LYLA(ライラ)はカトーモーターが製作する、ハイエース標準ボディ標準ルーフをベース車にしたバンコンキャンピングカー。
同社にはロングトレインやウインディと言った標準ボディハイルーフのモデルはあったが、標準ルーフのモデルは無かった。新しいボディタイプが同社のラインアップに加わる。
(記事中の価格は全て税込です)
コンセプト
標準ルーフは車高が1980mmなので、高さ制限のある駐車場にも入れる可能性が高い。そのため、ハイエース標準ボディ標準ルーフをベース車にすることにより、日常使用での機動性が良くなる。
2列目に単座のマルチモードシートを配置し、3名が前向き乗車、2名が横座り乗車でき、日常使用にも対応できる。また2名が就寝でき、休日は車中泊を伴う小旅行にも対応できる。
エクステリア
ライラのエクステリア
ベース車はハイエース標準ボディ標準ルーフ。展示車は特設車が使用されていたが、トヨタセイフティセンスを装備したい場合はDXやGLパッケージの選択も可能だ。
ボディ外側に架装は無く、見た目はノーマル車と変わらないため、通勤や買い物など日常使用でも違和感なく使用できる。
インテリア
無垢材を使用したインテリア
同社おなじみの無垢材を使用した家具で統一され、木の温もりを感じるインテリアが採用されている。窓枠も無垢材で作られており、カーテンは窓枠の内側に付けられる。これにより隙間風を防ぐことができる。
シート地は以前はベージュ系が主に使われていたが、ライラではブルー系のシート地になった。ウインディでも黒系のシート地が採用されていた。新しい色合いもうまくマッチしているが、従来のベージュ系が選択できるかは不明。
レイアウト
2列目左側に単座のマルチモードシートを配置。右側と左側3列目は横座りシートが設置されている。また、最後部両側に収納家具が設置され、ギャレーと冷蔵庫が配置されている。
珍しいレイアウトだが、機能的に考えられている。このレイアウトは基本的に2名対応だが、いざというときにもう1名が前向きに乗車できるのがポイント。
動線が確保されたレイアウト
右側も同様に単座のマルチモードシートにすれば、という考えもあると思うが、就寝定員が2名なので、前向き乗車人数を増やしてもあまり意味がない。
また、乗り心地的には助手席よりもこちらの方が良いと思われるので、2名使用でもパートナーはこちらに座る選択肢もある。
更に、単座シートなのでベッド展開も3名掛けの大きなシートに比べればはるかに楽にできる。
キャンピングカーのレイアウトはほぼ出尽くしたように見えても、まだまだ新しいアイデアが生み出されている。輸入モデルのレイアウトがどれも型にはまったように同じなのとは対照的だ。
ダイネット
3列目の横座り対座ダイネット
ダイネットは2列目シートを前向きにしたままでも、3列目の横座り対座シートだけで十分広いダイネットになる。テーブルも広く、車内での食事も余裕を持ってできる。
カウチスタイルのソファとしても使える
ダイネットは長い時間を過ごすところでもあるので、楽な姿勢が取れることが重要だ。
ライラでは、左側の単座シートと横座りシートを連続してカウチスタイルのソファとして使える。ただし、残念ながらこれは1名だけ。右側のシートではちょっとしたクッションなどを置いてカウチスタイルにすると良いだろう。
ベッド
今回はベッドモードの写真が撮れなかったので写真が無いが、全てのシートをフラットにすると大人2名が就寝できるベッドになる。ベッドサイズも不明だが、標準ボディなので1500mm程度の幅があり、これは家庭用ではダブルベッド以上の幅に相当する。
ただし上段ベッドなどは用意されていないので、ベッドはここだけ。しかし、小学生程度の子供1名なら一緒に寝ることは十分可能だ。
ギャレー
後部左側に配置されたギャレー
シンクとシャワーフォーセットは、後部左側に配置されている。シンクでは中皿くらいは洗うことができる。また、シャワーフォーセットは引き出して車外で使うことができる。
コンロはポータブルカセットコンロが標準装備され、使う度にセットする必要がある。ただ、ライラのコンセプトから考えると、車内で調理する機会は少なく、ギャレーの必要性も低いと思われる。
下には各10Lの給排水タンクが収納されている。車外から直接出し入れすることができる。
冷蔵庫/電子レンジ
40L横開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は、後部右側の家具に40L横開き式が標準装備される。冷凍室があるので、製氷と冷蔵が同時にできる。
オプションリストが公表されていないので確かではないが、電子レンジは想定されていないようだ。収納するスペースも用意されているようには見えない。
多目的ルーム
ライラに多目的ルームは無いが、ポータブルトイレを積んでおくことはできる。最後部とダイネットの境にカーテンを付けて、緊急のトイレルームにするという手は無いでもないが、各ユーザーの許容度によるだろう。
収納
最前部の収納
標準ルーフなのでオーバーヘッド収納は望めないが、マルチモードシートの代わりにベンチシートが多いので、シート下の収納は各所に用意されている。
まず、シートではないが、最前部エントランスの横には車幅方向に収納家具が置かれている。上部の扉はヒンジによって開けたまま固定できるようになっているので大変便利だ。
奥にも連続した収納スペースがあるが、ここはオプションのテレビを装備すると収納としては使えない。
右側のロングシート前側の収納
次に、車内右側のロングシートで、前側の下が収納スペースになっている。連続する後部のシート下には電装系が収納されている。
左側後部の横座りシート下の収納
更に、左側後部のベンチシート下も同様の収納スペースになっている。それぞれ大きな容量があるので、相応の荷物を収納することができる。
ただし、どの収納も床に近いこともあり内部の温度が上がるため、食料品は収納しない方が良いだろう。特に前部の収納はエンジンに近いので相当熱くなる。
残念ながら収納はこれだけで、食器やカトラリーを収納できる引き出し収納などは用意されていない。シート下収納に、埃やごみの入らないように個別の容器を用意してその中に食器を入れるなどの工夫が必要になる。
ギャレー前の床下収納
更に、ギャレーの前に床下収納が用意されている。これは8ナンバー取得のためにギャレー前の高さ1600mmを確保するためのものだが、もちろん収納として使える。標準ルーフで高さを確保する必要があるため深く、収納力も大きい。
空調
暖房はFFヒーターがオプションで用意されている。またベンチレーターもオプション設置されている。なお、ベンチレーターを付けると車高が高くなるので注意が必要だ。高さ制限のある駐車場に入れるという標準ルーフのメリットが失われてしまう。
テレビ/ナビ
オプションの19型テレビ
19型のテレビが350Wのインバーターとともにオプション設定されている。ライラではこのテレビが最も目を引くところかもしれない。
テレビを使用しない場合は、下に収納しておくことができる。テレビを観る場合は、上部の蓋を開けてテレビを取り付けてある板の取っ手を持って引き上げる。引き揚げた後は、両側のスライドロックでテレビが落ちないように固定する。(ビデオ参照)
面白いアイデアで、テレビを観ない場合は車内がすっきりして良い。ただ、この位置なら特に邪魔にならないので、収納しなくてもあまり問題ないようにも思う。テレビを観ようとする度にセットするのは面倒でもある。
また、(おそらく走行中に)2列目のマルチモードシートに座って観るなら、テレビの位置が低すぎる気もする。
むしろ車内後部にテレビアームで取り付けて、前述のようにシートをカウチスタイルにした状態で見る方が楽だ。また、走行中に観るならフリップダウンモニターでも良いように思われる。
電装系
電装系はまだ製作途中ということで写真は無いが、100Ahのディープサイクルバッテリーが1個と走行充電が標準装備される。オプションリストはまだ公表されていないので、正確なオプションは不明。
しかし、消費電力の大きいエアコンや電子レンジは装備されていないし、長期旅用のモデルでも無いので、バッテリーの増設や大容量のインバーターは必要ないだろう。なお、外部電源入力は標準装備されるが、充電機能はオプションとなる。
価格(2021年4月現在:千円台切り上げ:税込)
現時点では同社のサイトに掲載されていないので最新の価格は不明だが、展示車はガソリン2WD/6ATで569万円~となっていた。
必要なオプション装備は、FFヒーター、外部電源による充電機能が挙げられる。
他モデル
ハイエース標準ボディ標準ルーフのモデルは非常に多くあるが、ライラと同じレイアウトを持つモデルは無い。多くのモデルは2~3人掛けのマルチモードシートを使用している。
また、同じようなレイアウトだが二人旅に割り切ったレイアウトならRVビックフットのスイングN4.7(437万円~)がある。
コンセプト的には、レクビィのプラスLV+1に似ている。これはハイルーフだしレイアウトも異なるので直接の比較にはならないが、いざというときに一人追加で前向き乗車ができるという安心感がある。
まとめ
日常は通勤や買い物に使い、休日には車中泊を伴う2~3日の小旅行に使うなら、ライラは適切な選択肢だ。2名使用が就寝人数から言っても理想だが、前記のように小学生程度の子供が一人いるファミリーにも対応できる。(2列目単座シートにチャイルドシートを付けて、小さな子供を乗せるのは避けた方が良い。)
あるいは、通常は二人で使用するが、たまに子供や孫を乗せるかもしれないといった場合にも、単座のマルチモードシートは役に立つ。(一応あと2名が横座りシートに乗車できるが、長距離の乗車はお勧めしない。)
ライラをファーストカーとしてミニバンの代わりに購入すると行動範囲が広くなり、休日の過ごし方も大きく変わるだろう。
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