ミニチュアクルーズSVは岡モータースが製作する、エブリイ バンをベース車にした軽バンコン。
同社は輸入モーターホームを含め様々なキャンピングカービルダーのモデルを販売しているが、同社オリジナルのモデルも製作している。それが軽バンコン「ミニチュアクルーズ」シリーズだ。
軽バンコンと言っても、同社のモデルは極めて洗練された作りなのが特徴。軽バンコンでもハイグレードのものを求めるユーザーにアピールしている。
ミニチュアクルーズシリーズのレイアウトには、「ミニチュアクルーズ」、「ミニチュアクルーズCOZY」、「ミニチュアクルーズ遍路」、そして今回取り上げる「ミニチュアクルーズSV」がある。
また「ミニチュアクルーズ」の派生モデルとしてインテリアを変更した「ミニチュアクルーズ オリーブ」と「ミニチュアクルーズ デニム」が選択できる。
同社は国連が提唱するSDGsに賛同している会社で、災害やコロナ禍等に対するキャンピングカーの役割も探求している。ミニチュアクルーズSVは、そのような観点から企画された位置付けのモデルでもある。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
スズキ エブリイをベース車にした軽バンコン。ボディ外側への架装は無く、見た目は普通のエブリイバンと変わらない。軽バンコンでは一般的なレイアウトで、フラットベッドと後部両側にルーフまで達する収納家具を架装する。
ミニチュアクルーズSVはミニチュアクルーズシリーズの中でも電装系を強化したのが特徴。225Wの大容量ソーラーシステム、85Wを2個使用したサブバッテリーシステム、1500W正弦波インバーターを標準装備する。
ベッドでは2名が就寝できるが、ベッドマットには同社独自の50mm厚のマットを採用、寝心地にもこだわっている。また、家具も同社のモデルに共通する洗練された作りになっている。
大容量のソーラーシステムをはじめとする強力な電装系は、災害時のシェルターとしての役割も考慮されている。日常使用でもグレード感があり、かつ災害時にも役立つモデルを求めるユーザーに適している。
アピールポイント
・洗練されたインテリア
・225Wのソーラーシステムをはじめとする強力な電装系
・1500Wまでの家電品を使用可能
・50mm厚で三重構造ウレタンを採用したベッドマット
・リクライニングできるベッドマット
・車外でも使え、ベッド下に収納できる大きなテーブル(OP)
・ミニギャレーを標準装備
・12V電子レンジを標準装備
ベース車とエクステリア
ミニチュアクルーズSVのエクステリア
ベース車はスズキ エブリイ バン。PAからJOINターボまで各グレードが選択できる。なお、展示車はエブリイのOEMで日産に提供されているNV100クリッパーのGXターボが使用されていた。
エブリイは2022年5月にマイナーチェンジされ、スズキ セーフティ サポートが標準装備され、JOINにはディスチャージヘッドランプが標準装備となる。
ミニチュアクルーズSVでは、ボディ外側への架装は無いため、外観はノーマルのエブリイ バンとほとんど変わらない。従って、日常使用にも目立つことなく使用できる。
なお、ソーラーシステムが標準装備されており、ルーフ後端にスタイリッシュなホルダーで固定されている。この点はノーマル車との外観上の違いではある。
インテリア
洗練されたインテリア
ミニチュアクルーズシリーズは全て洗練されたインテリアを持っており、ミニチュアクルーズSVも例外ではない。家具の仕上げは美しく、照明は間接光とダウンライトで演出されている。
レイアウト
ミニチュアクルーズSVのレイアウトは、軽バンコンでは一般的な、フラットベッドと後部両側の収納家具の組み合わせ。2列目シートはベッドボードの下に折り畳まれて格納されており、これを立てると前向きに計4名が乗車できる。
ダイネット
リクライニングできるマット
ダイネットはベッドと兼用になるが、ミニチュアクルーズで特筆できるのは、前部が傾斜をつけてリクライニングできること。リクライニングした状態で、テレビ(OP)を観ることができる。
軽キャンパーに限らないが、ダイネットは食事をする場所であるとともに、寛ぐ場所でもある。むしろ寛ぐ時間の方が長いのだが、どのような体勢で寛げるかを提案しているモデルは非常に少ない。
テーブルは両側の家具の扉を跳ね上げるとテーブルとして使用できるが、更にオプションのテーブルが用意されており、両サイドのテーブル間にはめ込むと大きなテーブルとして使える。このオプションテーブルは車外でも使用できる。(ビデオはこちら)
ベッド
セミダブルベッドの幅に相当するベッド
ベッド(フラットスペース)のサイズは1820x1240mm。家庭用ではセミダブルベッドの幅に相当する。ただし1240mmは最大幅で、後部は両側に家具が出っ張っているので1010mm幅と狭くなる。家具は薄型に作ってあるので、足元の違和感を最小限に抑えてあるが、気になる場合は実際に横になって確かめておくと良いだろう。
50mm厚のベッドマットに採用されている3Dウレタン
ミニチアクルーズの高級感を感じる一つが50mm厚のマットだ。中には三重構造ウレタンが採用されており、適度な硬さで良質な睡眠を可能にする。
軽キャンパーでベッドマットの寝心地をアピールできるモデルは少ないが、これも高品質を追求する同社のこだわりと言える。
ギャレー
ミニギャレーとシャワーフォーセットが標準装備される
ミニチュアクルーズSVにはミニギャレーが標準装備されている。シャワーフォーセットもあり、これは引き伸ばして車外でも使えるようになっている。なお、3面鏡がオプションで用意されており、洗面時に便利だ。
上の写真のように、キャビネットの扉を跳ね上げるとテーブルになり、コンロを置いて調理することもできる。(カセットコンロはオプション)ただしベンチレーターは付いていないので、火を使う場合は換気に注意する必要がある。
10Lの清水タンクが2個収納されている
シンク下には10Lの清水タンクが2個収納されている。リアゲートを開けると、キャビネットの扉を開け、車外から直接出し入れすることができる。なお、10L排水タンクが右スライドドア下部に取り付けられている。
冷蔵庫/電子レンジ
電子レンジ「WAVABOX」が標準装備される
電子レンジは、コイズミの12Vポータブル電子レンジ「WAVABOX」が標準装備される。1500Wインバーターが標準装備されているので、家庭用の100V仕様の方が安価で使いやすいと思われるのだが。(COZYはそのようになっている。)
冷蔵庫はポータブル冷蔵庫を持ち込むことになるが、その設置場所の提案はされていない。考えられるスペースとしては、走行中はベッドの適当な位置、停泊中は助手席へ移動するのが現実的だが、重たい冷蔵庫の移動は面倒だ。
ただし、冷蔵庫の設置スペースまで確保するとCOZYになってしまうというのも事実で、コンセプトの異なるSVは、これで問題ないだろう。フル装備を望むユーザーにはCOZYがある。
多目的ルーム
軽バンコンに多目的ルームはもちろん望めないが、ポータブルトイレを積んでおくことは可能だ。しかしミニチュアクルーズSVでは隠しておけるところはなく、やはりあまり現実的ではない。
しかし、災害時に対応できるキャンピングカーと言うコンセプトでもあるならば、軽バンコンでもトイレのソリューションは欲しいところではある。例えばリアゲートを開けて設置できる個室テントといったものも考えられるのではないだろうか。
収納
右サイドのオーバーヘッド棚
右サイドにオーバーヘッド棚が設置されている。扉が無いので、走行中に落ちてこないようなものを選んで乗せる必要がある。デザイン面からの決定かもしれないが、やはり扉があった方が使いやすい。
後部左側のキャビネットの引き出し収納
後部左側のキャビネットには上の写真のような引き出し収納が設置されている。またその上側にも収納スペースが用意されており、食器などの収納に便利だ。この引き出し収納はソフトクローズ機構が付いており、ちょっとした高級感がある。
2列目シートの前の収納スペース
2列目シートの前には収納スペースがあり、キャンプ用具などを積める容量がある。キャンプ用品などを積まない場合は、バッグなどの大きな荷物を収納できる。
最後部ベッドマット下の収納スペース
最後部のベッドマット下も収納スペースになっている。軽バンコンではこの部分の収納は非常に浅いものもあるが、ミニチュアクルーズSVのそれはそこそこ深さがある。オプションのテーブルが収まるように作ってあるのも便利だ。
この収納は引き出し式ではなく、ベッドマットを外してアクセスするタイプとなっている。なお、FFヒーターを装備する場合は、このスペースの一部を使用するため、収納スペースは狭くなる。
空調
暖房はFFヒーターがオプション設定されている。冷房のソリューションは提案されていない。ウインドウベンチレーターなどを使うと良いだろう。
テレビ/ナビ
32型のテレビが標準装備される
15.6型のDVD内蔵テレビがオプション設定されている。左後部に設置され、前出のリクライニングするダイネットで楽な姿勢で観ることができる。
ナビは特にオプション設定されていないが、希望のものを取り付けることができるだろう。
電装系
ミニチュアクルーズSVは電装系が強化されているのが特徴。サブバッテリーは85Ahのディープサイクルバッテリーが2個標準装備される。また、1500Wインバーターと225Wソーラーシステムも標準装備される。
ただし外部電源は入力と充電機能ともオプションとなっている。電装系を強化した割には外部電源入力がオプションと言うのも不思議な気がするが、これはむしろソーラーシステムで充電することに重点を置いているということだろう。
マンション住まいなどで家庭の100V電源で充電できない場合や、災害で停電している場合に役立つクルマと考えると、理解できる設定だ。なおミニチュアクルーズCOZYにはリチウムイオンバッテリーがオプション設定されているが、おそらくSVにも対応できるだろう。
エアコンなど大電力を消費する家電製品が無いのにリチウムイオンバッテリーが必要かと思われるかもしれないが、災害時のシェルターを想定するなら、リチウムイオンバッテリーの大容量と経年劣化の少なさは安心感につながる。
価格(2022年5月現在:千円台切り上げ:税込)
最も安価なPAグレードで2WD/5MTが285万円~、最も高価なJOINターボ4WD/4ATが352万円~となっている。最も選ばれると思われるJOINの2WD/5AGSは327万円~、JOIN
2WD/4ATは329万円~。
付けておきたい必需オプションは、外部100V電源入力と充電機能(66,000円)、FFヒーター(価格不明)が挙げられる。
他モデル
軽バンコンで同様のレイアウトを持つモデルは多く存在する。また、その中でギャレーを持つモデルも多数ある。しかし、ミニチュアクルーズSVのように電装系を強化した軽バンコンはあまりない。
最もコンセプトが近いのはオートワンの「給電くん」(186万円~)が挙げられる。このモデルは車名の通り、ソーラーシステムで発電した電気をサブバッテリーに蓄電し、これを車外に給電できるというもの。
ただし「給電くん」は、標準ではサブバッテリーは55Ahのディープサイクルバッテリーが1個、700Wインバーター、30Wソーラーパネルとスペック的には普通だ。オプションで100Ahデーィプサイクルバッテリー、2000Wインバーター、100Wソーラーシステムに変更できるが、それでもミニチュアクルーズSVのスペックには及ばない。
もちろん価格が異なり、給電くんはJOIN 2WD/5AGSに上記のオプションを装備しても250万円程度と手頃な価格設定となっている。(ミニチュアクルーズSVの同グレードは327万円~)
まとめ
ミニチュアクルーズSVはギャレーがあり電子レンジが標準装備されているので、クルマ旅に向いているとも考えられるが、クルマ旅ならミニチュアクルーズCOZYの方が適している。COZYにはギャレーはもちろん、冷蔵庫、家庭用電子レンジ、1500Wインバーター、85Ahツインバッテリーが標準装備されている。
SVはむしろ災害時を考えて日常使用のクルマを購入するという場合に最も適しているモデルだ。災害で停電している場合、大容量のソーラーシステムで発電し、サブバッテリーに蓄電しておけば、少なくとも最低限の電気を得られる。
電子レンジで簡単に調理して食事ができるし、冷蔵庫はその時だけポータブル冷蔵庫を持ち込めばよい。また、軽バンコンなのに10Lの清水タンクを2個積んでいるのも、災害時の水の確保という点では納得できる。
もちろんCOZYにも大容量ソーラーシステムがオプションで装着できるので、災害対応においてもCOZYなら理想的だが、そこまでの装備は不要と言う場合はSVで十分だろう。もちろんSVの方が価格的にも安価だ。
ただし、いずれにしてもミニチュアクルーズSVは軽バンコンとしてはハイグレードで価格も高価な方だ。クルマ旅と言うよりも日常使用を兼ねて趣味や休日のドライブに使い、軽でもそれなりにハイグレードなインテリアを望むユーザーに適している。
関連記事