ヴィラトールは、KYB(カヤバ)とRVランドが協業して製作する、フィアットデュカトをベース車にしたバンコンキャンピングカー。
2025年2月のジャパンキャンピングカーショーで発表されたニューモデルで、KYBがはじめてキャンピングカー業界に進出する。同社が設計に参画することにより、足回りが強化されている。また、キャンピングカー専用のバケットシートを採用することにより、運転することが楽しいキャンピングカーに仕上がっている。ヴィラトールはKYBが販売する。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
日本に正規輸入されるフィアットデュカトをベース車にしたバンコンキャンピングカー。KYB(カヤバ)とRVランドが協業して製作するが、カヤバがショックアブソーバーなど足回りを強化している。
これにより、従来キャンピングカーの難題であった横風によるふらつきや高速安定性を改善。キャンピングカー専用のバケットシートも相まって、運転することが楽しいキャンピングカーとなっている。
レイアウトの特徴は、後部のセカンドダイネットとそれに続くオープンデッキ。今までにない爽快感が得られる車外デッキとタープは後部にすっきり収納できる。
洗練されたインテリアも魅力的で、ルーフクーラーと5000Whの大容量リチウムイオンバッテリーも搭載されており、大人の二人旅に最適な1台となっている。
アピールポイント
・広い室内のデュカトL3H2をベース車に使用
・KYBがアレンジしたショックアブゾーバー標準装備で高い走行性能
・キャンピングカー専用バケットシート
・多段階リクライニング機構付きのセカンドダイネット
・収納できるオープンデッキと専用タープ
・ルーフクーラー標準装備
・5000Wh大容量リチウムイオンバッテリーを標準装備
ベース車とエクステリア

ヴィラトールのエクステリア
ベース車は正規輸入のフィアットデュカト L3H2。最も全長が短いL2H2(5410mm)より長い全長5995mmボディを採用している。駆動は2WDのみ。
デュカトのベース車はキャビン以外に窓が無いため、ビルダーが窓を開ける必要があるが、後部両側に窓が無いモデルもある。ヴィラトールでは後部左右にもアクリル2重窓が設けられている。
インテリア

ヴィラトールのインテリア
シート色や壁の色はダーク系だが、ルーフは美しい木材の感覚を生かしている。そのため、シックな中にも華やかで豪華な印象の室内になっている。
照明も間接光を多用しており、ムーディな夜のインテリアを演出している。オーバーヘッド収納は両側に設置されているが、スマートなデザインで圧迫感を感じない。
レイアウト

後部のレイアウト
前部に対座ダイネット、中央にギャレーと多目的ルーム、後部にセカンドダイネットの構成。多くの同種のモデルでは後部は常設ベッドになっている場合が多いが、ヴィラトールでは広いセカンドダイネットを前面に打ち出している。
もちろんここはベッド展開できるので常設ベッドとしておくことも可能だ。

収納できるオープンデッキ
ヴィラトールの大きな特徴のひとつが、オープンデッキ。車体後部に大きくデッキが展開できる。このデッキは折り畳んでスマートに収納できる。更にタープ(オーニング)まで用意されており、こちらもスマートに収納できるようになっている。(収納の動画はこちら)
このようなオープンデッキを持つモデルとして、ホワイトハウスの「クルーキャブ テラス」がある。こちらは車幅方向に展開でき、面積は広い。ただし、クルーキャブ テラスは冷蔵庫がオプションだったり電子レンジは設定されておらず、クルマで調理するような用途には向いていない。
ダイネット

前部のダイネット
フロントには、デュカトでおなじみの、運転席、助手席が回転して後ろ向きのシートになり、4名が対座できるダイネットがある。2列目シートはドライブ中に2名の乗車が可能で、フロントシートと合わせて4名が前向き乗車できる。

多段階のリクライニング
セカンドダイネットは、レイアウトの項の写真の通りだが、両側に3名程度が着座して談笑できる。シートの前端が多段階にリクライニングできるようになっており、2名なら足を投げ出して寛ぐことができる。
ベッド

ダイネットを展開したベッド
後部のダイネットを展開すると、1800x1800mmのベッドになる。正方形なのでクルマの傾きに応じて就寝する方向を自由に変えられるのもメリットだ。1800mmの幅は家庭用ではキングサイズのベッド幅に等しく、3名が就寝できる。
ギャレー

ギャレーキャビネット
ギャレーキャビネットには冷蔵庫と電子レンジが収納されており、天板にはシンクとフォーセットが設置されている。調理スペースは残されているのでコンロを置いて調理はできる。このクラスなら常設コンロが欲しいろころだが、後部のダイネット&ベッドを優先したカタチだ。
給水タンクは20L、排水タンクは15Lとなっている。
冷蔵庫/電子レンジ

90L両開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は90L両開き式が標準装備される。フロントダイネットからもセカンドダイネットからも容易にアクセスできる。電子レンジは家庭用の100V仕様のものが標準装備される。
多目的ルーム

ラップ式トイレ「クレサナ」が標準装備の多目的ルーム
多目的ルームにはラップ式トイレの「クレサナ」が標準装備される。小型の換気扇も標準装備だが、FFヒーターの吹き出し口は設置されていない。
収納

後部左側のオーバーヘッド収納
前部のダイネット上部と、セカンドダイネット上部両側にオーバーヘッド収納が設置されている。飛行機の収納と同じような形状で圧迫感を感じない。
オーバーヘッド収納の一部には左右に開く部分もあり、ここは棚収納になっている。(動画はこちら)

シート下の収納
セカンドダイネットのシート下も収納になっている。シートを持ち上げてアクセスするが、シートは開いた状態でロックできるので大変便利だ。
空調

マックスファンとルーフクーラー
後部にDOMETIC FRESH JET7 ルーフエアコンが標準装備される。FFヒーターとマックスファン(写真)も標準装備だ。
テレビ/ナビ
テレビのオプションは不明だが、取り付けは可能だろう。また、ナビはデュカトに標準装備されている。
電装系
5000WhのEcoFlowシステムが標準装備される。これは100Ahのリチウムイオンバッテリー4個とほぼ同じ容量なので、クーラーを運転する場合にも十分な容量だ。走行充電や外部100Vでの充電、インバーター機能はシステムに含まれている。
価格(2025年7月現在:千円台切り上げ:税込)
2WDのみで、車両本体価格は2145万円。標準装備が充実しているので、付けておきたいオプションは特に無いが、Eco Flow 200W ソーラーシステム(144,000円)は付けておくと、常時充電できるので便利だ。
他モデル
正規輸入のフィアット デュカトをベース車にしたバンコンのうち、L3H2を使用したモデルは、トイファクトリーのダヴィンチ 6.0(1606万円~)、RVランドのランドワゴン ルーム(1188万円~)、ホワイトハウスのヴェローナ(1548万円~)、ナッツRVのゼニア(1375万円~)などがある。
なかでもホワイトハウスのクルーキャブ テラス(1133万円~)は、ヴィラトールと同様に格納できるテラスを持つモデル。ヴィラトールのようにセカンドダイネットは無いが、プロジェクタースクリーンを装備するなどエンタテインメント性を前面に出したモデルとなっている。
まとめ
ヴィラトールはカヤバがキャンピングカー業界に参入する初のモデルとあって、随所にアイデアを散りばめた、アグレッシブなモデルだ。キャンピングカーの走行性能を改善する方法は多くのビルダーや部品メーカーが行ってきたが、もう一歩進めて、キャンピングカーにドライビングの楽しさを求めるモデルは数少ない。
しかし、このモデルで最も目を引くのは後部のオープンデッキだろう。1名分のスペースしかないのは残念なところだが、セカンドダイネットと合わせて使えば、2名以上でも団欒できる。オーニングを含めてコンパクトに収納できるのも特筆できる点だ。
この他、洗練されたインテリアやリクライニングできるセカンドダイネットなど、意欲的なモデルだが、やはり価格的に高価になってしまっているのが難点ではある。しかし他とは一味違う装備を評価するユーザーには唯一無二のモデルだ。
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