2020キャンピングカートレンド


コロナに終始した2020年

今年の始め、2020年がコロナで大変な年になるとは誰もが思わなかっただろう。しかし年末になった現在でも、収束するどころか第3波と言われるほどに広がっている。

キャンピングカー業界も大きく影響を受け、2月のジャパンキャンピングカーショーは開催されたものの、その後のショーはことごとく中止か延期になった。

これからコロナ禍がいつ、どのように収束していくのかまだわからない。しかし、旅のスタイルは大きく変わるだろう。そのようなことも含め、2020年のキャンピングカーのトレンドを考えてみた。

 

新しい旅のスタイル

コロナ禍にあって、キャンピングカーが注目されつつある。キャンピングカーでの移動や宿泊なら、人との接触を最小限に抑えて旅行できるからだ。

実際、キャンピングカーで移動して、密にならないよう行動して、車内で食事するならほとんど人と接触しない。食材を買出しにスーパーに行くのは自宅にいても同じだ。

このような旅のスタイルを考えると、キャンピングカーの装備は充実方向に向く。ゆったり就寝できるベッドは従来通り必需品だが、調理するギャレー、食材を保存する冷蔵庫、すぐに調理できる電子レンジも必要になる。

また、快適に過ごすことができるエアコンも今後普及が進むだろう。

バンライフがトレンドワードに

バンライフというのは、自宅を持たずクルマ(バン)で生活するライフスタイルが源流だが、現在では少し長い日数を車内で生活することも含めて意味するようだ。

もともと欧米で発生したライフスタイルで、日本では1~2年前から耳にするようになった。もともと「車中泊」という言葉はあり、これはどちらかというと、コストをかけないで旅するのが目的だった。

しかしバンライフはこれとは少し異なる。文字通り車内で生活するが、場所や時間に縛られない、自由な生活を送ることが目的となっている。そしてこれは、ネット環境があるからこそ可能となった。

そして、コロナ禍でバンライフが思いがけず注目されるようになった。即ち、リモートワークが一般化し、どこでも仕事ができるような環境になりつつある。この1年で仕事の仕方が大きく変わったのだ。

もともとバンライフというのは、ネットを使用してどこでも仕事ができることが前提だったわけで、コロナの状況下にぴったりはまった感じだ。

山小屋風インテリア

バンライフと山小屋風インテリアは何の関係もないが、内部をリアルウッドで固めたインテリアは何となく「バンライフ」なイメージがある。

その影響もあってか、2020年は内部をリアルウッドをふんだんに用いたインテリアのモデルが多く登場した年でもあった。

まずワークヴォックスがバンライフをキーワードに打ち出したのが「SEDONA LAKESIDE」。これは昨年デビューしたモデルだが、ハイエース標準ボディを使用している。車外にせり出すキッチンで、アウトドアのテイストも持っている。

 ワークヴォックスのSEDONA LAKESIDE

山小屋風インテリアでラインアップを拡充しているのがダイレクトカーズのリトリートシリーズ。ハイエース標準ボディ、ワイドロング、スーパーロングのラインアップに加え、今年のジャパンキャンピングカーショーでは、軽キャンパーのリトリートミニが発表された。

 ダイレクトカーズのリトリートミニ

NV200バネットのようなコンパクトバンコンもある。ノニデルベースキャンプソロは、名前のごとく一人旅を想定したレイアウトで、NV200バネットのコンパクトな室内ながらギャレーやポータブル冷蔵庫がしっかり備え付けられている。

 ノニデルのベースキャンプソロ

軽キャブコンやライトキャブコンではMYSミスティックのレジストロシリーズがある。レジストロはピクシス(ダイハツからトヨタへのハイゼットのOEM)トラックを使った軽キャブコン、レジストロアウルはタウンエーストラックを使ったライトキャブコンだ。

 MYSミスティックのレジストロ

どちらも同系のインテリアで、これも山小屋風を打ち出している。なお、同社は小型トレーラー「レジストロ・クコ」も発売した。

そしてもう一つ、三島ダイハツの「クオッカ」がある。インテリアは、壁面や天井だけでなく、家具からシートまで全て「富士ひのき」を使っている。

 三島ダイハツのクオッカ

リアルウッドのインテリアがバンライフに適しているとすると、それは壁面や天井にいろいろ張り付けて自分独自の部屋に仕立て上げることができるからかもしれない。


リモートオフィスになるキャンピングカー

ネット環境が高速化され、タイミングよくと言ったらなんだがコロナ禍の環境になり、リモートワーク、リモートオフィスが加速されることになった。もちろん業種にもよるが、オフィスに行かなければならない理由がなくなった今、パソコンさえあればどこにいても仕事ができる。

現在の通信速度は4Gだが、これでも問題なく動画再生できるし、リモート会議もまったく問題ない。テレビもYouTubeも見ることができる。今後5Gになれば更に快適になるだろう。

地方に住むのもよいが、キャンピングカーなら定住する必要もない。引っ越しも不要だし、近所付き合いもなく、気ままに好きなところに行くことができる。キャンパー鹿児島の「Boss」のようなモデルが増えてくるかもしれない。

 キャンパー鹿児島の「Bass」


災害対応モデル

そして、キャンピングカーがクローズアップされたもう一つ大きな理由は、災害への備えだ。ここ数年大きな地震や災害が発生し、避難所の状況が知られるようになった。特にプライバシーの確保、エコノミー症候群、トイレの問題は、もう一つの意味でキャンピングカーにスポットを当てた。

キャンピングカーがあれば、プライバシーを保て、フラットなベッドで足を伸ばして就寝でき、トイレも車内にセットすれば共同トイレの不快さも解消できる。

オーエムシーの「ZERO」やコイズミの「かるキャン・ナゲット」のような災害に真正面から取り組んだモデルはまだ少ないが、今後様々なアイデアを伴って開発されるだろう。

 ⇨ 災害時に役に立つキャンピングカー9選

 オーエムシーの「ZERO」


エアコンがコンパクトモデルにも

車内で過ごす時間が長いほど、車内での快適度が重要になってくる。特にバンライフや災害時では暑さは最大の問題の一つだ。もちろん一般のキャンピングカーでも同様で、どんなにインテリアが素晴らしいモデルでもエアコンがなければ不快でしかない。

今では家庭用エアコンが冷房装置の主流で、少なくともスタンダードキャブコンには当たり前に装備されるようになった。また、バンコンでもスーパーロングクラスには搭載できるモデルが増えてきた。

しかしワイドミドルや標準ボディ、あるいはコンパクトバンコンや軽キャンパーにはまだまだ普及は遠い状況にある。ハイエース標準ボディに家庭用エアコンを搭載したレクビィのプラスLVやケイワークスのオーロラエクスクルーシブは珍しい存在だった。

しかしCOOLSTARのような小型の本格的なクーラーが発売されたことにより、ホワイトハウスコンパスビッツやオーエムシーの「Narrow銀河」といった標準ボディバンコンにも搭載されるようになってきた。

 ホワイトハウスの「コンパスビッツ」

またワイドミドルでもオーエムシーの「北斗対座モデル」やキャンピングカー長野の「スペースキャンパーCOOL」のようなモデルが発売されている。

 キャンピングカー長野の「スペースキャンパーCOOL」

今後はNV200バネットやタウンエースベースのコンパクトバンコンや軽キャンパーにもエアコンが普及していくことを期待したい。

リチウムイオンバッテリーの普及

エアコンの普及で欠かせないのがリチウムイオンバッテリーだ。大電力を消費するエアコンに大電力が苦手なディープサイクルバッテリーは適当ではない。過酷な使用で寿命は短くなり、2~3年もするとエアコンから生暖かい風しか出てこなくなる。

リチウムイオンバッテリーは大電力に強く、経年変化も少ない。効率が良いので重量的、スペース的にも有利だ。弱点は価格だが、2~3年ごとにディープサイクルバッテリーを交換することを考えると長い目で見れば決して高価ではない。

 ケイワークスオリジナルのリチウムイオンバッテリー「Mevius」

もう一つの懸案点は安全性の確証が取れていないことがあったが、キャンピングカーに使用するリチウムイオンバッテリーはパソコンなどに使用するものと異なり、発火などの心配は極めて低い。

エアコンや電子レンジなど、今後快適性向上で大電力の家電品が求められると、リチウムイオンバッテリーは避けて通れないキーパーツとなるだろう。

プラグインサブバッテリー

リチウムイオンバッテリーは、実は軽キャンパーに普及しつつある。これはエアコン用ではなく、照明や一般電源用として市販のポータブルバッテリーを使うモデルが増えてきたこと。

例えばエートゥーゼットの「アメリア ワン」はポータブルバッテリーを車内に持ち込んで、ケーブルをつなぐと、照明や電源コンセントに給電できるという考え方を採用している。

 エートゥーゼット「アメリア ワン」のポータブルリチウムイオンバッテリー

この「プラグインサブバッテリー」とでも呼べるシステムは、軽キャンパーのようにそれほど大電力を必要としない場合、有用な手段と言える。ハイエース標準ボディクラスでも、電子レンジなどの大電力家電がなければ、プラグインサブバッテリー方式でも良いだろう。

豪華になるバンコン

バンコンとキャブコンを比べるとキャブコンの方が「上」という概念がある。確かに、全体的な価格ポジションではバンコンの方が安価なことは間違いない。

しかし、バンコンの高級化も進んでいる。レクビィの「シャングリラ」、「カントリークラブ」「ファイブスター」や、「ランドティピーCasa」で紹介したトイファクトリーの「Casa(カーサ)」シリーズはインテリアに重点を置いた車内を演出していると同時に、家庭用エアコンの導入も図っている。

 豪華な室内を持つレクビィの「シャングリラ」

即ち、お洒落であり、豪華であり、快適であることがバンコンに求められている。おそらくこれはバンコンの持つ「外観のスマートさ」や「走りの良さ」もあるだろう。 よって、「予算があればキャブコン」という時代ではなくなりつつある。

 アドリアのTWIN Extream 640SGX

フィアットデュカトをベースとしたアドリアの「ツイン」のような欧州バンコンはインテリアの洗練度とエクステリアのカッコよさで人気があるが、国産バンコンも対抗できるようなレベル(価格を含め)になってきた。

欧州バンコンはもともと家庭用エアコンを取り付ける想定で設計されていないため、後付けが難しい。夏の快適性に関しては、欧州バンコンを追い越したといってよいだろう。

国産モーターホーム の進化

国産モーターホームと言えるキャブコンが登場し始めている。輸入モーターホームにも対抗できるインテリアと装備を持つた国産キャブコンだ。

これらには、アネックスの「リバティ52DB/SP」、ダイレクトカーズの「トリップ」、マックレーの「バレンシア520」が挙げられる。これらのモデルの特徴は、リチウムイオンバッテリーで実用使用できるホームエアコン、カセットトイレや独立した手洗いが付いたサニタリールームおよび温水シャワーに加え、「瞬間湯沸かし」機能を搭載したこと。

 アネックス「リバティ52DB」のサニタリールーム

国産キャブコンで温水シャワーまで装備できるモデルは他にもあるが、瞬間湯沸かし機能が付いたものは無かった。もちろん輸入モデルにも無く、ファミリーで続けてシャワーを使うことは難題だった。

 ダイレクトカーズ「トリップ」の32型大画面テレビ

また、トリップには32型大型テレビが標準装備された。インテリア、装備、快適性に次ぐ、エンタテインメントの要素がキャンピングカーにも搭載され始めた。

国産キャンピングカーのレベルがまた一歩向上し、今や広さを除いて輸入モデル以上の快適さを実現している。

輸入モデルのトレンド

その輸入モデルに関しても触れておくと、トレンドはセカンドブランドでの価格低下だろう。即ちアドリアのセカンドブランドのサンリビング、デスレフのサンライト、あるいはローラーチームなどがそれに当たる。

 ローラーチーム「クロノス」のギャレー

ローラーチームのクロノスは、なんと税別780万円~だ。もちろん欧州モーターホームの洗練されたインテリアは健在で、プルダウンベッドまで装備しているのでファミリーでも使用できる。

更に、セカンドブランドは今まではバンコンやキャブコンのみだったが、始めて輸入されたセカンドブランドのフルコンバージョンモデル、サンライト「I68」は1000万円を切っている。

 サンリビング「I68」のベッドルーム

国産キャブコンは豪華になって価格も高くなったが、輸入モデルは逆に低価格化しており、価格だけを見れば直接競合する域に達している。

ただし、輸入モデルはサイズが大きい。国内で使うには、特に街中では扱い難い。以前は5.5mを切るモデルも輸入されていたが、今は最も短いキャブコンモデルでも5,990mmあり、種類も少ない。

今年の1台

今年最も印象に残ったモデルとして、キャンパー厚木の「Puppy480」を挙げておきたい。このモデルはカムロードベースのキャブコンだが、車幅を1,740mmとノアやボクシーなどのミニバンとほぼ同じにし、家庭の駐車場に入れることを目的とした。

大きく、豪華に、とまったく逆転の発想だが、発表されると反響は予想以上に大きく、まったく新しい需要を掘り起こした感がある。その着眼点には敬意を表したい。

 キャンパー厚木の「Puppy480」

ライトキャブコンのメインであったボンゴが生産終了になり、価格的にもサイズ的にも後継モデルが見当たらなかったが、Puppy480はその一つになるかもしれない。

もちろん税別598万円という価格は、500万円前後だったボンゴベースと比べるとまだまだ高価だが、カムロードベースでは最も安価なキャブコンとなっている。

まとめ

コロナ禍がキャンピングカーのトレンドにどのような影響を与えるかは分からないが、ポジティブな要因は、前述のように密にならないで旅行できる点や、どこでも仕事ができる点だ。

もちろんネガティブな要因は、経済環境が悪化して、キャンピングカーを購入できるユーザーが減少することも考えられる。

しかし、今後クルマ旅をするユーザーが増えると、その結果道の駅やパーキングエリアでの停泊車が増え、結局マナーの問題などで社会問題になる可能性もある。

そうならないようにするには、受け皿を整備する必要がある。例えば地方のコンビニには大きな駐車場があるのでこれを活用できるようにするとか、RVパーク湯YOUパークを増やすとかが考えられる。

タイムスのようなパーキング事業者が、地方の空いた土地を活用して車中泊設備を整備するといったことができないものだろうか。コイントイレやコインシャワーが完備された車中泊専用パーキングが各所にあれば、日本独特のクルマ旅インフラができるのだが。

しかしいずれにしても、今後キャンピングカーで自由に旅できるかどうかは、ユーザーのモラルにかかっている。ユーザーは常にこのことを心がけたい。

2020.12.29