ハナシリーズはタコスが製作する、タウンエースをベース車にしたバン・コンバージョン キャンピングカー。
同社は東京都立川市を本拠とするビルダーで、ハナのようなコンパクトバンコンからカムロードベースのキャブコンまで製作している。モデル数はそれほど多くないが、ベリーやハイエース3Bのような人気モデルも多数ラインアップしている。
ハナは同社のラインアップでは最もコンパクトなモデルだが、用途や使用環境によって選択できるよう、4種類の選択肢がある。「ハナ」、「ハナ1.5」、「ハナ2」、「ハナ Eve(イブ)」の4モデルだ。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
トヨタタウンエースバンをベース車にする、8ナンバーコンパクトバンコン。以下の4種類の選択肢がある。なお、ノーマルルーフ(4ナンバー、1ナンバー)も選択できる。
・ハナ:ハイルーフ+冷蔵庫標準装備+子供用ルーフベッド
・ハナ1.5:ハイルーフ+薄型キャビネット+広いベッド+子供用ルーフベッド
・ハナ2:ハイルーフ+薄型キャビネット+広いベッド
・ハナ イブ:ポップアップルーフ+薄型キャビネット+広いベッド+ルーフベッド
「ハナ」は上開き式冷蔵庫をギャレーキャビネットに標準装備するが、そのためキャビネットの奥行きがあり、ベッド幅が多少狭くなっている。「ハナ1.5」と「ハナ2」はベッド幅を広くするためギャレーキャビネットを薄くしたが、そのため冷蔵庫は収納できない。
「ハナ」と「ハナ1.5」は子供用ルーフベッドを持つが、「ハナ2」はこの部分は収納になっている。
「ハナ イブ」はポップアップルーフ仕様で、街中でも目立つことは無く、高さ制限のある駐車場にも侵入できる。跳ね上げ式のギャレーキャビネットでダイネットベッドも広い。
アピールポイント
・コンパクトで運転しやすい
・ハードハイルーフとポップアップルーフを選択可能
・冷蔵庫を標準装備(ハナ)
・子供用ルーフベッド(ハナ、ハナ1.5)
・ポップアップルーフで街中での高い機動性(ハナ イブ)
・車載用クーラー装備可能
ベース車とエクステリア
ハナ イブのエクステリア
ベース車はトヨタ タウンエースバンGL。上位グレードのGLベースなので、ボディ同色バンパーやプライバシーガラスが標準装備される。いわゆる自動ブレーキなどの安全装備を含むスマートアシストも標準装備される。2WD/4ATと4WD/4ATが標準だが、MTやDXグレードも選択できる。
このベース車にFRP製ハードハイルーフ(ハナ、ハナ1.5、ハナ2)、あるいはポップアップルーフ(ハナ イブ)を標準で架装する。なお、ノーマルルーフ仕様でも製作できるようだ。
ハイルーフはルーフを昇降させる必要は無いが、高さ制限のある駐車場には入れない。また、多少なりとも目立つ可能性はある。しかし、断熱性や静音性に優れており、ヒーターやエアコンの効率は良い。
一方、ポップアップルーフの最大の特徴は、使用しない場合は全高が低く、ルーフを上げると高い天井高になる点。このため日常用途では目立たないし、高さ制限のある駐車場にも侵入できる。
インテリア
ハナ1.5のインテリア
最近の展示車では上の写真のようなオレンジのシート地が使用され、お洒落な印象のインテリアとなっているが、インテリアカラーは選択できる。インテリアは特に高級感をアピールするものではないが、十分満足できるレベルに仕上がっている。
レイアウト
どのモデルも2列目に1200mm幅の3人掛けのマルチモードシートを配置している。前向きにすると、運転席、助手席と合わせて5名が前向き乗車できる。2列目シート両側が3点式シートベルトを着用できるので、計4名が3点式シートベルトを使用できる。
後ろ向きにするとL字型あるいはコの字型のダイネットとなる。右側後部にはギャレーキャビネットを設置する。
「ハナ」と「ハナ1.5」は子供2名用のルーフベッドを持つが、「ハナ2」はここは収納になっており、二人使用を想定したレイアウトとなっている。一方、ハナ
イブのポップアップルーフでは大人が1名就寝できる。
ダイネット
ハナ1.5のダイネット
2列目シートを後ろ向きにすると、3列目の横座りベンチシートとでL字型のダイネットになる。最後部にも簡易シートがあるので、これを使用するとコの字型のシート配置になる。テーブルはそれほど大きくなく、食事をするには少し狭いが、ギャレーキャビネットがカウンターとして使用できる。
後部をベッドモードにすると、2列目シートをリクライニングして、足を投げ出してリラックスできる。
ベッド
ハナのダイネットベッド
ハナの選択肢で注意すべき点はベッド幅だ。ギャレーの項でも説明するが、ハナでは冷蔵庫がビルトインされている関係上、ギャレーキャビネットの奥行きが広く、その分ベッド幅(足元のみ)がハナ1.5やハナ2より多少狭くなっている。
具体的にはハナのベッドサイズは、1850x1200(最大)mm、足元は1050mmとなっている。
ハナ1.5、ハナ2のダイネットベッド
一方、ハナ1.5とハナ2では、2000x1200(最大)mmで足元は1180mmとなっている。即ち、ハナに比べて130mm広く、ハナでは家庭用ではシングルベッドの幅(970mm)より少し広い程度なのに対し、ハナ1.5とハナ2ではほぼセミダブルベッドの幅(1200mm)となっている。
ハイルーフ仕様の場合、ダイネットベッドで2名就寝したい場合はハナ1.5とハナ2が選択肢になる。
ハナ1.5のルーフベッド
ハナとハナ1.5のルーフベッドは同じで、1500x1000mmの大きさ。身長方向は1800mmに達していないので、子供用としてカウントされる。子供が2名就寝できる。ルーフベッドのセッティングはボードを敷くだけなので少ない労力で完了する。
ハナ イブのダイネットベッド
ハナ イブは他の3モデルとギャレーの形状が異なっており、ベッドサイズは2050x1390mm(いずれも最大値)。ギャレーキャビネットがある右側の長さは1800mm、足元の幅は不明だが家庭用セミダブルベッドの幅程度はあるようだ。従って実用的に2名が就寝できる。
ハナ イブのルーフベッド
ハナ イブの場合はポップアップルーフを上げるとルーフベッドが使えるようになり、その大きさは1850x930mm。家庭用ではシングルベッドの幅(970mm)より少し狭い程度で、大人が1名就寝できる。
ハナやハナ1.5と異なるのはルーフベッドでも大人が就寝できる点で、2名で使用するなら、上下段で各自ゆったりと就寝できる。就寝前のプライベートな時間を持つことも可能だ。
ギャレー
ハナのギャレーキャビネット
ギャレーキャビネットはどれも右側後部に配置されているが、ハナでは40Lの上開き式冷蔵庫が標準装備され、ビルトインされている。
シンクの下の給排水タンクと収納
一方ハナ1.5とハナ2のギャレーキャビネットには冷蔵庫は無く、奥行きもスリムになっている。丸形のシンクの位置もハナとは異なっている。
ハナ1.5とハナ2の給排水タンク
シンクの位置が最後部に移動したことにより、車外で手を洗うことができるようになったとともに、給排水タンクを車外から直接出し入れできるようになった。
ハナ イブのギャレー
ハナ イブのギャレーキャビネットは全く異なっている。シャワーフォーセットはシンクの下に設置されており、引き伸ばしてシンクまで持ってくることになる。もちろん車外で使用することも可能だ。
ハナ イブの跳ね上げ式ギャレーキャビネット
更にユニークなのは、このギャレーキャビネットを跳ね上げることができる。就寝時に跳ね上げておくと、足元の上部のクリアランスが広くなる。ただし気にならない場合は下げたままでも就寝できる。
冷蔵庫/電子レンジ
前述のように冷蔵庫は40L上開き式がハナに標準装備される。その他のモデルには冷蔵庫を収納するスペースは無く、必要に応じてポータブル冷蔵庫を持ち込むことになる。小型のものであればシート下に置くことができるだろう。
電子レンジはオプション設定が無く、使用する想定ではない。
収納
ダイネット両側にオーバーヘッド収納が設置される
ハイルーフのメリットのひとつは、オーバーヘッド収納が設置できること。ハナ、ハナ1.5、ハナ2のハイルーフモデルには、後部両側に扉付きのオーバーヘッド収納を設置。食器や食品を収納しておくのに便利だ。
前方にも扉なしの収納が用意されており、タオルなど走行時に飛び出しても良いものを収納しておける。
ギャレーキャビネットの収納(ハナ1.5、ハナ2)
冷蔵庫を持たないハナ1.5とハナ2では、ギャレーキャビネットが設置されている。上部からもアクセスできるが、深いためサイドに扉が用意されている。
最後部の大きなカーゴスペース
3列目シートの下も収納になっている。この収納へはリアゲートを開けて車外からもアクセスできる。
ベッド下の収納スペース
就寝時はベッド下も大きな収納スペースとして使用できる。
ハナ イブのギャレーキャビネッの収納
ハナ イブでは、ギャレーキャビネットに大きな収納スペースが設けられている。食器などを入れておくのに便利ではあるが、跳ね上げた場合、中のものが散乱してしまわないような工夫が必要。
空調
暖房はFFヒーターがオプションで用意されている。冷房はオプションリストにないが、車載用クーラーが設置できるようだ。詳しくはビルダーにお問い合わせいただきたい。なお、マックスファンベンチレーターはオプションとなっている。
テレビ/ナビ
画面のサイズは不明だが、テレビのオプションが用意されている。設置用のステーやアンテナもセットになっている。
電装系
80Ahのディープサイクルバッテリー1個、走行充電、外部100V電源入力が標準装備される。外部電源のチャージャー、300W/1500Wインバーターはオプションで設置できる。ソーラーシステムのオプション設定は無いが、付けられないことは無いだろう。クーラーを設置した場合リチウムイオンバッテリーが望まれるが、これについては不明。
価格(2023年2月時点:千円台切り上げ:税込)
ハナのGLグレード2WD/4ATの車両本体価格は432万円~、ハナ2は410万円~、ハナ イブは454万円~となっている。 ハナ1.5は同社のウェブサイトに載っていないが、2023年2月時点では424万円~。いずれも2023年1月時の価格なので、現時点の価格はビルダーにお問い合わせください。
付けておきたいオプションは、外部電源によるチャージャー(63,800円)、1500W正弦波インバーター(148,500円)が挙げられる。(ナビ関連は除く)
他モデル
タウンエースをベース車にするバンコンでハイルーフを架装するモデルは、AtoZのアンナ モデルM(438万円~:DX)がある。ハナと同様にFRPハイルーフを架装するが、全高はハナより150mm高い。
ポップアップルーフ仕様では、カトーモーターのメリル(401万円+エレベーションルーフ:GL)と、キャンピングカー広島のピコ(409万円:GL)がある。
まとめ
大人2名+子供2名のファミリーの場合を考えると、ハナ1.5かハナ イブが適している。どちらもダイネットベッドで実用的に2名が就寝でき、ルーフベッドで子供が2名就寝できる。
アンナmodelMの場合、ダイネットベッドで大人2名が就寝するのは窮屈なので、このシチュエーションではハナ1.5が適している。
二人で使用する場合なら、ハナ2かハナ イブが適している。ピコと比べると、ハイルーフのハナ2が選択できるのは強みだし、同じポップアップルーフどうしで比較すると、ダイネットベッドが広いハナ2が有利だ。強風などでポップアップルーフが上げられない場合、ピコのダイネットベッドで2名就寝するのはかなり窮屈だ。
このように考えると、ハナの各モデルは様々なシチュエーションにうまく対応していることが分かる。このサイズのモデルでは何かを妥協しないと成立しないが、妥協点が異なるレイアウトを用意することにより、各ユーザーに対応している。
あえて懸案点を挙げておくと、クーラーがオプション設定されているようだが、どのようなものがどこにどのように設置されるのかが分からない。クーラーを装備した展示車を期待したい。
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