シュピーレンはフロットモービルが製作する、トヨタ タウンエース バンをベース車にするバンコンキャンピングカー。
同社は長野県上高井郡に拠点を置くビルダーで、アドリアのモデルを取り扱っているが、現在同社のオリジナルモデルはシュピーレンのみとなっている。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
トヨタ タウンエースをベース車にするコンパクトバンコン。軽キャンパーより広く、ハイエースよりコンパクトで運転しやすい。キャンピングカー要件の変更により、8ナンバー登録となった。
2列目に単座のマルチモードシートを設置するが、2名掛け、分割2名掛け、3名掛けの各マルチモードシートも選択できる。
後部左側のギャレーキャビネットは標準タイプと、冷蔵庫をビルトインできるタイプの2種類から選択できる。好みに応じてレイアウトが選択できるのが特徴。
2024年モデルでは、新たに車載用一体型クーラーをオプション設定。快適なクルマ旅が可能になった。
アピールポイント
・コンパクトな車体ながら広い室内
・選択できる2列目のマルチモードシート
・選択できるギャレーキャビネット
・上開き式冷蔵庫を搭載可能
・車載用一体型クーラーを装備可能。
・ポータブル電源をサブバッテリーと連携使用
・リチウムイオンバッテリー搭載可能
ベース車とエクステリア
シュピーレンのエクステリア
ベース車はトヨタ タウンエース GLグレード。GLグレードなので、ボディ同色バンパーやスマートアシスト、運転席、助手席エアバッグ、パワーウインドウなどが標準装備される。
ボディ外側への架装は無いので、見た目は普通のタウンエースと変わらない。日常用途に使用しても、特に目立つことはない。
インテリア
シュピーレンのインテリア
インテリアカラーは濃い木目の家具と、シート地はベージュかグリーンが標準。特注で、家具色やシート地が変更できる。グリーンのシート地は下の写真を参照。
レイアウト
2列目のマルチモードシートは、1名掛け、2名掛け、分割2名掛け、3名掛けが選択できるのがシュピーレンの特長のひとつ。2列目シートの形状によるが、基本的には、マルチモードシート、右側のベンチシート、ギャレーキャビネットの組み合わせになる。
このレイアウトの特徴は、運転席、助手席に加え、数名が前向き乗車できること。就寝人数が2名だが、日常用途で使用する場合前向きシートがあると便利だ。
ダイネット
2列目に2人掛けシートのダイネット
2列目シートを後ろ向きにすると、L字型のダイネットになる。2列目シートを後ろ向きにしなくても、ベンチシートだけでもダイネットとして使用できるので、ドライブ中の短時間の休憩時に、いちいち2列目シートを後ろ向きにする必要はない。
テーブルはギャレーキャビネットのレールに引っ掛けるタイプで、足は無い。レールに沿ってテーブルを移動させることができる。
ベッド
ダイネットベッド
シートを全てフラットにした場合のダイネットベッドは、2040x1320mmの大きさ。後部はギャレーキャビネットがあるので1240mmの幅になる。1240mmの幅は家庭用のセミダブルベッドの幅(1200mm)よりも広い。
ベッド展開はマルチモードシートがあるので多少労力が必要だが、単座シートの場合は比較的楽にできる
ギャレー
ギャレーセクション
左サイドに設置されたギャレーキャビネットには、シンクとフォーセットが備えられている。フォーセットは引き伸ばして車外で使えるシャワーフォーセットではないが、シンク内に収まるので、シンクに蓋をすれば、ギャレーキャビネットは大きなカウンターになる。
冷蔵庫が収納されるギャレーキャビネット
ギャレーキャビネットは標準仕様のものと、上の写真のような16L上開き式冷蔵庫が収納されるオプションのものがある。冷蔵庫を重視するユーザーはこちらがお勧めだ。シンクも多少大きめのサイズに変更される。
ただし、冷蔵庫を収納するため多少奥行きが増し、その影響で足元のベッド幅は1160mmとなる。
冷蔵庫/電子レンジ
ポータブル冷蔵庫(OP)
標準のギャレーキャビネットを選択した場合はポータブル冷蔵庫を持ち込むことになるが、ベッド下に収まる高さのものなら邪魔にならない。
16Lの上開き式冷蔵庫
オプションのギャレーキャビネットを選択すると、16Lの上開き式冷蔵庫がビルトインされ、ギャレーキャビネットの天板を開けてアクセスできる。
電子レンジはオプションで用意されており、収納用の家具もセットとなっている。外部電源でも使用できるが、サブバッテリーで使用する場合は、オプションの1500Wのインバーターも設置する必要がある。
多目的ルーム
シュピーレンに多目的ルームは無いが、ポータブルトイレを積んでおくことは可能だ。ベッド下に収納できるサイズのものであれば、目に触れることはない。ただし、子供とクルマ旅をするモデルではないので、あまり現実的ではないだろう。
収納
ギャレーキャビネットの収納
ギャレーキャビネットには小物収納が用意されている。また、右側のキャビネットにも小物収納が用意されている。
後部の荷室
シュピーレンは2列目のマルチモードシートにバタフライシートを採用している。床にはレールが敷設してあり、バタフライシートを畳んで前方にスライドさせると、後部は大きな荷室になる。
空調
車載用一体型クーラー(OP)
2024年モデルの最も大きな進化は、右側後部にクーラーを装備できるようになったこと。使用しているのはトラック用の24V一体型クーラーで、強力な冷却能力を持つ。
電源は、クーラー専用にポータブル電源を使用する。このポータブル電源は、標準装備のサブバッテリーと連携して動作させることができ、照明などのシステム電源としても使用できるとのことだ。
暖房はFFヒーターがオプションで用意されている。右側のエントランスのステップ部に取り付けられる。また、ベンチレーターもオプションで用意されている。
テレビ/ナビ
13.3インチのフリップダウンモニターがオプションで用意されている。また、ナビは好みのものが取り付けられる。
電装系
標準では105Ahのディープサイクルバッテリーが1個標準装備される。走行充電、外部電源入力と充電機能も標準装備だ。サブバッテリーは追加できるが、リチウムイオンバッテリー(別途見積り)も選択できる。
先述のようにクーラーには専用のポータブル電源を用意するので、サブバッテリーは高価なリチウムイオンバッテリーにする必要性は低いだろう。
インバーターは400Wと1500W(いずれも正弦波)が選択できるため、オプションになっている。電子レンジが無いので、湯沸かしポットなど特に大電力の家電品を使わないなら400Wでも問題ない。
ソーラーシステムは、220Wと120Wのキャリア固定式と、170Wのフレキシブルタイプがオプションで選択できる。
価格(2024年6月現在:千円台切り上げ:税込)
2WDと4WD、5MTと4ATが選択できる。また、2列目のマルチモードシートの形状により、価格が異なる。最も安価な単座タイプの2WD/5MTは347万円~、最も高価な分割2名掛けタイプの4WD/4ATは413万円~となっている。(5MTと4ATの差額は89,000円)
付けておきたい必需オプションは、400Wインバーター(400W:66,000円、1500W:129,800円)、FFヒーター(258,500円)が挙げられる(ナビ関連は除く)
クーラーは参考価格で60万円とされていたが、この他にポータブル電源も必要になる。高価だが、クーラーはもはや必需装備と言っても良いくらいだ。
予算に余裕があれば、ソーラーシステム(220W:154,000円)も付けておきたい。特にクルマ旅をする場合は有用だ。
他モデル
タウンエースベースのバンコンは、多数存在する。特にキャンピングカーの要件変更で、標準のルーフでも8ナンバー登録が可能になり、各社が発売している。2列目にマルチモードシートを持つモデルをピックアップすると、パパビルドのファヴォライトボックス スクエア(386万円~)、リンエイプロダクトのコンパクトバカンチェス L MoMo(389万円~:2023年7月時点)が挙げられる。これらはクーラーが搭載できる。
その他のモデルでは、ダイレクトカーズのスープ(428万円~)、レクビィのコット(471万円)、同タウンランダー(410万円~)、アンナ Model L(394万円~)、フレンドリーのペコラ(337万円~)、オートワンの給電エース(355万円~)などがある。
タコスのハナシリーズ(421万円~)のようにハイルーフを架装したモデルもある。
まとめ
年々暑くなる夏場に対し、今や軽キャンパーにもクーラーが搭載される時代になってきた。一回り大きなサイズのタウンエースベースバンコンでもこの流れは同じだろう。
しかし現実的には、クーラーが搭載できるモデルは、まだまだ限られている。シュピーレンは、その数少ないクーラー搭載可能モデルのひとつとなった。
選択できる2列目のマルチモードシートや冷蔵庫、電子レンジが選択できるギャレー、バタフライシートの採用による後部の広い荷室など、他モデルにない魅力を備えている。更に、ポータブル電源とサブバッテリーの連携は、ポータブル電源の新しい使い方を提案している。
シュピーレンの特徴は2列目のマルチモードシートではあるが、マルチモードシートを持たない、完全な二人旅仕様のレイアウトも期待したいところだ。
関連記事