TR540S Lila(以下リラ)はRVトラストが製作する、ハイエーススーパーロングをベース車にしたバンコンキャンピングカー。
同社はハイエースベースのキャブコンTR500 C-LHを製作販売しているが、リラにより、新たにバンコンがラインアップされることになる。
同社は以前、やはりハイエーススーパーロングベースのバンコン、「ジョイン」を製作していたが、現在はラインアップから姿を消している。
リラは、ジョインとは全く異なるレイアウトなので後継モデルではく、ジョインが二人旅を想定したモデルであったのに対し、リラはファミリー使用を想定したレイアウトとなっている。
(記事中の価格は全て税込です)
コンセプト
ハイエーススーパーロングの大きなボディを使用し、ファミリーでも余裕ある室内空間を持つバンコンモデル。2列目に3人掛けのマルチモードシートを持つことにより、5名が前向き乗車でき、2段ベッドとフロアベッドで5名が就寝できる。
また、ギャレー、冷蔵庫、電子レンジが装備され、車内での調理も可能。
更に最新のバンコンらしくセパレートクーラーを標準装備する他、オプションでリチウムイオンバッテリーを搭載することもでき、快適な室内空間を確保している。
アピールポイント
・広い室内空間を生かしたファミリー仕様
・5名が前向き乗車可能(乗車定員は7名)
・折り畳み上段ベッドを含み計5名が就寝できる
・多様なベッドレイアウト
・セパレートクーラー標準装備
・リチウムイオンバッテリー選択可能
エクステリア

リラのエクステリア
ベース車はハイエーススーパーロング特装車。ボディ外部への架装は無く、外観は通常のハイエースと変わらないので、日常使用にも違和感なく使用できる。
インテリア

リラのインテリア
展示車のインテリアカラーは濃いグレーのシートと濃い木目の家具の構成。間接照明も一部使われているが、華やかさや特別な高級感があるわけでは無く、落ち着いた室内になっている。
なお、家具色やシート地の変更がどの程度可能かは不明。
レイアウト
2列目に3人掛けマルチモードシート、3列目に横座りベンチシートを採用。2列目シートを前向きにするとフロントシートと合わせて計5名が前向き乗車できる。また、右側のベンチシートに2名乗車できるので、計7名が乗車できる。
左サイドにもベンチシートがあるが、これは縦置き2段ベッドの下段ベッド。跳ね上げられた上段ベッドを下すと、縦置き2段ベッドになる。更にシートを全てフラットにすると、上段ベッドと合わせて計5名が就寝できる。
このレイアウトの特徴は、状況に合わせて様々な形態にできること。例えばダイネットモードでは、後ろ向きにした2列目シートと3列目のベンチシートで3面の対座ダイネットができる。
また、後部をベッド状態にすると、大人用のシートはそのままで、子供やペットが喜ぶ広いフラットスペースができる。子供はそのまま寝てしまっても、大人はダイネットで寛げる。
ベッドの形態も、2段ベッドのみ、フロアベッドのみのダブルベッド、全てをベッドにしたフルベッドと、就寝人数や好みに合わせて対応できる。
ダイネット

3面対座のダイネット
2列目シートを後ろ向きにすると、3列目のベンチシートと3面のダイネットができる。テーブルを囲んで食事するにはあまり適していないが、対座ダイネットではないので足を伸ばして寛ぐことができる。

準ベッドモードのダイネット
また前述の通り、3列目シートの中央をベッドマットで埋めると広いフラットスペースになるので、大人は2列目シートに座りながら、子供やペットはフラットスペースで遊ぶことができる。
ベッド

フルベッドモード
全てのシートをフラットにすると、3200x1700mmのフロアベッドになる。後部はギャレーコンソールがあるので1200mm幅になるが、前部だけでも十分広いため、就寝時に足元が窮屈ということはない。
1700mmは家庭用ベッドではクイーンベッド以上の幅に相当するので、2名+子供ならゆったり就寝できる。

2段ベッドモード
リラの特徴は縦置き2段ベッドも使用できることで、、必要に応じてセットすることができる。常設2段ベッドの欠点は車内が狭く感じることだが、リラの上段ベッドは跳ね上げて収納しておくことができるため、広々感がスポイルされない。
一方2段ベッドの長所は、プライベートタイムが持てることで、パートナーが寝てしまっても、就寝前にベッドで読書をしたりスマートフォンを見たりできる。またダイネットでもう少し飲んでいることもできる。
ギャレー

後部右側のギャレー
ギャレーは後部右側に設置されており、シンクとシャワーフォーセットが備えられている。シャワーフォーセットは引き延ばして車外でも使用できる。シンクは大き目の皿を洗うこともできる大きさ。
シンクの左側には冷蔵庫が収納されており、上蓋を閉めると広い調理スペースになる(もちろん上に何かを乗せると冷蔵庫が開けないが)。8ナンバー取得要件の「調理器具」は電子レンジを標準装備することでクリアしているので、コンロは標準装備されていない。
シンクの下には各20Lの給排水タンクが収納されている。リアゲートを開けると車内からでも出し入れができるので便利だ。
冷蔵庫/電子レンジ

40L上開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は40L上開き式冷蔵庫が標準装備される。上開き式なので冷蔵か冷凍かの選択式になり、冷凍と冷蔵を同時にはできない。また、ファミリー分の食材を保存しておく場合は、容量的に少し厳しい場合もある。

電子レンジも標準装備される
また、電子レンジも標準装備される。1500Wインバーターも標準装備されるので、外部電源が無いところでも、サブバッテリーで電子レンジを使うことができる。
多目的ルーム
リラには多目的ルームは無いが、ポータブルトイレをギャレーの前のスペースに積んでおくことは(ポータブルトイレのサイズにもよるが)可能だ。子供が急にトイレに行きたいといった場合に有用ではある。
収納
オーバーヘッド収納が全くない点は残念なところ。またギャレーにも収納が無いので、食器やカトラリー、あるいは食品を収納する場所に困ってしまう。
2段ベッドのレイアウトではもともとオーバーヘッド収納は少ないのだが、ダイネット上のスペースには設置して欲しいところだ。

下段ベッド下の収納スペース
その他の収納としては、下段ベッド下が収納スペースになっており、大きな収納力がある。またベッドボードは上げた状態でロックできるので、大変使いやすい。なおここへはリアゲートを開けて車外からもアクセスできる。
また、後部中央(ギャレー前)にベッドボードをセットすると、その下が収納スペースとして利用できる。就寝時は、ベッドボードの下が全て収納スペースとして使える。
空調

セパレートクーラーを標準装備
暖房はFFヒーターが標準装備される。また冷房はべバスト製のセパレートクーラーを標準装備し、快適性も確保している。
クーラーはバッテリーでも動作するが、標準ではサブバッテリーは105Ahが2個のみなので、クーラーを心置きなく使用するには、オプションのリチウムイオンバッテリーをお勧めする。
また、ベンチレーターはオプションとなっている。調理をする場合は、是非付けておきたい。
テレビ/ナビ
15.6型でナビ連動のフリップダウンモニターが標準装備される。走行中に2列目シートから観るのに便利だ。ナビはオプションで用意されているが、好みのものも選択できるだろう。
電装系

リチウムイオンバッテリー(OP)も搭載できる
105Ahのディープサイクルバッテリーが2個標準装備される。通常ならこれで十分だが、クーラーを電気の心配なく使いたい場合は、オプションのリチウムイオンバッテリー(100Ah
x2)を選択したい。
走行充電は昇圧システム付きの充電器が採用されており、走行充電でも満充電にすることができる。またリチウムイオンバッテリーを搭載した場合も、最適な走行充電が可能となる。
外部電源入力とチャージャーも標準装備される。100Wのソーラーシステムはオプションで設置できる。
価格(2021年9月現在:千円台切り上げ:税込)
同社のサイトにはまだ詳細が上がっていないが、2021年の横浜キャンピングカーショーでは、車両本体価格は699万円~となっていた。
多くの必需装備は標準装備となっているので、追加すべき必需オプションはほとんど無いが、ベンチレーター(71,500円)は付けておきたい。また、自宅駐車場に外部電源が無い場合などは、ソーラーシステム(価格不明)をお勧めする。
また予算に余裕がある場合は、リチウムイオンバッテリー(価格不明)を搭載しておくと、電気の心配が格段に低くなる。
他モデル
ハイエーススーパーロングベースで縦置き2段ベッドを持つモデルは数多くあるが、リラと同じレイアウトのモデルは無い。近いところではビークルのベッセルJ(496万円~:エアコン搭載不可))とレクビィのファイブスターセプト(819万円~:エアコン仕様)が考えられるが、同じではない。また、これらはいずれも多目的ルームを持つ。
まとめ
TR540S Lila(リラ)は、2列目にマルチモードシートを持ち、5名が就寝できることから、ファミリー使用に適したレイアウトと言える。
縦置き2段ベッドを持ち、これを常設ベッド的に使って二人旅にも対応できるので、「通常二人旅で使うが日常は家族を乗せたり、たまに孫を乗せて車中泊をする」という場合にも適している。
クーラーが標準装備されており、リチウムイオンバッテリーを搭載することもできるので、快適なクルマ旅も期待できる。
ただ多目的ルームは無いので、トイレルームは必須と考えるユーザーには対象外だ。その意味では、比較的若いユーザーでちいさな子供がいて、長期旅はしないといったユーザーに向いていると思われる。
また、オーバーヘッド収納やギャレーの引き出し収納など、食器や食品を収納しておくスペースがほとんど無く、冷蔵庫も上開き式なので、長期旅と言うよりは、ファミリーで遊園地やイベントに車中泊を伴って行くようなシチュエーションに適している。
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