アストラーレCC1の登場
2021年4月に開催されたジャパンキャンピングカーショーでバンテックから注目の1台が発表された。「アストラーレCC1」と名付けられたそのキャブコンは、NV350キャラバン標準ボディをベース車に使用し、曲線を生かした美しいフォルムのコンパクトなキャブコンだ。
そこで、今回はこのアストラーレCC1と、5mを切るハイエース標準ボディをベース車にするキャブコンと比較する。対抗するハイエース軍団は4社4モデルだが、レイアウトバリエーションを持つモデルもあり、ハイエースベースの選択肢は圧倒的に多い。
アストラーレCC1:バンテック
アストラーレCC1はファーストカスタムが製作し、バンテックが販売する、NV350キャラバン標準ボディをベース車にしたキャブコン。ファーストカスタムは以前にハイエースベースのキャブコンを製作しており、その技術を生かしてアストラーレを開発した。その一つがシェルの中に入っている鋼製フレーム。見えないが、安全面でも考慮されている。
アストラーレCC1の外観
しかしアストラーレでまず目が奪われるのはそのエクステリアデザインだろう。美しい曲面で構成されたフォルムは、今までのキャブコンキャンピングカーのイメージを変えるインパクトがある。実用面では、スライドドアや跳ね上げ式リアゲートは狭い場所や隣に車がいる場合でも安全に開閉できる。
内部の機能面では最新モデルらしく、200Ahリチウムイオンバッテリーと12Vクーラーを標準装備し、快適性の面でも抜かりが無い。特にクーラーは吹き出し口だけがあり、本体の存在を意識させない。
アストラーレCC1のインテリア
レイアウトは前部に4名が対座できるダイネットと後部に2段ベッドの組み合わせ。中央にギャレーとユーティリティールームを配置する。
乗車はフロントシートに3名とダイネットシートに4名の計7名。前向き乗車は5名だが、フロントシートの中央席は通常座らないので4名が前向き乗車できる。
4名対座のダイネット
また、就寝は後部2段ベッドに2名とダイネット展開ベッドに1名で計3名が就寝できる。即ち、大人2名と小さな子供2名がいるファミリーに対応でき、また二人旅ならダイネットを展開してベッドにする必要はない。
ユニークなのは2段ベッド部がセカンドダイネットとして使えるように考えられており、ちょっとした作業ができる点。二人旅でも常に顔を突き合わせている必要が無く、プライベートスペースを持てるのは嬉しい。
アストラーレCC1のギャレーセクション
ギャレーにはコンロが常設されておらず、シンクのみが上面にある。冷蔵庫は横開き式90Lと大型で、食材を十分に収納しておくことができる。また電子レンジも標準装備されている。コンロで調理するというより、電子レンジ中心の調理が想定されているようだ。
収納はオーバーヘッド収納や後部ベッド下の収納が用意されている。ギャレーコンソールには分別できる大きなごみ箱が据え付けられており、食材のトレーなどを気軽に放り込めるようになっている。これも今までにない発想だ。
ダイネットを展開したベッドでは大人1名が就寝できる
アストラーレCC1はこのように今までのキャブコンとは一線を画したコンセプトで、多くの特徴を持つ。反面、やはりゴミ箱の部分は収納にして欲しいと思うユーザーは少なくないだろう。画期的ではあるが、そのあたりの自由度は期待したいところだ。
また、全長は5mを切るが全幅は2mを超えているのも気になるところ。家庭の車庫に入らないのは幅が原因であることも少なくない。
しかしコルドシリーズに代表される今までの同社のモデルとは全く異なったコンセプトで、新しいユーザー層にアピールするモデルとなる。レイアウトプランが選択できないという制限もあるが、今後レイアウトバリエーションが追加されることも期待したい。
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ボーノクイーン:カトーモーター
カトーモーターは新潟県燕市を拠点とするビルダー。同社のモデルの特徴は、リアルウッドを生かしたクラシカルで高級感のあるインテリア。インテリアを見れば同社のモデルだとすぐに分かるほど、他にはない室内を形作っている。
ボーノクイーンの外観
同社は多くのハイエースバンコンをラインアップしているが、ハイエーススーパーロングをベースにしたDスクエアとハイエース標準ボディをベースにしたボーノクイーンの2種類のキャブコンも生産している。
ボーノクイーンを見ると、前述の天然木を使用した豪華な室内や、丸みを帯びた特徴的な外観に目が行くが、補強されたベースフレームやシックハウスを予防するための接着剤や建材の選択、そして断熱など見えないところへのこだわりも重要な訴求ポイントとなっている。
ボーノクイーンCタイプのインテリア
ボーノクイーンにはAからDまでの4種類のレイアウトプランが用意されており、二人旅からファミリー対応まで、用途に合わせて選択できる。対座ダイネットやラウンジソファダイネット、トイレルームの有無などの選択も可能だ。またバンクベッドが全レイアウトに設置されているのも特徴。
ボーノクイーンのギャレーセクション
ギャレーにはシンクが埋め込まれ、40L横開き式冷蔵庫が標準装備される。また電子レンジもオプションで設置できる。コンロはポータブルカセット式を、使う度に設置する。
収納は各レイアウトで様々だが、基本的にオーバーヘッド収納が充実しており、またシート下に収納スペースが用意されている。バンクベッドも使わない場合は大きな収納スペースになる。
なお、エアコンやリチウムイオンバッテリーなどの装備はオプションリストに設定されていない。カスタマイズでオーダーできるのかもしれないが、現代のキャブコンでエアコンが装備できないのはウイークポイントになってしまう。
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トム200:セキソーボディ
セキソーボディは埼玉県春日部市を拠点とするビルダーで、ハイエースをベースにしたキャブコンを中心に、タウンエースやカムロードベースのキャブコンもラインアップしている。
トム200PLUSの外観
同社の特徴は、アルミシェルを採用した軽量ボディ。トム200はボディの軽量化とハイエースの走行性能で、走行面での優位性も謳っている。
トム200シリーズにはファミリーを対象にした「トム200」、二人旅を想定した「トム200L」、そして最近追加された「トム200PLUS」がレイアウトバリエーションとして選択できる。
トム200PLUSのインテリア
トム200は対座ダイネット、後部2段ベッド、ギャレーおよびユーティリティールームの構成だが、トム200PLUSはユーティリティールームを廃し、後部ベッドは上り下りの不要なダブルベッドに変更されている。
トム200とトム200PLUSでは、2列目シートにマルチモードシートを採用しているのが他に無い特徴だ。これにより、6名全員が前向きに乗車できる。もちろん後ろ向きにすると4名が対座できるダイネットになる。
トム200とトム200PLUSでは全員が前向き乗車できる
常設ベッドは、トム200が横置き2段ベッド、トム200LとPLUSは横置きハイマウントダブルベッドが与えられている。また、どれもダイネット展開でベッドになり、バンクベッドを合わせて計6名が就寝でききる。
トム200は後部に2段ベッドを持つ
ギャレーはシンクがビルトインされ、カセットコンロは使用する度にセットする。調理はできないことは無いが、広い調理スペースではない。冷蔵庫はトム200が65L、トム200PLUSが49Lの横開き式だが、トム200Lは40L上開き式になってしまう。
トム200のギャレー
なお、どのレイアウトにも電子レンジはオプション設定されていないが、設置することは可能だろう。
どのレイアウトもオーバーヘッド収納が用意されており、収納力は大きい。またダブルベッドを持つモデルはベッド下に大きな収納スペースが用意されている。
最新のトム200PLUSには家庭用エアコンがオプション設定された。エアコンを搭載する場合はサブバッテリーの増設が必要だが、リチウムイオンバッテリーの搭載についてはオプション設定されていない。また、従来のトム200やトム200Lにもエアコンが設置できるかは記述が無いが、トム200で可能なので期待したい。
トム200Lのラウンジソファダイネット
トム200シリーズは軽量ボディが特徴で、またトム200とトム200PLUSは2列目シートが前向きになるのでファミリーでの長距離ドライブにも適している。またラウンジソファダイネットを持つトム200の存在も希少価値だ。トム200シリーズはリチウムイオンバッテリー等の電装系強化が可能なら良い選択肢になる。
⇨ 詳しい記事はこちら(トム200PLUS)とこちら(トム200)。
ベリー:タコス
ベリーRE
タコスは東京都立川市に拠点を置くビルダーで、カムロードキャブコンからタウンエースバンコンまで幅広いモデルをラインナップしている。
ベリーは同社のハイエースベースのキャブコンで、特徴はハイエースのボディの骨格を残し、できるだけカットしない工法でキャブコン化していること。
ベリーType2の外観
これにより剛性を高めている。バンクは持たず四角くスリムな印象のエクステリアで運転しやすい。
ベリーには大きく分けてセンターエントランスとリアエントランスが用意されており、センターエントランスには対座ダイネットレイアウトとType2と呼ばれる横座り対座レイアウトが存在する。前者は主にファミリー向け、後者は二人使用向けだ。
ベリーの対座ダイネットレイアウト
対座ダイネットを持つレイアウトでは、ダイネット展開ベッドと後部上段ベッド、それにバンクベッドがあり、ダイネットベッドは1900x1100mm、後部上段ベッドは1700x1100mm、バンクベッドは1900x1100mmの大きさで、計6名が就寝できる。
TYPE2レイアウトは前部にL型ギャレーを持ち、後部は横座り対座ダイネットになっている。即ち前向きには2名しか乗車できないので、二人旅に適したレイアウトだ。
ダイネットはベッド展開でき2名が就寝できるが、ダイネット上に跳ね上げ式の上段ベッドが用意されており、ここでも大人1名が就寝できる。なおバンクベッドは子供用とされている。
ベリーType2レイアウト
リアエントランスのレイアウト(ベリーRE)は、前部に広いダイネットが確保できるのが特徴で、対座シートとサイドシートで大勢がテーブルを囲める。このレイアウトには常設ベッドが無いが、ダイネットを展開すると広いベッドになるほか、バンクベッドが簡単にセットアップできるので準常設ベッドになる。このレイアウトはファミリーにも二人使用にも対応できる。
ベリーREのレイアウト
Type2レイアウトのギャレーはL字型で調理しやすいが、冷蔵庫が40L上開き式になってしまうのは残念なところ。他のレイアウトは横開き式40L冷蔵庫が標準装備される。なお、電子レンジは全てのレイアウトに標準装備される。
ベリーType2のギャレー
収納はレイアウトにより異なるが、どれもオーバーヘッド収納を持ち、Type2レイアウトではシート下に収納スペースがある。
どのレイアウトにも家庭用エアコンが標準装備されているが、リチウムイオンバッテリーについては記述が無い。なお、ベリーREには後部に発電機(ホンダ18i)用のコンパートメントが用意されている。
ベリーは車幅が1890mmで今回セレクトしたモデルの中では最も全幅が狭く、ハイエースワイドボディよりも10mm広いだけだ。バンコン感覚で運転できるキャブコンと言える。
⇨ 詳しい記事はこちら(ベリーType2)とこちら(ベリーRE)。
ウラルエイジア:ファンルーチェ
ファンルーチェは愛知県日進市に拠点を置くビルダーだが、会社名ではなく、株式会社キャンピングカーランドのキャンピングカーブランド名だ。同社は、キャブコン専門ビルダーで、ハイエースやカムロードベースのキャブコンを多数ラインアップしている。
ウラルエイジアの外観
ウラルには以前ウラルユーロという二人旅仕様のレイアウトバリエーションがあったが、現在ではラインアップから外れており、ウラルエイジアのみとなっている。
ウラルエイジアは、対座ダイネットと後部にハイマウントダブルベッドを持つレイアウトで、ファミリーにも二人旅にも対応する。ただしユーティリティールームは無くしており、その分広々とした室内になっている。
ウラルエイジアのレイアウト
ベッドは後部のハイマウントダブルベッドが1820x1200mmの大きさで、大人2名が就寝できる。また、ダイネットを展開すると、1750x950mmのベッドになり、ここでは子供2名が就寝できる。なおバンクベッドは無く、この部分は収納スペースとなっている。
ギャレーはシンクのみでコンロはカセットコンロを使う度にセットするが、調理面は広く、また跳ね上げ式の調理台が用意されているので、ある程度調理をすることが想定されている。引き出し収納も用意されているので、カトラリーの収納に便利だ。
ウラルエイジアのギャレー
40L横開き式冷蔵庫が標準装備されており、電子レンジはオプションだがすっきり収納できるスペースも用意されている。
収納は大きなオーバーヘッド収納が設置されており、収納力は大きい。また、ハイマウントダブルベッドの下には収納家具があり、ベッド下中央の大きな収納スペースとは区別して収納できる。更に後部の大きなリアゲートは小型の自転車くらいなら積むことができ、他社にない装備だ。
ウラルエイジアのダイネットとバンク部収納
家庭用エアコンがオプション設定されているが、リチウムイオンバッテリーの設定は記述されていない。しかし先日発表されたヨセミテでは90Ahx2個のリチウムイオンバッテリーの設定を予定しているとのことなので、ウラルエイジアにも対応できるかもしれない。
ウラルエイジアは比較的オーソドックスな構成で大きな特徴は無いが、その分使いやすいレイアウトや機能となっている。トイレルームが必要なユーザーにはマイナスポイントとなるが、そうでなければ過不足のない選択肢だ。2段ベッドにしてトイレルームを設置するレイアウトなど、レイアウトバリエーションがあると更に魅力的な選択肢になる。
⇨ 詳しい記事はこちら。
まとめ
アストラーレCC1は、他のハイエースベースのキャブコンに比べ外観的にもコンセプト的にも一線を画している。ハイエースベースのモデルもそれぞれ個性的ではあるが、アストラーレCC1と比較するとどれもオーソドックスに見えてしまう。
しかし、オーソドックスが悪いかというとそうではなく、優れた面も多々ある。またエクステリアこそ大きく異なるが、レイアウトに関しては(ゴミ箱のコンセプトを除いて)アストラーレCC1が特別先進的というわけではない。
それともう一つ大きく異なるのが車幅だ。アストラーレCC1のみ2mを超えている。これでは2x5mの一般的な駐車枠に駐車する場合、気を使う。コンパクトを売りにするなら2m以下であって欲しい。コンパクト性と取り回しの良さを重視するなら、間違いなくベリーが優位だ。
またアストラーレCC1はベース車がDXというのも、エクステリアが美しいだけに気になる。もちろんカラードバンパーやメッキミラーは付いているが、フロントシートは3人掛けだし、オートエアコンも付かない。ハイエースのスーパーGLに相当するプレミアムGXグレードの要求もあるのではないだろうか。
最後に価格を見ると、アストラーレCC1はガソリン2WD/6ATで979万円~。他のモデルは、エアコンと200Ah程度のリチウムイオンバッテリー、FFヒーター、ソーラーシステムを合わせて150万円程度と見ても850万円以下に収まるだろう。
この価格差は、やはり大きい。しかしこの価格差に納得できるだけの魅力をアストラーレCC1のエクステリアやコンセプトに感じるなら、満足度の高い買い物になるだろう。