アウトランダーPHEV E:POPは西尾張三菱自動車販売が製作する、新型アウトランダーPHEVをベース車に、ポップアップルーフを架装した、SUVベースのキャンピングカー。
同社は三菱の販売店だが、このアウトランダーPHEV E:POPのほか、デリカD:5をベースにしたデリカD:5 D:POPも製作・販売している。架装は主にポップアップルーフの追加と、ベッドキットの搭載となっている。
同社はアウトランダーベースのポップアップ車を前モデルでも製作しており、今回展示されたのは新型アウトランダーベースとなる。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
新型アウトランダーPHEV(3代目)をベース車にしたSUVベースのキャンピングカー。ポップアップルーフを架装するが、これは西尾張三菱自動車販売のオリジナルモデルで、全国の三菱自動車の販売店で販売しているわけではない。
ベッドキットはオプション(E:BEDⅡ:147,400円))として用意されており、新型アウトランダーの後部に完全にフィットし、フラットなベッドを提供する。
アウトランダーPHEVの特徴は、大容量のリチウムイオンバッテリーでモーターを駆動するが、EVと異なりエンジンも搭載し、バッテリー残量が少なくなるとエンジンで駆動したり充電したりできる。
この大容量のバッテリーはクルマの駆動だけでなく、電気としても取り出せるため、停電時に家庭の家電品を約12日分給電できるとしている(ガソリン満タン時)。これはもちろんキャンピングカーとして使用する場合も理想的な給電システムになる。
アピールポイント
・大人2名が就寝できるポップアップルーフを装備
・ベッドキット(E:BEDⅡ:OP)で更に大人2名が就寝できる
・大容量のバッテリーで車外に100Vを給電可能
・エンジンを停止してクーラーやヒーターを使用できる
・乗用車ベースなので、商用車のような武骨さが無い
ベース車とエクステリア
アウトランダーPHEV E:POPのエクステリア
ベース車は三菱アウトランダーPHEVで、全グレード。これに西尾張三菱自動車販売が独自にポップアップルーフを架装している。ポップアップルーフは黒く塗装されており、存在感がある。
ポップアップルーフの前に付けられたライト
閉じてしまえばノーマルと変わらない、というわけではないので、多少注目があるかもしれない。特にポップアップルーフの前方に付けられたライトは目にとまる。なお、これは停泊時に(キャンプ場所などを)照らすためのものとのこと。
インテリア
Pグレードのインテリア
上のビデオの展示車はGグレードのインテリアだが、最上位のPグレードでは、上の写真のようなインテリアも選択できる。
乗用車ベースのキャンピングカーはインテリアや運転席周りの質感やデザイン性が高い。商用車ベースが一般的なキャンピングカーの「商用車臭さ」で二の足を踏んでいるユーザーは、このような乗用車ベースのモデルを選択する手もある。
ポップアップルーフのテント部はシェード、網戸(メッシュ)、フルオープンが選択でき、虫を通さないで通気性を確保したり、フルオープンにして写真を撮ったりできる。テントの素材はネオプレーンというもので、ウェットスーツ等に採用されており、保温性や撥水性、段直性を持つ。
レイアウト
標準では、通常のアウトランダーPHEVにポップアップルーフが架装され、ルーフ部がベッドになる。2列目シートを倒してラゲッジスペースを最大にすると2040x1070mmの荷室になる。
ここは完全なフラットではないが、エアマットなどを敷くと就寝できないことは無い。しかしよりフラットなベッドを実現するために「E:BEDⅡ」というベッドキットがオプションで用意されている。
乗車人数はアウトランダーPHEVの仕様として、5名が前向きに乗車できる。なお、GとBLACK Editionの各グレードには7名乗車も選択できる。また最上級のPグレードでは7名乗車のみとなっている。
就寝人数は、ベッドキット部で2名、ルーフベッドで2名で、計4名が就寝できる。
ダイネット
アウトランダーPHEV E:POPのシートはオリジナルのままなので、対座ダイネットなどの機能は無く、他の通常の乗用車と変わらない。ただし、ポップアップルーフを上げてベッド状態にし、ここで軽食をとったり寛ぐことは可能だ。
ベッド
E:BEDⅡ(OP)
先述のように、オプションでE:BEDⅡが用意されており、これを設置するとフラットなベッドができる。サイズの記述は無いが、オーバーランダーPHEVの荷室が最大2040x1070mm(後部は1300mm)なので、その程度のサイズは確保されていると思われる。
2名が就寝できるルーフベッド
またルーフベッドのサイズも公表されていないが、先代のものは1800x1000mmだったので、やはりその程度のサイズは期待できるだろう。
下段ベッド、ルーフベッドとも幅は1000mm程度で、これは家庭用ではシングルベッドの幅(970mm)より多少広い程度。従って各ベッドで大人2名が就寝する場合は窮屈感が否めない。
現実的には大人2名、子供2名なら何とか就寝でき、ファミリーでの車中泊に対応できるだろう。
ギャレー
アウトランダーPHEV E:POPにはギャレーの用意はない。ホワイトハウスのベルランゴ ソレイユのようにギャレーや、バンレボのMRのように電子レンジまで搭載できるものもあるが、アウトランダーPHEV E:POPではそこまでは求めないユーザーを対象にしている。
冷蔵庫/電子レンジ
アウトランダーPHEV E:POPには冷蔵庫や電子レンジの設定は無いが、ポータブル冷蔵庫を積んでおくことはできる。もとより電気の心配がないPHEVなので、必要であれば電子レンジを積んでおいて使用することもできる。
更には、ホットプレートを積んでおいてキャンプ場で焼き肉をするということも可能だ。リチウムイオンバッテリーを搭載するキャンピングカーでもできないことができるのはPHEVの大きなアドバンテージと言える。
収納
アウトランダーPHEVの後部収納
アウトランダーPHEV自体の収納があり、5名乗車時でも後部に荷物用のスペースがある。また、2列目シートを倒すと、大きなカーゴルームになる。1人や2人で使用する場合はルーフベッドで就寝すると、荷物は積んだままにできる。
E:BEDⅡ設置時の収納スペース
ベッドキットを搭載した場合は、ベッドボードの下にわずかだが収納スペースができる。あまり使い勝手は良くないが、多少の収納は可能だ。
フロントシートとの間収納スペース
また、2列目シートを倒した場合でも、フロントシートとの間の空間は収納スペースとして使用できる。
空調
停泊時にもクルマのヒーターやクーラーが使用できる
停泊時(エンジン停止時)にもクルマのヒーターやクーラーが使用できる(Mグレードはオプションで対応)。バッテリーだけで使用できる時間は公表されていないが、充電量が減った場合等の要件で、自動的にエンジンが始動する。
車中泊をする場合は非常に嬉しい機能だ。ただし、メーカーに問い合わせると、「様々な条件」でクルマが判断し自動的にエンジンをかけるとのこと。「様々な条件」とはバッテリーの残量だけでなく、外気温等の影響もある。即ち、就寝中に突然エンジンが回りだす可能性がある。実際どの程度の頻度なのかは、メーカーは明言していない。
また、エンジンが始動しないでエアコンが使えるなら、ペットを車内に残して買い物ができるのではないかとういう期待を持ってしまう。これに関しては、クルマの電源が入っている状態(READYの状態)ではそもそもロックができないが、キーで施錠すると可能とのこと。
ただし、これも自動的にエンジンがかかってしまう可能性があるし、キーで施錠するとセキュリティが作動しないため、お勧めしないそうだ。
テレビ/ナビ
ナビは専用のものがアウトランダーPHEVに標準装備されている。スマートフォンとの連携も可能で、航続距離や充電スポットの情報も得られる。テレビはナビの画面で観ることができるが、より大きな画面のものはオプション設定されていない。
電装系
アウトランダーPHEVにはサブバッテリーの代わりに、駆動用の大容量リチウムイオンバッテリーが搭載されている。容量は20KWhで、キャンピングカーによく使用される200Ahのリチウムイオンバッテリーの約8倍に相当する。
バッテリー残量が低下すると自動的にエンジンが始動し、発電する。EVと違い、PHEVでは発電機(エンジン)も積んでいるので、安心して電気を使える。PHEVはキャンピングカーとして使うには理想的な電装システムだ。
価格(2022年11月現在:千円台切り上げ:税込)
アウトランダーPHEV E:POPは最も安価なMグレードで575万円~、Gグレード5人乗車モデルで608万円~、最上級のPグレード(7人乗り)で661万円~となっている。
アウトランダーPHEVのMグレードは463万円~なので、ポップアップルーフは112万円ということになる。決して安価な装備ではないが、ポップアップルーフがあればファミリーで車中泊が可能になるなど、使用範囲が大きく広がる。
またポップアップルーフがあれば、2人、あるいは一人で使用する場合は、カーゴスペースに大きな荷物を積んだまま、ルーフベッドで就寝できる。
他モデル
ミニバンやSUVの、いわゆる乗用車ベースのキャンピングカーは、多く発売されている。特にホワイトハウスはホンダステップワゴンを使用したDeck One(327万円~)、フリードプラスを使用したFree Style(293万円~)、トヨタ ノア、ヴォクシーを使用したDAYs(322万円~)、シトロエンベルランゴを使用したBerlingo Camper(412万円~)など多くのラインアップを揃える。
またケイワークスのD:5クルーズ(598万円~)、日産ピーズフィールドクラフトのセレナPS-V(327万円~)、バンレボのMR(453万円~)などがある。しかし、オーバーランダーPHEV E:POPのようなEVモードを持つモデルは無い。(かーいんてりあ高橋はプリウスリッラクスキャビンをラインアップしていたが、現在は販売を休止している)
まとめ
ミニバンやSUVを車中泊仕様にしたモデルは、商用車系ではなく、一般ユーザー向けのモデルを望むユーザーに一定の需要がある。ファミリーカーで商用車は避けたいといった場合や、本格的なキャンプやクルマ旅までは考えていないが、ちょっとした車中泊に使いたいというユーザーも多いだろう。
オーバーランダーPHEV E:POPはポップアップルーフを架装したことにより、ファミリーでの車中泊を可能にしたり、一人使用や二人使用では荷室に荷物を積んでもルーフベッドで就寝できる。
更にPHEVは、キャンピングカーで最も大きな課題のひとつの電気の心配がなく、キャンピングカーとして理想的なシステムと言える。本格的なキャンピングカーはいらないが、乗用車ベースで日常使いながら、たまに車中泊やキャンプをしたいといったユーザーに適したモデルだ。
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