クレソンジャーニーはナッツRVが製作する、トヨタカムロードをベース車にしたキャブコンキャンピングカー。クレソンシリーズは、同社のカムロードベースキャブコンの上級モデルクレアシリーズに対し、普及モデルの位置付け。
クレソンシリーズは従来「クレソンボヤージュ」とネーミングされていたが、2020年に発表された新型車から「クレソンジャーニー」と変更された。同時にそれまでのFRP一体型シェルから新工法のFRPコンポジットパネルに変更されている。
また2019年に発表され、同社が推進する電装システム「EVOLITE」を選択することができる。これはクレアに搭載される「Evolution」システムと同類のものだが、アイドリングでの満充電までの時間や、アイドリングで家庭用エアコンを動かす能力に差がある。
なお、同社は2021年2月にリチウムイオンバッテリーに対応した「Hyper Evolution」システムを発表すると予告している。またEvoliteシステムもリチウムイオンバッテリーに対応し「Evolite
Li」となる。
クレソンジャニーにはレイアウトにより、Type-W、Type-R、そしてこのType-Xが選択でき、それぞれ通常バージョンとEVOLITEバージョンがある。Type-WとType-Rはユーティリティールームを持つのに対し、Type-Xはこれを廃し、ダイネットとハイマウントダブルベッドに十分なスペースを配分している。
(記事中の価格は全て税別です)
コンセプト
クレソンジャーニーはスタンダードキャブコンながら5mを切る(4975mm)全長で、比較的運転しやすいのが特徴。Type-Xの特徴は、ユーティリティールームを廃したレイアウト。5m未満の全長に制限されているため、ダイネット、ハイマウントダブルベッド、ユーティリティールームを全て配置すると、どうしてもどこかにしわ寄せが出た。
一方ユーティリティールームは不要という需要も一定数あり、Type-Xはこの需要に応えたモデル。ユーティリティールームを廃したことにより、ベッドは1400mmの幅を確保でき、2名がゆったり就寝することができる。
エクステリア
クレソンジャーニーType-Xのエクステリア
ベース車はトヨタカムロードで、これに新開発のFRPコンポジットパネルを採用したシェルを架装している。従来のFRP一体型シェルに比べ断熱性が向上し、軽量化も図られている。
サイドオーニングは電動と手動が選択できる(いずれも3m)ため、オプションとなっている。またビデオの展示車はオプションの「フェイスパネル」を装着している。
ベース車のカムロードは、同社が先行して導入したダブルタイヤも選択することができ、安定性の向上を図っている。
なおクレソンジャーニーには全てバンクが付いており、クレアに対するスティングのようにバンクレスバージョンは用意されていない。
インテリア
2種類のインテリアカラーを選択できる
家具色はダークオークとパウダーオークの2種類から選択できる。上の写真はパウダーオーク。ダークオークはクレソンジャーニーType-Wのレビュー記事を参照いただきたい。
家具の材質はPVC(Polyvinyl chloride :ポリビニールクロライド)を使用。これは木材に樹脂シートを張り付けた素材で、軽量で汚れに強いのが特徴。クレアにも採用されている。
レイアウト
クレソンジャーニーType-Xのレイアウト
Type-Xはユーティリティールームを廃したレイアウトが特徴。車長5m以下のキャブコンでは対座ダイネット、ダブルベッド、ユーティリティールームを全て満足いく寸法で並べるのは難しい。
そこでユーティリティールームをなくし、広いダイネットと1400mmの幅を持つダブルベッドを確保した。実際ユーティリティールーム(トイレルーム)は不要というユーザーも一定数あり、バンコンに限らずキャブコンでもこのレイアウトが存在する。
ダイネット
4名が対座できるダイネット
ユーティリティールームを廃したおかげでダイネットにも余裕ができ、4名がゆったり着座できる。また、エントランス部にエマージェンシーシートを置くともう1名着座できる。
2列目シートは前向きにはならないが、走行時も座ってドライブできる。
ベッド
後部のハイマウントダブルベッド
ベッドは後部のハイマウントダブルベッド、前部のバンクベッド、そしてダイネットを展開するダイネットベッドの3か所が用意されており、計6名が就寝できる。
後部のハイマウントダブルベッドは、1930x1400mmの大きさで、家庭用ベッドではレギュラーダブルベッドに相当し、大人2名が就寝できる。
ベッドマットは厚く、さらに下にはウッドスプリングが仕込まれているので、極上の寝心地が期待できる。
バンクベッドでは3名就寝できる
バンクベッドはスライド式で、引き出すと1870x1800mmの大きさになり、これは家庭用ではキングサイズに匹敵する。ここでは大人3名が就寝できる。
更にダイネットベッドは1920x900mmの大きさで、ここでは大人が1名就寝できる。
ギャレー
左側中央に設置されたギャレーセクション
ギャレーは左側中央、エントランスのすぐ後ろに設置されており、シンクがビルトインされている。残念ながらコンロはポータブルカセットコンロを使う度にセットしなければならない。
クレア5.3との差別化があるのかもしれないが、ここはやはり同様のコンロ一体型のシンクにしてほしいところだ。
ギャレーコンソールには引き出し収納があり、ここに食器などを収納しておける。またその下にも扉付き収納が用意されているが、ここは給排水タンクの収納ではないので、調理道具などを入れておける。各20Lの給排水タンクはベッド下に収納されている。
冷蔵庫/電子レンジ
90L冷蔵庫が標準装備される
ギャレーコンソールには90Lの冷凍冷蔵庫も標準でビルトインされている。もちろん冷凍室があるので製氷も可能だ。
またEvolite仕様では電子レンジも標準装備される。これもギャレーの上部にすっきりと収納されていて使いやすい。なおインバーターも標準装備されているので、サブバッテリーでも使用できる。
ユーティリティールーム
先述の通り、Type-Xにはユーティリティールームは装備されていない。しかし、小さな子供用にポータブルトイレを用意しておくことは可能で、ベッド下の外部収納スペースに積んでおくと、急にトイレに行きたいと言い出しても対応できる。
またユーティリティールームが無いので温水シャワー設備は関係ないが、温水ボイラーはオプションで設置することができる。ギャレーで湯が使えるのは嬉しい。
収納
ダイネット上のオーバーヘッド収納
さすがにキャブコンだけあって収納は充実している。ダイネット上左右と後部ベッドルーム左右にオーバーヘッド収納が並んでいる。奥行きもあり、収納力は大きい。
ベッド下の外部収納
また、後部ハイマウントダブルベッド下は大きな外部収納になっており、左右およびリアからアクセスできる他、車内からもアクセスできる。雨の日には重宝する。
その他、先述のギャレーコンソールの収納やエントランス右側にはシューズボックスも用意されている。
空調
家庭用エアコンが標準装備される
暖房はFFヒーターが標準装備され、冷房は家庭用エアコンが標準装備される。キャブコンにエアコンが装備されるのは当たり前になり、今ではバッテリーでの稼働時間に関心が移りつつある。
クレソンジャーニーにはEvoliteシステムが用意されており、アイドリングだけで(バッテリーを使うことなく)エアコンを連続運転できるとしている。ただし、Evolutionシステムと異なり、外気温の条件が影響する可能性がある。
なお、バッテリーだけでエアコンを動作させる場合は、バッテリーが満充電の状態では8~10時間運転できるとしている。
テレビ/ナビ
19型のテレビがオプション設定されている。ナビは好みのものを持ち込み、取り付けることができる。
電装系
クレソンジャーニーの電装系では、やはりEvoliteシステムが特徴的だ。EvolutionシステムとEvoliteシステムの違いはこちらを参照いただきたいが、どちらもアイドリングでサブバッテリーを急速充電でき、家庭用エアコンを動作させることができるという点では同じだ。
ただし、「アイドリングで~」というのは今の環境志向の世の中ではあまり歓迎されるべきものではなく、むしろ走行充電で満充電できる、ということに意味があるだろう。通常は走行充電では満充電できないからだ。
なお、これらのシステムは今までリチウムイオンバッテリーに対応していなかった。Evoliteバージョンでは100Aのディープサイクルバッテリーが3個標準装備されるので容量的には十分だが、やはりリチウムイオンバッテリーだと大電力に強く、経年変化が少なく、容量低減が無いので同じ電気容量でも大きさ重さが少なくて済む。
ようやくリチウムイオンバッテリーに対応することが発表されたが、待たされた装備であることには違いない。
なお、外部電源入力と充電機能、1500W正弦波インバーターは標準装備される。
価格(2021年2月現在:千円台切り上げ:税別)
ガソリン2WD/ATシングルタイヤで653万円~。またディーゼル2WDに限りダブルタイヤが選択でき、748万円~となっている。なお、Evoliteバージョンではない通常バージョンは538万円~。
ほとんどの必需品は標準装備されているので、装備しておきたいオプションはほとんどないが、家庭のガレージに100V電源がない場合は、200Wのソーラーシステム(195,250円)を装備しておくと、常に満充電しておける。
他モデル
カムロードベースのキャブコンで、ユーティリティールームを持たないレイアウトのモデルは、タコスのウィズ5.0(522万円~)、ファンルーチェのイグアスタイプX(529万円~)、ナッツRVのクレア/スティング5.0XX(735万円~)がある。
ナッツRVのモデルを除いていずれもエアコンの対応が無いので、このレイアウトを望むならクレソンジャーニーType-X Evolutionに優位性がある。もちろん価格を優先するなら、他の2モデルやクレソンの標準仕様(非Evoliteバージョン)も選択肢だ。
まとめ
キャブコンでトイレルームレスというのはメインストリームではないが、トイレ付モデルを使ってみたが結局一度もトイレを使わなかったというユーザーも少なくない。国内なら道の駅やコンビニ、ガソリンスタンドなどトイレはどこにでもあるからだ。
そう考えると、車内で大きなスペースを占めるトイレルームは邪魔でしかなく、これを無くしてベッドやダイネットを広く取るという考えは頷ける。トイレルームを持たないレイアウトは実にすっきりして広く感じる。
ただし、そのようなレイアウトを持つモデルは多くはない。やはり多くのキャブコンユーザーはトイレルームを望んでおり、トイレルームを持つレイアウトの方が圧倒的に多い。
従って、このレイアウトを選ぶ場合は、本当にトイレルームは必要ないかを十分シミュレートして選択することをお勧めする。子供がいる場合や、雨や寒い夜に遠いトイレまで歩いていくことを想像し、それでも大丈夫であれば選択する価値は十分にある。
関連記事