伊勢志摩はダイレクトカーズが製作する、カムロードをベース車にした5m未満のキャブコンキャンピングカー。
同社はハイエースベースのバンコンを多数ラインアップするが、2019年のハイエースベースの「モビリティホーム」、2020年のカムロードベースの「トリップ」でキャブコンマーケットにも参入。2021年には一挙に「トリップⅡ」「トリップⅢ」、そしてこの「伊勢志摩」を発表した。
トリップシリーズが5m超のキャブコンに対し、この伊勢志摩は5m未満の全長となっている。また、トリップシリーズがエアコンを標準装備するのに対し、伊勢志摩はオプションとなっている。
（記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。）
コンセプト
同社初の5m未満のカムロードキャブコン。ラウンジソファシートのダイネットと後部横置き2段ベッドを持つ二人旅仕様。多目的ルームも配置するが温水シャワーの設定は無い。
100Ahリチウムイオンバッテリーを標準装備するが、エアコンはオプションとなり、基本はシンプルな構成で、必要な装備のみ選択することができる。
車名からも分かる通り、同社の本社がある三重県をイメージしており、同県の伝統工芸を取り入れたインテリアを持つ。
アピールポイント
・全長5mを切るカムロードキャブコン
・ラウンジソファダイネットを採用した二人旅仕様
・標準ではシンプルな装備
・100Ahリチウムイオンバッテリー標準装備
・エアコンはオプションで装備可能
・大画面映像が楽しめるプロジェクター
・自転車も積める両側の外部収納扉
・三重県の伝統工芸を取り入れたインテリア
エクステリア
伊勢志摩のエクステリア
ベース車はトヨタカムロード。これにFRPパネルシェルを架装している。5mを切る全長でトリップシリーズに比べてコンパクトなボディとなっている。なお標準トレッドとワイドトレッドが選択できるが、様々な面からワイドトレッド（ディーゼル2WDダブルタイヤ）が良いだろう。
トリップシリーズ同様、バンクを持つシルエットを持つ。エントランスドアは2重になっており、内側の扉は防虫ネットになっている。架装部の全てのウインドウはアクリル2重窓で、断熱性に優れている。
後部両側にはベッド下収納へアクセスする扉が付いており、自転車等の大きな荷物も積むことができる。
インテリア
伊勢木綿を使用したインテリア
展示車のインテリアは上の写真のようなものだが、これはオプションの「伊勢木綿」を使ったもの。オプションではなく標準仕様のシート地がどのようなものかは不明だ。
家具の作りは高級感があり、オーバーヘッド収納の扉にはゆっくりと閉まるソフトクローズ機能が付けられている。
レイアウト
前部にダイネット、後部に横置き常設2段ベッド、中央にギャレーと多目的ルームのレイアウト。ダイネットがラウンジシートのため、動線が途切れることは無く、前後の移動はスムース。ただし、運転席、助手席から後部に移動する場合は、ベルクロで固定してあるシートバックを倒す必要がある。
このレイアウトの特徴は、後部に横置き2段ベッドを採用したため、前部への浸食が少なく、そのため多目的ルームを配置してもダイネットに余裕がある。またダイネットも対座のように決まったスペースを要しないため自然な配置が可能となっている。
ダイネット
ラウンジソファのダイネット
伊勢志摩の特徴は、ラウンジソファダイネットを採用することにより、二人旅使用に適していること。乗車人数は6名なので、ラウンジソファに4名が乗車できるが、長距離ドライブには向かない。
ベッド
ダイネットを展開したダイネットベッド
テーブルを下げてL字型ソファの2か所のシートバックを取り外し、エントランス部に支柱をセットしてシートバックを中央に並べると、1880x1400mmのベッドになる。テーブルは中央に仕込まれたハンドルを開店すると、連続的に上下する。
バンクベッド状態では2名が就寝できる
バンクベッドは1960x1360mmの大きさで、ここでも大人が2名就寝できる。1360mmは家庭用ではレギュラーダブルベッド（1400mm）に少し満たない程度。
バンクベッドは使用しない場合は跳ね上げておくことができ、キャブ上に圧迫感を感じることは無い。ダンパーが付いているので、上げ下ろしはスムースに行うことができる。
後部の横置き2段ベッド
後部横置き2段ベッドが常設ベッドで、上段が2000x750mm、下段は1920x750mmの大きさだ。750mmと家庭用のシングルベッドの幅（970mm）に満たないが、キャンピングカーの要件（500mm）は十分に満たしている。ちなみにトリップⅡのベッド幅は上下段とも790mmだ。
ギャレー
ギャレーセクション
ギャレーは左サイド中央に置かれており、天板には丸形シンクとフォーセットが埋め込まれている。中皿程度までは洗える実用的なシンクだ。コンロはカセット式ポータブルコンロを使う度にセットする。
天板は十分な広さがあり、コンロを置いても調理スペースは残されている。また、下には給排水タンクが収納されているほか、引き出し収納もあるので、カトラリーや食器などを収納しておくことができる。
冷蔵庫/電子レンジ
85L冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は85L横開き式が標準装備される。二人旅なら十分な容量だ。もちろん製氷室もあるので、水割り用の氷を作ることもできる。
電子レンジはオプションリストに無いが、搭載することは可能だろう。1500Wのインバーターもオプションなので、一緒に装備する必要がある。電子レンジの設置場所は記載されていないが、ギャレーコンソールの下部やギャレー上部のオーバーヘッド収納などが考えられる。
多目的ルーム
右サイド中央に配置される多目的ルーム
多目的ルームは右サイド中央に配置されており、ポータブルトイレを置いてトイレルームにすることができる。カセットトイレが設置できるかどうかは記載が無いが、特に問題はないだろう。なお、換気扇はオプションで設置することができる。
多目的ルームには車外への扉があり、車外から直接荷物を出し入れすることができる。ポータブルトイレの処理もこの扉を使えば車外からできる。
ただし、室内は防水処理は無く排水口も無いため、濡れたものや水を使いことはできない。温水シャワーも想定されていないが、必要であれば相談すると良いだろう。
収納
ダイネット上のオーバーヘッド収納
まずオーバーヘッド収納がダイネットの左右上部とギャレー上部に設置されている。特にダイネット上の収納は3連で大きな容量を持つ。
車外からシート下収納にアクセスできる
次に、ダイネットシート下が収納スペースになっており、大き目のバッグなどを収納しておける。なお、シート下収納には車外からもアクセスすることができる。
ベッドボードを取り外すと自転車等も積める
更に、後部2段ベッド下に外部収納があり、車外両側からアクセスすることができる。もちらん車内からもアクセスが可能で、下部に扉がが設けられている他、ベッドマットを持ち上げてもアクセスできる。
また、後部横置き2段ベッドのメリットを生かして、ベッドボードを全て取り除くと大きな収納スペースになる。両側の扉は縦長になっているので、自転車等も積み込むことができる。
空調
クーラーがオプション設定されている（写真はTRIP2のもの）
暖房はFFヒーターがオプション設定されている。また冷房はクーラーがオプション設定されている。トリップと同じなら、CoolStarが、ダイネット上のオーバーヘッド収納の中に取り付けられると思われる。（上の写真はTRIP2のもの）
テレビ/ナビ
バンクベッドの裏側を使うプロジェクター
伊勢志摩にはトリップシリーズで標準装備されている32型大画面テレビは搭載されていない。しかし、その代わりにプロジェクター（OP）を採用した。スクリーンはトリップと同じバンクベッドの裏側だ。
プロジェクターならテレビほどコストはかからないし、取り付けコストもかからない。低価格を達成しながら大画面を実現する優れたアイデアだ。これに限らず、同社の今までになかったものを取り入れる発想力は素晴らしい。
なおナビはフルセグのナビがオプションで用意されている。なお、このプロジェクターはAndroid TVを搭載しているので、ネット環境があれば様々なアプリで視聴できるし、スマートフォンとも接続可能だ。
電装系
サブバッテリーは100Ahのリチウムイオンバッテリーが1個と走行充電が標準装備される。トリップシリーズのように大容量ではないが、エアコンや電子レンジが無ければ1個でも十分だ。ただし、エアコンを装備する場合は、オプションの追加バッテリーをお勧めする。
また、外部100V電源入力と充電機能が標準装備される。また、1500Wインバーターと165Wソーラーシステムがオプション設定されている。クーラーや電子レンジを装備する場合はインバーターも同時に装備しておくとサブバッテリーでも使用できる。
価格（2021年4月現在：千円台切り上げ：税込：ナビ関連は除く）
ガソリンダブルタイヤ2WDで676万円～、ディーゼル2WDワイドトレッド ダブルタイヤが779万円～となっている。
付けておきたいオプションは、FFヒーター（220,000円）、1500Wインバーター（132,000円）、ベンチレーター（55,000円）が挙げられる。
予算に余裕があれば、クーラー（418,000円）、リチウムイオンバッテリー増設（220,000円）、165Wソーラーシステム（165,000円）を付けておきたい。これらをすべて付けるとガソリンダブルタイヤ2WDで797万円～、ディーゼル2WDワイドトレッドダブルタイヤで900万円～となる。
他モデル
5m未満のカムロードキャブコンは多くあるが、横置き2段ベッドと多目的ルームを持つモデルに絞ると、以下のようなモデルがある。
・M.Y.Sミスティックのアンセイエ（746万円～：ディーゼル2WD）
・AtoZのアンソニーライト（647万円～：ガソリン2WD）
・東和モータース販売のヴォーンノイン R2B（834万円～：ディーゼル2WDダブルタイヤ、エアコン、FFヒーター、リチウム200Ah装備）
・ナッツRVのクレア5.0タイプW （1118万円～：ディーゼル2WDダブルタイヤ、エアコン標準装備）
・ナッツRVのクレソンジャーニータイプW（974万円～：ディーゼル2WDダブルタイヤエボライトLi、エアコン、FFヒーター、400Ahリチウム標準装備）
・バンテックのコルドバンクス（898万円～：ディーゼル2WDダブルタイヤ、エアコン標準装備）
・ファンルーチェのイグアス Type-W（668万円～：ディーゼル2WD）
このうち、エアコンとリチウムイオンバッテリーを装備できるモデルは、ヴォーンノイン R2B、クレソンジャーニータイプの2モデル。装備と価格的に伊勢志摩と近いのはヴォーンノイン
R2Bになる。
ヴォーンノイン R2Bはオプションで温水シャワーも装備可能。一方、伊勢志摩はラウンジソファダイネットを持つ唯一のモデルだ。自宅のリビングのようなラウンジソファダイネットは、他のモデルにない大きな魅力だろう。
まとめ
伊勢志摩は標準装備なら比較的安価だが、それだけでは折角のキャブコンの快適さが得られない。クーラーを含め必要な装備を付けると、それなりの価格になる。伊勢志摩は安価に乗るモデルではなく、ラウンジソファで快適に寛いで過ごしたいモデルだ。
エアコンも電子レンジも装備しないなら、ディープサイクルバッテリーで事足りる。折角リチウムイオンバッテリーが標準装備されているので、やはりエアコンは装備したい。エアコンが無く汗だくで過ごす室内に、ラウンジソファや伊勢木綿、伊勢型紙のインテリアは似合わない。
伊勢志摩は6名乗車、6名就寝ができるが、後部に前向きシートが無いため、二人旅に向いている。（ラウンジシートに座ってのロングドライブはお勧めしない）二人旅仕様とはどこにも書かれていないが、「優雅な二人旅」と言う言葉が似合うモデルと思う。
温水シャワーの設定が無いとのは弱点と言えば弱点だが、そこまでの装備は必要ないというユーザーには大きな問題ではない。むしろ展示車にクーラーと電子レンジがあれば、このモデルの位置付けが分かりやすいのではないだろうか。
なお、もちろん使い方はユーザー次第だ。大勢で乗車して大勢で就寝する使い方を否定するものではない。例えばファミリーやグループで、ラウンジで団欒するという使い方も十分考えられる。
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