「江の島」はダイレクトカーズが2022年ジャパンキャンピングカーショーで発表した、トヨタ カムロードをベース車にする5m未満の全長を持つキャブコンキャンピングカー。
同社はハイエースバンコンを多数ラインアップするが、「トリップ」シリーズをはじめとするカムロードキャブコンやハイエースをベース車にする「モビリティホーム」もラインアップしている。
「江の島」は昨年発表された「伊勢志摩」に続く5m未満のカムロードキャブコンの第2弾で、名前は同社の直営店が神奈川県厚木市に開設されたのに由来している。ちなみに「伊勢志摩」は同社の本社がある三重県に由来している。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
コンセプト
カムロードをベース車にする5m未満のキャブコンで、リアエントランスのレイアウトを採用。前部には広いラウンジソファダイネットを配置する。
リアには電動昇降式のシングルベッドを備え、下段にベッドボードをセットして2段ベッドになる。ダイネットを展開したベッドとバンクベッドで計7名が就寝できる。
車載用セパレートクーラーとリチウムイオンバッテリー、ソーラーシステムを標準装備し、同社のモデルらしく強力な電装系を持つ。また、トリップシリーズでおなじみの32型大画面テレビも標準装備される。
クルマ旅と言うよりは、仲間やファミリーで車中泊を伴うアウトドアアクティビティを楽しむのに適している。
アピールポイント
・大勢が座れる広いラウンジソファダイネット
・大きな荷物が積み込めるリアゲート
・電動昇降式リアベッド
・エアコンとリチウムイオンバッテリー標準装備
・355Wのソーラーシステム標準装備
エクステリア
江の島のエクステリア
ベース車はトヨタ カムロード ワイドトレッドダブルタイヤ。新型カムロードは全車ダブルタイヤになる。これにFRPパネルのシェルを架装している。
シェル形状自体は「伊勢志摩」と同じで、5m未満の全長に収まっている。ボディカラーは「全塗装(要相談)」とされており、展示車は写真のようなカラーに塗装されていた。
インテリア
ブルーのアクセントカラーのインテリア
展示車は白を基調とした写真のような内装色を採用していた。ブルーのアクセントカラーは湘南の海をイメージしたカジュアルなインテリアだ。
照明はルーフエッジに間接照明を埋め込み、ラウンジシートと共に、雰囲気のある演出を行っている。
レイアウト
リアエントランスを採用しているため、定石通り前部に広いダイネットを配置している。しかし一般的な対座シートとサイドシートの組み合わせではなく、ラウンジソファを採用したのが新鮮だ。
前向き乗車はフロントシートの3名のみ(真ん中のシートは通常使わないので、実質2名)だが、ダイネットには6名が横座りで乗車できるので計9名が乗車できる。就寝定員は計6名となっている。
このレイアウトの特徴は、思い切って対座ダイネットや前向きシートを使わず、ラウンジソファにした点。また多目的ルームも廃し、大勢での長距離乗車やファミリーでのクルマ旅というよりは、大勢がラウンジソファで歓談するのに適したレイアウトだ。
就寝も6名なので、ファミリーや友人で車中泊を伴うアクティビティを楽しむベース基地として使うような使い方に適している。
ダイネット
ラウンジソファのダイネット
ラウンジソファが特徴のダイネットで、乗車定員の6~7名がテーブルを囲んで歓談できる。ダイネット(食事をする場所)と言うよりは、サロン的な空間だ。
ファミリーや仲間同士、あるいは趣味の集まりで使うのが適しており、どちらかと言うとレンタカーに向くレイアウトなのかもしれない。いずれにしても今までにない新しいコンセプトのレイアウトだ。
ベッド
電動昇降式の後部ベッド
ベッドは3か所あり、まずメインとなるのが後部の電動昇降式のシングルベッド。ベッドサイズは不明だが、大人が1名就寝できる。また、下に下段ベッドボードをセットでき、ここでも1名が就寝できる。
ただしこれらのベッドはエントランスと干渉するため、2段ベッド設置後は出入りがし難くなる。この辺りも多くの人数が就寝できることを優先させたことが分かる。
3名が就寝できるダイネットベッド
2番目のベッドはダイネットを展開してできるベッド。サイズは1770x1700mmで、ベッド幅は家庭用のクイーンサイズとキングサイズの中間に相当し、3名が就寝できる。
ただし身長方向は1770mmで1800mmに達していないので、正確には大人用ベッドにはカウントされない。
大人が2名就寝できるバンクベッド
3つ目はバンクベッドで、これは1960x1360mmの大きさ。1360mmは家庭用ではレギュラーダブルベッド(1400mm)に少し満たないが、ここでも大人が2名就寝できる。
ギャレー
シンプルなギャレーセクション
江の島のギャレーはシンプルで、ギャレーキャビネットにはシンクのスペースしかなく、調理スペースは無い。基本的に車内でコンロを使って調理することは想定されていないようだ。
シンクの下の給排水タンクと収納
ただし、シンクは実用的な大きさで、中皿程度は洗うことができるだろう。シンクの下には給排水タンクが収納されているが、タンクは奥の方にあり、手前は収納スペースになっている。タンクの出し入れも頻繁に行わないと想定しているようだ。
冷蔵庫/電子レンジ
85L横開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は85L横開き式が標準装備されており、十分な容量がある。缶ビールなどを大量に冷やしておくことができる。冷蔵庫の上には引き出し収納があり、カトラリーなどを収納しておける。
電子レンジも標準装備される
家庭用の100V仕様の電子レンジが標準装備される。ちょっとした温めものや冷凍食品の調理に重宝する。2000Wインバーターも標準装備されるので、外部電源のないところでも電子レンジを使うことができる。
多目的ルーム
江の島には多目的ルームが無い。これも思い切った決断だが、先述のような使用コンセプトなら多目的ルームを省いたのも頷ける。大勢が車内で酒を飲んで、トイレルームがあった場合、どのような状況になるか想像すると無い方が良いという結論になるだろう。
収納
ダイネット両側にオーバーヘッド収納が設置される
江の島の収納はキャブコンだけあって充実している。まずダイネット両側にオーバーヘッド収納が設置されている。
ギャレー上の収納
次に、ギャレー上に観音開きの収納があり、また同様のものが対面の電子レンジの上にも備え付けられている。
最後部の大きなカーゴスペース
最後に、これは収納と言うよりはカーゴスペースと言う方が適切だが、最後部には大きなスペースが用意されている。このスペースは昇降式ベッドの高さにもよるが、自転車やサーフボードなど大きな荷物を収納できる。
空調
車載用セパレートクーラーを標準装備
暖房はFFヒーターが標準装備され、冷房はオーバーヘッド収納内に車載用セパレートクーラー(CoolStar)の室内機が設置されている。
テレビ/ナビ
32型のテレビが標準装備される
同社のトリップシリーズに標準装備される32型のテレビが江の島にも装備された。設置場所も同じで、バンクベッドのベッドボードに設置されており、跳ね上げるとダイネットや後部ベッドから観ることができる。
テレビの両側には丸形のスピーカーもビルトインされており、車内でミニシアターを楽しむことができる。
電装系
同社はリチウムイオンバッテリーの標準装備を進めており、この江の島にも100Ahのリチウムイオンバッテリーが2個(=200Ah)標準装備されている。トリップシリーズでは400Ahの大容量が搭載されているので、心もとなく感じるかもしれないが、エアコンだけなら4~5時間の運転が可能だ。
大画面テレビや電子レンジを頻繁に使う場合はこれよりも短くなるが、355Wのソーラーシステムも標準装備されているので、実際は更に長時間の運転が可能と思われる。
なお、走行充電にはCTEKの昇圧システムも標準装備されているので、走行充電でも効率よく充電できる。また、2000Wのインバーターや外部電源入力と充電機能も標準装備される。
価格(2021年4月現在:千円台切り上げ:税込)
ディーゼルのダブルタイヤのみが選択可能で、2WDは948万円~、4WDが978万円~となっている。
ほとんどの必需装備は標準装備されているので、特に付けておきたいオプションは無い。ただし、助手席エアバッグはメーカーオプションなので、付けておきたい。(トヨタには是非標準装備にして欲しい)
また必要に応じて、サイドオーニング(242,000円)や足回り&強化ブレーキ(385,000円)も選択できる。
他モデル
5m未満のカムロードキャブコンで、同様のレイアウトを持つモデルは無い。ラウンジソファダイネットを持つモデルなら、キャンパー厚木の「パピィフルハウス:価格不明」、バンテックの「ジル480 Skip:775万円~」、ナッツRVの「クレソンジャーニーType R:974万円~」、それとダイレクトカーズの「伊勢志摩:779万円~」が挙げられる。(パピーフルハウスを除きディーゼルダブルタイヤ2WD/AT。クレソンジャーニーType Rと伊勢志摩はエアコンとリチウムイオンバッテリー装備)
ただしこれらは全て、どちらかと言うと二人旅を想定したもので、江の島のような「自転車やサーフボードを積んでアクティビティを楽しむ」というコンセプトではない。もちろんそのような用途でも使えるが、江の島は積極的にアクティビティ用途に振ったレイアウトだ。
まとめ
上記の通り江の島は今までにないコンセプトのキャブコンと言える。想定されるシチュエーションは、サーファー仲間数人がサーフボードを積み込んでサーフィンを楽しみ、夜はダイネットで宴会、あるいは自転車を積み込んだファミリー(あるいは2人)が遠出のサイクリング、と言ったところだろうか。
ダイレクトカーズのニューモデルは常に何か新しいことを提案しているが、江の島もキャブコンの新しいカテゴリーになるのかもしれない。繰り返しになるが、レンタカーで用意されていれば、人気になるのではないだろうか。
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