クレア5.3Wは、ナッツRVが製作する、トヨタカムロードワイドトレッドをベースにするキャブコンキャンピングカー。
同社は福岡県に本拠を置き、セミフルコンのボーダーシリーズからスピナの軽バンコンまで製作する総合ビルダー。ラインアップの中核はカムロードキャブコンで、クレア/スティングシリーズと、クレソンジャニーシーリーズの2系統をラインアップしている。
クレアシリーズには、5mを超えるクレア5.3シリーズと、5m未満の5.0シリーズが存在する。クレア5.3 シリーズは、後部に横置き2段ベッドを持つTypeWと、ハイマウントダブルベッドを持つTypeXを選択することができる。ボディスタイルには、大きなバンクを持つクレアシリーズに対し、同じレイアウトながらスリムなバンクを持つスティングシリーズも存在する。
グレードはそれぞれ、エボリューションと、リチウムイオンバッテリーを採用したハイパーエボリューションNEOがあり、いずれも家庭用エアコンを標準装備する。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
クレア5.3Wはカムロードをベース車にする全長が5mを超えるキャブコンキャンピングカー。余裕ある全長のボディに、カムロードキャブコンでは最も一般的な後部横き2段ベッドを持つレイアウトを採用する。
冷蔵庫や電子レンジ、常設2口コンロ、家庭用エアコンなどクルマ旅に必要な装備を持ち、多目的ルームではオプションで温水シャワーも装備できる。即ち、余裕あるボディに、クルマ旅に必要なすべての装備を搭載できるモデルだ。
電装系はエボリューションにはディープサイクルバッテリーを3個、ハイパーエボリューションNEOにはリチウムイオンバッテリーが4個標準装備される。ファミリーでのクルマ旅にも、二人旅にも対応できる、スタンダードなモデルだ。
アピールポイント
・5m超の余裕あるボディサイズ
・軽量化を図ったアルミパネルのシェル
・セミダブルベッドに相当する広いベッド幅
・家庭用エアコンを標準装備
・ハイパーエボリューションNEOにはリチウムイオンバッテリー400Ahを標準装備
・温水シャワーを設置可能(OP)
ベース車とエクステリア

クレア5.3Wのエクステリア
ベース車はトヨタ カムロード ワイドトレッド。全車後輪はダブルタイヤ仕様。2WDと4WDが選択できどちらもディーゼルターボ2.8Lエンジンを搭載する。
このベース車にアルミパネルのシェルを架装。アルミパネルの採用で軽量化を図るとともに、ルーフとフロアのパネルにはFRPパネルを使用して高断熱性を確保している。
インテリア

クレア5.3Wのインテリア
特別に何かにこだわったインテリアではないが、家具やシートはそつなく仕上げられており、カジュアルで洗練されたインテリアとなっている。家具のカラーバリエーションが用意されており、4種類から選択できる。
照明はメインライトと間接照明、スポットライトをアレンジしており、間接照明はギャレーキャビネットの下にも使用されている。スポットライトはダイネットやギャレーに設置されている。
レイアウト
前部に対座ダイネット、中央にギャレーと多目的ルーム、後部に横置き2段ベッドのレイアウトで、カムロードキャブコンでは最も一般的なレイアウトを採用している。横置き2段ベッドの特徴は、スペース効率が良く、前方のスペースを浸食しないこと。そのため、多目的ルームと対座ダイネットを無理なく配置できる。
2段ベッドのもう一つの特長は、就寝前にプライベートな空間を持てること。パートナーと就寝時間が異なっても、読書をしたりスマートフォンを見たりと自分の時間が持てる。短所は高いところに上る必要があること。年配のユーザーは特に気を付けたい。
乗車定員は、ダイネットに4名と運転席、助手席で6名、就寝定員は2段ベッド、バンクベッド、ダイネット展開ベッドで計7名となっている。
ダイネット

対座ダイネット
2列目と3列目シートで4名が対座できる。それに加えて、横座りの単座シートも用意されている。対座ダイネットの足元は広く、窮屈感は無い。テーブルは特別大きくはないが、4名が食事することも可能だ。

エントランス部の補助シート
エントランス部にはめ込むことができる補助シートも標準装備されており、単座シートと合わせて2名が着座できる。
ベッド

後部の2段ベッド
後部の2段ベッドは、1930x1200(最大)mmの大きさ。 幅1200mmは家庭用ではセミダブルベッドに相当し、他の5m超のモデルと比べても特筆できる広さだ。ちなみにクレア5.0Wの2段ベッドの幅は1010mmなので、5m超のボディの優位性はここに出ている。ただし、家庭用のシングルベッドの幅は970mmなので、クレア5.0Wの2段ベッドでも窮屈ということは無い。

上下段ともウッドスプリングを採用
2段ベッドには上下段ともウッドスプリングを採用しているのは特筆できる。快適な寝心地が期待できる。

バンクベッド
クレア5.3Wのバンクベッドは、引き出してセットする。 ベッドサイズは1900x1800mmの大きさ。1800mmは家庭用ではキングサイズベッドに相当する。高さも720mmあり、座ることができる。ちなみに、スティングのバンクベッドは500mmの高さだ。

ダイネット展開ベッド
3つ目はダイネットを展開するベッドで、大きさは公表されていないが、1~2名が就寝できる。ゲストがあった場合などの補助的なベッドとして使用できる。
ギャレー

ギャレーセクション
ギャレーキャビネットには常設2口コンロと一体になったシンクが装備されている。常設コンロなので、いちいちカセットコンロをセットする必要が無い。また、ギャレーキャビネットの隣には、跳ね上げ式の調理台が設置されており、下すと広い調理スペースが出現する。

シンクの下の給排水タンク
シンクの下には各20Lの給排水タンクが収納されているが、オプションで温水シャワーを設置する場合は各60Lにアップグレードされる。
冷蔵庫/電子レンジ

70L両開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は70L両開き式が標準装備される。両開き式なので、ダイネット側からでもベッド側からでも開けることができる。

電子レンジも標準装備される
家庭用の100V仕様の電子レンジが標準装備される。ちょっとした温めものや冷凍食品の調理に重宝する。1500W正弦波インバーターも標準装備されるので、外部電源のないところでも電子レンジを使うことができる。
多目的ルーム

防水処理された多目的ルーム
クレア5.3Wの多目的ルームにはカセットトイレやポータブルトイレ、あるいはラップ式トイレをオプションで設置できる。ラップ式トイレの場合は防水型の100Vコンセントも設置される。
多目的ルームは防水処理されており、オプションで温水シャワーを設置することもできる。湯はラジエーターボイラーで加熱する方式で、エンジンの熱を使用する。
多目的ルームにはFFヒーターの吹き出し口も用意されているので、寒い冬場でも温かく使用できる。
収納

ダイネット上のオーバーヘッド収納
ダイネット上部にオーバーヘッド収納が設置されている。ギャレー上部を除きオーバーヘッド収納はここだけだが、高さ奥行きがある収納力は大きい。

後部ベッド下の外部収納
後部ベッド下は大きな外部収納スペースになっており、両サイドからアクセスできる。他モデルの中には、縦長の開口部を持ち、ベッドボードを取り外して自転車等を積み込めるようになっているモデルもあるが、クレア5.3Wでは開口部は大きくない。

エントランス横のシューズボックス
エントランス横にシューズボックスが設けられている。上下段あり、ファミリーで使用時にも対応できる。
空調

家庭等セパレートクーラーを標準装備
暖房はFFヒーターが標準装備され、冷房は家庭用セパレートクーラーが標準装備される。室内機の設置場所はエントランス上部。室外機は車体右側後部に設置されている。
テレビ/ナビ
写真が無いので、どのように取り付けられるのかが不明だが、19インチ液晶テレビがオプションで用意されている。ナビはパイオニア製やパナソニック製がオプションで用意されているが、その他の好みのものも付けられるだろう。
電装系
エボリューションでは100Ahのディープサイクルバッテリーが3個、ハイパーエボリューションNEOには100Ahのリチウムイオンバッテリーが4個標準装備される。エアコンを多用する場合は、リチウムイオンバッテリーをお勧めしたい。
同社のシステムは走行充電(あるいはアイドリングでも)サブバッテリーをフル充電できるのが特徴で、昼間の走行時に充電しておき、夜間はサブバッテリーでエアコンを使用すると言った場合に適している。
その他、外部100V電源入力とチャージャー、1500W正弦波インバーターも標準装備される。更に、280Wのソーラーシステムも標準装備される。
価格(2024年1月現在:千円台切り上げ:税込)
エボリューション2WDで1123万円~、4WDで1146万円~、ハイパーエボリューションNEOは2WDで1211万円~、4WDで1234万円~となっている。
クルマ旅に必要なほとんどの装備は標準装備されているので、追加すべき必需装備はない。必要に応じて、温水キット(ラジエターボイラー22L混合栓AC付:139,150円)、60L給排水タンク(169,290円)、各種トイレなどがある。オプションリストはこちら。
他モデル
5m超で同じレイアウトを持つモデルの選択肢は多いが、アネックスのリバティ52DB(1317万円~)、ダイレクトカーズのトリップIIプレミアムメガ(1315万円~)、東和モータース販売のヴォーンEXC タイプR2B(1172万円~)、バンテックのジル520(1211万円~:IRiSバージョン)などがある。
リバティ52DBとトリップIIプレミアムメガは温水シャワーや瞬間湯沸かし機能まで標準装備。リバティ52DBは床暖房も標準装備だ。ヴォーンEXC
タイプR2BはクレアハイパーエボリューションNEOの姉妹車で、ハイパーエボリューションNEOと同じ電装系を持つ。ジル520は、2023年に発表された独自の電装システムIRiSを装備したモデルだ。
まとめ
クレア5.3Wは、「カムロードキャブコンのスタンダード」といったイメージのモデルではないだろうか。大きな欠点は無いし、価格も特に高価ということでもない。非常に無難な選択肢だ。道の駅などでよく見かけるのも頷ける。
しかし、数年前まではジルとクレアは2巨頭だったが、最近ではリバティ52シリーズやトリップシリーズも目立つようになってきた。これら2モデルはスペシャリティ感で差異化を図っている。
例えばリバティ52DBはスタイリッシュなエクステリアとお洒落で豪華なインテリア、あるいは床暖房まで標準装備されたグレード感が好評だ。また、トリップシリーズは強力な電装系に支えられた32型の大画面テレビや大型冷蔵庫など、車内での過ごし方も提案している。更にこれらのモデルは瞬間湯沸かしの温水シャワーも標準装備されている。
もちろんクレアにも温水シャワーまで装備できるが、特にギャレーや多目的ルームのデザインは、最高峰のキャブコンとして少しスペシャリティ感が物足りない感じがする。今後はクレアのソフト面の進化に期待したい。
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