアウトはラウンジソファとダブルベッドの構成で、極上の二人旅をサポートする。
装備面でも充実しており、冷蔵庫、電子レンジ、常設コンロはもちろん、家庭用エアコン、温水シャワーやカセットトイレも標準装備されている。また今回のモデルでは新たにリチウムイオンバッテリーも標準装備された。
エクステリア
TR550L ボレロ-V.MAXのエクステリア
ハイエースワイドロングワゴンをベース車にし、これにFRP一体成型のシェルを架装する。シェルには同社オリジナルの「スペースフレーム」と名付けられた鋼製のフレームを内装し、強度を高めている。
5m超のボディサイズなので、ホイールベースの長いスーパーロングをベース車にする方が適していると思われるが、取り回しの面で優れるワイドロングを採用している。
なお、以前のモデルには強化ショックとエアサスが標準装備されていたが、このモデルに装備されているかは不明。スペックシートには記載されていない。
インテリア
オフホワイトを基調にし、明るい感じになったインテリア
以前レポートしたモデルは、家具がダークカラーで重厚な感じのインテリアだったが、2021年モデルは、オフホワイトを基調にした家具色となり、車内は明るい感じになった。
ハイエンドモデルだけあって、インテリアは全てに高級感がある。また最新のモデルらしく間接照明も取り入れられており、夜のインテリアも高級感が増している。
レイアウト
前部のレイアウト
前部にソファダイネットとギャレー、後部に縦置きダブルベッドとサニタリールームが配置されている。二人旅に特化したレイアウトで、そのため狭苦しい感じは全くなく、優雅な二人旅が約束される。
後部のレイアウト
動線は途切れることなく奥まで続いており、フロントシートから後部へもスムースに移動できる。天井高は高く、大人が立っても頭がつかえることは全くない。
なお、ダイネットソファには3名が乗車することができ、うち1名は前向き乗車で3点式シートベルトが用意されている。従って、乗車定員は5名となり、前向きに乗車できるのは3名となる。
ダイネット
ラウンジソファのダイネット
L型のラウンジソファを配したダイネットで、家庭のリビングのように寛ぐこととができる。テーブルも大きく、二人での食事なら余裕をもって食器を並べることができる。
ベッド
常設縦置きダブルベッド
最後部右側には常設縦置きダブルベッドが配置されている。ベッドのサイズは表記されていないが、前モデルと同じなら1850×1195mm。これは家庭用ではほぼセミダブルベッドの幅に相当する。
ベッドのスプリングについては特にアピールするポイントは書かれていないので、特別に良好な寝心地は期待できないかもしれない。ハイエンドモデルだけに、ウッドスプリングなど、寝心地にこだわった仕掛けが欲しいところだ。
キングサイズベッド以上の幅を持つバンクベッド
バンクベッドは、これも前モデルと同じなら1950×1960mmの大きさ。こちらは家庭用ではキングサイズベッド以上の幅となり、規定では大人3名が就寝できる。従って、就寝定員は5名となっている。
なお、以前のモデルでは手前が跳ね上げ式となっており、使用しない場合は跳ね上げて扉にすることができた。これだと、走行中に荷物が落ちてこないので便利ではある。
新しいモデルではこれが引き出し式に変更されており、扉は無くなった。しかし、扉式はベッド展開する際、遠くにあるベッドマットに手が届かないので手前に引き出すことができない。引き出し式はベッドを展開する過程で、ベッドマットも同時に引き出しながらセットできるのが利点だ。
ギャレー
常設の二口コンロがビルトインされたギャレー
常設の二口コンロがビルトインされている。シンクも大き目で大きな食器も洗うことができる。輸入モデルには当たり前の装備だが、国産モデルでは調理をするユーザーが少ないという理由から、キャブコンでも常設コンロが装備されていない場合が多い。
また、跳ね上げ式の調理台が用意されており、調理スペースも広いので、車内で手の込んだ料理も可能だ。なお、温水装置もあるので、温水で食器を洗うことができる。ハイエンドモデルに相応しい快適なキッチンだ。
ギャレーコンソールの収納
ギャレーコンソールには引き出し収納と観音開きの大きな収納スペースがあり、食器やカトラリーを収納しておくことができる。
収納スペース内にあるのは、カセットガス3連式のアダプター。これでシャワー用の湯も沸かす。
冷蔵庫/電子レンジ
65L横開き式の冷凍冷蔵庫が標準装備
冷蔵庫は横開き式の冷凍冷蔵庫が標準装備される。容量は書かれていないが、以前のモデルと同じなら65Lだ。独立した冷凍室もあるので製氷や冷凍食品の保存もできる。
電子レンジも標準装備される
また電子レンジも標準装備される。インバーター(容量不明)も標準装備されるので、外部電源が無いところでも電子レンジを使うことができる。
ギャレー上のオーバーヘッド収納
ギャレーの上にはオーバーヘッド収納があり、調理用具や食品などを収納することができる。
サニタリールーム
カセットトイレ、温水シャワー、専用の手洗いが標準装備される
カセットトイレ、温水シャワー、専用の手洗いが標準装備される。温水はカセットガスで沸かすとされているが、瞬間湯沸かしかどうかは不明。以前のモデルでは10Lの貯湯式だったので、変更なければ水と混合して使用するタイプとなる。
現代ではダイレクトカーズのトリップやアネックスのリバティ52DB、52SP、あるいはマックレーのバレンシア520では瞬間湯沸かしが可能なので、ハイエンドモデルであればやはり瞬間湯沸かし器の選択肢が期待される。
なお、給排水タンクは各60Lなので、二人分のシャワーなら十分な水量だ。またFFヒーターの吹き出し口が設けられているので、寒い冬場でもサニタリールームは暖かく保てる。
収納
ダイネット上のオーバーヘッド収納
ボレロV.MAXの収納は豊富に用意されている。まずオーバーヘッド収納は、ダイネット上、ギャレー上、ベッドルーム右側に設置され、それぞれ奥行きがあり大きな容量を持つ。
クローゼットが用意されている
またベッドルームとダイネットの間にはクローゼットが用意されており、衣類を収納しておくことができる。
ベッド下の外部収納
更に、ベッド下は大きな外部収納になっており、リアのバゲッジドアからキャンプ用品などの荷物を積み下ろしできる。ベッドマットを上げると、車内からもアクセスできる。(上の写真の筒状のものはサニタリールームへのFFヒーター配管)
空調
家庭用エアコンが標準装備される
暖房はFFヒーターが標準装備される。また冷房は家庭用エアコンがベッドルームに標準装備される。ベンチレーターも標準装備。
エアコンの室外機は、車両右側後部に収納されている。
テレビ/ナビ
助手席後部に設置されたテレビ
以前のモデルと同じなら16型テレビが標準装備される。場所は助手席後部に設置されており、ダイネットから視聴できる。
電装系
今回初めてボレロV.MAXにリチウムイオンバッテリーが搭載された。容量の記載は無いが4本と書かれており、おそらく各100Ahで計400Ah程度と思われる。これだけの容量があれば、エアコンだけなら500Wと仮定しても9時間程度は運転できる計算になる。夜はもっと低消費電力なので、更に長時間運転できる。
インバーターや昇圧システムの情報も無いが、インバーターは1500W以上のものが搭載されていると思われる。またリチウムイオンバッテリーを採用しているため、CTEKなどで昇圧し高効率の走行充電も可能と思われる。
ソーラーシステムについても記述が無く不明だが、以前のモデルは85Wのソーラーシステムが標準装備されていた。ただ、現在のレベルでは200W程度のソーラーシステムを期待したいところだ。
価格(2021年4月現在:千円台切り上げ:税込)
同社のサイトには掲示されていないので、2021年9月の展示会での価格になるが、1485万円~とされていた。キャブコンでは間違いなくハイエンドの価格となる。
ほとんどが標準装備なので、付けておきたいオプションはほとんど無い。
他モデル
ハイエースワイドロングあるいはスーパーロングをベース車にした6m以下のキャブコンでは、ファンルーチェのパタゴニア(830万円~)、セレンゲティ525(830万円~)、RVビックフットのACSプルミエM5.7(894万円~)、セキソーボディのトムバロン(価格不明)、ダイレクトカーズのモビリティホーム(933万円~)が挙げられる。
また輸入車ではデスレフのグローブバスI1(1298万円~)、ハイマーのExsis(エクシス)-t374(価格改定中)がある。
国産キャブコンでボレロV.MAXの価格帯のものは無く、ボレロV.MAXが圧倒的に高価格帯にいることが分かる。価格的に同等なのは輸入モデルのフルコンかキャブコンになってしまう。
もう一つ比較候補を挙げておくとRVビックフットのセミフルコン、ACSオアシスSH(1704万円~)がある。マイクロバスベースで6mを切るボディを持ち、扱いやすい高級モデルだ。
まとめ
ボレロ-V.MAXは間違いなく最高峰のキャブコンと言えるが、ポイントはこの価格帯なら輸入車や国産セミフルコンも比較対象になること。これらはキャンピングカーの中でもトップエンドのカテゴリーに属する。
また、先に挙げたハイエースベースの国産キャブコンも、価格はボレロ-V.MAXに比べればかなり安価だが、クオリティや装備で劣るものではない。むしろ瞬間湯沸かしや床暖房、ウッドスプリングなど先進の装備を取り入れている。
ボレロ-V.MAXは9月30日で受注が終了するが、最高級モデルの選択肢が無くなるわけではない。
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