ツェルトWGは東和モータース販売が製作する、ハイエースワイドロングワゴンをベース車に使用したバンコンキャンピングカー。
同社は、輸入モーターホームから、カムロードキャブコン、ハイエースバンコンまで幅広く扱う総合ビルダー。「Zelt(ツェルト)」は同社のバンコンラインアップの総称で、スーパーロングからNV200バネットベースまで4モデルがラインアップされている。
コンセプト:ハイエースワイドロングをベース車に選択することにより、2x5mの一般的な駐車枠に収まり、また高さ制限のある駐車場にも入ることができる可能性が高く、街中での機動性があるとともに、車内スペースを最大限にとることができる。日常用途から休日の車中泊まで、これ1台で完結する。
ツェルトWGの室内
エクステリア:外装への架装は無く、外観は普通のハイエースと変わらない。従って、目立つことなく通勤や買い物にも使用できる。またポップアップルーフの設定は無いが、その分価格的にも手頃で、ミニバンの代わりにファーストカーとしても使用できる。
インテリア:グレー地のソファーと濃い木目調の家具の組み合わせで、派手さは無いが高級感ある内装を持つ。また、家具の天板は白で車内に明るさをもたらし、アクセントになっている。なお、カラーバリエーションは提示されていない。
後部から見たダイネット
レイアウト:2列目にマルチモードシートを設置し、運転席、助手席を含め計5名が前向き乗車できるので、日常用途でもミニバンと同じように使用できる。後部は横座りシートと収納家具が対面したレイアウトで、横座りシートには2点式シートベルトが用意されている。
なお、2列目シートがあるため、運転席、助手席から後部への移動は難しく、いったん車外に出て、スライドドアから後部に入ることになる。雨の日は苦労しそうだ。
ダイネット:2列目シートを後ろ向きにすると、後部の横座りシートとでL字型のダイネットを形成する。対座式のダイネットではないが、オープンスペースなのでファミリーでテーブルを囲んでも比較的ゆったり感がある。
ギャレーや冷蔵庫、電子レンジにもアクセスしやすい。
ベッド展開。後部だけでも大人2名が就寝できる。
ベッド:2列目シートをそのままにして、後部の横座りシートだけを展開しても1800x1300mmのベッドができる。これは家庭用のセミダブルよりも広く、大人2名が就寝できる。
また、2列目シートをフラットにすると、新たに1660x840mmのベッドができ、ここには子供が2名就寝できる。
更にオプションで上段ベッドを設置でき、これは1650x1230mmの大きさで、子供2名が就寝できる。ただし、上段ベッドをセットした状態ではシンクや冷蔵庫が使えない。
上段ベッドは3枚構成で、使わない場合は最後部に重ね置く。
上段ベッド(OP)を設置したところ
ギャレー:左サイドの家具がギャレーコンソールで、上面はフラットな広いカウンターになる。上面にはシンクとシャワーフォーセットがあり、シャワーフォーセットは引き延ばして車外でも使える。
ギャレーコンソールのシンクと冷蔵庫(OP)
冷蔵庫/電子レンジ:40L上蓋式冷蔵庫はオプション(14万円:税別)。電子レンジは標準装備される。ただし、電子レンジは外部電源がある場合にのみ使用でき、サブバッテリーでも駆動できるようにするためには、オプションの1500Wインバーター(138,000円:同)を装備する必要がある。
収納:横座りーシート下に多少の収納スペースがあり、シートを跳ね上げるかリアゲートを開けてアクセスすることができる。ただ収納らしい収納はここだけで、左サイドの家具に収納スペースはほとんど用意されていない。なお、後部をベッド状態にすると、ベッド下が収納スペースになる。
従って、車中泊を伴うクルマ旅の場合は、移動時は後部に荷物を置き、ダイネット時や就寝は運転席、助手席に荷物を移動するといった使い方になるだろう。
なお、最後部には床下収納が用意されており、ここにはスペアタイヤが収納されている。更にこれは2重構造になっており、その上に多少の収納スペースが設けられている。
シート下の収納
空調:暖房はFFヒーター(23万円:税別)がオプション設定されている。なお、冷房系は用意されていない。またベンチレーター(67,000円:同)もオプション設定されている。ベンチレーターを装備する場合は、高さ制限のある駐車場には入れないので注意する必要がある。
テレビ/ナビ:19型テレビがオプション設定されている。またナビもオプション。持ち込み取り付けもオーダーできる。
電装系:105Ahのサブバッテリーが1個と、走行充電が標準装備される。オプションでサブバッテリーが追加できるが、冷蔵庫を装備する場合や、電子レンジを使用する場合は、サブバッテリーを追加したほうが良いだろう。
外部100V電源入力は標準装備されるので、外部電源がとれるところでは、車内で100V家電品が使える。ただし、外部電源によるサブバッテリーの充電機能はオプション。
またインバーターもオプションなので、サブバッテリーで100V家電品を使いたい場合は装備する必要がある。300Wと1500W正弦波インバーターがオプションで用意されているが、電子レンジを使う場合は1500Wが必要。
なお、ソーラーシステムのオプション設定は無いが、装着はできると思われる。
価格:ガソリン2WD/6ATで393万円~(税別)。Toyota Safety Sense P装備の場合は413万円~。必要性の高いオプションは、冷蔵庫、FFヒーター、外部電源による充電機能、1500Wインバーターが挙げられるので55万円強(同)の追加出費が必要。できればサブバッテリーの増設(39,100円:同)も欲しいところだ。
他車:ハイエースワイドロングワゴンベースでファミリー向けのレイアウトを持つモデルは、多くあるが、似たレイアウトを持つモデルに絞ると、アネックスのファミリーワゴン(480万円~:税別)、ケイワークスのオーロラスタークルーズ(473万円~:同)、セカンドハウスのラスタープレミアム(538万円~:同)、ナッツRVのファミモ TypeA(401万円~)、ドリーム・エーティーのウォークMC(413万円~)などがある。
まとめ:このカテゴリーは「ミニバンのように使える」というのがキーワードになる。一般的な駐車枠に駐車できたり、地下駐車場に入れるのは先の通りだが、その他に5名程度のファミリーが前向きに座ってドライブでき、団欒でき、就寝できるのが条件だ。
更に、できるだけミニバンに近い価格で、しかもある程度の高級感を持つことが求められる。
その意味では、上に挙げた各モデルはどれも条件を満たしており、ツェルトWGもその一つだ。価格的には唯一400万円を切り最安値でもある。その上、ギャレー、冷蔵庫、電子レンジまで装備できるのは、ツェルトWGの大きな特長だ。冷蔵庫がオプションだが、これを加えても安価な方と言える。
一方ツェルトWGの弱点は大きなギャレーコンソールだろう。ギャレーをよく使うユーザーには長所になるが、ギャレーに重点を置かないユーザーの場合、ベッド幅が狭くなってしまうのは歓迎できない。車幅いっぱいにベッドを取るレイアウトでは、1500mm程度とれる。これは家庭用ではダブルベッドからクイーンベッドの幅に相当する。
このカテゴリーのモデルのレイアウトはそれぞれ異なっており、用途に合わせて選択することができる。ツェルトWGは先述のようにギャレー装備が充実しているので、これを必要とするユーザーに適したモデルと言える。
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