ヴォーンEXC(エクスクルーシブ)は、東和モータースが製作する、カムロードをベース車にしたキャブコンキャンピングカー。
同社は、カムロードベースのヴォーンシリーズの他、ツェルトキリマのようなハイエースバンコン、軽キャブコンのインディ108、軽バンコンのクライン108アーレ、更に輸入モーターホームもあり、幅広いラインアップを扱っている。
ヴォーンシリーズには5m超のヴォーンエクスクルーシブの他、5m未満のヴォーンノインR2BとヴォーンDCが選択できる。ヴォーンDCはリアエントランス、R2Bはセンターエントランスで、EXCはR2Bのレイアウトを踏襲している。
ヴォーンシリーズはナッツRVのクレアの姉妹車で、ヴォーンEXCはクレア5.3Wに、ヴォーンR2Bはクレア5.0Wに相当する。なおリアエントランスのヴォーンDCはクレアに相当するモデルが無く、ヴォーンシリーズ特有の存在となっている。
(記事中の価格は全て税込です)
コンセプト
ヴォーンEXCは5mを超える車長を持ち、ヴォーンR2BやヴォーンDCとは異なり、5mの制限に縛られない室内空間を実現している。その差は後部2段ベッドに現れており、ヴォーンR2BとDCのベッドサイズは1920x800mmなのに対し、ヴォーンEXCでは1920x1000mmとなっている。
乗車定員7名(4WD車とダブルタイヤ車は6名)、就寝定員6名で、ファミリーにも対応する。もちろん二人旅にも適しており、2段ベッドではプライベートな時間を過ごすことができる。
また、後部2段ベッドのベッドボードを取り除くと自転車やサーフボードのような大きな荷物も収納できる。
冷蔵庫や電子レンジ、常設コンロが標準装備され、またエアコンも標準装備されるため、装備に加え快適性も確保されている。なお、リチウムイオンバッテリーを標準装備した「ヴォーンEXCLUSIVE
Li」も選択できる。
更に、電装系はナッツRVが開発した「EVOLUTIONシステム」を全車に標準装備する。
エクステリア
ヴォーンEXCのエクステリア
ベース車はトヨタ カムロード。これにアルミパネルのシェルを架装している。これにより断熱性と軽量化を図っている。
外装色は、「スチールブルーメタリック」、「ボストンブルーメタリック」、「バロックレッドメタリック」、「ホワイト」の4色から選択できる。上の写真は「ホワイト」。
インテリア
2種類から選択できるインテリア
同社のモデルのインテリアは、欧州車のようなナチュラルトーンで仕上げられた洗練さが特徴だが、ヴォーンシリーズも同様に美しいインテリアになっている。
インテリアカラーは「シュタイン」と「ショコラーデ」の2種類から選択できる。展示車の写真は「シュタイン」。
レイアウト
センターエントランスを採用し、前部に対座ダイネット、中央にギャレーと多目的ルーム、後部に常設横置き2段ベッドを配置する。
これはキャブコンでは最も一般的なレイアウトのひとつ。このレイアウトの特徴は、2段ベッドを採用することにより、前部へのスペース浸食を抑え、無理なく多目的ルームと対座ダイネットを両立させることができる。
また、ダイネットに4名乗車でき、フロントシートの3名と合わせて計7名の乗車が可能で、更に2段ベッドの他、バンクベッドとダイネット展開ベッドで6名の就寝が可能なことにより、大勢のファミリーにも対応できる。
4名のファミリーなら全員が前向き乗車でき、ダイネットをベッド展開することなく就寝できる。
更に、後部のベッドマットを取り除くと自転車等の大きな荷物を積むことができるのもメリットで、大きな荷物を積んでも、二人使用ならバンクベッドで就寝でき、ダイネットをベッド展開する必要が無い。
ダイネット
4名が対座できるダイネット
2列目と3列目シートはいずれも固定シートで、4名が対座できる。3列目の前向きシートには3点式シートベルトがあり、、従ってフロントシートと3列目シートで計4名が3点式シートベルトで前向き乗車できる。
エントランス部にサブシートを設置できる
また、単座のサイドシートもあり、エントランス部にサブシートを設置すると、計6名でテーブルを囲むことができる。
ベッド
最後部の2段ベッド
ベッドは最後部の2段ベッドがメインベッドで、ヴォーンEXCでは上下段とも1920x1000mmのベッドサイズ。これは家庭用ではシングルベッドの幅より広く、窮屈感は全くない。
ちなみに全長が5mを切るヴォーンR2Bではベッドサイズは1920×800mmで、幅が狭くなる。
引き出してセットするバンクベッド
バンクベッドはベッドボードを引き出してセットする。1850x1800mmの大きさで、家庭用ベッドではキングサイズの幅に相当する。大人3名が就寝できる。
ダイネット展開ベッド
最後にダイネット展開ベッドは1800x900mmの大きさで、家庭用シングルベッドの幅(970mm)に満たない。ここでは1名が就寝できる。
ベッド展開は、テーブルを台座にしてその上にシートバックを乗せる。マルチモードシートのベッド展開よりは簡単だが、多少の作業は必要だ。
ギャレー
2口コンロ一体型のシンクがビルトインされたギャレーセクション
ギャレーは左サイド中央に配置されており、2口コンロ一体型のシンクがビルトインされている。
ギャレーの天板には多少の調理スペースが残されているが、調理面としては十分ではない。しかし、ギャレー右側に跳ね上げ式のサイドテーブルが用意されており、これをセットすると、広い調理スペースが得られる。
各19Lの給排水タンク
シンクの下には各19Lの給排水タンクを収納している。エントランスの近くではあるが、車外から直接出し入れすることはできないので、多少不便ではある。
照明付きのキッチン換気扇
コンロの上には照明付きのキッチン換気扇が標準装備されており、煙や臭いの出る料理をしても車内にこもることは無い。
またギャレー上にはオーバーヘッド収納が設置されており、食器や調理器具などを収納しておくことができる。
冷蔵庫/電子レンジ
90L冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は90L横開き式冷凍冷蔵庫が標準装備される。大型の冷蔵庫なので、ファミリー分の食材を保存しておくことができる。また、独立した冷凍室があるので、冷凍食品の保存や製氷もできる。
電子レンジも標準装備される
電子レンジも標準装備され、ギャレーの上部に設置される。1500Wのインバーターも標準装備されるので、外部電源が取れないところでも電子レンジを使用することができる。
多目的ルーム
防水処理がされた多目的ルーム
多目的ルームは防水処理がされており、排水口も用意されている。ここにはカセットトイレあるいはポータブルトイレを設置してトイレルームとすることができる他、温水シャワーも設置できる。ただし残念ながら4WD車には設置できない。
温水シャワーを設置する場合は、温水キットと、ラジエーターの熱交換か電気ヒーターで加熱する22Lの温水ボイラーの他、各60Lの給排水タンクに交換する必要がある。
なお、多目的ルームへは外部から直接アクセスできるドアが付いており、スキーウエアや水着など濡れたものを車外から直接入れておくことができる。
また、FFヒーターの吹き出し口も用意されているので、トイレ時に寒い思いをすることは無く、また乾燥室としても利用することができる。
収納
ダイネット上のオーバーヘッド収納
オーバーヘッド収納は、ダイネット上、ギャレー上と後部上段ベッドに設置されている。いずれも奥行きがあり、大きな収納力がある。
後部ベッド下の外部収納
その他の収納は後部ベッド下の外部収納がある。ベッドボードが設置してある状態でも下段ベッドボード下に収納スペースがあり、十分な収納が可能となっている。また、前述の通り、ベッドボードを取り除くと、自転車等の大きな積載物を積むことができる。
空調
家庭用エアコンが標準装備される
暖房はFFヒーターがオプション設置されており、冷房は家庭用エアコンが標準装備される。室内機はエントランスの上に設置され、室外機は車体後部右側に収納されている。なお、ベンチレーターはMAXファンが標準装備される。
テレビ/ナビ
テレビのオプション設定は無いが、取り付けは可能だろう。またナビは持ち込みを含め、希望のものを取り付けできる。
電装系
115Ahのディープサイクルバッテリーが3個標準装備される
115Ahのディープサイクルバッテリーが3個標準装備される。ヴォーンEXCには、ナッツRVのクレア/スティングと同様のEVOLUTIONシステムが搭載されており、アイドリングだけでサブバッテリーを充電できる。
なお、ヴォーンR2BやDCにはCTEKを使用した電装系が採用されており、これはナッツRVのクレソンジャーニーに採用されているEVOLITE(エボライト)システムと同等のものと思われる。
ヴォーンEXCには「ヴォーンEXCLUSIVE Li」というバージョンも用意されており、これはリチウムイオンバッテリー(100Ah x4=400Ah)を標準装備する。ナッツRVのハイパーエボリューションシステムと同等のものと考えられる。
なお、ヴォーンR2B、DCにはリチウムイオンバッテリーを搭載するバージョンは用意されていない。即ち、ナッツRVではクレソンジャーニーに設定されている「EVOLITE
Li」は設定されていない。
価格(2021年4月現在:千円台切り上げ:税込)
ガソリン2WD/4ATは812万円~、ディーゼル2WD/4ATダブルタイヤは896万円~。またリチウムイオンバッテリーを搭載するヴォーンEXCLUSIVE
Liは2WD/4ATが900万円~、ディーゼル2WD/4ATダブルタイヤが984万円~となっている。
付けておきたいオプションはFFヒーター(253,000円)が挙げられる(ナビ関連は除く)。また必要に応じて、カセットトイレ(136,620円)、ポータブルトイレ(27,500円)や温水シャワーシステム(計354,640円)、スタビライザーと足回り強化(162,360円)、サイドオーニング(136,620円:手動)、走行用リアクーラー(214,500円)、走行用リアヒーター(101,200円)などが挙げられる。
なお、リチウムイオンバッテリーバージョンのヴォーンEXCLUSIVE Liは、予算があれば是非お勧めしたい(88万円高)。エアコンがより実用的に使用できる。
他モデル
カムロードベースで同じレイアウトを持つモデルは、まずナッツRVのクレア5.3Wエボリューション(935万円~:ガソリン2WDダブルタイヤ)がある。リチウムイオンバッテリーを搭載するハイパーエボリューションは918万円~。
これらはヴォーンEXCの姉妹車的存在なので、機能やレイアウトに大きな違いは無い。
その他のモデルとしては、アネックスのリバティ52DB(1078万円~:ディーゼル2WDダブルタイヤ)、ダイレクトカーズのトリップⅡ(1099万円~:ディーゼル2WDダブルタイヤ)、バンテックのジル520(1068万円~:同)が挙げられる。
まとめ
ヴォーンEXCは洗練されたインテリア、充実した標準装備、リーズナブルな価格設定と死角がなくバランスの良いモデルだ。これはヴォーンEXCよりも多少高価だが、姉妹車のクレア5.3Wエボリューションにも言える。
ただし、リバティ52DB、トリップⅡ、ジル520がヴォーンEXCやクレア5.3Wエボリューションよりも高価なのは、カセットトイレ、FFヒーター、温水シャワーが標準装備されているため。更に、リバティ52DBとトリップⅡにはリチウムイオンバッテリーと瞬間湯沸かし装置も標準装備される。
これらの装備をヴォーンEXCやクレア5.3Wエボリューションに追加すると、リバティ52DB、トリップⅡ、ジル520と同等かむしろ高価になってしまう。
即ち、最新の装備や機能を求めるならリバティ52DBやトリップⅡ、温水シャワーやカセットトイレが不要でできるだけ低価格に抑えたいならヴォーンEXCやクレア5.3Wエボリューションが適している。
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