ツェルトCPは東和モータース販売が製作する、ハイエース標準ボディにポップアップルーフを架装したバンコンキャンピングカー。
同社は輸入モデルから自社製のキャブコンやバンコンまでラインアップする総合ビルダー。ツェルトは同社のバンコンモデルの総称で、ハイエーススーパーロングをベース車にしたツェルトキリマや、ワイドミドルルーフのツェルトWGがある。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
ハイエース標準ボディにポップアップルーフを架装したバンコンモデル。2列目にマルチモードシートを配置し、後ろ向きにして3列目シートとで対座ダイネットになる。後部には子供用のハイマウントベッドがあり、全部で大人4名+子供2名が就寝できる。
ダイネットサイドに配置されたギャレーにはシンクと40L冷蔵庫が標準装備される。シートを前向きにすると、7名が前向き乗車でき、ファミリーでのロングドライブも可能。日常では通勤や買い物に、休日はファミリーで車中泊を伴うキャンプなどとフルに使用できる。
アピールポイント
・コンパクトで運転しやすいハイエース標準ボディサイズ
・ポップアップルーフを標準装備で圧迫感のない高い天井高
・ファミリー全員が前向き乗車可能
・4名でテーブルを囲める対座ダイネット
・ファミリーでの車中泊が可能
ベース車とエクステリア
ツェルトCPのエクステリア
ベース車はハイエース標準ボディ。これにポップアップルーフを架装している。ポップアップルーフを下すと、ノーマルのハイエースと見間違うくらい違和感が無く、日常用途でも目立つことは無い。
車体サイズ(全高、全幅)はノアなどのミニバンと同程度なので運転しやすく、車高も2100mmを切っているため、高さ制限のある駐車場にも入れる可能性が高い。
ベース車のグレードはDX、DX+GLパッケージ、あるいはキャンパー特設が選択できる。キャンパー特設はGLパッケージと外観は同じだが、TSS(Toyota Safety Sense)は搭載されない。
ガソリン仕様は2WDのみ、ディーゼル仕様は2WDと4WDが選択できる。
両サイドと前方に窓があるポップアップルーフ
ポップアップルーフは「熱性と防寒性能に優れたテント生地を採用」と謳われている。両サイドと前方に窓があり、バグネットとシェードの各モードにすることができる。
インテリア
シンプルなLEDライトが使われている
展示車は写真のようなインテリアカラーで、作りは上質感がある。なお、同社のウェブサイトにカラーバリエーションの情報は無い。照明はポップアップルーフがあるため凝ったものではなく、シンプルなLEDライトが使われている。
レイアウト
2列目と3列目にマルチモードシートを配置し、後部にハイマウントベッドを持つレイアウトは、ハイエースやキャラバンでは一般的だ。3列目が横座りシートにしたレイアウトも多く存在する。
このレイアウトの特徴は、より多くの乗員が前向きに乗車できること。長距離を移動する場合、乗り心地や安全面では前向き乗車が好ましい。もちろん3点式シートベルトも4名分用意されている。
一方ギャレーとダイネットの間に隙間が無く、ギャレーで調理するにはあまり便利なレイアウトではない。電子レンジも装備できないので、調理することが多いクルマ旅には向かない。ファミリーでのキャンプなど近場で数日のレジャーに適している。
ダイネット
4名が対座できるダイネット
2列目のマルチモードシートを後ろ向きにして、4名対座ダイネットを形成する。サイドにギャレーがあるため、大人4名だと多少窮屈感を感じるかもしれない。大人2名と子供2名くらいが適している。
4名が座っていると寛ぐのは難しいが、2名がルーフベッドや後部ベッドに移動すると、残りの2名は3列目シートをフラットにして足を伸ばして寛ぐことができる。
ベッド
ベッドはダイネット展開ベッド、上段ベッド、ルーフベッドの3か所があり、大人4名と子供2名が就寝できる。
セミダブルベッド幅のダイネットベッド
まず、ダイネットベッドは1900x1100mmの大きさ。1100mmは家庭用ベッドではセミダブルベッドの幅(1200mm)より10cm狭い。長さ方向は1900mmなので、一般的な身長のユーザーなら足がつかえることは無い。
後部上段ベッドは子供用
後部の上段ベッドは1500x1400mmの大きさ。1800mmに満たないので、子供用ベッドの位置付けになる。子供が2名就寝できる。
大人が2名就寝できるルーフベッド
3つ目はルーフベッドで、これは2200x1170mmの大きさ。1170mmは家庭用ではセミダブルベッド(1200mm)に少し満たない程度。ここでも大人が2名就寝できる。
ギャレー
右サイドに設置されたギャレー
右サイドに設置されたギャレーキャビネットは後部まで伸びており、ダイネット横には実用的な大きさの丸形シンクとシャワーフォーセットが埋め込まれている。シャワーフォーセットは引き出して車外で使用することができる。
コンロはポータブルカセットコンロを使用する度にセットする必要がある。ただ、このギャレーでコンロを使用して調理をするケースはあまりないと思われるので、重要な問題ではないだろう。
シンク下の給排水タンク
シンクの下には各10Lの給排水タンクが収納されている。このスタイルのレイアウトでは給排水タンクの収納位置がテーブルの下になるので、出し入れしやすい位置ではない。腰に気を付けてタンクを持ち上げる必要がある。
冷蔵庫/電子レンジ
40L上開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は40L上開き式が標準装備されている。冷凍も可能だが、横開き式のように冷凍室が分かれていないので、冷蔵と冷凍は同時にできない。キャンプなどで飲み物などを冷やしておくのに便利だ。
電子レンジはオプション設定されていないし、収納スペースも用意されていない。車内でちょっとした温めものをするような場合に便利だが、スペースも厳しいのでそこまでの必要性は無いと判断されているようだ。
多目的ルーム
ツェルトCPには多目的ルームは無いが、緊急用にポータブルトイレを積んでおくことはできる。特に小さい子供がいるファミリーでは、ポータブルトイレを積んでおくと助かる場合がある。小さい子供なら、後部ベッド下がトイレルームになる。
収納
後部ベッド下中央の大きなラゲッジスペース
ポップアップルーフを持つモデルではオーバーヘッド収納を設置するのは難しい場合があり、ツェルトCPもオーバーヘッド収納は設置されていない。
収納は主に後部ベッド下で、中央の大きなラゲッジスペースにはキャンプ用具など大きな荷物を車外から直接積み込むことができる。
ベッド下左側のキャビネット
ベッド下の両側のキャビネットも独立した収納スペースになっており、荷物を分類して収納しておくことができる。
ベッド下右側のキャビネット
ベッド下右側のキャビネットにはスライド扉の収納が用意されている。スライド式であれば中央に荷物があっても扉を開けることができるので大変便利だ。
シート下の収納スペース
2列目と3列目のシート下にも若干の空間があり、ここも収納スペースとして利用できる。
空調
FFヒーターはオプションで用意されているが、冷房のオプション設定は無い。コンパクトなベース車なのでクーラーやエアコンの設置は簡単ではないが、最近ではホワイトハウスのコンパスビッツやレクビィのソランでもクーラーや家庭用エアコンが設置されている。
日本の夏は年々暑くなっており、今後夏にキャンピングカーを利用するならクーラーは必需装備となるだろう。ツェルトCPにもクーラーのソリューションが期待される。
テレビ/ナビ
テレビは各種取り付けができる。ナビも各種取り付けが可能で、持ち込みにも対応している。
電装系
標準では115Ahのディープサイクルバッテリーが1個、走行充電、外部100V電源入力が標準装備される。電装系としては最低限の装備は標準で搭載されている。外部電源用チャージャー、1500W正弦波インバーターはオプション。なお、ソーラーシステムはオプション設定されていない。
価格(2023年9月現在:千円台切り上げ:税込)
DXグレード ガソリン 2WD/6ATの車両本体価格は599万円~。同ディーゼル 2WDは658万円~、同4WDは689万円~となっている。GLパッケージは105,600円高。
付けておきたい必需オプションは、FFヒーター(290,500円)、外部電源用チャージャー(90,140円)、1500W正弦波インバーター(202,400円)が挙げられる。(ナビ関連は除く)
他モデル
ハイエースあるいはキャラバン標準ボディでポップアップルーフを持つモデルを探すと、ホワイトハウスのコンパスビッツ(DX:531万円~)、バンレボのディアリオ Pop Type2(GLP:668万円~)が挙げられる。
コンパスビッツは最もツェルトCPに近いレイアウトで、右サイドにエクステンションウインドウを架装しているのが特徴。車載用セパレートエアコン(CoolStar)と200Ahリチウムイオンバッテリーをオプションで装備できる。
ディアリオも同じレイアウトだが、2列目と3列目のシートはバタフライシートで、シートを畳んでレールに沿って前部に収納すると、後部に大きなラゲッジスペースができ、トランポとしても使用できるのが特徴。
まとめ
コンパスビッツがクーラーが設置できたり、ディアリオが充実装備でトランポ的な使い方ができるのに比べると、ツェルトCPは特筆するところが特にない。きわめてオーソドックスなモデルと言える。
コンパスビッツと比べた場合、ダイネットベッドが多少広く2名が就寝できる点と、冷蔵庫が2倍の容量がある点は勝っている。しかしコンパスビッツがエクステンションウインドウを架装しているにもかかわらず、ツェルトCPのほうが高価なのは不思議な点だ。
ツェルトCPに期待したい点はクーラーのオプション設定だ。最近ではタウンエースベースや軽バンコンにもクーラーが装備されつつある。今後はハイエース標準ボディのモデルでもクーラーやエアコンの搭載が進むだろう。
関連記事