セレナP-SVは、日産セレナをベースにポップアップルーフを架装した、日産ピーズフィールドクラフトのミニバンキャンパー。
同社は、NV200やNV350キャラバンなどの日産車をベースにバンコンモデルを製作しているが、セレナP-SVは同社のラインアップで唯一のミニバンベースモデル。
コンセプト
セレナにポップアップルーフを架装することにより、日常は普通のミニバンとして、休日はファミリーで車中泊できるキャンピングカーとして使用できる。キャンピングカーが欲しいけれど、商用車ベースには抵抗があるユーザーをターゲットにしている。
また、通常のミニバンと運転感覚が同じなため、大きなキャンピングカーのイメージが強いNV350などの運転に不安があるユーザーも安心して運転できる。
エクステリア

セレナP-SVのエクステリア
ポップアップルーフを閉じると、外観はほとんどノーマルのセレナと変わらない。従って、キャンピングカーとして目立つこともなく、また運転も普通のミニバンと変わらない。
ポップアップルーフは、ダンパーがあるので、少し押し上げるとダンパーがアシストして、女性でも簡単にルーフを持ち上げることができる。
ポップアップルーフはバグネット状態にしておくと、風が通り虫が入らないので快適に過ごせるが、フルオープンにもできる。ルーフの上は見通しも良く、爽快感が得られる。

フルオープンにできるポップアップルーフ(写真:日産ピーズフィールドクラフ)
また、夜間はシェード状態にしておくとプライバシーが保たれるだけでなく、防寒にもなる。ただ、断熱効果が大きいわけではないので、冬場は寒い。これはテントで寝ているのと同じだ。防寒機能のある寝袋が必要だろう。
更にレインカバーも用意されていて、雨天時はこれを付けておくと耐水効果が得られる。
なお、ベース車はe-POWERグレードを含め、全てのグレードが選択できる。
インテリア

セレナP-SVのインテリア
ベッド状態でない場合は、通常のセレナと同じく8名乗車でき、インテリアも同じだ。使い勝手も変わることはない。
ベッド状態へは、4枚のベッドマットを敷くが、このマットはオプション。ベッドマットの色柄の選択肢については情報が無い。
レイアウト
セレナとしてのレイアウトは様々なモードがあり、こちらを参照いただきたいが、キャンピングカーとしてのレイアウトはシンプル。2列目シートを畳み、後部シートを後ろに倒すと、セレナとしてのフルフラットモードになる。
ただし、このままでは凸凹があるので、オプションのベッドマットとスペーサーを使用すると、この凸凹を補正して完全なフラットベッドになる。
ダイネット

ダイネットスペース兼フロアベッド
いわゆるキャンピングカーのような対座ダイネットやテーブルを使えるダイネットは無い。車内で寛ぐ場合は、オプションのベッドマットを使い、フラットベッドモードにして、折り畳みのテーブルを使うと、ちゃぶ台スタイルのダイネットになる。
ベッド

ルーフベッド
セレナ自体の「フルフラット」モードでも就寝できないことはないが、やはり凸凹があり、寝心地は良くない。車中泊をする場合は、オプションのベッドマットは必需品だ。ここでは2名が就寝できる。(ベッドサイズ不明)
また、ポップアップルーフを上げた場合のルーフベッドの大きさは2,250x1,100mmで、ここでも2名が就寝できる。
ギャレー
セレナP-SVにギャレーは用意されていない。
冷蔵庫/電子レンジ
冷蔵庫と電子レンジもオプションで用意されていない。冷蔵庫はポータブル冷蔵庫を持ち込むことになる。冷蔵庫用の12V電源コンセントは、オプションのサブバッテリーを搭載すると3列目左側シート横に付けられる。
収納

ヘッド下の収納スペース
3列目シートを跳ね上げると、大きなカーゴスペースが出現する。また自転車も積むことができるので、2名ならルーフベッドに就寝すれば、自転車を積んだクルマ旅ができる。
空調

FFヒーターとサブバッテリー
暖房はFFヒーターがオプション設定されている。FFヒーターを装備する場合はサブバッテリーシステムも同時に装備する必要がある。冷房のソリューションは用意されていない。
なおe-POWER車には1800Whのリチウムイオンバッテリーが搭載されている。これは、キャンピングカーにサブバッテリーとして積まれる程度の容量があるが、これでエアコンを動作させ続けるのは難しい。
プリウスPHVやアウトランダーのように大容量のバッテリーがあるなら別だが、e-POWERではすぐにエンジンがかかってしまう。即ち、一般車でエンジンをかけて冷房を使っているのとほとんど同じで、周囲に迷惑になるし、環境にも良くないので、これはやってはいけない。
最も現実的な冷房方法は、ポータブルリチウムイオンバッテリーを持ち込んで、スポットクーラーなどで冷房することが考えられる。窓を開けてバグネットを使うという方法もあるが、防犯上お勧めしない。
テレビ/ナビ
セレナのオプションとして、ナビや後席用11インチモニターが用意されている。
電装系
105Ahのディープサイクルサブバッテリーが1個と走行充電システムがオプションで用意されている。オプションでもう1個追加も可能。ただ、電子レンジなどの大電力が必要な装備が無いので、1個で十分だろう。
また、外部100V電源入力と、これによるサブバッテリーの充電機能もオプションで用意されている。走行充電だけでは満充電にするのが難しいので、長期旅をする場合は装備しておくことをお勧めする。
なお、やはりオプションで140Wのソーラーシステムを搭載できる。サブバッテリーとソーラーシステムは一般車とe-POWER車で選択肢がある。
価格(税別)
最低グレードは327万円~(税別)。ハイウェイスターVは382万円~(同)、e-POWER ハイウェイスターVは433万円~(同)となっている。なおe-POWER車に4WDは存在しない。
付けておきたいオプションは、サブバッテリーと走行充電システム(135,300円:税込み)、FFヒーター(187,000円:同)が考えられる。
他モデル
ミニバンベースのキャンピングカーとしては、ホワイトハウスの、フリードをベース車にしたFree Styleや、ステップワゴンをベース車にしたDeckOne、ヴォクシー/ノア/エスクァイアをベース車にしたDAYSが挙げられる。
西尾張三菱自動車販売のアウトランダーPHEV POPや、デリカD:5 D:POP、ケイワークスのD:5クルーズもある。ただしこれらは価格的にセレナP-SVよりも相当高価で性格も異なる。
セレナP-SVと比較されるのはDeckOne(321万円~)、Free Style(286万円~)、DAYS(307万円~)だろう。この価格は全てポップアップルーフが付いただけの価格でセレナP-SVの327万円~に相当する。
これら3車はいずれも装備のグレードがあり、最上位の「JOY」ではギャレーまで装備できる。
まとめ
ミニバンベースのキャンピングカーは、商用車ベースに比べると、スペース的に不利で、装備やキャンピングカーとしての快適性は、あまり期待できない。従って、多くを求めず、「商用車ではなくファミリーで車中泊できる」というところまでの目的にしておくと良いだろう。
それ以上の快適性を求めるなら、NV200バネットやハイエース、NV350キャラバンベースがお勧めだ。
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