マイクロバカンチェスひとり旅はリンエイプロダクトが製作する、エブリイバンをベース車にした軽バンコンキャンピングカー。
同社は、ハイエース各種サイズのバンコンを中心に、非常に多くのレイアウトをラインアップしている。同社のモデルには全て「バカンチェス」のブランドが与えられており、軽バンコンにはマイクロバカンチェスと名付けられている。
マイクロバカンチェスひとり旅は、特に一人で使用するユーザーをターゲットに開発されたレイアウトを持つ。ちなみに、二人旅を想定した「マイクロバカンチェス二人旅」も用意されている。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
コンセプト
スズキエブリイバンをベース車にした軽バンコン。特にひとりで使用するユーザーに向けたレイアウトに特化し、冷蔵庫や電子レンジを標準装備する。
一人用のベッドとしたため、空いた空間に本格的な装備や収納を採用。軽キャンパーながらクルマ旅にも対応できる装備を持つ。
またスポットクーラーをオプションで設置可能。夏でも快適に車中泊をすることができる。
アピールポイント
・一人使用に割り切った室内のため装備が充実
・冷蔵庫や電子レンジ、テレビを標準装備
・2000Wインバーターを標準装備
・100Wソーラーシステムを標準装備
・スポットクーラーを設置可能
・ベンチシートにできるダイネット
エクステリア
マイクロバカンチェスひとり旅のエクステリア
ベース車はスズキ エブリイバン、あるいはそのOEMのマツダ スクラムや日産NV100クリッパーも選択できる。また、ダイハツハイゼットやそのOEMバージョンのトヨタ ピクシスでも製作できる。
ボディ外側への架装は無く、外観はノーマルと同じなので、日常使用にも違和感なく使える。
インテリア
シンプルなインテリア
インテリアは特に目立ったものは無く、ごく普通の仕上がりとなっている。家具色やベッドマットの生地は選択できると思われるが、詳細はビルダーに確認いただきたい。
照明は1個のメイン照明がルーフ中央に付き、間接照明にもなっている。またテーブルは1本の湾曲した支柱で支持され、回転させることにより一定の範囲で自由にポジショニングできる。
レイアウト
広いエントランス
車内に入ると、まずエントランスのスペースが広いことに気付く。通常ならベッド幅がいっぱいに取ってあり、エントランスはステップのみだが、マイクロバカンチェスひとり旅では家具の奥行き分と、さらにベッドマットの一部が取り外せるようになっている。
レイアウトは右サイドにベッド、左側に大きく家具のスペースを取っている。これはもちろん一人使用に割り切ったからできることで、それゆえベッドは一人しか就寝できない。
左側の収納家具には冷蔵庫と電子レンジが収納され、また跳ね上げ式の調理台も用意されている。ここにカセットガスコンロを乗せれば簡単な調理も可能だ。(ただし換気には注意する必要がある)
なお、「ひとり旅」とネーミングされているがギャレーが無く、食器や手を洗うことができない。ミニギャレー程度はオプションでも良いので選択肢が欲しかったところだ。
ダイネット
ベンチシートスタイルにもなるダイネット
ダイネットは一見よくある軽バンコンのように、ベッドとダイネットを兼用しているように見えるが、ベンチシートスタイルのダイネットにすることもできる。軽バンコンとしては珍しい特徴で、特筆できる。
ただし、このため2列目シートは撤去されており、乗車人数は2名となっている。多くの軽バンコンのように、2列目シートを立てれば4名乗車できるということではない。
位置を変更できるテーブル
1本の湾曲した支柱が付いたテーブルが、助手席の上から運転席の後部まで回転して位置を変更できる。ダイネット時は食事や仕事用のテーブルとして、就寝時は荷物を乗せておく棚として使用できる優れモノだ。
ベッド
家庭用のシングルベッドに匹敵するベッド 幅
ベッドは1900x950mmの大きさ。家庭用ではシングルベッドに相当する。キャンピングカー要件では一人あたり500mm以上の幅を規定されているので、十分広いベッドと言える。
ギャレー
跳ね上げ式調理台
マイクロバカンチェスひとり旅にはギャレーが付いていない。ギャレーは不要と言うユーザーには全く問題ないことだが、車内で食事をしたり、ちょっとしたときに手を洗いたいというユーザーには、他の装備が充実しているだけに残念だ。
ギャレーがあれば、道の駅やサービスエリアのトイレに行って、肩身の狭い思いをして洗面や歯磨きをする必要はない。車中泊やクルマ旅では、車内で水が使えると便利だ
なお、跳ね上げ式の調理台が用意されており、ポータブルカセットガスコンロ(OP)を置いてちょっとした調理ができる。
冷蔵庫/電子レンジ
40L上開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は上開き式40Lが標準装備される。冷凍もできるのだが、冷凍と冷蔵は同時にできないので、ビールを冷やしながら、水割り用の氷を作ることができない。
もっとも、軽バンコンながら据え置き型の冷蔵庫が標準装備されていること自体特筆すべきことなので、このクルマに横開き式冷蔵庫はオーバースペックだろう。横開き式冷蔵庫が欲しい場合は、軽キャブコンか、タウンエースなどのライトキャブコンにアップグレードする必要がある。
電子レンジも標準装備
電子レンジは家庭用の100V仕様のものが標準装備される。これも特筆すべきことで、ポータブル電子レンジ(WaveBoxなど)を搭載できる軽バンコンは多いが、家庭用を搭載できる(しかも標準装備)モデルは少ない。
多目的ルーム
マイクロバカンチェスひとり旅に多目的ルームはもちろん無い。またポータブルトイレを積んでおくスペースも無いので、トイレは車外に行く必要がある。もっとも一人旅仕様なので、自分さえ納得すれば問題ない。
収納
電子レンジ上の収納
左サイドのキャビネット、電子レンジの上部に比較的大きな扉付きの収納スペースが用意されている。食器などを収納しておくことができる。
後部ベッドマット下の収納
また後部ベッドマット下にも収納スペースが設けられている。深さが十分あり、実用的な収納だ。軽バンコンでは、この部分は浅い収納が多いが、マイクロバカンチェスひとり旅では収納の重要性が十分に配慮されている。
前部右側のベッドマット下収納
更に、前部右側もベッドマットは2重構造になっており、ベッドマットを開けると浅い収納があり、その下にはサブバッテリーが収納されている。
ペットボトルホルダー
エントランスの横には、同社のモデルお約束のペットボトルホルダーが備えられている。2Lのペットボトルは、コーヒーを入れたり湯を沸かしたりする場合など、手を伸ばす頻度が高い。ここに収納されているとすぐに手が届き、大変便利だ。
空調
スポットクーラーがオプション設定されている
マイクロバカンチェスひとり旅の最も特徴的な装備のひとつが、このスポットクーラーだ。展示車では参考となっていたので取り付け方法は変更されるかもしれないが、軽バンコンで冷房を考慮した数少ないモデルとなる。
使われているスポットクーラーは市販のもので、CoolStarや家庭用ポータブルクーラーより冷房能力は落ちるが、しっかり排気を車外に放出するので、軽バンコンの車内なら有効性は高いだろう。
車外の排気ダクト
価格は132,000円となっており、排気処理、排水処理も含まれている。排気は窓を半開きにして開いたところに排気ダクトを付けて排気ホースをつないでいる。多少物々しいがこれで涼しく過ごせる。
暖房はFFヒーターがオプションで用意されている。
テレビ/ナビ
DVD付き19型のテレビが標準装備されている。これも軽バンコンとしては特筆されるもので、やはり一人使用に割り切ったからできることだろう。
電装系
サブバッテリー3個を搭載した電装系
サブバッテリーの容量は明記されていないが、展示車には3個のディープサイクルバッテリーが搭載されていた。本来なら1個が標準装備されると思われるが、展示車はスポットクーラーがあるため、これに対応したものと思われる。
ただし、電子レンジや冷蔵庫が標準装備されているため、1個では十分とは言えない。電子レンジを頻繁に使うと、1年も経てば経年劣化が感じられるだろう。クーラーが無くても、2個あると安心だ。
このスポットクーラーは冷房時50Hzで147W、60Hzで180Wなので、3個のサブバッテリー(300Ah)なら、クーラーだけで12時間程度駆動できる計算にはなる。もちろん使用状況などによるので、具体的にはビルダーに確認いただきたい。
その他の電装系では、走行充電が標準装備されるが、外部電源入力と充電機能はオプション。これらは必需装備に近いので、是非装備しておきたい。
価格(2021年10月現在:千円台切り上げ:税込)
現在、同社のサイトには価格が表示されないが、2021年10月の展示会では車両本体価格は230万円となっていた。これには、サブバッテリー(容量不明)、2000Wインバーター、100Wソーラーシステム、そして冷蔵庫と電子レンジ含まれている。
スポットクーラーを装備する場合は、スポットクーラー本体は132,000円だが、サブバッテリーの追加(50,000円:追加容量不明)をお勧めする。
付けておきたいオプションは外部電源入力(60,000円)と充電機能(50,000円)、そしてFFヒーター(価格不明)が挙げられる。
他モデル
軽バンコンは非常に多くのモデルが存在するが、一人使用に割り切って、据え付け式冷蔵庫や電子レンジを標準装備するモデルは他に見当たらない。
軽バンコンで比較的装備が充実しているのは、オートワンの給電くん(186万円~)、カスタムセレクトのロードセレクトコンパクト(274万円~:JOIN/2WD/4AT)、stage21のリゾートデュオバスキングレグノ(現在サイトに掲載されていない)あたりが考えられるが、リゾートデュオバスキングレグノを除いて冷房装備は無い。
まとめ
マイクロバカンチェスひとり旅は、文字通り一人使用なら唯一の、そして理想に近い軽バンコンだ。軽バンコンにして、コンパクトバンコンや一部のハイエースベースバンコンにも劣らない装備が手に入る。
しかし、やはり残念なのがギャレーが無いことだ。マイクロバカンチェスひとり旅にギャレーが装備されておれば、ひとり旅の理想的なモデルだっただろう。ただ、同社はカスタム自由度の高いビルダーなので、カスタマイズは可能と思われる。
例えば、電子レンジ上の収納に電子レンジを移動すれば、従来の電子レンジの位置にコンパクトなギャレーを設置することができるかもしれない。もちろんオプションとして正式に設定されることを期待したい。
関連記事