アンソニースペンドはAtoZが製作する、カムロードをベース車にするキャブ・コンバージョン キャンピングカー。
同社はフラグシップのカムロードキャブコン「アンソニー」シリーズから、タウンエースベースのバンコン「アンナ」シリーズまで、多くのモデルをラインアップしているビルダー。ちなみに同社のモデル名は全て「A」で始まる。
アンソニーシリーズはカムロードをベース車にするキャブコンだが、標準トレッドのカムロードを採用しているのが特徴。このため、ワイドトレッドを採用している他のカムロードキャブコンに比べ車幅が2mを切り、一般的な駐車枠にも収まる。
アンソニーシリーズには、センターエントランスで後部に2段ベッドを持つ「アンソニー」、リアエントランスで広いダイネットを持つ「アンソニーLE」、多目的ルームを廃して更に車長を短くした「アンソニーライト」がある。これらはガソリンエンジンの2WDのみ選択できるが、アンソニースペンドではガソリン2WDに加え、ディーゼル2WDと4WDが選択できる。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
トヨタカムロード標準トレッドをベース車にするキャブコンキャンピングカー。これにFRP製のシェルを架装している。標準トレッドを採用しているため、車幅が2mを切り、一般的な駐車枠に駐車することができる。
後部に大きなリアゲートを持ち、また後部は広いラゲッジスペースとなっているため、自転車等の大きな荷物を積み込むことができる。前部には対座ダイネット、ギャレーがあり、クーラーも装備できるため、快適な車内と広いラゲッジスペースが共存する。
後部のラゲッジスペースの上にベッドボードを設置すると2名が就寝できるハイマウントベッドになり、バンクベッド、ダイネットベッドとともに、計7名が就寝できる。
アピールポイント
・標準トレッドでスリムな車幅
・後部に大きなリアゲート
・大きなラゲッジスペース
・3種類のインテリアカラーテーマを用意
・クーラーを設置可能
・カムロードキャブコンの中では比較的低価格
ベース車とエクステリア
アンソニースペンドのエクステリア
ベース車はトヨタ カムロード 標準トレッド。ガソリン2WD、ディーゼル2WD、ディーゼル4WDが選択できる。ミッションは6ATのみ。リアは全てダブルタイヤを装着している。
このベース車にFRP製のシェルを架装している。標準トレッドのため、車幅は2m以下を実現しており、全長も5m以下なので、一般的な5x2mの駐車枠にも駐車できるし、自宅の駐車場に入れる可能性も高くなる。
外観上の特徴は大きなリアゲート。カムロードキャブコンでこのようなゲートを持つモデルは少ない。後部には大きなラゲッジスペースが設けられており、車外から大きな荷物を積み込むことができる。
インテリア
「朱夏」のインテリア
同社のモデルはインテリアコーディネーターの手によるインテリアカラーテーマが用意されており、アンソニースペンドにも「橙香」、「朱夏」、「銀花」と名付けられた3種類のカラーバリエーションが用意されている。
家具色は同社のモデルに共通する白木の木目調で、この部分のカラーバリエーションは無いようだ。
ルーフの木目調デザイン
ルーフも同じ木目調のデザインフレームが施されており、高級感とお洒落感がある。
レイアウト
アンソニースペンドのレイアウト
前部に対座ダイネット、左サイドにギャレー、後部にハイマウントダブルベッドをの構成。多目的ルームは無い。トイファクトリーのバーデンに代表される、バンコンで一般的なレイアウトをキャブコンに取り入れた格好だ。
このようなレイアウトはカムロードキャブコンでは珍しく、ダイレクトカーズの江の島が思い当たる程度だ。しかし、大きなリアゲートがあれば、荷物の積み込みだけでなく、通風面や雨天時の雨除けなど、バンコンの良いところをキャブコンに取り入れることができる。
ダイネット
4名が対座できるダイネット
2列目シートと3列目シートで4名が対座できるダイネットを形作っている。多くのカムロードキャブコンと異なるのは、シートにマルチモードシートを採用している点。
しかし背後にボードがあるのでリクライニングできないし、セキソーボディのトムタンデムのように2列目シートが前向き乗車できるとは記述されてないので、マルチモードシートを採用した理由は今一つ不明だ。
マルチモードシートを横にスライドし、サブマットをはめ込むことにより2名就寝を可能にできるのが理由かもしれないが、固定シートでも幅の拡張は可能だし、ベッド展開は、他モデルのように背もたれを移動するだけの方が楽だ。
ダイネット横には大きなアクリル2重窓があり、明るいダイネットになっている。アクリル2重窓にはもちろん網戸とシェードが組み込まれているので、即座にプライバシーを確保できる。
ベッド
ベッドは3か所にあり、計7名が就寝できる。
後部のハイマウントダブルベッド
まず、後部のハイマウントダブルベッドは、大きさが1800x1270mm。1270mmは家庭用ではセミダブルベッドの幅(1200mm)よりも広い。車幅が狭い影響はこのベッドに出ており、ベッドの長さ(車幅方向)は1800mmに留まる。長身のユーザーは足がつかえないか確認することをお勧めする。
クイーンサイズベッドよりも広いバンクベッド
次はバンクベッド。大きさは1950x1700mmで、ベッド幅は家庭用のクイーンサイズベッドの幅(1600mm)よりも広い。もちろん2名がゆったり就寝できる。このベッドは、使用しない場合は手前のベッドエンドが扉として機能するので大変便利だ。
セミダブルベッドの幅以上の幅があるダイネットベッド
最後に、ダイネットを展開しサブマットを入れてできるダイネットベッド。大きさは1900x1230mmで、家庭用のセミダブルベッドの幅(1200mm)よりも広い。
ギャレー
左サイドに設置されているギャレー
左サイドに設置されているギャレーキャビネットには、シンクとフォーセットが設置されている。コンロは無く、8ナンバー取得のための調理器具は電子レンジで代用されている。
コンロが必要な場合は、使用するごとにカセットコンロをセットする必要がある。常設コンロが無いので、頻繁に調理をするユーザーには面倒な作業だ。
ディーゼル車の95L給水タンク
シンクの下には各20Lの給排水タンクが収納されている。なお、ディーゼル車は95Lの給水タンクに変更される。温水シャワーがあるわけではないので95Lもの水が必要なのか疑問ではある。
冷蔵庫/電子レンジ
49L横開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は49L横開き式が標準装備される。冷凍室があるので、製氷や冷凍食品の保冷が可能で、上開き式と異なり、冷蔵と同時にできるのも嬉しい。冷蔵庫はギャレーキャビネットのエントランス側に設置されているので、車外からアクセスする場合も便利だ。
電子レンジも標準装備される
電子レンジは先述のように8ナンバー取得のための調理器具として標準装備される。もちろん8ナンバー取得の目的ではなく、実用面でもクルマ旅には必需装備と言える。ただしこの設置位置は、ベッドがセットしてあると多少使いにくい位置ではある。
外部電源が無いところでも電子レンジを使用したい場合は、オプションのポータブル電源を使用する。
多目的ルーム
アンソニースペンドには多目的ルームは設置されていない。しかし緊急用にポータブルトイレを積んでおくことは可能で、子供なら後部のラゲッジスペースで用を足すことができるだろう。(場合によっては大人も?)
収納
アンソニースペンドには収納が豊富に用意されている。
ダイネット両側にオーバーヘッド収納が設置される
まず、オーバーヘッド収納はダイネット上部とギャレー上部、そしてベッドルーム上部に設置されている。食器や調理用具はオーバーヘッド収納に収納しておくと埃が付き難い。
後部ベッド下両側にあるキャビネット
次に、後部ベッド下の広いカーゴスペースは既に記した通りだが、その両側にあるキャビネットも大きな収納スペースになっている。
エントランス横のシューズボックス
エントランス横にはシューズボックスも用意されている。
空調
家庭用ポータブルクーラーを選択することもできる
展示車には車載用セパレートクーラーが装備されていたが、家庭用ポータブルクーラーを選択することもできる。これはエントランス横のシューズボックスの上に設置される。
同車の場合セパレートクーラーの室外機はルーフ上に設置するため、車高が高くなるデメリットがある。また、設置の容易さや価格的にも、ポータブルクーラーの方が有利だ。ただし冷却能力は車載用セパレートクーラーが有利。
暖房はFFヒーターがオプションで用意されている。またマックスファンベンチレーターもオプションとなっている。
テレビ/ナビ
テレビがオプションで設置できる
画面サイズは書かれていないが、テレビがオプションで設置できる。設置場所はエントランス横のシューズボックスの上なので、上記のポータブルクーラーを設置する場合、テレビは設置できない。
ナビは特にオプションで用意されていないが、好みのものを装着できる。
電装系
標準では、105Ahのディープサイクルバッテリーが1個、走行充電、外部100V電源入力とチャージャーが装備される。インバーター、ソーラーシステムはオプション。
オプションでポータブル電源が用意されている
オプションでポータブル電源が用意されており、外部電源入力用のコネクターが車内にも設けられている。クーラーを設置する場合は、2000Wh以上のものを選ぶと良いだろう。
価格(2023年8月現在:千円台切り上げ:税込)
ガソリン 2WDの車両本体価格は735万円~。ディーゼル2WDは867万円~、ディーゼル4WDは889万円~となっている。
付けておきたい必需オプションは、FFヒーター、マックスファンベンチレーター、クーラー、ポータブル電源が挙げられる。(価格はいずれも不明)夏場にキャンピングカーを使用するなら、クーラーは必需品と考えておいた方が良い。
他モデル
リアゲートが大きく開くカムロードキャブコンでは、ダイレクトカーズの江の島(998万円~)がある。ディーゼル2WDの価格で、後部には電動で昇降するベッドが標準装備されているが、ワイドトレッドでもありアンソニースペンドとは価格差が大きい。
標準トレッドを採用するモデルには、キャンパー厚木のパピーシリーズがある。ファミリー向けのパピー480(832万円~:ガソリン2WD)は家庭用エアコンを含めほとんどの必需装備が標準装備されている。
まとめ
アンソニースペンドを購入する理由は大きなリアゲートに尽きるので、一般的なキャブコンは比較対象にはならないだろう。その意味ではダイレクトカーズの江の島しか選択肢が無く、しかも価格的には全く異なるので、アンソニースペンドにはほぼライバルがいない。
このレイアウトは、バンコンでは一般的なのにキャブコンでは少数派だ。大きなラゲッジスペースや、雨の日に雨除けにしたり、フルオープンにして涼んでいるバンコンユーザーを見て、リアゲートがあれば良いと思うキャブコンユーザーは少なくないと思うのだが。
アンソニースペンドは「少し特殊な」キャブコンモデルと感じられるかもしれないが、例えばナッツRVのクレソンジャーニーTypeXの後部に大きなリアゲートを付けたと思えば分かりやすいのかもしれない。むしろ、クレソンジャーニーTypeXになぜリアゲートが無いのか、という見方もできるのではないだろうか。
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