TRIP2(トリップⅡ)はダイレクトカーズが製作する、トヨタ カムロードをベース車にしたキャブコンキャンピングカー。
同社は2020年に同社初のキャブコンモデル「トリップ」を発表したが、2021年には「トリップⅡ」と「トリップⅢ」を発表し、わずか2年でトリップシリーズ3モデルが完成した。
それぞれに異なったレイアウトを持ち、ユーザーのニーズに幅広く応えることができるようになった。また、トリップシリーズは5mを超えるサイズだが、5m未満のカムロードキャブコン「伊勢志摩」も同時に発表、サイズも選択できるようになった。
コンセプト
カムロードベースの5mを超えるフルサイズキャブコン。最初のモデル「トリップ」が縦置きダブルベッドを採用したレイアウトだったのに対し、トリップⅡでは横置き2段ベッドを採用した。
セパレートクーラー、リチウムイオンバッテリー、瞬間湯沸かし温水シャワーシステムなど先進の機能はそのままに、リチウムイオンバッテリーを4個(400Ah)、ソーラーパネルを300W+165Wとするなど電装系の強化を図っている。
同時に縦置き2段ベッドのレイアウトを持つトリップⅢも発表し、レイアウトバリエーションを充実させた、国内最高峰のカムロードキャブコンのひとつ。
アピールポイント
・5m超のフルサイズキャブコン
・6名乗車(前向き4名)、6名就寝のファミリー対応
・後部横置き2段ベッドで効率の良いレイアウト
・セパレートクーラー標準装備
・計400Ahのリチウムイオンバッテリー標準装備
・計465Wのソーラーシステム標準装備
・瞬間湯沸かし対応の温水シャワー
・148Lの2ドア大型冷蔵庫を標準装備
・32型大画面のテレビと15型テレビを標準装備
・豊富なオーバーヘッド収納と大きな外部収納
・ダイネット上にサンルーフを装備
エクステリア
トリップⅡのエクステリア
ベース車はトヨタ カムロードワイドトレッドダブルタイヤ。これにFRPパネルのシェルを架装している。5.15mの全長で、5m枠にとらわれないボディサイズと、大きなバンクを持ち、キャンピングカーの王道を行くスタイリングとなっている。
インテリア
トリップⅡのインテリア
トリップのブルーをアクセントにしたシート地と異なり、濃いベージュ系のツートンカラーのシートを採用。家具色も多少明るめの木目調を採用している。オーバーヘッド収納の白い扉は変わらず美しい。
オーバーヘッド収納の上を全て間接照明としたインテリアデザインは、最新のモデルに相応しいものだ。なお、シート地や家具色は選択できるが、展示車のインテリアカラーを気に入るユーザーも多いだろう。
ダイネットのルーフにはサンルーフがあり、明り取りや換気ができるだけでなく、オープンにすると爽快な気分が味わえる。
レイアウト
前部に対座ダイネット、中央にギャレーとサニタリールーム、最後部に横置き2段ベッドの構成。トリップの縦置きダブルベッドを採用したユニークなレイアウトから一転して、キャブコンでは非常に一般的なレイアウトとなった。
このレイアウトの特徴は、横置き2段ベッドを採用したことにより、ダイネットとサニタリールームを縦に並べ、更にダイネットのスペースも余裕ができること。トリップではダイネット展開したベッドは1400x1050mmと子供用だったのに対し、トリップⅡでは大人が就寝できるようになった。
ダイネット
前部の対座ダイネット
2列目の後ろ向きシートと、3列目の前向きシートはいずれも2人掛けの固定シートだが、足元はゆったりしている。3列目シートは3点式シートベルトが設置されており、運転席と助手席を合わせて4名が前向きで3点式シートベルトを使用できる。
ダイネットテーブルも4名が食事をするのに十分な大きさ。中央のハンドルで無段階に好みの高さにできる。ダイネットのアクリルウインドウは大きく、網戸とシェードが内蔵されている。
ベッド
最後部の2段ベッド
最後部に置かれた2段ベッドは上下段とも2000x790mmの大きさ。790mm幅は、家庭用シングルベッドの幅(970mm)には及ばないが、十分寝返りを打つことができる。
各段には読書灯が用意されており、パートナーが就寝した後でもプライベートな時間を過ごすことができる。
バンクベッドは家庭用ダブルベッドの幅
バンクベッドは1970x1370mmで家庭用ダブルベッドの幅に相当する。身長方向も十分な長さがあるので、長身のユーザーでも窮屈なことは無い。
ダイネット展開ベッドは大人が就寝できる
ダイネットを展開すると1830x1050mmの大きさのベッドになる。家庭用ベッドではシングルベッドの幅より少し広い程度だが、キャンピングカーの規定では2名分のスペースとなる。
ちなみにトリップⅢのダイネットベッドのサイズは1650x1040mmなので、これも大人用ベッドの長さには足りない。即ち、ダイネットベッドで大人が就寝できるのはトリップⅡのみだ。
ギャレー
1口コンロ一体型シンクのギャレー
トリップⅡに限らず、トリップシリーズには広いギャレーが用意されている。ただし、内容は少しずつ異なっており、トリップではIHコンロ、トリップⅡでは1口コンロ一体型シンク、トリップⅢでは2口コンロ一体型シンクとなっている。
IHからガスコンロに変更になったが、これは特に問題ない。むしろ電気を使うIHよりはガスの方が気軽に使える。ただし、トリップⅢに比べると、トリップⅡのコンロは一口だしシンクも小さく、少し寂しい感じがする。
給水タンクは135L、排水タンクは75Lで温水シャワーを使う場合にも十分な容量だ。ただし、排水タンクは75Lなので一度に使えるのは75Lまで。もちろん、キャンプ場などで排水設備があるところではその限りではない。
ギャレーコンソールの収納
ギャレーコンソールの収納は充実していて、2か所の引き出し収納や観音開きの収納など、食器やカトラリー、調理器具を収納するのに十分な容量がある。更に、上部にはオーバーヘッド収納が用意されているので、収納に困ることは無い。
冷蔵庫/電子レンジ
148Lの2ドア冷凍冷蔵庫が標準装備
冷蔵庫は148Lの2ドア冷凍冷蔵庫が標準装備される。これだけ大きいとファミリー分の食材を数日分保冷しておくこともでき、毎日スーパーに買い出しに行く必要はない。
電子レンジも標準装備
もちろん電子レンジも標準装備され、更に2000Wインバーターも標準装備なので、外部電源が無いところでもサブバッテリーで駆動できる。サブバッテリーはリチウムイオンバッテリーなので、電子レンジの大電力を心配する必要はない。
ひとつ気になるのは電子レンジの位置。調理台のスペースを潰して設置されているが、やはり調理面は広い方が良い。トリップではオプションだがギャレーの上、トリップⅢでは冷蔵庫の上に設置されているので、これらに倣った方が良いように思われる。
サニタリールーム
カセットトイレはオプション
トリップⅡには当然サニタリールームが用意されているが、トリップやトリップⅢで標準装備されているカセットトイレはオプションになっている。トリップⅡだけがオプションになっている理由は良く分からないが、ポータブルトイレを希望するユーザーには選択肢があり好ましい。
もう一つの理由は、カセットトイレを取り付けると、外部への扉が付けられないこと。車外から直接濡れた水着等を入れたい場合は、扉があると便利だ。
瞬間湯沸かし用の温水器とカセットガス
トリップシリーズの温水シャワーは大きな利点がある。それが瞬間湯沸かし機能だ。輸入車をはじめ、多くの温水シャワー付きモデルは、トルマコンビのようなボイラーで湯を沸かす。
これは内部に10Lほどの容量があり、この水を60℃程度まで加熱し、水と混合して使用する。しかし、30~40℃程度の適温にしても多くて2人程度の湯量しか得られず、人数が多い場合は再び湯が沸くまで待たなければならない。
トリップの瞬間湯沸かしはカセットガス3本で行う。温度を設定して蛇口をひねると自動点火し、すぐに湯が出てくる。設定可能温度範囲は35℃~51℃で、市販のカセットガス3本で、43℃に設定時でトータル2時間以上運転できるとしている。
なお、シャワー設備は左側ボディ外側に専用のシャワーフォーセットが収納されており、温水シャワーが車外でも使用できる。もちろん車外にも栓があり、車外でコントロールできる。
収納
ダイネット上のオーバーヘッド収納
トリップは収納も豊富に用意されている。まずオーバーヘッド収納はダイネット上、ギャレー上、そして左側前部にも設置されている。
ギャレーの収納は前述の通りで、食器やカトラリー、調理用具を余裕で収納できる。その他、マガジンラックや傘立てなど細かい収納も用意されている。ただシューズボックスが無いのが多少不便かもしれない。
自転車等の大きな積載物も積むことができる
後部下段ベッド下は大きな収納になっており、バッグやキャンプ用具など、様々なものを収納することができる。また、横置き2段ベッドの利点で、ベッドボードを取り除くと自転車等の大きな積載物も積むことができる。
空調
セパレートクーラー「クールスター」が標準装備
暖房はFFヒーターが標準装備される。温風の吹き出し口はサニタリールームにもあり、ここを乾燥室として使うこともできる。
冷房は12Vのセパレートクーラー「クールスター」が標準装備されており、ダイネット上のオーバーヘッド収納のひとつを開けると、クーラーが現れる。
テレビ/ナビ
32型のテレビを標準装備
テレビもトリップシリーズに共通する特徴のひとつで、32型の大画面テレビがバンクベッドボードに埋め込まれている。実にうまく考えられた位置で、就寝する場合はテレビ画面を倒すとフラットなベッドになる。上げ下げはダンパーがアシストするので軽い力で行うことができる。
電装系
サブバッテリーは100Ahのリチウムイオンバッテリーが4個標準装備される。走行充電にはCTEKを採用、走行充電だけでサブバッテリーを満充電することができる。
また2000Wインバーター、165Wと300Wのソーラーパネルも標準装備される。従って、電装系はほぼ完璧だ。クーラーや電子レンジを心置きなく使っても、走行充電やソーラーシステムですぐに充電できる。もちろん外部電源入力と充電機能も標準装備される。
価格(2021年10月現在:千円台切り上げ:税込)
ディーゼル2WDダブルタイヤが1175万円~、ディーゼル4WDダブルタイヤが1206万円~となっている。
ほとんどの機能が標準装備となっているので、オプションで付けておく必要があるものはほとんど無いが、メーカーオプションでSRSエアバッグ(30,250円)がオプションとなっている。忘れず付けておく必要がある。
また、トイレとサイドオーニングはオプションなので必要に応じて選択できる。
他モデル
同じレイアウトを持つ5m超のカムロードキャブコンは多く存在する。代表的なモデルはアネックスのリバティ52DB(1078万円~)、ナッツRVのクレア5.3Wハイパーエボリューション(1023万円~)、バンテックのジル520(1068万円~)、LTキャンパーズのレガードネオプラス(1198万円~)、AtoZのバンビー(価格未定)、東和モータースのヴォーンエクスクルーシブLi(984万円~:2WDダブルタイヤ)などがある。
これらは全て(容量の差はあるが)リチウムイオンバッテリーとエアコンを標準装備している。(バンビーはリチウムイオンバッテリー搭載は不明)
また、全てのモデルは温水シャワーが装備できるが、クレアとヴォーンはオプション設定となる。リバティ52DBは瞬間湯沸かし機能と床暖房を標準装備する。
まとめ
トリップはやや特殊なレイアウトで、レイアウトだけで言うと競合はあまりなかったと思われる。しかし、トリップⅡはカムロードキャブコンでは定番と言われるレイアウトで、競合は上記のように多くいる。
その中でトリップⅡの利点は、ほぼ全ての必需装備を標準としていることだろう。クーラーはもちろん、リチウムイオンバッテリー(それも400Ah)や計465Wのソーラーシステムは他を圧倒している。更に瞬間湯沸かし機能はリバティ52DBを除いて他にない機能だ。
結論から言ってしまうと、温水シャワーを使うのなら、リバティ52DBか、このトリップⅡをお勧めする。温水シャワーは不要なら、ヴォーンエクスクルーシブLiがコストパフォーマンスの面で一歩リードしている。
温水シャワーはキャンピングカーの装備の中であまり必要性が高くない装備だったが、キャンピングカーを購入する動機で災害時の避難場所と言う理由が多くなるにつれ、温水シャワーが注目されつつある。
そのような状況下で温水シャワーを装備するなら、瞬間湯沸かし機能は非常に有用だ。トリップⅡはその点においても、真に「車内で暮らせる」モデルだと言える。
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