ワイドバカンチェスMoMoはリンエイプロダクトが製作する、ハイエースワイドミドルバンをベース車にしたバンコンキャンピングカー。
同社はバンコン専門ビルダーで、非常に多くのレイアウトラインアップを用意している。「バカンチェス」は同社のモデルに共通して付けられるシリーズ名で、標準ボディハイルーフは「バカンチェス」、標準ボディ標準ルーフは「ファシールバカンチェス」、ワイドミドルは「ワイドバカンチェス」と分類されている。
更に、レイアウトスタイルにも「リッツ」や「ライル」といった名前が付けられており、ベース車と合わせて「ファシールバカンチェスリッツ」などとなり、名称でベース車とレイアウトが連想できる。
従って「ワイドバカンチェス MoMo」はハイエースワイドミドルをベース車に使ったMoMoというレイアウトのモデルになる。
なお、「MoMo」はレイアウトだけでなく、充実した標準装備で長期旅にも対応することを目的としたシリーズで、ハイエース標準ボディでも製作できる。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
コンセプト
ハイエースワイドロングをベース車に使用し、広い室内ながらも5x2mの標準的な駐車枠に収まるボディサイズで日常使いも可能。2列目にマルチモードシートを持ち、ミニバンと同じように使える。
MoMoは特に少人数でのクルマ旅を想定し、広いギャレーと、100Wソーラーシステム、2000W正弦波インバーター、100V省エネ型電子レンジ、40L冷凍冷蔵庫、リヤ大型TV(DVD内蔵)などを標準装備している。日常で使いながら、長期旅にも対応する。
アピールポイント
・5x2mの駐車枠に収まる最大のボディサイズ
・2列目にマルチモードシートを採用、4名が前向き乗車できる
・ダイネット展開ベッドで大人2名と子供2名のファミリーが就寝可能
・広いギャレー、シンク、冷蔵庫、電子レンジを標準装備で長期旅に対応
・100Wソーラーシステムや2000Wインバーターを標準装備
・オプションの子供用上段ベッドで多人数での車中泊にも対応
エクステリア
ワイドバカンチェスMoMoのエクステリア
ベース車はハイエースワイドロングミドルルーフバンを採用。このベース車は5x2mの一般的な駐車枠に収まる最大のボディで、かつ全高が従って広い室内を持ちながら比較的取り回しが良い。
ボディ外装には架装は無く、外観はノーマルのハイエースと変わらないので、通勤や買い物などの日常用途にも違和感なく使える。
インテリア
インテリアは様々な素材や色を選択できる
展示車のインテリアカラーは上の写真のような、落ち着いた中にもセンスの良い配色だったが、内装色はユーザーの好みで豊富なサンプルから選択できる。
家具の作りなどは一般的なもので特に高級感があるわけではないが、間接照明も採用されており、洗練されたインテリアの演出がされいる。
レイアウト
2列目にマルチモードシートを配置し、後部はベンチシートおよび対面するギャレーで構成されている。
2列目シートは2人掛けなのと、ベース車がワイドボディなので、前後の移動はスムースに行える。ただし、標準ボディでは多少動きにくくなるかもしれない。
このレイアウトの特徴は、少人数での使用を想定しており、2列目シートを使用することなく、2名が就寝できること。また、広いギャレーを持ち、長期旅での調理もできるようになっている。
ただし8ナンバー取得のためギャレーを後部に配置しており、ベッド幅は車幅いっぱいに使うことはできない。この点ではプラムTやプラムLはギャレーが前部にあり、後部は車幅いっぱいに使った幅の広いベッドが可能となっている。ただし、プラムのシンクはベッド下に隠れてしまい、実用性は低い。
なお、2列目にマルチモードシートを採用したことにより、計4名が前向き乗車でき、また、フルベッド状態にすると、大人2名と子供2名が就寝できる。
更に後部にオプションの上段ベッド(子供用)を設置することができるので、大人数のファミリーでの車中泊も可能としている。
ダイネット
L字型のダイネット
2列目シートを後ろ向きにすると、L字型のダイネットが形成される。ギャレーが近くにあるので、調理しながら食事することができる。
なお、シートをフラット(ベッド状態)にしておくと、任意の位置に折り畳みテーブルを置いて食事したり、寛ぐことができる。また、ペットや小さな子供がいる場合は全てのシートをフラットにしておくと良いだろう。
ベッド
2列目シートはそのままにして大人2名が就寝できる
後部のベンチシートをフラットにすると、2列目シートはそのままにして、1680x1300mmの大きさのベッドになる。大人用ベッドの規定に達していないので子供用の扱いになるが、家庭用ではセミダブルとダブルベッドの中間の幅に相当する。この状態でも、シンクや冷蔵庫、電子レンジが使えるように考慮されている。
フルベッド状態では大人2名と子供2名が就寝できる
2列目シートもフラットにすると、1250x950mmのベッドスペースが追加される。即ち、最大で2630x1300mmの広大なベッドになり、長身のユーザーでも足を伸ばして就寝することができる。小さな子供なら一緒に寝ることができる。
オプションで子供用上段ベッドを装備することができる
更にダイネットベッドだけでは狭い場合は、オプションで上段ベッドを装備することができる。キャンピングカーの規定で定められている大人用ベッドの大きさには達していないので子供用の位置付けだが、大人が就寝しても問題はない。
なお、上段ベッドを設置すると、ギャレーや冷蔵庫は使えなくなる。
ギャレー
広いギャレーセクション
MoMoのギャレーは後部左側に設置されている。この位置であれば、シンクの前に床下収納を掘り、1600mmの高さを確保でき8ナンバーを取得できる。また、広いギャレースペースが取れ、シンク、冷蔵庫、電子レンジが収納できる。
実用的な大きさのシンク
シンクは特に大きいわけではないが、中皿程度が洗える実用的な大きさ。また、ギャレーコンソール上面は広い調理面として使用できる。長期のクルマ旅では調理することも考えられ、使いやすさが重視されている。
ギャレーコンソール下の収納スペース
なお、ギャレーコンソールの下には収納スペースが用意されている。またシンクの下には各10Lの給排水タンクが収納されている。クルマのリアハッチを開けて車外から直接出し入れできる。
冷蔵庫/電子レンジ
40L上開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は40L上開き式が標準装備される。上開き式はアクセス性が良く、蓋を開けても冷気が逃げないのがメリットだが、冷凍・製氷と冷蔵が同時にできないのが弱点。
横開き式冷蔵庫をビルトインするなら、電子レンジと位置を交換し、エントランス方向に扉を向けると収まるかもしれない。
電子レンジは家庭用の100Vのものが標準装備され、すっきりビルトインされる。長期旅には必需品なので、これは嬉しい装備だ。また2000Wインバーターも標準装備されるので、外部電源が取れない場所でもサブバッテリーで稼働できる。
多目的ルーム
ワイドバカンチェスMoMoには多目的ルームは無いが、ポータブルトイレを後部ベッド下に収納しておくことは可能だ。一人なら良いが、二人の場合はカーテンで仕切るなどのDIYが必要だろう。
収納
ギャレーの上部のオーバーヘッド収納
ギャレーの上部に広いオーバーヘッド収納が設置されている。容量は大きいのだが、両側にロックがあり、ワンアクションで開けられないのが少し面倒なところ。
ベンチシート下の収納
ベンチシート下も収納になっており、大き目のバッグなどを収納しておくことができる。この収納は、クルマのリアゲートを開けて、車外からアクセスすることもできる。
ベッド下は大きな収納スペース
先述のように、ベッド状態にすると、その下は大きな収納スペースになる。常時ベッド状態にしておけば、大きな収納スペースが確保できる。
空調
暖房はFFヒーターがオプション設定されている。冷房はCoolStarが、バンであればオプションで装備できる。なお、ベンチレーターはマックスファンがオプションで取り付けできる。
テレビ/ナビ
16型テレビが標準装備される。設置場所は、展示車ではギャレーの上だったが、別の場所でも取り付けできるだろう。
ナビは記載が無いが、好みのものが取り付けできる。
電装系
ベンチシート下の電装系
ベンチシート前方の下には電装系が収納されている。サブバッテリーは95Ahのディープサイクルバッテリーが1個と走行充電が標準装備される。CTEKのような昇圧システムはオプション設定されていない。
サブバッテリーは1個増設可能。また外部電源入力と充電機能はオプション。なお、2000Wのインバーターと100Wソーラーシステムが標準装備される。
価格(2021年4月現在:千円台切り上げ:税込)
価格表が公開されていないため現在の価格は不明だが、2021年10月の展示会時のガソリン2WD/6ATの車両本体価格は528万円となっていた。
他モデル
ハイエースワイドロングミドルルーフをベース車にするバンコンで、8ナンバー登録のモデルは多く存在するが、コンセプト的に似ているのは、アネックスのファミリーワゴン(490万円~)、オーエムシーのツアーズワイドSGL(521万円~)、東和モータース販売のツェルトWG(459万円~)等が挙げられる。
この中でレイアウトが全く同じなのは、ツェルトWG。さらにツェルトWGはワゴンGLをベース車に使用しており、グレード感は高い。
なお、ハイエースワイドミドルでエアコンが装備できるのはオーエムシーの北斗対座モデル、キャンピングカー長野のスペースキャンパーCOOL、ケイワークスのオーロラエクスクルーシブがある。
まとめ
ワイドバカンチェスMoMoは、大人2名、あるいは子供を含むファミリーでクルマ旅をする目的では、バランスの取れたモデルだ。ファミリーが全員前向きに乗車してロングドライブできるし、広いダイネットやベッドで寛げる。また上段ベッドを追加して子供がいるファミリーでも就寝できる。更に実用的に調理ができる広いギャレーもある。
しかし、限りあるスペースで多くを実現しているため、長期旅の観点から見ると不満点もある。例えば、横にギャレーがあるためプラムシリーズのようにベッド幅が十分に取れていない、冷蔵庫が横開き式ではない、などだ。
ただし、これが悪いわけではない。他モデルはベッドが広い代わりにギャレーは実用的でなかったり、ギャレーが広くベッドも大きいが冷蔵庫や電子レンジが無かったりと、どこかにしわ寄せがある。良く言えば、割り切った設計になっている。
ワイドバカンチェスMoMoは、完全ではないながらもこれらの全てを持っている点で、選択価値があるといえる。特に長期旅を想定しているなら、重要なポイントだ。
なおクーラーは装備できるが、リチウムイオンバッテリーはオプション設定が無いので、バッテリーでの使用時間はそれほど長くない。(ツインバッテリーで3時間程度)実用的には外部電源があるところでの使用に限られる。
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