タウンエースキャンパーアルトピアーノは、トヨタモビリティ神奈川が製作する、タウンエースをベース車にしたバンコンキャンピングカー。
同社は社名の通り神奈川を拠点にするトヨタ系の販売店だが、タウンエースベースとハイエースベースのオリジナルキャンピングカーも販売している。「アルトピアーノ」はこれらのモデルおよび、同時に展開するキャンピング施設のブランド名。
即ち、キャンピングカーというハードウエアだけでなく、その楽しみ方やキャンプ場も含めた総合的なソリューションを展開している。
残念ながら店舗は神奈川県、しかも横浜市にしかない。また「販売は神奈川県と東京都・千葉県・埼玉県・山梨県・静岡県にお住まいの方に限定させていただきます」とされている。
なお、同社のキャンピングカー購入者は、同社が運営するキャンプ場を年間2回無料で利用できるという特典がある。残念ながら地域限定だが、このビジネスモデルは、今後全国的に広まるかもしれない。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
タウンエースバンをベース車にしたバンコンキャンピングカー。2列目にREVOシート、後部両側に薄型収納キャビネットを設置する。2列目シートを前向きにすると5名が乗車できるが、就寝は2名。
オプションでコンパクトなギャレーとポータブル冷蔵庫が用意されており、どちらかを設置することができる。電装系もオプションとしたシンプルな装備となっている。
また、ルーフテントもオプション設定されており、ファミリーでの車中泊も可能。取り付けを含め、ワンストップでのソリューションが用意されている。
クルマの購入者は、同社が運営するオートキャンプ場「ALTOPIANO蓼科」を年2回無料で利用できる。なお、登録は4ナンバーで、車検は初年度は2年、以降毎年となる。
アピールポイント
・2列目に3人掛けREVOシートを設置
・5名が前向き乗車可能
・2名が就寝できる
・コンパクトギャレー設置可能(OP)
・ポータブル冷蔵庫収納可能(OP)
・オーナー専用キャンピング施設を年2回無料で利用可能
ベース車とエクステリア
タウンエースキャンパーアルトピアーノのエクステリア
ベース車はトヨタ タウンエースバン。DXあるいはGLが選択できる。GLではパワーウインドウやリモコンキーが付くので、GLの選択が一般的と思われる。
2WD/4WD、5MT/4ATが選択でき、スマートアシストは全車に標準装備される。運転席+助手席エアバッグも標準装備される。
車体色はツートーンで4種類から選択可能
車体色はツートーンで4種類から選択できる。また、モノトーンでホワイトとシルバーも用意されている。ただし、バンパーはツートンの場合は、GLでも黒の樹脂となる。
なお、標準では断熱処理はされていないが、オプション(220,000円)で施工でき、ルーフ、側面、ドアに断熱処理がされる。
インテリア
後部シートと同じデザインのシートカバー(OP)
インテリアは、縞模様のシート地と明るい木目の家具の組み合わせ。オプションで運転席と助手席のシートカバーも同色でコーディネートできる。
特別仕様車のインテリア
現在のところ、インテリアカラーの選択はできないようだが、「特別仕様車 ALTOPIANO60's」(2,882,000円~)が50台限定で販売されており、これには上のような1960年代をイメージしたレトロ柄シートが採用されている。
レイアウト
前向きにすると計5名が乗車できる
2列目にREVOシートを設置しており、前向きにすると3名が着座できるので、フロントシートを含めると計5名が乗車できる。2列目シートの真ん中は2点式シートベルトになるので、3点式は4名となる。もちろんチャイルドシートも使用できる。
シートをフラットにするとベッドモードになり、大人2名が就寝できる。ベッド展開は2列目シーの展開で多少労力を要する。実際には荷物があるので、荷物の移動が必要だ。また、雨が降っていれば、同乗者と荷物がある中で、全てを車内で行う必要があることも頭に入れておきたい。(ベッド展開の動画はこちら)
ダイネット
対座スタイルのダイネット
2列目シートを後ろ向きにすると、3列目の簡易シートとで対座ダイネットを形成する。テーブルも標準装備されているので、食事やコーヒータイムで寛ぐことができる。
なお、2列目シートを後ろ向きにして、後部をベッドモードにしておくと、リクライニングして足を伸ばしてリラックスできる。ダイネットで長時間過ごす場合、どのような姿勢でリラックスできるかが重要だが、どのモデルでもあまりアピールされていないのが不思議だ。
ベッド
2名が就寝できるベッド
ベッドサイズは長さが2050mmとされているが、幅の記載はない。2列目シートは1200mm程度の幅と思われるため、ベッド幅も1200mm程度あると思われるが、足元は家具があり、1000mm強程度と思われる。
1200mmは家庭用ベッドではセミダブルに相当し、2名が就寝できるが、足元は多少窮屈かもしれない。
ギャレー
コンパクトなギャレー(OP)
コンパクトなギャレーがオプション設定されている。後部左側のキャビネットに設置することができ、シンクとシャワーフォーセットが付く。シャワーフォーセットは引き出して車外で使用することができ、リアゲートにはフォーセットのホルダーも用意されている。
なお、水中ポンプを動作させるのに電源が必要なため、ギャレーオプションを設置する場合は電源オプションも同時にセットする必要がある。
シンクの下の給排水タンク(OP)
シンクの下には給排水タンクが収納される。これもギャレーオプションと一緒に設置される。タンクの容量は記載されていないが、12L程度と思われる。タンクはリアゲートを開けて車外から出し入れできる。
冷蔵庫/電子レンジ
18Lのポータブル冷蔵庫(OP)
18Lのポータブル冷蔵庫がオプション設定されている。冷蔵庫は、後部左側のキャビネットにすっきり収納される。ただし、残念ながら先述のギャレーオプションと同時選択はできない。
同じスペースを利用するのでどちらかしか選択できないが、ポータブル冷蔵庫はベッド下にも置いておけるので、ベッド下に入る寸法のものを別途購入することはできる。
電子レンジはオプション設定されていないし設置スペースも厳しいが、積めないことは無い。電源オプションと1500Wインバーターもオプション設定されているので、サブバッテリーで使用することができる。ただしこのモデルで電子レンジを積みたいという需要は少ないだろう。
収納
ベッド下の収納スペース
コンパクトなベース車なので収納は期待できないが、ベッド下のスペースが大きな収納スペースになる。
後部に荷物を乗せておくことができる
なお、走行時は後部をフラットにしておくと、ここに荷物を乗せておくことができる。就寝時は荷物を後部のテーブルに乗せるとか、フロントシートに移動するなどして対応する。
扉付きの収納
左側エントランス横に、小さいながらも扉付きの収納が用意されている。小物を収納しておける便利な存在だ。
空調
4連の排気ファン(OP)
オプションで4連の排気ファンが用意されている。これを設置する場合は、電源オプションも設置する必要がある。
なお大変残念なことに、FFヒーターは保障の理由から設置できない。FFヒーターは車中泊を想定するモデルでは必需装備で、これが無ければ冬場や春先、あるいは秋口の車中泊は寒い思いをすることになる。
ポータブル電源と簡易ヒーター、あるいは電気毛布という選択もあるが、前者は車内全体を温めるには小さすぎるし、後者は自由に動けない。もちろんすぐに就寝してしまうという場合は良いかもしれないが、ちょっと味気ない。
結果的にアイドリングを続けて暖を取ることになるが、これは環境面、騒音面から良くないことは明らかだし、マナーの面からも行うべきではない。このあたりは自動車メーカー系のビルダーの限界かもしれない。
テレビ/ナビ
テレビのオプション設定は無いが、狭い室内にテレビを装備するよりも、タブレットなどで観ることをお勧めする。また、ナビは推奨品や好みのものを取り付けることができるだろう。
電装系
標準では電装系は装備されておらず、照明等の電源はベース車のメインバッテリーから取ることになる。従って、バッテリーが上がってしまうとエンジンがかからなくなる。
電装オプションが用意されており、車中泊をするなら、これは必需装備と言える。容量が記載されていないが、サブバッテリーと走行充電、500Wのインバーターが含まれる。また、照明がLED2灯になる。
500Wインバーターは疑似正弦波なので、正弦波のものもオプション設定して欲しいところ。1500W正弦波インバーターがオプション設定されているが、400W程度の正弦波インバーターの需要も多いのではないだろうか。
外部100V電源入力とそれによる充電機能もオプション。標準では走行充電しかないので、外部電源での充電機能も必需装備だ。またソーラーシステムのオプション設定もされていない。
なお、ポータブル電源もオプションで用意されているが、プラグインでシステム電源として使用することは想定されていないようだ。これができれば高価な電装オプションも不要になるのだが。
価格(2022年9月現在:千円台切り上げ:税込)
DXグレード2WD/5MTで257万円~、2WD/4ATで265万円~。最も選択されると思われるGLグレード2WD/4ATで284万円~。GLグレード4WD/4ATは320万円~となっている。
付けておきたいオプションは、車中泊をするなら(おそらく多くのユーザーがするだろうが)、電源オプション(278,300円)、外部100V電源入力と充電機能(116,000円)が挙げられる。(FFヒーターも必需装備だがオプション設定が無い)
また必要に応じてギャレーセット(99,000円)、ポータブル冷蔵庫(88,000円)、4連換気ファン(88,000円)がある。
他モデル
タウンエースベースのバンコンは10モデルほど存在する。タウンエースキャンパーアルトピアーノと似たレイアウトを持つモデルの一例をあげると、AtoZのアンナ Model E(284万円~:DX)とアンナModel L(372万円~:DX)、キャンパーアシストのペコラ(価格不明)、マリナRVのハーフ(295万円~:GL)、リンエイプロダクトのコンパクトバカンチェスLリッツ(価格不明)などがある。
AtoZの2モデルは、タウンエースキャンパーアルトピアーノに最もレイアウトが似ている。アンナModel Eはサブバッテリー(ポータブルバッテリー)もオプションで、これも似た仕様になっており、シンプル装備が特徴。Model
Lはギャレーやポータブル冷蔵庫が標準装備される。こちらはギャレーとポータブル冷蔵庫を同時に付けることができる。また、FFヒーターもオプションで設置できる。
まとめ
タウンエースキャンパーアルトピアーノは最低限の装備があれば良いという、シンプルさとコストを優先するユーザーに向いている。もっとシンプルで低価格にするなら、マルチモードシートではなくベンチシートにすればよいが、ここは普段使いもしたい、という要望がある。その結果、このレイアウトと装備ができ上がっている。
コストパフォーマンスを、最もコンセプトが近いAtoZのアンナModel Eと比べてみても、DX 2WD 4ATで20万円程度安価なことが分かる。しかもボディカラーはツートーンが標準だ。
しかし、タウンエースキャンパーアルトピアーノで展開されるトヨタモビリティ神奈川の戦略はハードウエア(クルマ本体)だけではない。クルマの購入者は、同社が運営するオートキャンプ場「ALTOPIANO蓼科」を年2回無料で利用できる。
ここでは単にテント泊ではなく、コテージも利用できる。コテージはペット同伴可能の棟も用意されている。トイレやシャワー室もあり、更にドッグランやペットのシャワー室まで用意されている。
これはユーザーにとってはかなり魅力的なオファーだ。実際タウンエースキャンパーアルトピアーノの人気も、この要素が大きく影響しているのだろう。本格的なキャンピングカーは不要と言うユーザーには、購入決定の大きな要素となる。
ノアのようなミニバンの代わりに購入するユーザーも増えるかもしれない。ノアの最安価グレードはXの2WDで価格は267万円。タウンエースキャンパーアルトピアーノとほぼ同価格だ。
タウンエースは商用車なので、ミニバンと比べると運転席周りのデザインや装備にがっかりするかもしれないが、ユーザーの興味はハード面より、楽しむことのソフト面に移りつつあるのかもしれない。災害の避難手段として購入する要素もあるだろう。
今まで自動車メーカー系のモデルは多くあったが、残念ながらシンプルなだけで、あまり魅力のあるモデルは無かった。また、シンプルなモデルは違いを出すのが難しく、あまり成功したモデルは無かったように思う。
しかし、タウンエースキャンパーアルトピアーノはこれを変えるかもしれない。現在神奈川とその近隣県に限られているが、今後このようなビジネスモデルは増えていくだろう。
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