ダイレクトカーズは2021年4月のジャパンキャンピングカーショーで、ニューモデル6車種を発表、展示した。発表されたニューモデルは以下の6車種。
・トリップⅡ Premium Mega
・トリップⅢ
・伊勢志摩
・リトリートNV Pop
・アウトギア
・アマホ
トリップⅡは従来モデルの「トリップ」がダブルベッドを持つレイアウトだったのに対し、横置き2段ベッドを採用。また、リチウムイオンバッテリーが4個、465Wのソーラーシステム等電装系が充実している。
トリップⅢは縦置き2段ベッドを採用したレイアウト。トリップⅡからさらに電源が強化されており、ソーラーパネルは1000W超え、リチウムイオンバッテリーは4個を標準装備する。
伊勢志摩は5m以下の車長で運転しやすく、広いラウンジソファダイネットと横置き2段ベッドを持つカムロードキャブコン。シンプル装備ながら各種装備をオプションで選択できる。
リトリートNV PopはNV200バネットをベース車にした、リトリートシリーズで5番目のモデル。ポップアップルーフを架装し、クーラーとリチウムイオンバッテリー2個を標準装備する、ペット同伴モデル。
アウトギアは以前から存在するハイエース標準ボディ標準ルーフをベース車にしたモデルで、新たにスーパーGLをベース車に採用。ベース車のグレードが上がっている。
アマホは同社初の軽キャブコンで、ダイハツハイゼットトラックをベース車に、ポップアップルーフを持つシェルを架装している。軽キャブコンながら2個のリチウムイオンバッテリーを標準装備、2000Wのインバーターとで大容量家電を車内で使える。
(記事中の価格は全て税込です)
トリップⅡ Premium Mega
「トリップ」は2020年のジャパンキャンピングカーショーで発表され、エアコン、IHコンロ、148Lの2ドア大型冷蔵庫、瞬間湯沸かし対応シャワールーム、200Ahリチウムイオンバッテリー、そして32型大画面テレビを標準装備した。
トリップは2020年夏に、リチウムイオンバッテリー3個(計300Ah)、2000Wインバーター、300Wソーラーシステム他が標準装備され、「トリップ Premium」として限定販売されたが、現在は正規モデルとなっている。
トリップⅡのインテリア
トリップⅡ Premium Megaは、トリップ Premiumの基本装備を(一部を除き)すべて引き継いだニューモデルで、新たに後部横置き2段ベッドのレイアウトに変更。加えて電装系が強化されている。
最も大きく変わった点はベッドスタイル。トリップ Premiumが縦置きダブルベッドを備えているのに対し、トリップ2では横置き2段ベッドとなっている。そのため前方向の寸法に余裕ができ、ダイネットが広くなり、ダイネット展開ベッドも子供用から大人2名が就寝できる大きさになった。
リチウムイオンバッテリーとソーラーシステムを組み合わせた同社独自の「HIパフォーマンスハイブリッドシステム」電装系も強化されており、リチウムイオンバッテリーは4個(400Ah)を標準搭載、またソーラーシステムは165Wと300Wの2枚構成(計465W)となっている。
カセットトイレがオプションになったサニタリールーム
なお、瞬間湯沸かし機能を備えたシャワールームも標準装備されるが、トリップで標準装備されたカセットトイレはオプションとなっており、シャワーと乾燥室としての機能が優先されている。
またIHコンロはシンク一体型のガスコンロに変更されているが、従来同様IHコンロを選択することも可能。
価格はガソリン2WDシングルタイヤで956万円~。(その他のグレードの価格は下の比較表を参照)
トリップⅢ
トリップⅢのエクステリア
トリップⅢは今回の展示会で初出展された最新モデル。サイズはトリップやトリップⅡと同じで、5mを超える車長を持つ。シェルは共通なので、トリップのレイアウトバリエーションモデルの第3弾の位置付けになる。
レイアウトは、対座ダイネットは同じだが、後部は縦置き2段ベッドとサニタリールームになっており、上段ベッドは跳ね上げることができる。
後部の縦置き2段ベッド
トリップⅢで話題になっているのが、1000Wを超えるソーラーシステム。さらにリチウムイオンバッテリーを4個(400Ah)標準装備しており、大容量ソーラーと大容量リチウムイオンバッテリーで、クーラーを長時間運転することができる。
クーラーの消費電力を600Wとすると、バッテリーだけだと8時間運転できることになる。しかしソーラーシステムで発電しながらだと、ソーラー発電だけでエアコンが動作する計算になる。もちろん、発電された電気は一旦リチウムイオンバッテリーに充電される。
なお、ソーラーパネルの容量は単純に大きければ良いということではない。その発電された大電気を流す太い回線と、受け止めるバッテリーが無いと意味が無い。
トリップⅢは4個のサブバッテリーを搭載しており、だからこそこれだけのソーラーパネルの意味がある。1105Wのソーラーパネルなので、単純計算すると、92Aの電流が得られる。これを4(個)で割ると、1個のサブバッテリー当たり23Aとなる。
鉛バッテリーではこのような大電流での充電はできないので、リチウムイオンバッテリーならではのソーラーシステムとなっているのだ。ちなみに、これも単純計算だが、100Ahのリチウムイオンバッテリーなら、約4時間半程度で満充電できることになる。(実際は効率や天候の影響でもっと時間がかかる)
なお、従来のトリップやトリップⅡでもトリップⅢと同じ1105Wのソーラーシステムを搭載できるとのことだが、その場合には4個のリチウムイオンバッテリーをはじめ、ソーラーシステムからの大電流を受ける環境が必要になる。
価格はディーゼル2WD/4ATダブルタイヤのみ発表されており、1099万円~。
伊勢志摩
「伊勢志摩」は、その名の通り、伊勢志摩の地元工芸品を取り入れたモデルで、「伊勢型紙」のインテリア窓や「伊勢木綿」縫製のシートがオプションで選択できる。
トリップシリーズ同様カムロードをベース車にするキャブコンだが、外観の違いはトリップシリーズが5150mmで5mを超える車長に対し、伊勢志摩は4990mmと5m以内に収まる。
また、車幅もトリップシリーズが2160㎜なのに対し、伊勢志摩は30mm短い2130mmとなっている。これにより取り回しが良くなるとともに、フェリー料金が安価になる場合もある。
伊勢志摩のインテリア
また、レイアウトはトリップシリーズとは異なるL型のラウンジソファダイネットが採用されており、優雅なダイネットになっている。
乗車人数は6名、就寝人数も6名となっており、大人数用のレイアウトという見方もあるが、前向き乗車できるシートは運転席と助手席のみなので、むしろ二人旅に適したレイアウトとも言える。
装備はトリップシリーズとは打って変わってシンプル装備となっており、冷蔵庫は85L、コンロはポータブルカセットガスコンロ、ユーティリティールームはあるが防水処理はされていない。
オプションのプロジェクター
また、トリップシリーズで標準装備される32型大画面テレビも付いていないが、オプションでプロジェクターが用意されており、さらに大きな画面で投影することができる。
電装系もシンプルで、リチウムイオンバッテリーは1個標準装備されるが、ソーラーパネル(165W)、クーラー、1500Wインバーターなどはオプションとなる。
価格はガソリン2WD/ダブルタイヤで632万円~、ディーゼル2WDダブルタイヤワイドトレッド仕様で702万円~、ディーゼル4WDシングルタイヤで712万円~となっている。
リトリートNV Pop
リトリートシリーズとしては5番目のモデルで、日産NV200バネットをベース車にポップアップルーフを標準で架装する。同社ではNV200は(ショーモデルとしては)初めてのベース車で、コンパクトバンコンにラインアップを拡充する。
リトリートNV Popは名前の通りNV200バネットにポップアップルーフを標準で架装している。インテリアは他のリトリートシリーズ同様、リアルウッドを貼った山小屋風で、趣味の空間としても魅力的だ。
乗車定員は2名で、基本的に二人仕様。ベッドマットをセットすると下段にも大人1名が就寝できるが、ポップアップルーフで2名が就寝できる。
リトリートNV Popのインテリア
リトリートNV POPのコンセプトは「ペットと一緒のクルマ旅」。ペット同伴のクルマ旅で困るのは、夏場にペットを車内に残しておけないこと。これを解決するため、エアコンとリチウムイオンバッテリー2個(200Ah)を標準装備している。ペット用に限らず、NV200にエアコンを搭載するモデルは他になく、いよいよコンパクトバンコンにもエアコンが搭載される時代になった。
その他、18Lのポータブル冷蔵庫が標準装備され、その設置スペースも設定されている。
ガソリン4WDのみで価格は505万円~。
アウトギア
ハイエース標準ボディ標準ルーフをベース車にしたバンコン。従来からラインアップされていたが、DXやGLパッケージにとどまっており、スーパーGLの要望が強かった。今回発表されたモデルは、スーパーGL
Dark Prime IIをベース車にしており、運転席周りのデザインやシートの質感が高い上級グレード。
装備はシンプルで、2列目にハイエース純正のシートを配し、後部はベッドキットを展開して2名が就寝できるレイアウトとなっている。
ベッドを跳ね上げると広い荷室になる
ベッドを跳ね上げると広い荷室となるのも特徴で、自転車など大きな荷物も積載できるトランポとしても使える。
電装系はオプションで用意されており、105Ahのディープサイクルバッテリーが1個装備できる。
スーパーGLベースの価格は同社のサイトにはまだ載っていないが、展示車で379万円~となっている。参考までに従来のアウトギアはガソリン2WD/6ATで289万円~。
アマホ
AMAHO(アマホ)は今回のショーで発表されたモデルで、初出展された軽キャブコン。ダイハツハイゼットをベース車にしており、これにFRP製のシェルを架装している。また、このスタイルのキャブコンの定石通り、ポップアップルーフも備えている。
アマホのインテリア
レイアウトはロングシートとギャレーコンソールを配置し、シンクや車外にも引き出せるシャワーフォーセットを備えている。
さすがにエアコンは装備されないが、リチウムイオンバッテリーが2個(200Ah)、ソーラーシステム、2000Wインバーターが標準装備される。軽キャンパーでは異例の充実した電装系で、ドライヤーや電子レンジを持ち込んで使うことができる。
価格の情報はまだ無い。
まとめ
一つのショーで6車種ものニューモデルを一度に発表した例は、恐らく今までなかったと思われるが、驚くほどの開発力だ。トリップⅡはつい最近他の展示会で初お目見えしたばかりなのに、もう従来車のように並べて展示されており、トリップⅢが前面に出されていた。
また同社のモデルに共通するのは、充実した、と言うより並外れて強力な電装系で、特にトリップⅢの400Ahのリチウムイオンバッテリーと1KW超えのソーラーシステムの組み合わせは、ナッツRVのEvolutionシステムのアイドリングでの発電と並ぶ、今後のキャンピングカーの電装系の方向の一つかもしれない。
リトリートNV Popの200Ahリチウムイオンバッテリーとエアコン標準搭載や、軽キャブコンのアマホまでにも200Ahのリチウムイオンバッテリーを搭載するなど、今までの常識を超えていくスペックは目を見張るものがある。
もちろん、コストはかかるわけで、アマホのように価格にシビアなモデルもあるが、キャンピングカーの最大の懸案事項の一つである電装系が強力になると、安心してクルマ旅ができるようになる。
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