Puppy(パピー)210はキャンパー厚木が製作する、カムロードをベース車にしたキャブコンキャンピングカー。
同社はパピー480を2020年に発表、2021年にはパピーフルハウスを発表した。これらは車幅が1740mmで、ノアやヴォクシーとほぼ同じ。家庭のカーポートに駐車できるキャブコンとして好評を博した。
そしてジャパンキャンピングカーショー2023で発表されたパピー210は、更に全高を2090mmに抑え、高さ制限のある駐車場にも駐車できるキャブコンとしている。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
カムロードをベース車にする5m未満のキャブコンで、車幅をノアやヴォクシーとほぼ同じ1740mmに抑えるとともに、全高をハイエースワイドミドルルーフより低い2090mmとしている。
これにより、家庭のカーポートに駐車できる他、高さ制限のある地下駐車場などにも駐車できるようになった。
従来よりタウンエーストラックをベース車にするキャブコンでは、ポップアップルーフを持ち、全高を低くしたキャブコンは存在しているが、カムロードでは初めて。
アピールポイント
・全高を2090mmに抑え、高さ制限のある駐車場にも駐車可能
・車幅は1740mmでミニバンと同程度
・低い車高とダブルタイヤで高い安定性
・ポップアップルーフを上げると高い天井高
・ハンモックベッドを装備
・家庭用エアコンを設置可能(OP)
ベース車とエクステリア
パピー210のエクステリア
ベース車はトヨタ カムロード 標準トレッド。多くのカムロードベースのキャブコンはワイドトレッドを採用しているが、パピーシリーズは全て標準トレッドのカムロードを採用している。
標準トレッドのカムロードは2WDはガソリン、4WDはディーゼルとなっている。また、標準トレッドでも全車ダブルタイヤとなる。
パピー210の最大の特徴は、全高を2090mmに抑えたことで、これにより高さ制限のある駐車場にも侵入できる可能性が高くなる。また、横風や大型トラックに追い抜かれた時などに発生するふらつきも軽減できる。
パピー210には左側が高くなるポップアップルーフが標準で架装されており、停泊時は2m近い天井高となる。
インテリア
後部のインテリア
家具は木目調、シートはグレー系の落ち着いたカラーリングを採用。特に高級感やお洒落なインテリアではないが、平均的なインテリアになっている。
レイアウト
リアエントランスを採用しているため、定石通り前部に広いダイネットを配置している。また、後部はギャレーとなっている。
乗車定員は8名だが、運転席、助手席と3列目の前向きシートの2名が3点式シートベルトを着用できる。就寝定員はダイネットをベッド展開して3名とハンモックベッドで1名の計4名。
リアエントランスの特徴は前部の広いダイネットで、一般的には常設ベッドが無いが、バンクベッドが準常設的に使えるようになっている。しかしパピー210ではバンクベッドが無いため、ダイネットのベッド展開は必須となってしまう。
ダイネット
広いダイネットと大きなテーブル
リアエントランスを採用しているため、前部は全面がダイネットになっている。2列目の後ろ向き固定シートと3列目の前向き固定シートで4名が対座できる。サイドのベンチシートにも3~4名が座れるが、座面の奥行きは多少狭い。
ダイネットには大きな白いテーブルが設置されており、コンパクトな室内と言ってもカムロードベースのレギュラーサイズキャブコンであることを実感できる。
ベッド
家庭用クイーンサイズより大きいベッド
ダイネットをベッド展開すると、1840x1620mmのダイネットベッドになる。1620mmは、家庭用ではクイーンサイズベッドの幅(1600mm)よりも広い。ここで大人3名が就寝できる。
ハンモックベッド
もう一つのベッドはハンモックベッドで、金属の棒に巻かれている布を広げてセットする。ベッドサイズは記載されていないが、大人が1名就寝できるとしているので、長さは1800mm以上、幅は500mm以上はあることになる。
しかしいずれにせよ中央がたわむので、寝返りを打ったり姿勢を変えるのは難しく、個人的にはよほど慣れないと熟睡するのは難しそうだ。年配のユーザーには昇り降りは注意する必要があるが、子供は喜ぶだろう。
最も現実的な使用方法は就寝時の荷物置き場かもしれない。ただし、就寝時はルーフを下げて断熱性を確保するという場合には、ハンモックベッドは使用できない。昼寝をするには最適かもしれない。
ギャレー
L字型の広いギャレー
後部はL字型の広いギャレーになっている。右側にシンクとフォーセット、左端にコンロが設置されている。中央は広い調理スペースとして使用できる。
常設のポータブルカセットコンロ
コンロはポータブルカセットコンロだが、上蓋を開けると常設されている。コストのためか、多くのバンコンや一部のキャブコンでさえもポータブルカセットコンロをいちいちセットする必要があるが、パピー210ではカセットコンロを採用しながら常設コンロとして使える。ちょっとしたことだが素晴らしいアイデアだ。
ギャレーキャビネットの引き出し収納
ギャレーキャビネットにはいくつか収納が用意されているが、電子レンジやポータブルトイレを収納すると、実際に収納として使用できるのは上の写真の引き出し収納のみとなる。
冷蔵庫/電子レンジ
65L横開き式冷蔵庫がオプションで設置できる
冷蔵庫は65L横開き式がオプションで装備できる。冷蔵庫は必需装備だし、同社のパピー480やフルハウスを含め多くのキャブコンでは標準装備されているので、やはりパピー210でも標準装備して欲しいところだ。
冷蔵庫は横開き式なので、冷凍室があり、製氷や冷凍食品の保冷と冷蔵が同時にできる。
電子レンジ(OP)の収納スペース
電子レンジもオプション。設置する場合は、上の写真のスペースに収まる。1500W正弦波インバーターは標準装備されているので、電子レンジを装着した場合は、サブバッテリーで使うことができる。
多目的ルーム
ポータブルトイレの収納スペース
パピー210に多目的ルームは無いが、ポータブルトイレの収納スペースは用意されている。ギャレーの中央にトイレを収納するのもなんだが、見えるところに置かれているより良い。後部はダイネットとカーテンで仕切れば、簡易的なトイレルームになる。
収納
室内高が低いのでオーバーヘッド収納は設置できない。構造的なものとはいえ、これは大きなデメリットではある。
2列目シート下の収納
その他の収納では、2列目シートの座面下が収納スペースになっている。車体右側には小さな扉があり、この収納に車外からアクセスできるようになっている。
ベンチシート下の収納
車体左側にも大きな扉があるが、これはベンチシートの下の収納にアクセスできるもの。防水処理もされている。
エントランス横の収納
エントランス横にはキャビネットが用意されており、ここも収納になっている。場所的にシューズボックスとして使用することになるのかもしれない。シューズボックスとして使用するなら、扉の方向を変えてもらうと良いだろう。
空調
家庭用エアコンがオプションで設置できる
家庭用エアコンがオプションで設置できる。設置場所はギャレー(上の写真の位置)になる。最適の位置とは言い難いが、ここしかない。
なお、FFヒーターは標準装備される。
テレビ/ナビ
テレビ台
助手席の後部にテレビ台が用意されている。テレビはオプション設定されていないが、対応するサイズ内で好みのものが設置できるだろう。
電装系
標準では100Ahのディープサイクルバッテリーが2個、走行充電、外部100V電源入力と充電機能、1500W正弦波インバーターが装備される。サブバッテリーは1個追加可能。520Wのソーラーシステムもオプションで装備できる。
なお、パピー480やフルハウス同様、リチウムイオンバッテリーのオプション設定は無い。
価格(2023年4月現在:千円台切り上げ:税込)
ガソリン2WD 6ATは765万円~となっている。パピー480やフルハウスで設置されている標準トレッド ディーゼル 4WDは記載されていない。
付けておきたい必需オプションは、冷蔵庫(198,000円)、クルマ旅で使用するなら電子レンジ(28,600円)が挙げられる。(ナビシステムを除く)
予算に余裕があれば、家庭用エアコン(187,000円)、追加サブバッテリー(38,500円)、520Wソーラーシステム(385,000円)を装備しておきたい。
他モデル
パピー210に直接競合するモデルはないが、タウンエースベースなら全高2100mm前後のキャブコンは多数存在する。もちろん車格が異なるが、参考までに幾つかピックアップする。
・リゾートデュオバンビーノ プラス プロ:stage21(500万円~:DX Xエディション)
・Dテントむし:バンショップ ミカミ(489万円~:GL)
・Mホルーヴァミア:オートショップアズマ(452万円~:5MT DX Xエディション)
これらはタウンエースベースなのでもちろんカムロードと比べると非力だ。しかし、車体の大きさは、全長が30cm程度短いが車幅は1800mm程度あるので逆に広くなっている。
まとめ
パピー210は、自宅のカーポートに収まり、高さも制限され、かつカムロードベースのキャブコンが欲しいユーザーにはジャストフィットするモデルだ。しかしそのような需要がどれほどあるのかは疑問だ。
確かにパピー480やフルハウスは車幅を狭くしてヒットした。従来のキャブコンは自宅のカーポートに入らないので、キャブコンを諦めていたユーザーが多数いたということだろう。
高さを問題にしてキャブコンを諦めているユーザーが多いのかどうかは今後のパピー210の販売状況で分かるが、興味あるところだ。コインパーキングなどで高さ制限のあるところは多いが、車高を低くするトレードオフは車幅を狭くするよりも大きい。
なお、パピー210では冷蔵庫、家庭用エアコン、電子レンジ、トリプルサブバッテリーがオプションになった。パピー480やフルハウスでは、これらの装備は電子レンジを除いて標準装備だった。それでも、パピー210はパピー480に比べて7万円しか安価になっていない。
結局これらの装備を付けると、パピー480やフルハウスより高価になる。即ち、車高が低いということに付加価値があるわけで、車高が高くても問題ないユーザーはパピー210を選択する理由はない。
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