ベリーREはタコスが製作する、ハイエース標準ボディをベース車に使用したキャブコンキャンピングカー。
同社はカムロードべースのキャブコンからタウンエースベースのバンコンまで、幅広いモデルをラインアップしている。
その中でベリーシリーズは同社の看板モデル的な存在となっている。ベリーシリーズには、エントランスが中央にある「ベリーType2」と、リアにあるこの「ベリーRE」が選択できる。
ベリーType2は後部に前向きシートが無く、従って二人旅に向いているが、ベリーREは対座ダイネットがあり、前向きシートが1名分あるため、ファミリーにも使用できる。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
コンセプト
ハイエース標準ボディをベース車に使用したキャブコンキャンピングカー。全長x全幅が4,990x1,890mmのため一般的な5x2mの駐車枠に収まる。5mを切るキャブコンは多く存在するが、車幅が1900mmを切るモデルは多くない。
また、ハイエースをベース車に使用しているため、トラック臭さが無く、特にスーパーGLをベース車に選択すると、運転席周りのグレード感も高くなる。
REはRear Entranceの意味で、エントランスが後部にある。このレイアウトの特徴を生かし、前部に広いダイネットを持つ。
アピールポイント
・5x2mの駐車枠に収まるコンパクトなボディ
・ベース車がハイエースのためトラック臭さが無い
・リアエントランスで広いダイネット
・コンパクトなボディながら多目的ルームを装備
・家庭用セパレートエアコン標準装備
・リチウムイオンバッテリー搭載可能
・ボディカットを最小限にしたシェル構造
エクステリア
ベリーREのエクステリア
ベース車はハイエース標準ボディ。これにFRPシェルを架装している。ベリーの架装方法の特徴は、ボディカットをできるだけ少なくしていること。これにより、オリジナルのボディの強度を保ち、ボディカットの工程も少なくしている。
ハイエースのグレードは標準ではGLパッケージで、ボディ同色バンパーやメッキグリル、リモコンドアミラーなどが標準装備される。ただし、フロントシートはベーシックグレードのDXと同じ3人掛けとなり、クルマのエアコンもマニュアルになる。
なお、上級グレードのスーパーGLも選択でき、この場合は運転席周りは乗用車と同等以上のグレード感が得られる。またサンルーフがオプションで設置できる。
足回りではファイヤーストーン製のエアサスを標準装備しているのが特筆される。
インテリア
天然木を使用したベリーREのインテリア
インテリアカラーは上の写真のように濃色系の家具とブルーを基調にしたシートの組み合わせだったが、家具色やシート色は選択できる。
家具は天然木を使用しており、作りはしっかりしている。天然木は重量的に不利ではあるが、合板とは違い、それなりの質感がある家具だ。
レイアウト
リアエントランスを採用しており、定石通り前部に広いダイネットを展開する。ただしギャレーは定石の最後部ではなく、右側中央に配置されている。リアエントランスレイアウトで最後部に位置するギャレーは奥行きが狭いものが多いが、ベリーREでは立派なギャレーが与えられている。
また、コンパクトなボディながら多目的ルームも用意されており、収納やトイレルームとして使用することができる。
乗車はフロントシートに3名、ダイネットに3名で計6名。前向きには4名が乗車できるが、通常はフロントシートの中央には座らないので(あるいはスーパーGLの場合は)前向きに3名が乗車できる。
ダイネット
リアエントランスで広いダイネット
ベリーREでは広いダイネットが特徴だが、ダイネットには3名対座シートと、2名の横座りシートがあり、5~6名がテーブルを囲める。
ダイネットサイドにはカウンターがあり、ちょっとした出窓風になっているのも車内を広く見せている。なお、ウインドウは全てアクリル2重窓になっており、断熱性も確保されている。
ベッド
大人2名が就寝できるダイネットベッド
リアエントランスレイアウトのもう一つの特徴は、常設ベッドを持たないこと。その代わり広いダイネットと多目的ルームが可能になっている。ただし、常設ベッドを持たないといっても、引き出すだけで簡単にセットできるバンクベッドがあり、寝具はそのままにしておけるので、準常設ベッドとして使える。
ダイネットベッドのベッドサイズは1900x1150mm(ギャレー前の幅)で、これは家庭用ではほぼセミダブルベッド(1200mm幅)に相当し、大人2名が就寝できる。
大人2名が就寝できるバンクベッド
また、バンクベッドは1800x1450mmの大きさで、高さは500mm。これは家庭用ではセミダブルとレギュラーダブル(1400mm幅)より広く、やはり大人2名が就寝できる。従って計4名が就寝できる。
ギャレー
充実したギャレー
ベリーREのギャレーは先述のように、リアエントランスでは珍しく後部ではなく中央に置かれ、十分な奥行きと幅が与えられている。「使い物になる」ギャレーだ。
また、コンロはシンク一体型で1口コンロが常設されている。1口ではあるが、常設コンロがあるので、いちいちポータブルカセットガスコンロをセットする必要が無い。コンロを頻繁に使用するユーザーには嬉しい仕様だ。
コンロが常設されていることにより、シンクの左側のスペースは全て調理台として使える。更に、ギャレーの上には専用の換気扇が付けられており、煙を車外に排出することができる。
旅先の食材を料理して食べるのが楽しみだと言うユーザーには文句なしのギャレーだ。(旅行に来てまで料理したくないというユーザーには無用の長物ではあるが。)
各20Lの給排水タンクが収納される
また、シンクの下には各20Lの給排水タンクが収納されており、その隣にも収納がある。ここにはカセットガスが収納されている。
冷蔵庫/電子レンジ
40L冷蔵庫が標準装備される
中央エントランスのベリーType2との大きな違いは、Type2には上開き式の冷蔵庫が標準装備されるのに対し、ベリーREには40L横開き式冷蔵庫が標準装備される。
上開き式は冷凍できるが、冷蔵と冷凍を同時にできない。一方横開き式は冷凍室があるので、ここに冷蔵品とは別に冷凍食品を保存したり製氷したりできる。
電子レンジもはここに設置される
また電子レンジもオプションで設置できる。場所は冷蔵庫上のカウンターで、残念ながら「すっきり」収納と言う感じではない。希望であれば、上部のオーバーヘッド収納を一部潰して電子レンジを収納することもできるだろう。
多目的ルーム
トイレルームとしても使える多目的ルーム
多目的ルームにポータブルトイレを置いてトイレルームにすることができる。特に女性や子供がいる場合(もちろん男性でも)、夜に車外の遠いトイレに行くのは非常に億劫だ。寒い時期や雨の日などは車内にトイレがあると、非常にありがたい。
ベリーREの多目的ルームは防水処理がしてあるわけではないが、水や汚れには強そうな素材でできている。また車外へのドアがあるので、車外から濡れたキャンプ用具などを直接入れることもできる。
なお、首振り式のカセットトイレの設置も可能だ。この場合は外部とのドアは無くなる。
収納
冷蔵庫上のオーバーヘッド収納
ベリーREの収納は十分に用意されている。まず、オーバーヘッド収納は、冷蔵庫上、エントランス上、そしてギャレー上に設置されている。また、バンクベッドの両側には扉のない収納が用意されている。
また、先述のようにギャレーコンソールにも収納スペースがあるほか、シート下にも収納が用意されている。
ボディ左側の外部収納
外部収納は、ハイマウントベッドを持つモデルのようにベッド下の大きな収納は無いが、ボディ左側に用意されている。汚れたものや濡れたものを収納しておくのに便利だ。
空調
家庭用セパレートエアコンが標準装備
暖房はFFヒーターがオプションで用意されている。また冷房は家庭用セパレートエアコンが標準装備されている。室内機は最後部に取り付けられており、前方へ効率よく冷気を運ぶ、理想的な位置だ。
室外機はボディ右側中央に設置されている
エアコンの室外機はボディ右側中央に、扉付きで収納されている。扉にはルーバーが付いており、扉を閉めたままでも運転できる。(理想的には開けた方が良い)
テレビ/ナビ
テレビやナビに関しては特に情報は無いが、取り付けは問題ないだろう。
電装系
100Ahのディープサイクルサブバッテリーが1個と走行充電が標準装備される。また、外部100V電源入力とこれによる充電機能(チャージャー)も標準装備される。
家庭用エアコンが標準装備されるが、サブバッテリーがディープサイクル100Ahが1個では外部電源で運転する以外とても実用にはならない。少なくとももう1個増設する必要がある。
あるいはオプションのリチウムイオンバッテリー(100Wh~)を200Wh程度搭載しておくとエアコンを実用的に使える。
また2000Wのインバーターもオプションで、これを装備すると、サブバッテリーでエアコンや電子レンジが使える。
発電機が搭載できる
ベリーREは発電機搭載を想定したキャブコンだ。最後部に発電機を収納するスペースが設けられている。台座がスライドして車外に出てくるようになっており、その状態で発電機を運転する想定だ。
車内からリモートでOn/Offしたり、燃料をクルマのタンクから引いたりと言ったことは、希望があればできるのかもしれない。なお、2500Wの発電機もオプションで用意されている。こちらはリモートOn/Offやベース車からの給油もできると思われる。
また、ソーラーシステムも100Wから設置できる。
価格(2021年4月現在:千円台切り上げ:税込)
GLパッケージ/ガソリン2WD/6ATの車両本体価格は691万円~。付けておきたいオプションは、サブバッテリーの増設、FFヒーター、1500W以上のインバーター(いずれも価格不明)が挙げられる。クルマ旅に使うユーザーも多いと思われるので、電子レンジも必要かもしれない。
また予算に余裕があれば、ソーラーシステムを装備しておきたい。また家庭用エアコンが標準装備されているので、やはりこれを実用的に使いたい。200Ah程度のリチウムイオンバッテリーが望まれるが、オプションには記載されていない。
他モデル
ハイエース標準ボディをベース車にしたキャブコンは、セキソーボディのトム200シリーズ(価格不明)、ファンルーチェのウラルエイジア(740万円~)がある。ただし、いずれもエントランスはセンターで、リアエントランスのモデルはベリーREだけだ。
ハイエース、あるいはNV350キャラバンの標準ボディをベース車にしたキャブコンについては、「アストラーレとハイエースベースコンパクトキャブコン比較」も参照いただきたい。
まとめ
ベリーREは車長方向はもちろん、車幅方向についても大きくなく、扱いやすいキャブコンだ。まるでバンコンのように扱え、バンコンより居住性が良い。
選択肢として悩むのは、タウンエースやNV200バネットベースのキャブコンかもしれない。例えばMYSミスティックのレジストロ アウル(488万円~)はベリーRE同様にリアエントランスで多目的ルームを持ち、かつ価格的には家庭用エアコンとリチウムイオンバッテリーを装備しても、約100万円安価だ。
その差はベース車にあるが、やはり走行性能やグレード感を妥協したくないなら、ハイエースベースのベリーREは良い選択肢だろう。
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