ウインディはカトーモーターが製作する、ハイエース標準ボディハイルーフをベース車にしたバンコンキャンピングカー。
同社は多くのハイエースベースのキャンピングカーをラインアップしているが、ハイエース標準ボディハイルーフをベース車にするモデルは「ロングトレイン」に次いで2モデル目で、コンパクトなモデルの選択肢が増えた。
(記事中の価格は全て税込です)
コンセプト
スーパーロングベースの「ウインディK」は前部に対座ダイネット、後部に横置きハイマウントダブルベッドのレイアウトを持つ。ウインディはこのコンセプトを継承、ハイマウントダブルベッドは縦置きとして、コンパクトな二人旅仕様としている。
「ロングトレイン」はやはり二人旅仕様車だが、後部のダイネットを展開するベッドスタイルのため大きな荷物を積むことができなかった。
ウインディでは後部ベッドをハイマウントダブルベッドにすることにより、ベッド下に大きなスペースを確保し、これを解決している。
エクステリア
ウインディのエクステリア
ベース車はハイエース標準ボディハイルーフ。外観はほぼノーマルと同じだが、右後部の窓はエクステンションウインドウが架装されている。
ただ、その理由は不明だ。ウインディKでは車幅方向に1800mmを確保するためエクステンションウインドウを必要としていたが、ウインディでは縦置きのためその必要はないと思うのだが。
インテリア
木の感覚を生かしたインテリア
同社のサイトには「高級家具や高級建具、楽器などの装飾表面材として使われているツキ板を使用、質感や仕上がり具合、耐久性や軽さを吟味した結果、ナラ材のツキ板を選択しています」とある。
これは同社のモデルに共通しており、木の感覚を生かした温かみのある室内となっている。もちろん高級感はトップクラスだ。
また、窓枠にも木材を採用。美しいだけでなく、「熱伝導が非常に低いナラの無垢材を配することにより、冷たさを伝えず、湿気を吸収、放散し、適度な湿度を保ち、家具全体の品質と高級感を長持ちさせる効果を生みます」としている。
なお、窓枠の内側にカーテンレールを付けた「インナーカーテン」を採用している。これにより、断熱、結露を防ぎ、窓からの冷気を最大限に遮断する。
レイアウト
前部にダイネット、後部に縦置きハイマウントダブルベッドを配置。ベッドの下に隠れてしまうが、コンパクトなシンクも装備している。
先述のようにこのレイアウトの特徴は、後部のハイマウントベッド下に大きな収納スペースを持てること。ロングトレインではできなかった、大きなキャンプ用具などを積むことができる。
ただし、ウインディKのように車幅方向に就寝することはできないため、ベッドは車長方向に長くなる。その結果、ベッド展開した場合は2列目シートは使えない。
なお、ダイネット部はベッド展開できない。多くのモデルは2列目にマルチモードシートを配置して下段ベッドにできるが、ウインディでは二人仕様に割り切ったことにより、マルチモードシートを廃し、シンプルな構成にしている。
ハイエース標準ボディハイルーフベースでこのようなレイアウトを持つモデルは、ウインディの他には見当たらない。有りそうで無かった、斬新なレイアウトだ。
ダイネット
フロントシートバックを利用した対座ダイネット
運転席、助手席のシートバックを前に倒して後ろ向きのシートとして使用し、2列目の前向きシートとで対座ダイネットを形成する。4名が着座できるが、2名で使用するなら十分な広さだ。
また2列目シートはマルチモードシートではなく、固定シートになっている。一応乗車人数は4名(DXグレードでは5名)だが、2列目シートに長距離で座るのは厳しそうだ。ただ、2名で使用する想定なので、あまり問題にはならないだろう。
ベッド
この状態で1800mmを確保できる
ハイマウントダブルベッドは縦置きで、前部に追加のベッドマットをセットしてはじめて1800mmを確保できる。
ベッド幅の情報は無いが、標準ボディ内寸いっぱいに取ってあるので、1400mm(家庭用ダブルベッドに相当)はあると思われる。
写真を見ても分かる通り、ベッドマットの厚さも十分あり、メインベッドとしての寝心地も考慮されている。
前部のマットを置いてフルベッド状態にすると2列目シートが使えなくなるので、常設ベッドとは言えないが、寝具は置いておけるので、常設ベッドに近い使い方ができる。ふとん派のユーザーにも使いやすいだろう。
ギャレー
後部左側にコンパクトなシンクがある
後部左側のベッドマットを外すと、コンパクトなシンクが現れる。フォーセットは車外で使うことを想定しており、シンクの周辺に固定することはできない。
即ち、このシンクは8ナンバー取得が目的で、実用することはあまり想定されていないようだ。
車外で使えるシャワーフォーセット
シャワーフォーセットはリアゲートを開けた状態で引き伸ばして使用することができ、ペットの足を洗うなど車外で使用するのに便利だ。
シンクの下には各10Lの給排水タンクがベルトで固定されている。出し入れにはベッドマットを外す必要があり、あまりアクセス性が良いとは言えないが、シンク自体あまり使わないので問題ないかもしれない。
冷蔵庫/電子レンジ
40L冷蔵庫がエントランス横に標準装備される
冷蔵庫は40L横開き式がエントランス右側に標準装備される。冷蔵庫の扉は180度開くので、車外からアクセスするのも容易だ。もちろんダイネットからもすぐに手が届く。
電子レンジは想定されていないようで、適切な設置スペースを確保するのは難しい。ただし、どうしても設置したい場合はベッド下に大きなスペースがあるので、(使い勝手は良くないが)設置することはできるだろう。
多目的ルーム
ウインディに多目的ルームは無いが、ポータブルトイレをベッド下に置いておくことは十分可能だ。ただ、ベッド下の空間でトイレを使えるのは子供だけだろう。大人が使う場合は、各ユーザーが工夫するしかない。
収納
ベッドルームのオーバーヘッド収納
オーバーヘッド収納がベッドルーム右側に備え付けられている。ダンパーが付いており、開閉はスムースだ。もちろん開けたままにすることもできるので両手で中のものを取り出せる。
また、フロントシートバックを後ろ向きにした場合の座面になる部分が収納スペースとして用意されている。中型のバッグなども収納できる大きさだ。
後部ベッド下は大きな収納スペース
更に、後部ベッド下は大きな収納スペースとなっており、キャンプ用具など大型の荷物も収納できる。なお、後部ハイマウントベッドでよくあるような左右の収納家具は設置されていない。
空調
暖房はFFヒーターがオプション設定される。冷房のソリューションは用意されていない。またベンチレーターはオプションで用意されている。
テレビ/ナビ
テレビやナビはオプションに記載されていないが、好みのものを取り付け可能と思われる。
電装系
100Ahのサブバッテリーが1個と走行充電が標準装備される。また外部100V電源入力が標準装備されるが、充電機能はオプション。インバーターやソーラーシステムの記載は無いが、オプションで設置できると思われる。
価格(2021年4月現在:千円台切り上げ:税込)
2021年4月のジャパンキャンピングカーショーの展示車は、ガソリン2WD/6ATで車両本体価格543万円とされていた。現時点で同社のサイトに掲載されていないので、最新の価格は同社のお問い合わせいただきたい。
付けておきたいオプションは、外部電源での充電機能とインバーターが挙げられる。インバーターは電気ポットや電子レンジをバッテリーで使うなら1500W程度のものが必要だが、バッテリー容量を考えるとあまり消費電力の大きなものを使うことはお勧めしない。
パソコンやスマートファン充電なら350W程度のインバーターで十分だし、価格も安価だ。
他モデル
ハイエース標準ボディハイルーフで二人旅仕様は多く存在する。当サイトの記事「ハイエース標準ボディハイルーフの二人旅仕様8選」もご参考いただきたい。
しかし、二人旅仕様では全てローマウントベッドで、ウインディのようなハイマウントベッド仕様は見当たらない。
ファミリー仕様ではハイマウントベッド仕様があるが、ほとんどの場合2列目シートはマルチモードシートでベッド展開でき、それに加え上段ベッドがある。従ってこれらもウインディと考え方が異なる。
「ファミリー向け標準ボディハイルーフハイエースバンコン10選」を参考いただきたい。
価格的にはフジカーズジャパンのFOCS Ds Compactやビークルのハウベルのように400万円前半のグループと、アネックスのウィズやレクビィのプラスLV、あるいはカトーモーターのロングトレインのような500万円前半のグループに分かれる。
ウインディは500万円前半のグループの中でも高価な方だが、十分にその価値があるインテリアだろう。
まとめ
ウインディは標準ボディハイルーフでハイマウントダブルベッドを持つ二人旅仕様で、他に類を見ない。しかしスーパーロングでは非常に一般的なレイアウトなだけに、このレイアウトが標準ボディで存在しなかった方が不思議なくらいだ。
ただ、やはり二人旅仕様の同社のロングトレインと比較して考えると、ロングトレインの方が広々とした室内であることが分かる。
ハイエース標準ボディハイルーフの二人旅仕様のユーザーはおそらく年配者が多い。ロングトレインはウインディに比べ大きな荷物が積めないが、このようなユーザーはキャンプ用具やアクティビティ用の大きな荷物を積むことはあまり無い。
従って、年配の二人旅ユーザーはその広々感から、ロングトレインを選択する可能性が高いのかもしれない。
しかしもちろん同社のキャンピングカーのインテリアが好みで、ウインディKのコンパクトバージョンを求めるユーザーには、ウインディは待望のニューモデルとなるだろう。
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