給電エースはオートワンが製作する、マツダボンゴバンをベース車に使用したコンパクトバンコンキャンピングカー。
同社は、「給電くん」をはじめとする軽バンコンの専門ビルダーだが、給電エースは同社初のコンパクトバンコン。軽キャンパーよりもう少し広いキャンピングカーが欲しいというユーザーの要望に応えたモデル。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
マツダボンゴバンをベース車にしたコンパクトバンコン。同社初の「軽キャンパーより大きな」モデルとなる。2列目にマルチモードシートを配置し、日常用途でも使用できる。
キャンピングカーとしては、ギャレーを備えた8ナンバー仕様で、電子レンジをオプションで装備できる。就寝定員は2名。通勤や買い物など日常用途でも使いながら、休日には1~2名で車中泊を楽しめる。
アピールポイント
・軽バンコンより広い室内ながら、運転しやすいボディサイズ
・5名が前向き乗車でき、日常用途でも使える
・実用的なギャレーを標準装備した8ナンバー仕様
・2列目にマルチモードシートを配置し、対座ダイネットが可能
・オプションでポータブル電子レンジを設置できる
ベース車とエクステリア
給電エースのエクステリア
ベース車はマツダ ボンゴバン。これはダイハツがインドネシアで生産するのグランマックスを日本向けに変更したもので、トヨタ タウンエースも同様。給電エースでは、オプションでタウンエースやダイハツグランマックスに変更できる。ただし、内容は同じだが、135,000円が必要。
2WDと4WDが選択でき、ミッションは5MT/4ATが選択できる。衝突回避支援ブレーキ等の安全機構も標準装備される。
ボディ外側への架装は無く、見た目は通常のバンなので、日常用途にも目立つことなく使用できる。
インテリア
給電エースのインテリア
展示車は写真のような白木の家具と淡いグリーンのシートの組み合わせだったが、インテリアカラーの選択肢については不明。
家具はパネル方式で組み立ててあり、ユーザーが家具を分解して塗装することができると謳われている。
インテリアは特別に高級感があるわけではなく、照明はシンプルなLEDライトが1個標準装備される。2個目はオプションとなっている。
レイアウト
前向きにした2列目シート
2列目にマルチモードシートを配置し、前向きにして3名が座れるので、運転席、助手席と合わせて5名が前向きに乗車できる。2列目シートの両側の乗員が3点式シートベルトを使えるので、4名が3点式シートベルトを着用できる。
3列目は簡易シートで、ここには乗車できないが、2列目シートを後ろ向きにすると対座ダイネットを形成する。またシートを全てフラットにすると2名が就寝できる。
このレイアウトの特徴は、2列目に前向きのシートを設置できることで、日常用途でも3点式シートベルトで4名が安全に乗車できること。
ダイネット
対座ダイネットを形成
2列目シートを後ろ向きにすると、3列目の簡易シートとで対座ダイネットを形成する。5名程度が座れるが、現実的には大人2名と子供2~3名が適している。
3列目をフラットにすると、足を投げ出して寛ぐことも可能だ。2列目シートがリクライニングできるので、車内で寛ぐ場合に適している。
ベッド
大人2名が就寝できるベッドモード
シートを全てフラットにすると、大人2名が就寝できるベッドになる。ベッドサイズのデータは無いが、2列目シートが1200mmと思われるので2000x1200mm程度のベッドサイズと思われる。1200mmは家庭用ではセミダブルベッドの幅に相当する。
ただし、後部(足元)はギャレーキャビネットが飛び出しているので、窮屈感は否めない。無理なく就寝するには1名での使用が適している。
ギャレー
シンクとシャワーフォーセットのギャレーセクション
左サイドにはギャレーキャビネットが配置されており、シンクとシャワーフォーセットが設置されている。他のモデルの中には、8ナンバーを取得するためだけのギャレーで、ベッドの下に隠れてしまうようなものもあるが、給電エースのギャレーは実用的だ。
引き出して車外で使用することもできる
シャワーフォーセットは引き出して車外で使用することもでき、ペットの脚を洗ったりすることもできる。シンクの下には各10Lの給排水タンクが収納されている。
冷蔵庫/電子レンジ
冷蔵庫はオプション設定されていないが、任意のポータブル冷蔵庫を持ち込むことは可能だ。エントランスの横に100Vコンセントがあるので、それを使うことができる。冷蔵庫は3列目シート下に置くと良いだろう。
電子レンジはオプションで用意されている
冷蔵庫のオプション設定は無いが、電子レンジはオプションで用意されている。これはコイズミの「Wave Box」で、100Vで動作する。
多目的ルーム
給電エースにはもちろん多目的ルームは無いが、ポータブルトイレを積んでおくことはできる。3列目シートの下に収納できる高さのものを選ぶと良いだろう。特に子供がいる場合には、助かることが多い。
収納
後部両側には収納キャビネットが設置される
残念ながら、食器などを収納しておく適当な収納スペースは見当たらない。後部右側のキャビネットは薄いが多少の収納スペースが設けられている。扉が無く深いので、収納できるものは限られているが、やはり収納はあった方が良い。
後部のベッドボードを外すと、広い荷室になり、背の高いものも積み込むことができる。
空調
暖房はFFヒーターがオプションで用意されているが、冷房のソリューションは無い。現在ではクーラーが装備できる軽キャンパーやコンパクトバンコンが各社から発表されているので、早急にオプション設定が望まれる。
もちろんその分高価になるが、今やキャンピングカーにクーラーは必需装備と考えた方が良い。
テレビ/ナビ
テレビは特にオプション設定されていない。このクラスのコンパクトバンコンなら、テレビを設置しなくても、タブレットで観る方がスペース効率が良い。タブレットやスマートフォンなら、家のレコーダーで記録した番組も観ることができる。
ナビも特にオプションで用意されていないが、好みのものを設置することができるだろう。
電装系
標準では、55Ahのディープサイクルバッテリー、走行充電、外部100V電源入力、700Wインバーター、40Wソーラーシステムが装備される。
オプションで70Ahか100Ahのディープサイクルバッテリー、1200Wか2000Wの(正弦波?)インバーター、100Wソーラーシステムに変更できる。また、外部電源による充電機能もオプション。
ポータブルクーラーを持ち込んだり電子レンジを装備しなければ、標準の電装系で問題ないだろう。電子レンジを装備する場合は、100Ahのサブバッテリーと2000Wのインバーターの装備をお勧めする。
ポータブルクーラーを持ち込む場合は、専用のポータブル電源を用意すると良いだろう。しかし、やはりビルダーでのオプション設定が望まれる。
さて、給電エースの大きな特徴は、車外への電気の供給だ。これがどの程度現実的なものかを考えてみたい。まず、当たり前だが、イメージとしてアウトランダーPHEVやプリウスPHEVで謳われているような、家庭への電力供給などはできない。
例えばアウトランダーPHEVに積まれているリチウムイオンバッテリーは20KWh(約1600Ah)で、一方給電エースはオプションでも100Ahのディープサイクルバッテリーで、使用できる電力量は60%程度だ。即ち27倍くらいの容量がある。
60Ahの電力量とは、例えば車載用の炊飯器「タケルくん」なら、消費電力を120Wとすると、6時間程度、即ち12回くらい1.5合のご飯が炊ける。インバーターを2000Wのものにすれば、2000Wまでの家電品を使うことができる。
ただし、ディープサイクルバッテリーは大電力を出力するのは苦手で、大電力の出力をつづけているとすぐに劣化してしまう。2年も持たずに交換することになるだろう。やはり電気を「取り出す」ことを重視するなら、リチウムイオンバッテリーが必須だ。
あるいはポータブル電源を積んでおくのも良いだろう。ポータブル電源をプラグインする機能も給電エースにあれば理想的だが、将来のバージョンアップに期待したい。ポータブル電源と合わせてポータブルソーラーシステムを購入しておけば、災害時にも有用だ。
価格(2023年7月現在:千円台切り上げ:税込)
マツダ ボンゴバンDX(上位グレード)ベース2WD/4ATの価格は380万円~。その他のグレードの価格は下の比較表をご覧ください。
付けておきたい必需オプションは、外部電源による充電機能(チャージャー:52,800円)、FFヒーター(220,000円)が挙げられる。また、過放電防止機能付きバッテリー残量計(27,500円)もオプション。過放電防止機能などの安全機能は、是非とも標準装備にしていただきたい。
電子レンジ(44,000円)を装備するなら、100Aサブバッテリー(41,800円)、2000Wインバーター(71,500)も選択しておきたい。また、予算に余裕があれば100Wソーラーシステムへの変更(88,000円)もお勧めする。
他モデル
タウンエース(あるいはその姉妹車)をベース車にし、給電エースと似たレイアウトを持つモデルは、AtoZのアンナ model L(394万円~)、パパビルドのファヴォライトボックス スクエア(356万円~)、カトーモーターのメリル(373万円~)などが挙げられる。
このうち、クーラーが搭載できるモデルは、ファヴォライトボックススクエアのみだ。なお、マルチモードシートを持たない二人旅仕様ならstage21のリゾートデュオ ルクシオ プロ(419万円~:タウンエースGL)がある。
まとめ
給電エースは日常使用とキャンピング使用どちらにも対応できる汎用性の高いモデルだ。それだけに、同様のレイアウトを持つモデルも多く存在する。その中で突出した何かがあるかと言うと、残念ながらそのようなアドバンテージは見当たらない。
その意味では、ファヴォライトボックススクエアはクーラーとリチウムイオンバッテリーが選択できるということで、一歩先を行っている。もちろんその分高価にはなるが、高性能な小型クーラーの開発とともし、今後キャンピングカーにクーラーは必需品になるだろう。
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