ミニチュアクルーズCozyは岡モータースが製作する、スズキ エブリイをベース車にした軽バンコンキャンピングカー。ちなみにCozyとは「居心地の良い部屋」という意味合いがある。
同社は輸入モーターホームから国産キャンピングカーまで販売しているが、同社のオリジナルモデルも製作している。そのうち軽バンコンシリーズが「ミニチュアクルーズ」シリーズ。
ミニチュアクルーズシリーズは高機能と洗練されたインテリアで知られており、軽バンコンではハイエンドの完成度を持つ。
シリーズには、オリジナルの「ミニチュアクルーズ」の他、そのインテリアバリエーションの「ミニチュアクルーズ オリーブ」と「ミニチュアクルーズ デニム」、和風インテリアの「ミニチュアクルーズ遍路」、電装系を強化した「ミニチュアクルーズSV」がある。
この中にあって「ミニチュアクルーズCozy」は充実装備とラグジュアリーなインテリアを持つモデル。特に今回モデルチェンジしたレイアウトは3名乗車に割り切り自由な発想で企画されている。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
コンセプト
スズキ エブリイバンをベース車にした軽バンコンで、洗練されたインテリアと充実した装備を持ち、クルマ旅にも対応できる。
今回全面改良されたレイアウトでは、乗車人数を3名に割り切り、軽バンコンでは珍しいシートスタイルのダイネットを実現。また大きなキャビネットを配置し、ギャレー、冷蔵庫、電子レンジなどを標準装備した。
更にリチウムイオンバッテリーをオプション設定し、電装系の強化も図っている。上段ベッド(OP)を設置でき、2名が就寝できるが、一人使用ならさらに快適なレイアウトになっている。
アピールポイント
・3名乗車に割り切った新発想のレイアウト
・洗練されたインテリア
・シートスタイルのダイネット
・対座と横座りロングシートダイネットを自由に変更可能
・上段ベッドを設置して計2名が就寝可能(OP)
・ポータブル冷蔵庫を標準装備
・ポータブル冷蔵庫を車外にスライドして使用可能
・電子レンジと1500Wインバーターを標準装備
・実用的なギャレーとシャワーフォーセットを標準装備
・リチウムイオンバッテリーをオプション設定
エクステリア
ミニチュアクルーズCozyのエクステリア
ベース車はスズキ エブリイバン、JOINもしくはJOINターボ。他のミニチュアクルーズはPCなどの下位グレードが選択できるが、新型Cozyでは上位2グレードのみとなった。スズキ
セーフティ サポートが標準装備であったり、インテリアのグレードから考えてもそれが相応しいという判断だろう。
インテリア
洗練されたインテリア
ミニチュアクルーズのインテリアは、Cozyに限らずトップクラスだ。軽キャンパーは価格にシビアなユーザー層のカテゴリーという考えではなく、取り回しの良さなど軽キャンパーの優位点を理解し、かつ高品質なものを望むユーザー層をターゲットにしているように見える。
家具やシートの作りや質感は上級バンコンにも相当するもので、安っぽさは微塵もない。また間接照明とダウンライトを使った照明の演出も高級感がある。
レイアウト
しかしミニチュアクルーズCozyで特筆すべきは、軽バンコンでは全く新しい考え方のレイアウトだろう。その一つがシートスタイルのダイネットだ。軽バンコンでは2列目シートを畳んだ上にベッドマットを敷いて、ベッド兼ちゃぶ台スタイルのダイネットスタイルのモデルがほとんど。
もちろんこれはコストを抑えることができる方法だし、多くの軽バンコンユーザーも、特に大きな不満は無かったのではないだろうか。実際ミニチュアクルーズの他のモデルでもちゃぶ台スタイルがほとんどだ。
しかし、Cozyではあえてこの「常識」を翻し、シートスタイルの対座ダイネットを打ち出した。しかも、対座スタイルだけではなく、シートアレンジで横座りベンチシートスタイルにすることも可能だ。
もちろんちゃぶ台スタイルも可能で、マルチモードシートと違い簡単にシートアレンジができるのが大きな特徴だ。
もう一つの特徴は、右サイドに大きなキャビネットを配置したこと。これにより、無理なくシンク、ポータブル冷蔵庫、電子レンジが収納できた。即ち、長期のクルマ旅にも対応できる装備が可能となった。
しかし、このままでは一人用のレイアウトになってしまう。そこで、オプションだがキャビネットの上をベッドとして使えるようにし、二人が就寝できるようにしている。ただしこのベッドは簡易的でもあることから、一人で使用するのが最適のような気がする。
ダイネット
軽バンコンながら対座できるシートスタイルダイネット
先述のように、ダイネットはシートスタイルで対座ができる。2名か1名で使用することがほとんどと思われるので、広さ的には全く問題ない。ただし対座スタイルの場合はテーブルが邪魔になって前後の移動が難しい。
その場合は、シートアレンジでベンチシートスタイルにすることも可能だ。並んで座ることになるが、キャビネットが大きなテーブルになるので、食事や仕事に広く使える。
ベッド
シートをフラットにした下段ベッド
シートを全てフラットにすると、1820x850mmのベッドになる。これは家庭用ではシングルベッドの幅(970mm)に満たないが、キャンピングカーのベッドとしては十分一人用のベッドとして機能する。
助手席のシートバックを倒せば更に長さが拡張できる。また、ミニチュアクルーズは全車ベッドマットが60mmの厚さがあり、寝心地にも配慮されている。
キャビネット上に設置した上段ベッド(OP)
もう一人分のベッドはキャビネット上に設置する。大きさは1820x650mm。ただし、ここに敷くマットの大きさは1770x560mmでマットだけで言えば1800に達していない。
また、マットはエアマットで使用するためには空気を注入する必要がある。使用しない場合は空気を抜くとコンパクトに収納できるが、使用する前には一仕事する必要がある。なお、展示会では上段ベッドはオプション(99,000円)となっていた。
ギャレー
実用的なシンクがあるギャレー
ギャレーはキャビネットにビルトインされているが、実用的な大きさのシンクとシャワーフォーセットが採用されている。また、シャワーフォーセットは引き出して車外で使用することもできる。
シンクの下の各20Lの給排水タンク
シンクの下には各20Lの給排水タンクが収納されており、車体右側のスライドドアを開けると車外から直接出し入れできる。軽バンコンで20Lのタンクは珍しいが、10Lでも良いような気がする。10Lなら持ち運びも楽だし、空いたスペースは収納に使える。
冷蔵庫/電子レンジ
18Lポータブル冷蔵庫が標準装備される
18Lポータブル冷蔵庫が標準装備される。この冷蔵庫は冷蔵はもちろんだが冷凍もできる。ただし、冷蔵と冷凍を同時にすることはできない。
冷蔵庫を車外に引き出すことができる
また、リアゲートを開けて冷蔵庫を車外に引き出すことができる。クルマの横でキャンプをしている場合などでは、すぐに冷たい飲み物を取り出すことができる。
電子レンジも標準装備される
更に家庭用100V仕様の電子レンジも標準装備される。1500Wインバーターも標準装備なので、外部電源が取れない場合でもサブバッテリーで駆動することができる。
収納
右側上部の収納棚
さすがに軽バンコンなので収納は限られる。しかし右側上部には収納棚が設置されており、タオルなど走行中に落下しても良いものを収納できるが、やはり扉付きの収納が欲しいところだ。
間接照明付きのスパイスラック
次に右側後部に間接照明付きのスパイスラックが2段付けられている。もちろん収納は可能だが、何かをディスプレイしたくなるような空間だ。軽バンコンの狭い室内ながら、このような「無駄」な空間は悪くない。ただし、扉を付けて収納にしたいという要求もありそうではある。
ベッドマットの下の収納スペース
その他、2列目シートの下にも多少の空間があり、荷物を置ける。また、後部のベッドマットの下も収納スペースになる。
冷蔵庫のスライド機構の下の引き出し収納
更に、リアゲートを開けた場合のみ使えるのだが、冷蔵庫のスライド機構の下にも引き出し収納が用意されている。
空調
暖房はFFヒーターがオプション設定されているが、冷房のソリューションは無い。もっとも軽バンコンでクーラーが装備できるモデルはほとんどないのも事実。
折角の洗練された室内だが、夏場はやはり暑い。軽バンコンにクーラーが普及するのはまだ待たなければならない。なお、ベンチレーターはオプションで設置できる。
テレビ/ナビ
17.3型のテレビがオプション設定されている。正確にはこれはテレビではなくモニターで、チューナーは付いていない。ナビの映像を後席で観ることができる。
このモニターの優れているところは、位置が固定されていないこと。位置が固定されていて角度が変えられるモニターは一般的だが、Cozyのモニターは取り外してスパイスラックに引っ掛けたりテーブルに置いたりと、自由に位置を変更できる。
電装系
リチウムイオンバッテリー(OP)を搭載した電装系
標準では85Ahのディープサイクルサブバッテリーが2個(=170Ah)装備される。軽バンコンとしては大きな容量で、エアコンのような連続して大容量の電力を必要とする機器が無いのでこれで十分だろう。
しかしCozyには更にリチウムイオンバッテリーがオプションで設定されている。容量は記載されていないが、価格(561,000円)から考えると200Ah以上はあると思われる。
価格を見ると選択を躊躇するが、Cozyの場合は大電力を必要とする家電製品は電子レンジだけだし、連続して使うものでもないので、リチウムイオンバッテリーは必需ではないだろう。
1500W正弦波インバーターも標準装備されるので、車内で1500Wまでの100V家電品を使うことができる。もちろん電子レンジもサブバッテリーで使用できる。
また、これも容量が不明だが、オプションでソーラーシステムを装備することができる。自宅の駐車場で外部電源で充電できない場合などには付けておくと便利だ。
価格(2022年3月現在:千円台切り上げ:税込)
JOIN 2WD/5MTの328万円から、JOINターボ 4WD/4ATの363万円まで選択できる。グレードはJOINとJOINターボのみ。多く選択されるであろうJOIN
2WD/5AGSは338万円~だ。
付けておきたいオプションは、FFヒーター(価格不明)、外部電源入力と充電機能(同)が挙げられる。二人で使用する場合は、上段ベッドオプション(99,000円)が必要だ。(ナビ関連は除く)
予算があれば、ソーラーシステムを付けておきたい。自然に充電できるので、サブバッテリーにも好ましい。
他モデル
軽バンコンでミニチュアクルーズCozyと同じレイアウトを持つモデルは存在しない。なお、シンク、冷蔵庫、電子レンジを持ち長期旅にも対応できるモデルなら、カーショップスリーセブンのMocⅡ(209万円:内装架装のみの価格)、カスタムセレクトのロードセレクトコンパクト(248万円~:2WD/5AGS)、ホワイトハウスのN-VAN Compo Cabin(318万円~)などがある。
なお、上のいずれのモデルも電子レンジは家庭用ではなく、ポータブルのWaveBoxが設定されている。
まとめ
ミニチュアクルーズCozyは軽バンコンでは極めて完成度が高く、また装備も充実し、そして洗練されたインテリアを併せ持つモデルだ。多くの軽バンコンはその中の一つか二つの要素は持ち合わせるが、すべてが揃ったモデルは非常に少ない。
多少趣は異なるが、一人で使用する前提であれば好敵手はリンエイプロダクトの「マイクロバカンチェスひとり旅」だろう。これは一人旅に割り切って企画されたもので、割り切ったおかげで広い室内と充実した装備を実現している。
現在、リンエイプロダクトのサイトには価格が表示されないが、2021年10月の展示会では車両本体価格は230万円(PAグレード)となっていた。価格的には安価な選択肢だ。
また、この価格ならタウンエースベースのバンコンも視野に入ってくる。その一つがstage21の「リゾートデュオ ルクシオ」で価格は345万円~。ギャレーはCozyよりも小さいが、ポータブル冷蔵庫と家庭用電子レンジが標準装備でクーラーの「One Cool 21」もオプション設定されている。
確かにミニチュアクルーズCozyは高価だが、それだけの価値があるモデルと言える。「軽バンコン=安価な選択肢」と考える場合は選択の対象外だ。このモデルは軽バンコンでもハイクオリティを求めるユーザーの選択肢だ。
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