人気のタウンエースベースのバンコン
軽キャンパーでは狭いが、ハイエースでは大きすぎて運転が不安というユーザーにとって、タウンエースベースのバンコンは「ちょうど良いサイズ」だ。全長は4045mm、全幅は1665mmで、アクアのようなコンパクトカーとほぼ同じサイズとなっている。
もちろん商用車のため荷室は広く、キャンピングカーのベース車としても適した車体と言える。しかし、室内高は乗用車より高いとはいえ、長時間車内で過ごすキャンピングカーでは、やはり圧迫感を感じてしまう。
そこで、ポップアップルーフとハイルーフを架装するという手段が用いられる。ポップアップルーフの利点は、走行時はノーマルルーフと変わらないため、高さ制限のある駐車場にも駐車でき、目立たないというのも、日常用途ではメリットとなる。
ポップアップルーフのデメリットは、ルーフの上げ下げが必要なこと、風雨の強い場合は使用できないこと、断熱効果や防音効果がほぼ無いため、暑さや寒さに弱いことが挙げられる。テント地のメンテナンスも必要だ。
一方ハイルーフは、天候によらず常に高い天井高が得られ、断熱効果や防音効果も期待できる。しかし、高さ制限のある駐車場には入れないというデメリットもある。
どちらが良いというものではなく、使用状況に応じて選択すればよいのだが、ここにきてハイルーフのモデルが増えてきた。そこで、今回はタウンエースベースのハイルーフバンコン全7モデルを特集する。
目 次
アンナ Model M:AtoZ
アンナは同社のタウンエースベースのバンコン全般のネーミングで、アンナ model Mの他に、ノーマルルーフのアンナ Model Lがラインアップされている。
アンナ Model Mは凝ったデザインのハイルーフが特徴で、ベッドボードを並べると、1750x1250mmのルーフベッドになる。ダイネットを展開するベッドと合わせて、大人2名+子供2名が就寝できる。

アンナ Model Mのインテリア
更に、2列目に3人掛けのマルチモードシートを設置しているため、運転席、助手席を合わせて計5名が前向き乗車できる。即ち、小さい子供がいるファミリーにも対応する。
2列目シートを後ろ向きにすると対座ダイネットになり、ファミリーでの団欒も可能だ。ダイネットをベッド展開すると、2080x1200mmのベッドになる。(足元はギャレーキャビネットがあるため1020mm幅)1200mmは家庭用ではセミダブルベッドの幅に相当する。

ギャレーキャビネット
ギャレーキャビネットには18Lのポータブル冷蔵庫を標準でビルトインされるが、電子レンジは設定されていない。収納はハイルーフを利用したオーバーヘッド収納が設置されている。
空調はFFヒーターがオプションで設置できるが、クーラーの設定は無い。電装系も、105Ahのディープサイクルバッテリーが1個標準装備されるが、リチウムイオンバッテリーは設定されていない。
アンナ Model Mは、ファミリーで使用できる数少ないモデルなので、クーラーとリチウムイオンバッテリーの搭載が望まれる。
449万円~ 2WD
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cott CT(コットCT):レクビィ
2025年に発表されたコットCTは、2024年に発表されたコットにFRPハイルーフを架装したモデルで、レイアウトはコットと同様だが、ハイルーフを利用したオーバーヘッド収納が追加されている。
ハイルーフにはルーフベッド機能は無いため、それほど車高は高くなく、スタイリッシュなハイルーフとなっている。

コットCTのインテリア
レイアウトは2列目シートにマルチモードシートを採用、運転席、助手席を合わせて5名が前向き乗車できる。2列目シートを後ろ向きにすると、ダイネットモードになり、テーブルを立てて食事をしたりすることも可能。
シートを全てフラットにすると、1800x1200mmのベッドになる。1200mmの幅は、家庭用ではセミダブルベッドの幅に相当する。後部のキャビネットはベッドと干渉しないので、足元まで1200mmが確保されている。

広いワークスペース
後部両側にはギャレーキャビネットと49Lの横開き式冷蔵庫が設置されたキャビネットがあるが、そこにデスク用の板を渡すことにより、広いワークスペースができる。
空調は、A/C仕様を選択すると、冷蔵庫の代わりに、車載用一体型クーラーが標準装備される。A/C仕様には150Ahのリチウムイオンバッテリーが標準装備される。
コットCTはクルマ旅向けというよりは、キャンプやイベントなどで前泊するといったシティユースに適している。
668万円~ 2WD標準仕様
693万円~ 4WD標準仕様
778万円~ 2WDA/C仕様
800万円~ 4WDA/C仕様
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ハナ、ハナ1.5、ハナ2:タコス
ハナは同社のタウンエースベースのバンコンシリーズのモデルネームで、ハナ、ハナ1.5、ハナ2がハイルーフバージョンとしてラインアップされている。

ハナのベッド
ハナは40Lの上開き式冷蔵庫を標準装備し、そのためギャレーキャビネットは奥行きが広くなっている反面、ベッド幅は狭くなっている。また、子供用のルーフベッドも設置されている。
ハナのベッドサイズは1850x1200mm、足元はギャレーキャビネットのため1050mmと狭くなっている。

ハナ1.5、ハナ2のベッド
ハナ1.5とハナ2では冷蔵庫レスとなっており、その分ギャレーキャビネットは薄くなり、ベッド幅は広くなっている。ベッドサイズは、2000x1200mmで足元は1180mmとなっており、ハナより広くなっている。
ハナとハナ1.5は1500x1000mmの子供用ルーフベッドがあり、ハナ2はルーフベッドではなく収納棚になっている。
空調はFFヒーターがオプションで設置できるが、冷房のオプションは記載されていない。また、80Ahのディープサイクルバッテリーが1個標準装備されるが、リチウムイオンバッテリーの設定はない。
456万円~ 2WD
485万円~ 4WD
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ピコ ハイルーフ:キャンピングカー広島
ピコ ハイルーフは、コットCTやホビクルタウンランダーCTと同じFRPハイルーフを架装している。従って、ルーフベッドは無いが、上記両モデルとは異なり、マルチモードシートを持たず、ベンチシートのみの二人(あるいは一人)旅仕様となっている。

ピコハイルーフのダイネット
ピコにはハイルーフバージョンの他に、ノーマルルーフとポップアップルーフバージョンがあるが、いずれも同社独自のスイングシートで、ワンアクションでダイネットとベッドのモード変更ができる。

スイングシート
ベッドは1850x1080mmの大きさで、1080mmは家庭用のシングルベッドの幅(1000mm)より多少広い程度。大人が二人就寝するには多少窮屈かもしれない。
左サイドの大きなギャレーキャビネットには、14Lのポータブル冷蔵庫が標準装備される。また、ハイルーフ部には電子レンジが標準でビルトインされている。
空調は、車載用セパレートクーラーがオプションで用意されている。標準では100AhのAGMバッテリーが1個搭載されているが、オプションで200Ahのリチウムイオンバッテリーを装備することができる。
ピコハイルーフは冷蔵庫、電子レンジ、クーラーなど、クルマ旅に必要な装備は全て搭載できるが、2人で車中泊する場合、ベッドの狭さは考慮に入れておく必要があるだろう。
543万円~ 2WD
568万円~ 4WD
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Beaute5(ボーテ5):RVグランモービル
ボーテ5は2024年に発表されたが、2025年モデルでは、多少レイアウトや仕様が変更された。まず、ダイネットシートはベンチシートからL字型に変更、ギャレーキャビネットがエントランス横に独立して設置された。また、テーブルは跳ね上げ式に変更されている。

ボーテ5のインテリア
二人旅(あるいはひとり旅)に適したレイアウトで、ダイネットを展開したベッドは1800x1100mmの大きさ。幅1100mmは家庭用のシングルベッドの幅(1000mm)とセミダブルベッドの幅(1200mm)の中間の幅。

ベッドモード
ギャレーキャビネットには15Lポータブル冷蔵庫がオプションで設置できる。また、電子レンジは標準装備される。
ボーテ5のユニークな点はFFヒーター(OP)を利用した床暖房で、このクラスでは他に例を見ない。クーラーはオプションで設置でき、100Ahのリチウムイオンバッテリーが1個標準装備される。
ボーテ5は、床暖房や大きなスカイルーフなどユニークな装備が積極的に投入されており、快適なクルマ旅を期待できる。
593万円~ 2WD
645万円~ 4WD
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ホビクル タウンランダー CT:レクビィ
ノーマルルーフのホビクルタウンランダーは2024年に発表されたが、コットと同様、ホビクルタウンランダー CTはハイルーフ仕様となっている。
2列目にマルチモードシートを持ち、前向きにして5名が前向き乗車でき、後ろ向きにすると、対座ダイネットになる。

ホビクルタウンランダーCTのインテリア
ホビクルタウンランダーCTはホビクルタウンランダー同様、3段の高さでベッドマットを並べることができ、ユーザーの使い方で様々にアレンジできる。
標準的な並べ方では、ベッドサイズは1800x1200mmで、1200mmの幅は、家庭用ではセミダブルベッドの幅に相当する。ホビクルタウンランダーCTのユニークな点は、ベッドレールエクステンドスライダーという金具を引き出すことで、上段ベッドを設置できること。

上段ベッド
標準のベッドボードの枚数では1360x710mmの子供用ベッドを作ることができる。オプションのベッドマットをあと2枚追加すると、1420x1360mmのベッドになる。
もう一つのユニークな点は、後部のコンパクトなギャレーキャビネットを積み下ろしできること。下ろしてしまうと、後部のスペースは大きな荷室として使用できる。
ホビクルタウンランダーCTには冷蔵庫や電子レンジといった装備は想定されていないし、FFヒーターはオプションで設置することができるがクーラーの設定は無い。また電装系は、固定のサブバッテリーは無く、ポータブル電源を持ち込んでプラグインする。
即ち、ホビクルタウンランダーCTは、装備を与えられるのではなく、ユーザーが作り上げていくモデルだ。
607万円~ 2WD
635万円~ 4WD
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リゾートデュオルクシオV:stage21
リゾートデュオルクシオは同社のタウンエースベースのバンコンラインアップのシリーズ名で、現在ではルクシオプロ、ルクシオプロⅢ、ルクシオⅣ(プロは付かない)、ルクシオα、そしてルクシオプロⅤがある。
それぞれ異なるレイアウトを持つが、ルクシオプロⅤのみ車両ではなく、ハイルーフのみの名称となっている。即ち、オプションパーツだ。

リゾートデュオルクシオプロⅤ
ルクシオプロⅴと車両(例えばルクシオプロα)を組み合わせることにより、車両のハイルーフ化を行うことができる。即ち、各レイアウトをハイルーフ化することができるのだ。
ハイルーフ(ルクシオプロⅤ)を架装し、さらにオプションのルーフボードを追加すると、1840x1000mmのルーフベッドが使えるようになる。これにより、ダイネットベッドと合わせて4名程度が就寝できるようになり、ファミリーでの車中泊も可能になる。

ルーフベッド
たとえば、2列目にマルチモードシートを持つルクシオプロⅢにルクシオプロⅤを架装すると、5名が前向き乗車でき、4名が就寝できる。15Lポータブル冷蔵庫、電子レンジ、車載用セパレートクーラー、100Ahリチウムイオンバッテリーなどが標準装備され、長期旅も可能だ。
リゾートデュオルクシオプロⅤは、様々なレイアウトのベース車に架装してハイルーフ化できるユニークなオプションだ。
683,100円(ハイルーフのみ)
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まとめ
現在発売されてい折るタウンエースベースのハイルーフバンコンを7モデル特集したが、用途別に考えてみると、まず、ファミリーでクルマ旅には、全員が前向き乗車でき、装備が充実した、リゾートデュオルクシオプロⅢ+リゾートデュオルクシオプロⅤが挙げられる。
二人旅では、L字型の広いダイネットと充実装備のボーテ5が最有力だ。ピコハイルーフも良いが、ベッドのサイズ的にひとり旅の方が適している。リゾートデュオルクシオプロ、ルクシオプロαとハイルーフのリゾートデュオルクシオプロⅤの組み合わせもお勧めできる。
日常用途で使いながら、休日には近場で短期のロングドライブがメインなら、コットCT A/C仕様も候補に挙がる。特に後部の書斎的な一角はパーソナルな空間としても居心地が良いだろう。
アンナ Model Mとハナシリーズはクーラーが付かないという点で夏場の使用にはお勧めできない。なお、ホビクルタウンランダーCTもクーラーが無い点は同じだが、ユーザーが作り上げるというコンセプトを理解しているユーザーにはその限りではない。