ラクネル バンツアーはメティオが製作する、ハイエース標準ボディ標準ルーフをベース車にしたバンコンキャンピングカー。
同社は軽キャンパーのラクネル レスト、NV200バネットベースのラクネル ステイ、タウンエースベースのラクネル ヴィラをラインアップしているが、ラクネル バンツアーは2021年に追加された4番目のコンプリートモデルになる。
なお、メティオの特徴は、ベース車持ち込みでも施工できること。中古車や特別な車種でも、一つ一つ採寸して製作するので、ほとんどの車種に対応できる。
また、従来からベース車に穴を開けないで架装する工法を採用しており、車種によってはいつでも元に戻すことができる。ただ今回取り上げたラクネルバンツアーでは多目的ルームの仕切り板やフロア施工があるので、通常の施工法に近いようだ。
(記事中の価格は全て税込です)
コンセプト
ラクネル バンツアーは同社初のハイエースモデル。2列目にマルチモードシートを配置し、日常用途にも使えるようにしている。また後部に多目的ルームを配置し、このスペースにはベッドマットを置いて子供用ベッドにすることもできる。
標準装備は冷蔵庫とサブバッテリーのみだが、オプションでギャレーや電子レンジ、あるいはカセットトイレや温水装置まで搭載でき、需要に合わせて装備を拡張できる。シンプル構成から超多様な装備まで搭載することができる。
なお、前向きに5名が乗車できるので、日常ではミニバンと同じように使用できる。ファーストカーの代わりに購入すると日常使用に加え、休日にはファミリーでの車中泊ができ、休日の行動範囲が広がる。
エクステリア
ラクネルバンツアーのエクステリア
展示車のベース車はハイエース標準ボディ標準ルーフのDXグレード。ただし、グレードに関係なく架装はできる。展示車はクラシカルなイメージを出すためあえてそのような外観としているようだが、GLパッケージやスーパーGLも選択できる。
なお断熱処理はオプションとなっている。ラクネルバンツアーの場合、ベース車をほぼそのまま使用しているので窓の面積が大きく、またボディも鉄でできているので、断熱処理を施してもあまり効果は期待できない。同社もそれを考えオプションにしていると思われる。
インテリア
シート地は内選択できる
展示車のインテリアは上の写真のようなもので、特別凝ったインテリアではいが、標準的な仕上がりとなっている。シート地は内装材難燃基準を満たした生地から選択できる。
レイアウト
フロントシートの後部のローカウンター
2列目に1200mm3人掛けのREVOシートを配置。前向きにすると、計5名が前向き乗車できる。フロントシートの後部にはカップホルダー付きのローカウンターが付いており、フットレストとしても使える。
また後ろ向きにすると、3列目の簡易シートとで対座ダイネットになる。
ここまではよくあるレイアウトだが、ラクネル バンツアーでは最後部に多目的ルームを用意している。展示車では扉が無く、仕切り板で区切られているが、カーテンを付けたり、あるいはオーダーで扉を付けることも可能だろう。
また、多目的ルームと3列目シートの上にオプションのベッドボードを渡して子供用ベッドにすることもできる。これにより小さな子供がいるファミリーでの使用も可能になる。
なお、このレイアウトに共通することだが、2列目に1200mmのシートがあるため、運転席から後部への移動は、一度車外に出ることになる。雨の日などは面倒ではある。
ダイネット
4~5名でテーブルを囲むことができるダイネット
2列目シートを後ろ向きにして3列目のベッドボードで簡易シートを形作ると、4~5名でテーブルを囲むことができる。大人2名と小さな子供2名ならゆったり座ることができる。
子供やペットがいる場合は、3列目をフラットにしておくと、広々とした遊び場になる。またオプションの子供用ベッド(後述)があれば、子供が先に寝ても大人は対座ダイネットで寛ぐことができる。
テーブルはファミリーで食事する場合でも十分な大きさ。ウインドウサイドにはちょっとしたカウンターも設置されいる。
ベッド
ベッドは2000x1200mmの大きさ
シートを全てフラットにすると、2000x1200mmのベッドになる。2000mmのベッド長なので、長身のユーザーも窮屈感なく就寝できる。1200mmは、家庭用ではセミダブルベッドに相当する。足もとにラックがあるので、足元は多少幅が狭くなる。
オプションで子供用のベッドを設置できる
後部の多目的ルームにはオプションのベッドボード渡すと子供用のハイマウントベッドになる。ベッドサイズは不明だが、小学生程度の子供なら十分就寝できる。
多目的ルームの前部にもベッドマットを渡すことができる
更に、多目的ルームの前部にもオプションのベッドマットを渡すことができ、ここでも子供が就寝できる。ただし、このマットを設置すると、冷蔵庫を開けることはできなくなってしまう。
ギャレー
最後部左側に設置したギャレー
ギャレーはオプションで、最後部左側に設置できる。シンクとシャワーフォーセットがセットでオプション設定されており、下には各19Lの給排水タンクが収納される。また、シャワーフォーセットは引き出して車外で使用することができる。
冷蔵庫/電子レンジ
18Lのポータブル冷蔵庫が標準装備される
18Lのポータブル冷蔵庫が左側中央のラックに標準装備される。冷蔵か冷凍で使用することができる。スリムなタイプなので、収納家具の出っ張りを最小限に抑えている。
冷蔵庫の収納家具の蓋をしてしまうと、面一のカウンターテーブルとして使用できる。
電子レンジはオプション
電子レンジはオプションで装備することができる。収納スペースは後部右側の収納家具で、すっきり収まっている。なお、電子レンジだけ設置すると、外部電源があるところでしか使用できない。
サブバッテリーでも駆動するには、1500Wインバーターも同時に設置する必要がある。なお、電子レンジは消費電力が大きいので、オプションの100AhAGMバッテリーにすることをお勧めする。
多目的ルーム
仕切り板で区切られた多目的ルーム
室内の最後部は仕切り板で区切られており、セパレートな空間になっている。多目的ルームと言っても扉が無いので完全な個室ではないが、必要なら扉を取り付けることは可能だろう。
このスペースには左右に収納ラックが備え付けられている。左側のラックは先述の通りギャレーユニットを装備することができるが、右側のラックは多彩だ。
ポータブルトイレを収納できる
まず、電子レンジがオプションで収納できるが、その下に収納スペースが用意されている。ここにはいずれもオプションのポータブルトイレ、あるいは温水システムが収納できる。
Kampa ポータブル温水器
この温水システムはRVランドが扱っている「Kampa ポータブル温水器」というもので、カセットガス2本で瞬間湯沸かしができる。水は別に用意する必要があり、自動的に水を汲み上げることができる。12Vの電源も必要だ。
ガスを燃焼させるので、車内では使うことができない。上の写真ではここに収納されているだけで、車外に持ち出して使う必要がある。もっとも車内に防水処理されたシャワールームが無いので、車外でシャワーを使うことになる。
従って、この状態ではキャンピングカーの装備とは言えない。しかし、排気処理をしっかり行い、多目的ルームを防水処理すれば、比較的容易に温水シャワーを設置できる可能性がある。
カセットトイレも設置できる
そしてさらに驚くべきことに、ここにカセットトイレを設置することができる。バンコンでカセットトイレを設置できるモデルは極めて少なく、このラクネルバンツアーの他にはトイファクトリーのコルドバクルーズやアルコーバ、ヴォーグアルタモーダ、あるいはビークルのグランベルしかない。
収納
カウンターの下の収納ポケット
車内右側にある薄いカウンターの下には収納ポケットが用意されている。シートが立っている状態では出し入れし難いが、上の写真のようにベッド状態にした場合は使いやすい。
ベッド下の大きな収納スペース
多目的ルームの左右の収納家具については前述の通りだが、ベッド下も大きな収納スペースとして使える。もちろんベッドボードを設置しない場合は背の高い荷物も積むことができる。
空調
オプションの4連換気ファン
暖房はFFヒーターがオプション設定されているが、冷房システムは想定されていない。また、オプションで4連換気ファンが用意されている。4連なので強力そうだが、強弱のコントロールができるかの記述はない。常に最高出力なら、結構うるさいかもしれない。
テレビ/ナビ
19型のテレビがオプション設定されている。またケンウッド製のナビもオプションで用意されている。もちろん好みのナビを付けることも可能だ。
電装系
右側仕切り板の前に設置された電装系
右側仕切り板の前に電装系が収納されている。105Ahのディープサイクルサブバッテリーと走行充電、そして外部電源入力が標準装備される。外部電源によるサブバッテリーの充電機能はオプション。
インバーターは500W疑似正弦波のものと、1500W正弦波のものがオプション設定されている。電子レンジを使用する場合は1500Wインバーターが必要。またパソコンなどの電子機器を使用する場合は正弦波のインバーターが必要になる。
サブバッテリーはオプションで100AhのAGMバッテリーに変更することができる。100Ahだが、105Ahのディープサイクルバッテリーより性能は優れている。電子レンジや家電品を多用する場合は、AGMバッテリーをお勧めする。
オプションの200Wの薄型ソーラーシステム
更に、200Wの薄型ソーラーシステムがオプション設定されている。なお、ソーラーシステムを装備すると、ソーラー充電用にCTEKが装備され、結果、走行充電が強化される。この場合、できればオプションのAGM100Ahサブバッテリーに交換することをお勧めする。
価格(2021年9月現在:オプションは4月現在:千円台切り上げ:税込)
ガソリンDX 2WD/6ATで、388万円~、ディーゼルDX 4WD/6ATで480万円~となっている。
付けておきたいオプションは、外部充電機能(105,600円)、FFRヒーター(236,500円)、1500W正弦波インバーター(143,000円)が挙げられる。(ナビ関連は除く)
また、予算があれば100AhAGMサブバッテリー(17,600円)、200Wソーラーシステム+CTEK強化走行充電(214,500円)、網戸(22,000円)、マルチシェード(37,950円)等があれば便利だ。
その他必要に応じて電子レンジやベッドボード等がある。
他モデル
ハイエース標準ボディ標準ルーフのモデルは非常に多く存在する。別記事のハイエース・キャラバン標準ボディ標準ルーフモデル特集(シンプル装備編)も参考いただきたい。
ただし、ラクネルバンツアーは、ギャレー、電子レンジ、カセットトイレ、温水装置までもがオプションなので、基本構成こそシンプルだが、オプションを装着すれば最も装備の充実したモデルのひとつにもなる。
しかも必要に応じて多目的ルームも作ることができる。ハイエース標準ボディ標準ルーフの他のどのモデルとも異なる。
まとめ
ラクネルバンツアーは地味に見えるが、極めて挑戦的なモデルと言える。多目的ルーム、カセットトイレ、温水装置のオプション設定など、同じボディの他のモデルにはない装備やレイアウトに挑戦したモデルだ。
さすがに標準ボディでカセットトイレの必要性は何とも言えないが、将来的に多目的ルームを防水にしたり、簡易的な温水装置が車内で使えるようになれば、災害時や密を避けるクルマ旅などで重宝するだろう。
あえて要望を挙げておくと、これだけのアイデアが用意されているモデルなので、やはり冷蔵装置の提案が見たいところだ。家庭用エアコンなのか、簡易クーラーなのか、リチウムイオンバッテリーの必要性など、将来提案されることを期待したい。
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