バレンシア580はマックレーが製作する、三菱ふそうキャンターをベース車にした全長5mを超えるキャブコンキャンピングカー。
同社はハイエンドキャブコンから軽キャブコンまで製作する、キャブコン専門ビルダー。ラインアップは多くないが、魅力的なフル装備のハイエンドモデルを製作している。
バレンシア580は、バレンシア520の後継モデルで、同社のフラグシップの位置付け。三菱ふそうのキャンターをベース車にしているのが特徴。バレンシア520から全長が640mm長くなっている。なお、全幅は70mm狭くなっている。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
三菱ふそうキャンターをベース車にする、5m超のキャブコン。前部に対座ダイネット、後部にハイマウントダブルベッドのレイアウトで、二人旅にも、ファミリーでの車中泊にも対応できる。
インテリアは豪華で、ハイエンドモデルに相応しい作り。装備も充実している。同社は従来より完全自立型の電装系を理想としており、バレンシア580でも2800Wの発電機をオプションで用意されている。
また、V-specと名付けられたシステムで、走行時にオルタネーターの発電だけでエアコンを運転できる。
アピールポイント
・三菱ふそうキャンター3tをベース車に採用
・全長5810mmで広い室内
・ルーフエアコンを標準装備
・2800Wの発電機を搭載可能(OP)
・リチウムイオンバッテリーはオプションで選択可能
・走行時オルタネーターの発電だけでエアコンを稼働できるV-specシステム
・200Wソーラーシステム標準装備
・温水シャワーはオプションで設置可能
ベース車とエクステリア
バレンシア580のエクステリア
ベース車は三菱ふそうキャンター3tを採用。300ccのディーゼルターボを搭載する。ミッションは、いわゆる自動クラッチ(AMT)の6速デュオニック(DUONIC)で、ブレーキは4輪ディスクを誇る。なお、4WDは設定が無い。
左側のバイクや歩行者を検知し、左折時の巻き込みを防止するアクティブ・サイドガード・アシストや衝突被害軽減ブレーキを標準装備しているのが特徴。
FRP製のシェルは断熱性に優れ、窓は全てアクリル2重窓になっている。全長5810mmで6mに近く、余裕ある室内空間を実現している。なお、6m未満なので、フェリーの運賃は乗用車枠内に収まる。
インテリア
スポットライトと間接照明を用いたインテリア
バレンシアは520もそうであったように、インテリアが豪華なのが特徴。ただ、520から比べると、豪華さは少し控えめになっている感じを受ける。(520のインテリア動画はこちら)
照明はスポットライトと間接照明を用いた豪華なもので、ルーフだけではなく、ダイネットのシート下や床の段差部にも仕込まれている。
レイアウト
バレンシア580のレイアウト
前部に対座ダイネット、中央にギャレーとサニタリールーム、後部に横置きハイマウントダブルベッドの構成で、多くの5m超国産キャブコンの一般的なレイアウトを採用している。
乗車人数は、フロントに3名、2列目の後ろ向きシートに3名、3列目の前向きシートに2名で、計8名。就寝人数は、バンクベッドに2名、と後部ダブルベッドに2名、ダイネット展開ベッドに1名で計5名となっている。
ダイネット
5名が対座できるダイネット
2列目の後ろ向き3名掛けの固定シートと、3列目の前向き2名掛け固定シートとで5名が対座できるダイネットを形成する。3列目シートには2名分の3点式シートベルトがあり、運転席、助手席と合わせて4名が3点式シートベルトを着用できる。
ダイネットサイドの大きな窓はアクリル2重窓で、跳ね上げて開閉できる他、網戸とシェードが組み込まれている。シートの間には高さが可変できるテーブルがある。
ベッド
後部ハイマウントダブルベッド
後部の横置きハイマウントダブルベッドは1980x1330mmの大きさ。家庭用ではレギュラーダブルベッドの幅(1400mm)に少し満たないが、2名が就寝できる。左側には折り畳み式のテーブルが付いており、就寝前のちょっとした作業や読書に便利だ。
セミダブルベッドの幅のバンクベッド
バンクベッドは1870x1270mmの大きさ。これは家庭用のセミダブルベッドの幅(1200mm)より多少広く、やはり2名が就寝できる。
ダイネットもベッド展開できる。ベッドサイズの情報は無いが、大人1名が就寝できる。
ギャレー
2面の延長調理台がある
ギャレーには、常設2口コンロとシンクが一体になったコンビネーションシンクが設置されている。また、上の写真のように2面の延長調理台があるので、手の込んだ料理の場合重宝する。
豊富な引き出し収納
ギャレーキャビネットには豊富に収納が用意されており、食器や調理用具を収納しておくことができる。また、レンジフードが標準装備される。
なお、ウォータークリーンシステムと名付けられた、深紫外線LEDによる除菌システムを標準装備する。これは、120Lの給水タンクの水を定期的に循環させて深紫外線を照射するもの。タンク内のヌルヌルの発生を抑えるとされており、安心して食器を洗うことができる。
冷蔵庫/電子レンジ
110L横開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は110L横開き式が標準装備され、十分な容量がある。バレンシア520では90Lだったので、これも更に大容量になった。
電子レンジはオプション
家庭用の100V仕様の電子レンジがオプションで設置できる。オプションになっている理由はオーブンレンジも選択できるようになったため。ただし、オーブンレンジは発電機か外部電源でしか使えないので、選択時には注意が必要だ。
サニタリールーム
カセットトイレはオプション
多目的ルームには、専用の陶器製手洗いが標準装備されるがトイレ自体はオプション。これもカセットトイレ、ポータブルトイレ、車載用ラップ式トイレが選択できるため。
更に、瞬間湯沸かし器と圧力ポンプシステムをオプションで設置すると、温水シャワールームになる。
収納
ダイネット上のにオーバーヘッド収納
収納は豊富に用意されている。まず、オーバーヘッド収納は先のギャレー上と、ダイネット上に設置されている。
ベッドルーム上の収納
ベッドルームには3面にオーバーヘッド収納が設置されている。いずれも大容量の収納だ。
冷蔵庫の下にも収納がある
冷蔵庫の下にも収納がある。
ベッド下の外部収納
後部にあるハイマウントダブルベッドの下は大きな外部収納になっている。ドアは左右両側にあり、右側のドアは給水タンクがあるため小さくなっている。この収納には、ベッドボードを取り外して、車内からもアクセスできる。
空調
ルーフエアコンを標準装備
冷房はルーフエアコンが標準装備される。このルーフエアコンは外部電源ではもちろん、サブバッテリーでも動作可能。標準の105Ahの2個のバッテリーでも動作するが、オプションのリチウムイオンバッテリーをお勧めする。
暖房はFFヒーターが標準装備されるほか、床暖房も標準装備される。床暖房は通路部に施工されるが、ダイネット部には昇降式のテーブルがあるため施工できない。一般的な1本足のテーブルなら施工できるようだ。
なお、マックスファンも標準装備される。更に、室内の空気の紫外線除菌を行う、「ルームクリーンシステム」が冷蔵庫上部に標準で装備される。
テレビ/ナビ
32型のテレビが設置できる(OP)
大画面の32型のテレビがオプションで設置できる。設置場所はエントランスの上部だが、少し高い位置なので、ダイネットから観ると首が痛くなるような気もする。どの程度角度が変えられるのか確認していないが、バンクベッドや後部ベッドからも観られるかもしれない。
電装系
標準では、105Ahのディープサイクルバッテリーが2個、走行充電、外部100V電源入力、2000W(正弦波)インバーター、200Wソーラーシステムが搭載される。外部電源による充電機能はオプション。
リチウムイオンバッテリーはオプションで選択でき、12V換算で200Ahと400Ahが選択できる。(バレンシア580の電源システムは24Vで動作しているため、24Vでは100Ahと200Ahとなる)
これらはリン酸鉄系で、24V130Ah(12V換算で260Ah)の三元系リチウムイオンバッテリーも選択できる。三元系はリン酸鉄系に比べて小型軽量の利点があるとしている。
同社は完全自立型(外部電源に頼らないで充電できるシステム)のキャンピングカーを理想としており、2800Wの発電機をオプションで搭載できる。これはガソリンで動作するため、20Lのガソリンタンクも用意されている。
価格(2023年6月現在:千円台切り上げ:税込)
2WDのみで、車両本体価格は1815万円~。
付けておきたい必需オプションは、外部電源による充電機能(132,000円)、リチウムイオンバッテリー(200Ah:198,000円、400Ah:605,000円)、ソーラーシステム(、107,800円)が挙げられる。
また、必要に応じて温水シャワーシステム(385,000円)、電子レンジ(38,500円)、車載用ラップ式トイレ(220,000円)。カセットトイレ(165,000円)、発電機(1,320,000円)等がある。
他モデル
5m超のキャブコンで同等のレイアウトや装備を持つモデルは、アネックスのリバティ52SP(1254万円~)、ナッツRVのクレア5.3Xエヴォリューション(1096万円~)、東和モータース販売のヴォーンEXC タイプRWB(1144万円~)、バンテックのジルノーブル(1125万円~)が挙げられる。
上記のモデルは全て家庭用エアコンを標準装備しているが、リバティ52SPは480Ah相当、ヴォーンEXC RWBは400Ah相当のリチウムイオンバッテリーも標準装備している。
まとめ
まず気が付くのは、他モデルに比べて価格が高価だ。標準装備が特別多いわけではなく、例えばリチウムイオンバッテリーや温水シャワーがオプションであることからすると、標準装備でのアドバンテージはあまり無い。
バレンシア580は、キャンターに魅力を感じる場合、あるいは2800Wの発電機を含めた完全自立型のシステムに魅力を感じる場合は、お勧めのモデルだ。全長が他モデルよりも長いのも、室内空間の余裕につながっている。
同社が謳う発電機を使用した完全自立型のコンセプトは、実用面から言えば理想的なシステムと言える。最近ではエボリューションシステムに代表されるように、アイドリングでもサブバッテリーをフル充電できるが、アイドリングを長時間行うよりも発電機の方が理想的ではある。
発電機と言えばポータブル型のうるさい発電機を想像するが、同社のオプションの発電機は2800Wの大容量で、その分騒音は小さい。ただし、価格(132万円)は高価だ。同社はリチウムイオンバッテリーをオプションにしているが、発電機があればディープサイクルバッテリー2個でも問題ないとの考えもあるだろう。
ただし、ほとんどのキャンプ場では発電機の使用は禁止されている。もちろんいくら騒音が小さいと言っても禁止には変わりない。その意味では、やはりリチウムイオンバッテリーを中心にした電装系の方が使いやすいかもしれない。
関連記事