Compact Supreme SPはアドリア モービルが製作する、フィアット デュカトをベース車にしたキャブコンキャンピングカー。日本へはデルタリンクが輸入販売を行っている。
アドリア モービル(Adria Mobil)はフランスのトリガノ(Trigano)の翼下のビルダーで、スロベニアを拠点とし、キャラバン(トラベルトレーラー)、フルコンバージョン、キャブコンバージョン、キャンパーバン(バンコン)まで幅広く生産している。
Compactシリーズは同社のキャブコンラインアップの中で最も小型に位置するモデルで、上級モデルのSupreme(スプリーム)と標準モデルのPlus(プラス)がある。Plusではホワイトのボディカラーに対し、Supremeではシルバーになる。その他の仕様はほとんど変わらない。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
Compact Supreme SPはアドリアのキャブコンラインナップで小型のボディサイズを持つ。特にSPは6m以下の全長で、最も小型なサイズ。日本にはSPの他、縦置きツインベッドを持つDLとSLも輸入されているが、いずれも7m近い車長になる。
Supreme SPは後部に横置きダブルベッドを持つレイアウトで、前部は対座ダイネット、中央にギャレーとサニタリールームを配置する。
欧州モデルらしい洗練されたインテリアが人気で、また温水シャワーや豪華なギャレーなど、モーターホームらしい装備も国産車とは違ったテイストを味わえる。さらに、日本製の家庭用セパレートエアコンやリチウムイオンバッテリーも選べるようになり、日本の環境にも対応している。
アピールポイント
・6mを切るコンパクトなボディ
・洗練されたインテリア
・温水シャワー標準装備
・3口常設コンロと豪華なギャレー
・大きなサンルーフを標準装備
・充実した収納
・大きな外部収納
・家庭用セパレートエアコン(OP)設置可能
・リチウムイオンバッテリー装備可能(OP)
ベース車とエクステリア
Compact Supreme SPのエクステリア
ベース車はフィアット デュカト。本国では2.2L、140HPのディーゼルエンジンを搭載するが、日本向けは160HPが標準装備され、さらに180HPがオプションで選択できる。
フィアットから供給されるキャブ+シャシーにポリエステル(FRP)シェルを架装する。ボディカラーはSupremeはグレーメタリックが与えられている。(Plusはホワイト地)シェル部の窓は全てアクリル2重窓が採用されている。
ハンドルは左右選択可能。一般的には右ハンドルを選ぶが、このような車幅のある車では、左ハンドルはすれ違い時に左側一杯に寄ったり、歩行者が見やすかったりと意外に便利な面もある。
運転席、助手席のエアバッグは標準装備。なお、エントランスは右側しか選べないので道路わきで車外に出るときは注意が必要。また、デュカトに4WDは設定されていない。
インテリア
Compact Supreme SPのインテリア
欧州車のインテリアは重厚感はないが洗練されており、これが欧州車の大きな魅力のひとつになっている。家具色とシート地の組み合わせは8種類が用意されている。また照明はLEDのライン照明と間接照明、そしてベッドルームにはスポットライトを使用している。
レイアウト
CompactシリーズのレイアウトはSPの他、縦置きツインベッドのDLとSLが選択できる。(本国ではこれに加えアイランドダブルベッドのSCもある。)ただしこれらは全て7m近い車長があり、6mを切るのは横置きダブルベッドを持つSPのみとなる。
ベッドより前の部分は多少の違いがあるが基本的には同じで、前部にダイネット、中央にギャレーとサニタリールームが配置される。
SPでは2列目の前向きシートに2名乗車できるので、計4名が乗車定員。就寝は後部の常設ダブルベッドで2名、ダイネット展開ベッドで子供1名が就寝できる。
このレイアウトはダイネットを展開するベッドもあるが、基本的には2名での使用が想定されており、ファミリー向きではない。
ダイネット
運転席と助手席のシートが回転するダイネット
デュカトのベース車の例に違わず、運転席と助手席のシートが回転して後ろ向きになり、ダイネットシートとして使用できる。2列目に2人掛けの前向きシートと右側に横向きの単座シートがあり、計5名がテーブルを囲める。
ただし、2列目シートに大人2名が座ると多少窮屈ではある。もっとも就寝人数から考えると、5名は乗車できないので、ダイネットに5名が座ることは少ないだろう。
ベッド
横置きダブルベッドを配置
SPは横置きダブルベッドを配置する。ベッドサイズは1950x1400(最大)で足元は1250mmと少し狭くなっている。なおSupremeでは低反発マットレスが採用されている。
折り畳み式のベッド昇降用ステップ
ベッドの昇降用にステップが用意されているが、これは使用しない場合は折り畳んでコンパクトに収納しておくことができる。なお、ダイネットを展開するベッドのサイズは1680x1000mmで子供用となっている。
ギャレー
3口コンロとシンクがビルトインされるギャレー
ギャレーは中央右サイドに配置されており、3口コンロとシンクがビルトインされている。手前に広い調理面を配置したデザインで、本格的な調理も可能だ。
ギャレーキャビネットの引き出し収納
ギャレーキャビネットには大きな引き出し収納が設置されており、カトラリーはもちろん、食器や調理器具も収納できる。
ギャレー上部のオーバーヘッド収納
また、ギャレー上部にもオーバーヘッド収納が用意されており、ここも大きな収納力がある。
冷蔵庫/電子レンジ
70Lの横開き式冷凍冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は70Lの横開き式冷凍冷蔵庫が標準装備される。これは12V式で、3Wayではない。もちろん冷凍・製氷と冷蔵が同時にできる。
電子レンジはオプション
家庭用の100V仕様の電子レンジがオプションで用意されており、選択した場合は国内で取り付けられる。展示車には電子レンジが取り付けられていたが、オーバーヘッド収納を一部壊して取り付けられる。
もちろん、電子レンジを選択しない場合は、ここはオーバーヘッド収納になる。
サニタリールーム
カセットトイレと専用の手洗い
一般的に輸入モデルにはお洒落なサニタリールームが装備されているが、Compact Supreme SPも例外ではない。カセットトイレ、専用の手洗い、ルーム内の収納、そして温水シャワーが標準装備される。
壁(ボード)を回転するとシャワールームが出現する
シャワーは手洗いが付いている壁(ボード)を回転するとマジックのようにシャワールームが出現する。シャワーを使う場合、トイレが水浸しになることは無い。なお、FFヒーターの吹き出し口も用意されているので、冬場でも寒い思いをすることはない。
Truma Combi 4が標準装備されており、ガスで給湯する。(FFヒーターの機能も担っている)また、オプションの軽油を燃料とするTruma Combi D6ならクルマの燃料を使用することができるので、プロパンガスボンベを使う必要が無い。(展示車ではコンロにはカセットガスが使われていた)
収納
ダイネット両側にオーバーヘッド収納が設置される
ダイネット上部両側にオーバーヘッド収納が設置されている。
イネットの扉付き収納
またダイネットの横座り単座シートの上に扉付き収納が設置されている。
横座り単座シートの下の収納
その他さまざまなところに収納が用意されているが、エントランス入って右側の横座り単座シートの下も収納になっている。その他の収納は動画を参照いただきたい。
空調
家庭用セパレートクーラーを設置可能(OP)
暖房は先述のようにTruma Combi 4が標準装備され、FFヒーターとしても使用できる。また冷房は家庭用セパレートエアコンがオプション設定されている。これは国産エアコンで、国内で取り付けられる。
テレビ/ナビ
19型のテレビが設置できる(OP)
19型のテレビモニターがオプションで用意されている。展示車では設置場所はベッドルームに取り付けられていた。ナビもディーラーオプションとして国内で取り付けられるが、好みのものを選択することもできると思われる。
電装系
標準では100Ahのディープサイクルバッテリーが1個と走行充電が装備されているが、当然これでは(エアコンを搭載しないとしても)バッテリー容量が少なすぎる。オプションでトリプルバッテリーやAGMバッテリーが用意されているが、エアコンを設置するなら(おそらく設置するユーザーがほとんどと思うが)、やはりリチウムイオンバッテリーがお勧めだ。200Ahと400Ahが選択できるが、エアコンの他にも電気を必要とする装備が多いので、予算に余裕があれば400Ahをお勧めしたい。
1500W正弦波インバーター、外部電源による充電器、走行充電強化、リチウムイオンバッテリー(200Ah or 400Ah)がセットになったオプションが用意されている。
ソーラーシステムは100W、200W、250W(フレキシブル)が選択できる。
価格(2021年4月現在:千円台切り上げ:税込)
Compact Supreme SPの車両本体価格は1152万円~。ちなみにPlus SPは1114万円~で、価格差は38万円。違いは車体色とマットレス程度。
付けておきたい必需オプションは、家庭用セパレートエアコン(550,000円)、1500Wインバーター、外部電源による充電器、走行充電強化、リチウムイオンバッテリー(200Ah
or 400Ah)のセットオプション、200Ahの方が929,500円、400Ahの方が1,320,000円となっている。また、電子レンジ(66,000円)も挙げられる。
予算に余裕があれば、250Wソーラーシステム(220,000円)も付けておきたい。またディーゼルヒーター Truma Combi D6(440,000円)があればプロパンガスを使う必要が無い。
他モデル
6mを切る輸入キャブコンは、フジカーズジャパンが輸入するACEの565LD(879万円~)とCD(870万円~)くらいしかない。ともに5780mmの全長で、LDは後部に横置き2段ベッド、CDは横置きダブルベッドを持つ。
フルコンなら東和モータースが輸入する、デスレフのグローブバスGT I1(1562万円~)がある。これも後部に横置きダブルベッドを持つ。
まとめ
6mを切る輸入キャブコン、あるいはフルコンは上記のように非常に少ない。565LDとCDは安価ではあるが、Compact Supreme SPのグレード感は無い。むしろ競合は国産モデルになるかもしれない。
例えばアネックスのリバティ52DB/52SPはどちらも1138万円~。52DBは後部に横置き2段ベッドを持ち、52SPは横置きハイマウントダブルベッドを持つ。インテリアはCompact
Supreme SPと同等以上の洗練されたものになっている。
また、ダイレクトカーズのトリップシリーズ(1235万円~:トリップⅡ)は後部に横置き2段ベッドを持ち、エアコンや400Ahリチウムイオンバッテリーを含めフル装備だ。
輸入モデルは、現在では家庭用エアコンやリチウムイオンバッテリーが装備できるようになり、国内でも使いやすくなってきた。またCompact Supreme
SPのように車長が短いモデルもあり、国内でも比較的運転しやすい。
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