ベッセル・Jはビークルが製作する、ハイエーススーパーロングをベース車にするバンコンキャンピングカー。同社は、多くのハイエースやNV350キャラバンベースのバンコンをラインアップしている。
同社のキャンピングカーの特徴は、仕立ての良い家具。車内の過酷な環境下(振動や温度・湿度の差による)でも長期間、曲がりや狂いが出ず、キシまない“天然木化粧合板”が家具表面に使われている。 これによりより強く、精度の高い家具が実現し、長期にわたって美しさを維持できる。
(記事中の価格は全て税込です)
コンセプト
同社の多くのハイエーススーパーロングのレイアウトの中で、ベッセル・Jは縦置き2段ベッドを特徴としている。また2列目シートを展開することにより子供用ベッドとなるため、二人旅あるいは小さな子供がいるファミリーに適したレイアウトと言える。
エクステリア
ベッセル・Jのエクステリア
ベース車はハイエーススーパーロングで、外観はノーマルと変わらない。従って、日常使用にも違和感なく使用できる。またグレードは特装車とDXを選択できる。特装車はオートエアコンやセンターコンソール、2人掛けシートなど上級機能が装備される。ただし、自動ブレーキ(TSS)が必要な場合はDXを選択する必要がある。
インテリア
ベッセルJのインテリア
先述の通り、ビークルの家具は薄いベニアを繊維方向を変えて貼り合わせ強度を持たせた合板に、銘木の無垢材から薄くスライスした「天然木化粧合板」が貼られている。これにより家具の外観や手触りは天然木で高級感がある。
家具素材は選択できないが、シート生地は椅子張り織物で約80色、ビニールレザーで約120色から選択できる。またマットの座面側とサイド側の色を変えることができる。更に床材は5種類から、トリム(内張り材)壁生地は3種類から選択できる。
レイアウト
2列目に1200mm幅のREVOシートを配置し、フロントに対座ダイネット、リアに縦置き2段ベッド(兼ロングシート)とギャレー、最後部に多目的ルームのレイアウトとしている。
ベッセル・Jのレイアウトの特徴は、下段ベッドが拡張でき2名が就寝できること。また2列目シートをフラットにすると、子供が3名就寝でき、計大人3名+子供3名が就寝できる。
また乗車人数は、運転席、助手席、2列目シートに3名、後部横座りロングシートに3名で計8名でドライブできる。DXグレードだと運転席と助手席の間にもう1名座れるので計9名が乗車できる。
即ち、比較的大人数のファミリーにも対応できるレイアウトだ。
ダイネット
フロントシートバックを利用した対座ダイネット
運転席と助手席のシートバックを利用した後ろ向きシートと、前向きにした2列目シートとで5名が着座できる対座ダイネットを形成する。通常停泊時はデッドスペースとなる運転席、助手席を使うことにより、車内スペースを効率的に利用できる。
また後部の横座りロングシートでも3名程度が着座でき、セカンドダイネット的な使い方ができる。
ベッド
下段ベッドが広い2段ベッド
後部の2段ベッドは上段が1800x600mm、下段が1800x1200mmの大きさで、大人が3名就寝できる。下段用のベッドマットは600mm幅のものが2枚あり、1枚を通路部に移動するだけ。大人2名と小さな子供のファミリーなら、前部のダイネットをそのままにして就寝できる。
ダイネット展開すると子供用ベッドになる
更に2列目シートをベッド展開すると、1600x1200mmのベッドになる。ここでは子供が3名就寝できる。合わせると、大人3名と子供3名が就寝できる。
ギャレー
冷蔵庫がビルトインされたギャレーセクション
ギャレーは後部ロングシートの対面にあり、ギャレーコンソールには丸形シンクとシャワーフォーセット、それと40L上開き式冷蔵庫が標準でビルトインされる。
シンクの下には各20Lの給排水タンクが収納されている。エントランスの近くなのでタンクの出し入れは比較的楽ではあるが、下段ベッド広くしている場合は出し入れできない。
冷蔵庫/電子レンジ
冷蔵庫は40L上開き式が標準装備される。同社のスーパーロングをベース車とするモデルではベッセル・Jのみが上開き式となる。
電子レンジも設置できる
また、電子レンジはオプションで用意されている(30,800円)。Vessel・Jの場合は、ギャレーコンソールの端に固定する形で設置できる。
多目的ルーム
ポータブルトイレ(別売)を置くとトイレルームに
ベッセル・Jの最も特徴的なのは多目的ルームだ。ポータブルトイレを置いてトイレルームとして使うことができるが、ドアの折り曲げ方で柔軟に使うことができる。トイレを使用する場合は完全な個室とまではいかないが、ほぼ個室状態になる。
また、ドアを反対側に折り返して固定すると、解放された空間になり収納スペースとして使うことができる。これは是非上のビデオで確認いただきたい。(2:34の位置)
収納
左サイドにあるオーバーヘッド収納
オーバーヘッド収納が左サイドに設置されている。デザイン的に丸みをおびているため、奥行きは非常に深いというわけではないが、それなりの収納力はある。
大きなバッグなどは、ロングシート下に収納するスペースが設けられている。ただ、シートが1枚モノなので、開けるのに多少労力がいる。この収納スペースにはリアゲートを開けて車外から長物を収納することもできる。
ベッド状態にすると、中央部のベッドボード下も収納スペースとして使える。
ギャレーコンソールの端にある収納
その他、ギャレーコンソールの端に収納スペースが用意されている。開口部が大きいので鍋やフライパンなどの調理用具を収納しておくことができる。棚を作って食器を収納するのも良いかもしれない。
ただ、ここはやはり扉があると中のものが飛び出さないし、目隠しにもなるだろう。
空調
暖房はFFヒーター(199,100円)がオプション設定されるが、冷房のオプションは設定されていない。同社のモデルにはいずれも家庭用エアコンなどの冷房装備が用意されていないが、スーパーロングクラスには、リチウムイオンバッテリーと合わせて冷房設備のソリューションが欲しいところだ。
なおリアゲートに小型のベンチレーターが標準装備される。ルーフベンチレーターオプション。
テレビ/ナビ
19型のテレビがオプションで用意されている。またナビはパナソニック製のものがオプションで用意されている。
電装系
105Ahのディープサイクルバッテリー1個と走行充電機能が標準装備されている。バッテリーの増設はオプションで可能(31,900円)だ。また外部電源入力は標準装備されるが、充電機能(54,780円)はオプション。
インバーターは350W(53,900円)と1500W(169,400円)(いずれも正弦波)がオプションで選択できる。
更にソーラーシステムはフレキシブルタイプの165W(233,200円)かルーフ直付けの225W(223,850円)がオプションで選択できる。
価格(2021年7月現在:千円台切り上げ:税込)
キャンパー特装2WD/6ATで526万円~、4WDは557万円~。エマージェンシーブレーキが必要な場合はDXグレードを選択する必要があり、この場合はそれぞれ、496万円~、527万円~だ。
付けておきたいオプションは、FFヒーター(199,100円)、外部電源による充電機能(54,780円)、1500Wインバーター(169,400円)が挙げられる。
また必要に応じて、追加サブバッテリー、ソーラーシステム、電子レンジがあれば便利だ。電子レンジを装備する場合は1500Wのインバーターも必要になる。
他モデル
ハイエーススーパーロングベースで縦置き2段ベッドを持つモデルは多数あるが、2列目にマルチモードシートを持ち、かつ多目的ルームを持つモデルは、キャンピングカーオーゼットのラミータ(519万円~)、トイファクトリーのアルコーバ(625万円~)、レクビィのファイブスターセプト(612万円~)が挙げられる。
このうちフロントシートを反転して対座ダイネットにするのはアルコーバとファイブスターセプト。就寝人数はラミータが大人4名、アルコーバが大人2名+子供1名、ファイブスターセプトは大人2名+子供3名となっている。また、アルコーバとファイブスターセプトには家庭用エアコンが装着できる。
まとめ
ベッセル・Jの利点は建付けの良い家具と組み立て品質の良さが挙げられるが、もう一つ利点がある。それは比較的安価な価格だ。上に挙げた他モデルでは、アルコーバとファイブスターセプトはベッセル・Jよりもおおよそ100万円高価だ。
これら2モデルはエアコンを装備でき、ファイブスターセプトに至っては温水シャワーまで装備できる。しかし当然高価になり、いわゆるハイエンドバンコンの位置付けになる。
ベッセル・Jはこれらの対抗モデルではなく、シンプルながらしっかりした造りのモデルを望むユーザー向けだ。ただし、このカテゴリーでもラミータは強力な対抗馬ではある。ラミータは横開き冷蔵庫や電子レンジが標準装備されるので、長期旅にも対応できる。
ビークルのモデルはベッセルJ限らず、基本がしっかりした、仕立ての良いスーツのようなキャンピングカーだ。長年使っていても綻びが無く、いつまでも飽きがこないインテリアだ。
しかしやはり冷房のソリューションは欲しい。スーパーロングベースでは既に多くのモデルがエアコンを搭載し、リチウムイオンバッテリーまでも搭載できるモデルが登場している。比較的安価な冷房ソリューションがあれば、低価格で高品質なモデルとして注目されるだろう
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