ハイエースワイドロング+ポップアップルーフの優位性
ハイエースワイドロングのサイズは4,840x1,880x2105mm。このサイズの意味するところは、一般的な5x2mの駐車枠に収まり、高さ制限のある駐車場に入れる可能性が高い最大限のサイズということ。即ち、標準ボディよりも広く、スーパーロングよりも扱いやすい絶妙のサイズだ。
一方、ポップアップルーフの特徴は、下げた状態では通常のハイエースに見え、日常用途でも目立つことなく使え、停泊時にポップアップルーフを上げると一気に圧迫感が少なく開放感のある室内になり、かつルーフベッドでも就寝できること。
従って、ハイエースワイドロングボディにポップアップルーフを架装すると、日常使用にもキャンピングカーとしても理想的な状態で使えるキャンピングカーとなる。
今回はそのハイエースワイドロングのポップアップルーフを架装したモデルを特集する。
目 次
オーロラエクスクルーシブ ケイワークス
ケイワークスは愛知県豊橋市に本拠を置く、バンコン専門ビルダー。ハイエースワイドロングと標準ボディに特化し、全てのバンコンモデルに「オーロラ」の冠が付けられている。
同社のワイドロングベースでポップアップルーフを持つモデルは数多くあるが、今回は「オーロラエクスクルーシブ」、「オーロラスタークルーズエヴァンス」、「オーロラスタークルーズクラシックバン」の3モデルをピックアップした。
オーロラエクスクルーシブの室内(写真は標準ボディモデル)
同社のモデルはどれも高品質で高級感のある家具やシートが採用されているのが特徴。特にフラグシップのオーロラエクスクルーシブ(以後エクスクルーシブ)は一体型エアコンと100Ahリチウムイオンバッテリーを3個、270Wソーラーシステムを標準装備と実に充実した装備を持つ。
エクスクルーシブのレイアウトは2列目に3人掛けのマルチモードシートを配置、前向きに5名が座ってドライブできる。また後ろ向きにすると、3列目の簡易シートとで対座ダイネットを形成する。
一体型エアコンを標準装備する(写真は標準ボディモデル)
またエクスクルーシブのギャレーには、一口コンロが付いたコンビネーションシンクがビルトインされており、49L冷蔵庫や電子レンジが標準装備されていることからも、長期旅にも対応した装備となっていることが分かる。
⇨ 詳しい記事はこちら(オーロラエクスクルーシブナロー)
オーロラスタークルーズ エヴァンス ケイワークス
オーロラスタークルーズエヴァンス(以後エヴァンス)は2列目と3列目にマルチモードシートを配置、前向きに7名が乗車できるレイアウトとなっている。「3世代ファミリーでのクルマ旅も叶う」と謳われている通り、大人数での移動もこなせる。
オーロラスタークルーズエヴァンスの室内
2列目シートと3列目シートをフルフラットにすると、2120x1400mm(オプションでセカンドシート幅1500mmサイズも選択可)のフロアベッドとなる。(3列目シート部の幅は1200mm)
また1700x1160mmの上段ベッドが標準装備されており、ここでは子供が2~3名就寝できる。このベッドのサイズはカスタマイズも可能。更にポップアップルーフで2人が就寝できるので、合わせて大人4名、子供2~3名が就寝できる。
オーロラスタークルーズエヴァンスのフロアベッド
ギャレーにはコンパクトなシンクとシャワーフォーセットが用意されており、シャワーは車外でも使える。
ただしエクスクルーシブのように冷蔵庫や電子レンジのオプション設定は無く、長期旅よりはファミリーでの近場の車中泊向きのレイアウトとなっている。
電装系には100Ahのリチウムイオンバッテリーが標準装備される。エクスクルーシブのようにエアコンが無いので1個でも十分で、電気に関しては安心できる。
オーロラスタークルーズクラシックバン ケイワークス
クラシックバンはオーロラスタークルーズシリーズの中で、パーソナルな使い方を想定したモデル。ただし2列目にバタフライシートを配置するので、前向き5名が乗車でき、日常用途にも使える。
クラシックバンの荷室
クラシックバンのコンセプトはアウトドアアクティビティ。そのため、後部のシートはベンチシートで、これを跳ね上げ、バタフライシートを前にスライドさせると、後部にはバイクも積める大きなラゲッジスペースが出現する。バイクや自転車を積んだままでも、ルーフベッドで大人が2名就寝できる。
就寝人数が多い場合は上段ベッドを追加することにより、大人6名が就寝できる。下段ベッド(フロアベッド)は2780x1000mmの大きさで、規格上は大人2名が就寝できるが、実際は大人なら1名就寝と見ておいた方が良いだろう。
クラシックバンの2列目シート
左側には実用的なギャレーコンソールがあり、大きめのシンクとシャワーフォーセットが装備される。シャワーフォーセットは引き延ばして車外でも使える。
冷蔵庫や電子レンジの設定は無く、比較的シンプルなレイアウトで、その分大きなカーゴスペースが取れるようになっている。
電装系はエヴァンス同様、100Ahのリチウムイオンバッテリーが1個標準装備される。やはり大電力を消費する家電品は無いので、1個でも全く問題無い。
⇨ 詳しい記事はこちら
コンパス ホワイトハウス
ホワイトハウスは愛知県名古屋市を本拠にするビルダーで、ホンダ系の軽キャンパーやミニバンベースキャンピングカーから、ハイエースベースのモデルまで扱っており、特にポップアップルーフの架装を得意としている。
コンパスは ハイエースワイドロング+ポップアップルーフの組み合わせでは代表的と言えるモデルで、ロングセラーかつ高いネームバリューを持つ。
エクステンションウインドウ
コンパスの外観の特徴は、右サイドのウインドウがエクステンションウインドウに架装されていること。これにより、後部ベッドで車幅方向に就寝でき、またダイネットにちょっとした出窓ができる。更に、断熱効果にも貢献している。
レイアウトは2列目と3列目にマルチモードシートを持ち、6名が前向き乗車できる。またダイネット展開ベッド、上段ベッド、ルーフベッドを合わせて5名が就寝でき、ファミリー用途を対象にしたレイアウトになっている。
コンパスの室内
ギャレーはダイネットの横にあり、ダイネットに座ったままアクセスできるのは便利。ただし、ギャレーのためダイネットをベッド展開する場合は、ベッド幅が狭くなる。
大人2名子供2名程度のファミリーなら、ルーフベッドと後部ハイマウントベッドで就寝できるので、ダイネットはそのままにして就寝できる。なお、オプションだが、ルーフベッドにも温風の吹き出し口が設けられるのは大きなアドバンテージだ。
全員が前向き乗車できるので、ファミリーでの遠出ドライブも快適で、就寝スペースも無理がない。優れたパッケージングだが、前後の移動は多少苦労する。
なお、セパレートクーラー「COOLSTAR」がオプションで装備できるようになったので、快適性が向上している。
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コンパス プロ ホワイトハウス
コンパスプロは、コンパスと同じ外観ながら、レイアウトを変更した派生モデル。日常は仕事にも使え、休日はキャンピングカーとして使用できるが、コンパスとの違いは、後部のベンチシートを跳ね上げると、大きなカーゴスペースが出現すること。
即ちトランポとしても使え、どちらかというと1~2人でパーソナルな使い方を想定したレイアウトとなっている。
コンパスプロの室内
2列目にはマルチモードシートが配置されており、前向きに4名が乗車可能。2列目シートを後ろ向きにすると、後部の二の字型横座りベンチシートとでコの字型のダイネットになる。
ギャレーはコンパス同様、ダイネットサイドに配置されており、一口コンロ一体型のシンクがビルトインされている。
コンパスプロの後部
「コンパス」と異なり、後部へのアクセスが良いので、場合によってはコンパス プロの方が使いやすい。また、エアコンについては記載がないが、恐らくコンパス同様COOLSTARが装備できると思われる。
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ディアリオ ワイドポップ バンレボ
バンレボは「バン・レボリューション」の略で、バンテック新潟のオリジナルブランド名。同社は名前の通り、新潟県上越市に本拠を置くビルダーで、ハイエースとNV350キャラバンベースのバンコンを多数ラインアップしている。
同社にはVR(バンレボリューション)シリーズがあり、これはシンプル装備の車中泊車の位置付けだが、ディアリオシリーズは、冷蔵庫や電子レンジなど標準装備が充実したシリーズの位置付け。標準ボディやNV350キャラバンもベース車に選択でき、もちろんハイエースワイドロングベースも選択することができる。
Type2は2列目と3列目にバタフライシートを配置(写真:バンレボ)
Type1とType2があり、Type1は2列目シートのみ、Type2は2列目と3列目シートがバタフライシートを採用している。
シートは床に敷いたレール上で自由に位置決めできる。2列目シートを前向きにすると6名が前向き乗車でき、後ろ向きにすると5名が対座ダイネットに着座できる。
後部の広い荷室(写真:バンレボ)
更に、バタフライシートを畳んで前にスライドすると、後部に大きなカーゴスペースが出現し、自転車などの積載物も積める。ポップアップルーフのルーフベッドで自転車を積んだまま大人2名が就寝できる。
また、上段ベッドもあるので、最大7名が就寝できるのも特徴だ。もちろん大人が7名就寝すると窮屈だが、それでも5名は余裕をもって就寝できる。
⇨ 詳しい記事はこちら(NV350キャラバン上旬ボディバージョン)
VR480p バンレボ
前述のようにVR(バンレボリューション)シリーズはシンプル装備の車中泊車の位置付け。8ナンバーでギャレーも装備しているが、簡易的な折り畳み式になっている。
ディアリオ同様Type1とType2があり、どちらもバタフライシートが標準装備される。従って、シートを畳んで前にスライドすると、後部は広い荷室になる。
後部の荷室(写真:バンレボ)
乗車人数は、フロントに3名、2列目に3名、3列目に2名の計8名が前向き乗車できる。また、2列目シートを後ろ向きにすると、5名が対座するダイネットが形成される。
Type2は2列目と3列目にバタフライシートを配置(写真:バンレボ)
ベッドはシートをフラットに展開したフロアベッド、上段ベッド、そしてルーフベッドで、計7名が就寝できる。
電子レンジはもちろん、冷蔵庫の設置も想定されておらず、フラットなベッドと大きな荷室があればよいというユーザー向けのシンプルなレイアウトとなっている。
プレシャスベータ キャンピングカー広島
キャンピングカー広島は、社名の通り広島県安芸高田市に本拠を置くビルダーで、NV200バネットベースのバンコンキャンピングカーや、ハイエース、NV350キャラバンベースのキャンピングカーを製作している。
有名なNV200バネットベースのポップ・コンeEのように、ポップアップを架装したモデルが多いのも同社の特徴。
プレシャスベータの室内
プレシャスベータは、今回取り上げた中では、唯一の二人旅仕様車。 フロントにギャレーを置き、後部は広いコの字型ダイネットが広がる。ポップアップルーフを上げるとルーフベッドで2名就寝できるので、下のダイネットはそのままにして就寝できる。
また、40L横開き冷蔵庫や電子レンジも標準装備され、長期旅にも十分対応できる。収納はシート下にスペースが用意されているが、テーブルを残したお座敷モードも可能で、この場合はベッド下が全て収納スペースになる。
後部の広いダイネット(写真:キャンピングカー広島)
更に、電装系も充実しており、100Ahの高性能AGMバッテリーを2個、走行充電と外部100V入力及びこれによるサブバッテリーの充電機能、更に1500W正弦波インバーターが標準装備される。
ただ、室内で寛ぐタイプのモデルだけに、エアコンのオプション設定が是非欲しいところだ。
⇨ 詳しい記事はこちら
ボンドポップアップ ダイレクトカーズ
ダイレクトカーズは三重県津市に本拠を置くビルダーで、ハイエースベースのバンコンを中心に、軽キャンパーからハイエースベースのキャブコン「モビリティホーム」まで手掛け、2020年にはカムロードベースのフルサイズキャブコン「トリップ」も発表した。
ボンドは先にハイルーフ仕様が発売され、その後ポップアップルーフモデルが追加された。
ボンドポップアップルーフのダイネット
ボンドポップアップルーフの特徴は2列目と3列目にバタフライシートを標準装備する点。2列目シートを前向きにすると6名が前向き乗車でき、後ろ向きにすると4名の対座ダイネットになる。
シートはレール上を移動できるので、シート間隔は自由に設定できる。
更に、バタフライシートを畳んで前にスライドしておくと、後部は広い荷室になり、自転車も積むことができる。2名で使う場合は、自転車を積みながら、ルーフベッドで2名が就寝できる。
ダイネットを展開したベッド
更に車内にギャレーを持つが、同社のモデルの共通したコンセプトになっている、車外テーブルも用意されており、オープンエアで食事することも可能だ。
40L横開き式冷蔵庫と電子レンジが標準装備され、長期旅にも十分対応できる。ファミリーでの車中泊から、自転車を積んだ二人旅まで、マルチにこなせるモデルとなっている。
⇨ 詳しい記事はこちら
まとめ
ハイエースワイドロングベースのポップアップルーフモデルと言っても、想定された用途は様々にある。
最も分かりやすいのはプレシャスベータで、これは二人旅にターゲットを絞ったレイアウトを持つ。横開き式冷蔵庫や電子レンジが標準装備され、二人での長期旅には最適なモデルと言える。今後エアコンのオプション設定に期待したい。
とにかくシンプルに、就寝スペースさえあれば良いという車中泊用ならVR480pがある。ギャレーは折り畳み式でコンパクト、電子レンジはもちろん冷蔵庫も装備していない。ただし、インテリアの質感やシートなどを考えると、オーロラスタークルーズエヴァンスやクラシックバンの方が上で、価格も安価だ。
ディアリオワイドポップとボンドポップアップルーフはバタフライシートを持つ点でコンセプトが似ている。どちらも冷蔵庫や電子レンジなどの装備が充実しており、前向き乗車、対座ダイネット、後部に広い荷室が可能な点で同じだ。
ただし、ボンドポップアップルーフは横開き冷蔵庫を装備している点で、より長期旅に適している。
また、クラシックバンとコンパスプロは、後部にロングシートを持ち、これを跳ね上げることにより広い荷室ができる点で同じだが、コンパスプロには上開き式の冷蔵庫が組み込まれている。
コンパスはファミリー向けで、全員が前向き乗車でき、ゆったり就寝できるが、2列目と3列目のマルチモードシートとサイドギャレーの組み合わせは多少狭さを感じる。前後への移動がスムースでないため、閉じ込められ感がある。
最後に、オーロラエクスクルーシブは、実用性の高いギャレーや、冷蔵庫、電子レンジを標準装備し、長期旅にも十分対応できる。また、上質で高級感のあるインテリアも大きなアドバンテージと言える。
更に(少し大きいが)一体型のエアコンを標準装備し、100Ahのリチウムイオンバッテリーを3個標準装備している。
ファミリーで快適な長期旅をするための全ての機能が備わり、エアコンも実用的に稼働できる。そのため価格は674万円と高価になるが、それに見合う価値があるモデルと言える。