Matrix Surpreme670SLはアドリアが製作する、フィアットデュカトをベース車にする輸入モーターホーム。日本へはデルタリンクが輸入している。
アドリアはスロベニアを本拠とする欧州の大手ビルダーで、トラベルトレーラー(キャラバン)からフルコンやキャブコンのモーターホーム、そしてバンコン(キャンパーバン)まで、多数をラインアップし、全世界へ輸出している。
Matrix(マトリックス)は同社のモーターホームのラインアップの中でフルコンのSONIC(ソニック)に次ぐポジションで、全長は7m~7.5mのものが中心になっている。
マトリックスのグレードは、Supreme(スプリーム)、Plus(プラス)、Axess(アクセス)の3種類があり、スプリームはその最高級グレードに位置する。
Supremeのレイアウトは、SLとDLが日本に輸入されている。どちらもツインベッドを持ち、全長は7.5m。SLとDLの違いはトイレルームとシャワールームの位置が入れ替わっているのと、ダイネットの形状が異なる。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
アドリアの上級モーターホーム。キャブコンスタイルとしては同社のラインアップで最高峰に位置付けられる。後部にツインベッドを持ち、全長は7485mmで、7mを優に超える。
欧州モデルの例に違わず洗練されたインテリアで、また機能的なギャレーやサニタリールームで長期滞在にも対応する。プルダウンベッドも備えており、計4名での就寝も可能。ファミリーでの使用にも対応する。
アピールポイント
・全長7.5mの広い室内
・洗練されたインテリア
・反転して後ろ向きになるフロントシート
・ファミリーでテーブルを囲めるダイネット
・3口コンロを含む機能的なギャレー
・サニタリールームと、独立したシャワールーム
・大きな外部収納
・家庭用エアコンとリチウムイオンバッテリーを搭載可能(OP)
ベース車とエクステリア

マトリックスのエクステリア
ベース車はフィアットのデュカト ディーゼル2.2L 180HP。本国では140HPが標準で180HPはアップグレードオプションになるが、日本への輸入モデルは全て180HPが標準になる。
エントランスは右側だが、ハンドルは左右どちらでも選択できる。ボディカラーはSupremeは特別色のシルバーメタリック。ルーフにはダイネットの上とベッドルームの上に大きなサンルーフが装着されている。また後部には大きな外部収納がある。

2重構造の床
シャシーの床は2重構造になっており、断熱効果を高めるとともに、収納も確保している。
インテリア

SupremeのインテリアCashmere
SpremeのインテリアカラーはCashmere(カシミヤ:上)とMoro(モロ:下)の2種類が用意されている。ちなみにPlusとAxessはそれぞれ別の2種類が用意されている。

SupremeのインテリアMoro
インテリアは欧州車らしいナチュラルトーンのもので、デザインも美しいものになっている。
レイアウト
前部にダイネット、中央にギャレーとサニタリールーム、シャワールーム、そして後部にベッドルームのレイアウト。欧州車の場合は大体このパターンで、後部のベッドの形態により多くのレイアウトが存在する。
なお、本国では、Supremeはツインベッドとアイランドダブルベッドで計6種類のレイアウトがあるが、日本へはツインベッドのSLとDLの2種類が輸入されている。
ダイネット

運転席と助手席が回転して後ろ向きのダイネットシートになる
デュカトベースでおなじみの運転席と助手席が回転して後ろ向きのダイネットシートとして使用できる。670SLの場合は横座りのサイドシートもあり、ファミリーでゆったりテーブルを囲むことができる。
ベッド

最後部のツインベッド(Moro)
最後部にはツインベッドが設置されており、ベッドサイズは2050x800mmと2030x800mm。家庭用シングルベッドの幅は970mmなので、それには及ばないが、キャンピングカーでは一般的な大きさだ。
また、中央のベッドマット(1800x580mm)をはめ込むと、幅2180mmの巨大なベッドになる。ちなみに家庭用のキングベッドの幅は1800mmだ。

ベッドの下の引き出し収納
ベッドの下は引き出し収納になっており(反対側は観音開き)、衣類などを収納しておくのに便利だ。また、ベッドルーム上部にはオーバーヘッド収納も用意されている。

電動プルダウンベッド
ダイネットの上には電動プルダウンベッドが設置されており、ここでも大人が2名が就寝できる。ベッドサイズは2000x1300mmで、これは家庭用ではセミダブルとダブルベッドの中間の幅。
ギャレー

常設3口コンロがあるギャレー
左サイド中央に設置されたギャレーキャビネットには、大きなシンクとフォーセット、それに常設3口コンロが設置されている。欧州でのキャンピングカーの使い方は滞在型が多く、車内はまさにモーターホームで、日常調理するためコンロもこのように常設されているのが一般的だ。

3段の大きな引き出しがあるギャレーキャビネット
ギャレーキャビネットには3段の大きな引き出し収納や、上部にはオーバーヘッド収納も設置されており、大きな食器や調理用具などを収納しておくことができる。
冷蔵庫/電子レンジ

142L横開き式冷蔵庫が標準装備される
142Lの大型冷蔵庫が標準装備される。これだけの容量があればファミリー分の食材を冷蔵しておくことができる。3way式で、12V電気、100V電気、そしてガスで冷却する。もちろん冷凍室は独立しており、製氷や冷凍食品の保存ができる。

オーブンが設置できる
Duplexのオーブンが、右ハンドル車には標準で、左ハンドル車にはオプションで装備できる。しかし国内のユーザーでこれを必要とするユーザーはあまり多くないだろう。むしろ電子レンジの方が有用だ。電子レンジは国内でオプションで取り付けることができる。
サニタリールーム

カセットトイレと専用の手洗いが装備される
サニタリールームにはカセットトイレと専用の手洗いが装備されている。欧州車の常だが、サニタリールームの充実度と豪華さは、特筆できるものがある。

大きな鏡や収納も用意されている
大きな鏡や収納も用意されており、洗面用具などを収納しておける。もちろんFFヒーターの吹き出し口も用意されている。

独立して配置されるシャワールーム
シャワールームはサニタリールームと別に独立して配置されている。120Lの給水タンクと20Lのボイラーで給湯する。天窓も設置されている。
収納

ダイネット両側にオーバーヘッド収納が設置される
収納は豊富に用意されている。先のギャレーやサニタリールームの収納の他に、ダイネット上部両側のオーバーヘッド収納はサイズも大きく大きな収納力がある。

冷蔵庫上部の収納
その他収納は各所にあり、例えば冷蔵庫の上部にも大きな収納が用意されている。

最後部の大きなカーゴスペース
最後部には大きな外部収納が用意されている。左右両側に扉があり、自転車やバイクなどを積むこむことができる。
空調
輸入モーターホームを日本で使用する場合、最も面倒なのが冷房だ。欧米ではキャンプ場などで滞在するような使い方が多いため、外部電源で動作するルーフエアコンが使われるが、移動型の使い方をする日本では外部電源が取れない場合が多い。
そのため国産のキャンピングカーでは、効率が良くサブバッテリーで動作する家庭用エアコンを使う場合が多いが、海外製のモーターホームにはそれが想定されていないため、取り付けが面倒なことになる。
なお、暖房はALDEのヒーティングシステムが採用されている。ちなみにAxessはトルマのボイラーが採用されている。
テレビ/ナビ

テレビ本体はオプションで国内で取り付けられる
テレビの自在ステーが標準装備されているが、テレビ本体はオプションで国内で取り付けられる。また、ナビもオプションで用意されている。
電装系
標準では100Ahのディープサイクルバッテリーが1個と走行充電が装備されるが、当然これだけでは足りない。オプションでAGMバッテリーが用意されているが、家庭用エアコンを装備する場合は、やはりオプションのリチウムイオンバッテリーをお勧めする。
リチウムイオンバッテリーは、200Ahと400Ahが選択でき、どちらも1500W正弦波インバーター、強化走行充電、外部充電がセットで用意される。
ソーラーシステムは100W、100x2、250Wフレキシブルパネルが用意されており、選択できる。
価格(2023年1月現在:千円台切り上げ:税込)
Matrix Supreme 670 SLは1435万円~。装備しておきたい必需オプションは、家庭用エアコン(550,000円)と200Ahリチウムイオンバッテリー(929,500円)が挙げられる。なお、400Ah(1,320,000円)あれば余裕だ。
詳しい価格表はこちら。
他モデル
最もMatrix Supreme 670 SL似たレイアウトを持つモデルは、デスレフのPulse T7051 EB(1540万円~)が挙げられる。全長7410mmで、やはり後部にツインベッドを設置する。
レイアウト的にはほとんど同じで、インテリアの好みで選んでも良いレベル。ただし、Pulse T7051 EBの方が高価だ。
まとめ
Matrix Supreme 670 SLは全長が7485mmもあり、国内では少し扱い難いかもしれない。また価格的にも、誰もが手が届くようなモデルではない。しかし、キャンプ場などで停泊型の使い方をするなら、本物のモーターホームとして魅力的なモデルと言える。
ただし、輸入モデルを購入する場合は、いくつか注意点がある。一つはエントランスが右側にあるため、車道での乗り降り、特に子供がいる場合は注意が必要だ。また、プロパンガスを使用している場合が多いが、日本では旅先でガスの充填を断られる場合がある。また、デュカトは4WDが存在しないため、冬場の運転には気を付ける必要がある。
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