ハイエースキャンパー アルトピアーノはトヨタモビリティ神奈川が製作する、ハイエース標準ボディをベース車にしたバンコンキャンピングカー。標準ルーフとハイルーフが選択できる。
同社は一般のトヨタ車を販売するディーラーだが、同社オリジナルのキャンピングカーも製作している。現在はタウンエースベースの「タウンエースキャンパーアルトピアーノ」、今回取り上げた「ハイエースキャンパー」、そして「ハイエース イージーキャンパー」の3モデルをラインアップしている。
特筆できるのは、これらのモデルを購入したユーザーは、年2回無料でプライベートコテージ「アルトピアーノ蓼科」を年2回無料で利用できること。車両自体は特に突出した機能や装備は無いが、プライベートコテージが無料で利用できるのが大きな付加価値になっている。
なお「販売は神奈川県と東京都・千葉県・埼玉県・山梨県・静岡県にお住まいの方に限定させていただきます。」とされており、残念ながらその他の都道府県では購入できないようだ。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
ハイエース標準ボディ標準ルーフをベース車に使用したバンコンキャンピングカー。2列目に3人掛けマルチモードシート(REVOシート)を配置する。3列目は簡易シートで、2列目シートと対座ダイネットを形成する。
後部両側に収納キャビネットを配置しており、オプションでギャレーやポータブル冷蔵庫を収納できる。
就寝人数は2名だが、オプションの上段ベッドを設置するとプラス2名が就寝できるため、ファミリーでの車中泊にも対応する。
アピールポイント
・ハイエースの最もコンパクトなボディをベース車に選択
・アルトピアーノ蓼科を年2回無料で利用できる
・オプションでギャレーを装備可能
・オプションでポータブル冷蔵庫を収納できる
・上段ベッド(OP)で計4名が就寝できる
ベース車とエクステリア
ハイエースキャンパー アルトピアーノのエクステリア
ベース車はハイエース標準ボディ標準ルーフで、ガソリン、ディーゼル、および2WD、4WDが選択できる。また4ドアと5ドアも選択可能。更に標準ボディハイルーフも選択できる。
グレードはDX、DX+GLパッケージ、スーパーGLが選択できる。写真はDXでバンパーが黒いが、GLパッケージではボディ同色バンパーやメッキグリルが装備される。
またスーパーGLではエクステリアのグレードアップに加え、インテリアや運転席周りのグレードアップもされており、乗用車に近いグレード感が得られる。
なお、標準では断熱処理はされていない。希望する場合は、「断熱・静音加工」オプションが用意されている。
インテリア
ハイエースキャンパー アルトピアーノのインテリア
展示車は上の写真のようなインテリアだったが、シートカラーは写真のブルーの他、イエローが選択できる。ただし、キャビネットのカラー選択はできないようだ。照明は間接照明とスポットライトのLED照明が、基本電源ユニットとしてサブバッテリーなどとセットオプションになっている。
なお、DXやGLパッケージを選択した場合は、室内の鉄板がむき出しになっている部分があるため、ボディカラーが室内インテリアに影響する。ボディカラーを選択する場合は注意が必要だ。
レイアウト
計6名が前向き乗車できる
2列目に3人掛けマルチモードシート(REVOシート)を配置する。前向きにすると運転席、助手席とその間の補助席を加え、計6名が前向き乗車できる。(スーパーGLは5名)3点式シートベルトは運転席と助手席、2列目シートの両側で計4名となる。
シートをフラットにすると2名が就寝できるベッドになる。またオプションで上段ベッドが用意されており、ここでも大人が2名就寝できる。従って、ファミリーでの移動と車中泊が可能となっている。
ダイネット
4名が対座できるダイネット
2列目シートを後ろ向きにすると、3列目シートとで4名が対座できるダイネットになる。テーブルも標準装備される。
足を伸ばして寛げるできるリラックスモード
後部をフラットにし、2列目シートをドッキングすると、足を伸ばして寛げるできるリラックスモードになる。このモードは意外にどのモデルでもアピールされていないが、長時間車内で過ごすキャンピングカーでは、いかに楽な姿勢を取れるかが大きなポイントになる。
ベッド
大人2名が就寝できるベッド
シートを全てフラットにすると、2,050x1,050mmの大きさのダイネットベッドになり、大人2名が就寝できる。幅1050mmは家庭用ではシングルベッドの幅(970mm)より多少広い程度なので、大人2名で就寝すると多少窮屈かもしれない。
上段ベッド(OP)
また、上段ベッドボードがオプションで用意されている。大きさの情報が無いが、大人が2名就寝できるとしている。幅は荷室いっぱいに取っているので1700mm程度あると思われる。家庭用ベッドではクイーンサイズの幅(1600mm)よりも広いので、こちらはゆったり就寝できる。
ギャレー
ギャレーセクション(OP)
ギャレー(シンクとシャワーフォーセット)はオプションで設置できる。
リアゲートのシャワーヘッドホルダー
シャワーフォーセットは引き出して使うことができる。リアゲートにシャワーヘッドホルダーが用意されており、ここにシャワーヘッドを固定すると、海水浴などの後にフリーハンドでシャワーを使うことができる。
各20Lの給排水タンク
シンクの下には各20Lの給排水タンクが収納されている。左側キャビネットの後端なので、リアゲートを開けると、車外から直接出し入れできる。
冷蔵庫/電子レンジ
18Lのポータブル冷蔵庫をオプションで用意
18Lのポータブル冷蔵庫がオプションで用意されており、左側キャビネットにすっきりと収納できる。タウンエースベースのキャンパーアルトピアーノではギャレーか冷蔵庫のどちらかしか設置できなかったが、ハイエースキャンパーでは両方を設置することができる
電子レンジはオプション設定されていないし、収納スペースも用意されていない。しかし、このモデルはクルマ旅用として考えられているわけではないので、特に問題ないだろう。
多目的ルーム
ハイエースキャンパーに多目的ルームは設置されていないが、後部に荷室スペースがあるので緊急用にポータブルトイレを置いておくことは可能だ。
収納
最後部の広いラゲッジスペース
コンパクトなボディということもあるが、収納はほとんど期待できない。特に扉付きの収納は(給排水タンクの収納スペース以外)皆無。収納というより積載スペースになるが、最後部に広いスペースが用意されている。
小物や食器の類は、分類用の箱に収納して、この積載スペースに置いておくしかないだろう。もっともこのモデルはキャンプ用途を主に想定しているようなので、多くのキャンプ用具を荷室に積み込むことができる。
空調
家庭用エアコンや車載用クーラーなどの冷房装置は用意されていないが、暖房用のFFヒーターもオプション設定されていない。理由は燃料タンクから燃料を引くため、保証の観点からこの加工はできないことによる。
これは実に残念な点だし、このモデルの大きな弱点と言える。FFヒーターは必需装備のため、一般のキャンピングカービルダーでは当たり前に用意している。FFヒーターは秋口から春先まで使う可能性があり、冬は当然必要だ。
サブバッテリーと小型の電気ヒーターや電気毛布で凌ぐ手もあるが、前者は車内全体を温めるには小さすぎるし、後者は就寝時に限られる。いずれにしてもFFヒーターが無いとキャンピングカーとしての使用機会が大きく減少するだろう。
なお、アイドリングで暖を取るのは、環境やマナーの観点から行うべきではない。特に雪が積もる可能性がある場合は一酸化炭素中毒の危険性もある。
テレビ/ナビ
テレビのオプションは用意されていない。また、ナビはトヨタ純正オプションとして用意されている。もちろん好みのナビを装着することもできる。
電装系
標準では電装系は装備されていない。この場合、照明は普通のクルマと同じようにメインバッテリーを使うことになる。当然、使いすぎるとバッテリー上がりでエンジンが始動できなくなる。
そこで、基本電源ユニットなるオプションが用意されている。これにはサブバッテリー(容量不明)、走行充電、、照明、1500Wインバーターが含まれる。インバーターは正弦波か矩形波かの記述がないが、「ご使用になる電化製品によっては使用の範囲が限られる場合またはご使用できない場合がございます。」と注釈があることから考えると、矩形波かもしれない。
矩形波でも動作すると言われる家電品でも必ず問題なく動作するとは限らないし、最悪の場合は家電品が壊れる可能性もあるので、是非正弦波インバーターをオプション設定して欲しい。
また、外部100V電源入力と充電機能はオプションで用意されている。なお、ソーラーシステムはオプション設定されていない。
ポータブル電源はもちろん持ち込んで使用できるが、システム電源としてプラグインすることはできないようだ。
価格(2023年1月現在:千円台切り上げ:税込)
DXグレード、4ドア2WD/6ATで358万円~、GLパッケージは369万円~、スーパーGLでは437万円~となっている。その他ハイルーフや、4WD、ディーゼルの価格はこちら。
付けておきたい必需オプションは、基本電源ユニット(423,500円)、外部電源入力と充電機能(121,000円)が挙げられる。(FFヒーターは必需装備だが設置が無い)
また、必要に応じてポータブル冷蔵庫(121,000円)、シンク&シャワーセット(121,000円)、上段ベッドボード(131,890円)等が挙げられる。
他モデル
ハイエース標準ボディをベース車に使用したシンプル装備のバンコンは非常に多く存在するが、一例として以下のモデルが挙げられる。
・グリーンバディ:トイファクトリー(392万円~:DX)
・スマートキャンパー7S:フォーシーズ(改定中)
・VR470 Type1:バンレボ(372万円~:DX)
・FOCSエスパシオes:フジカーズジャパン(416万円~:SGL)
・Base Camp4:ノニデル(価格不明)
・ホビクルオーバーランダーIV:レクビィ(433万円~:DX)
・リラックスワゴンNS:かーいんてりあ高橋(367万円~:GLP)
・ファシールバカンチェスリッツ:リンエイプロダクト(434万円~:DX)
「ハイエース・キャラバン標準ボディ標準ルーフモデル特集(シンプル装備編)」もご参考ください。
まとめ
ハイエースキャンパーアルトピアーノは、ハードウエア(クルマ)自体の魅力と言うより、年2回「アルトピアーノ蓼科」が無料で利用できるというソフトウエアが大きな魅力だ。
クルマ自体はシンプルな装備なので、クルマ旅というよりは、日常用途に使用しながら、1~2泊の車中泊を伴うドライブやキャンプと言った使い方が適している。上段ベッドを付ければファミリーで楽しむことができる。
弱点を挙げておくと、やはりFFヒーターが装備できないことは大きなデメリットだ。比較的暖かい季節しか車中泊は難しい。また、インバーターは正弦波が望まれる。
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