Flipper(フリッパー)はロータスRV販売が製作する、マツダ ボンゴをベース車にした、キャブコンキャンピングカー。
同社は埼玉県入間郡に本拠を置くビルダーで、現在はフリッパーの他に軽バンコンのekクルーズとハイエースベースのバンコン イースピリットをラインアップしている。
同社は旧マツダボンゴトラックをベース車にしたキャブコン、マンボウシリーズで知られているが、フリッパーは、生産終了になったマンボウシリーズの後継的な位置付けでもある。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
マツダ ボンゴをベース車にし、FRP一体成型のシェルを架装したライトキャブコンキャンピングカー。
2列目にマルチモードシートを採用することにより、乗車定員の6名全員が前向き乗車できる。また、大人2名と子供2名が就寝できるので、ファミリー用途にも対応できる。
使用時にスライドしてスペースを拡張でき、トイレルームとしても使用できるユニークな多目的ルームも特徴。
40L横開き式冷蔵庫、電子レンジ、車載用セパレートクーラー、300Ahリチウムイオンバッテリー、400Wソーラーシステムなどを標準装備。便利で快適なクルマ旅を約束する。
アピールポイント
・コンパクトなボディサイズながら広い室内
・6名が前向き乗車可能
・ファミリーでの車中泊に対応
・拡張してトイレルームとして使える多目的ルーム
・横開き式冷蔵庫と電子レンジを標準装備
・車外で使える30L引き出し式冷蔵庫を標準装備
・車載用セパレートクーラーを標準装備
・300Ahリチウムイオンバッテリーを標準装備
・計400Wソーラーシステムを標準装備
ベース車とエクステリア
フリッパーのエクステリア
ベース車はマツダボンゴ。これにFRP一体成型のシェルを架装している。コンパクトなボディサイズながらスクエアなシェルで広い室内を実現している。
30Lの車外用冷蔵庫
30Lの車外用冷蔵庫が標準装備される。キャンプなどの場合、すぐに冷たい飲み物が取り出せるので便利だ。
インテリア
後部のインテリア
濃い木目の家具とダークグレーのシートの組み合わせ。ダーク系で落ち着いたインテリアだが、大きな窓で明るい室内になっている。家具色やシート色の選択肢については不明。
ダウンライトの照明
照明はダウンライトが中心で、お洒落な夜の室内を実現する。
レイアウト
リアエントランスのレイアウトを採用。リアエントランスの特徴を生かし、前部は広いダイネットと両側に大きなアクリル2重窓を配置し、開放的なダイネット空間を作り出している。
前向きにもなる2列目シート
2列目シートにマルチモードシートを採用したことにより、乗車定員の6名全員が前向き乗車できるのは、フリッパーの特長のひとつだ。3点式シートベルトは2列目と3列目のシートの窓際の乗員のみ可能。
後部にはギャレーを配置するが、多目的ルームは定石をはずれ左側に設置されている。多目的ルームが左側に設置されたため、ダイネットベッドは異形になり、大人2名、子供2名が就寝できるが、多少制約される。(ベッドの項参照)
このレイアウトを採用した理由は不明だが、2列目にマルチモードシートを採用したため対座ダイネットのスペースが広くなったためかもしれない。そのため多目的ルームはスライド機構を採用して、使用時にスペースを拡張できるようになっている。
なお、外から見ると大きなバンクだが、バンク部はベッドではなく棚収納になっている。ここを子供用のベッドにできれば、ゆったり就寝できるのだが。
ダイネット
広いダイネット
リアエントランスのメリットを生かし、広いダイネットを実現。両側に大きなアクリル2重窓を配置できるのもレアエントランスのメリットだ。テーブルも大きく、ファミリーで食事をする場合にも窮屈感は無い。
ベッド
ダイネットベッド
ダイネットを展開してできるダイネットベッドは多目的ルームが出っ張っているため、上の写真のように異形のカタチになる。大人2名が就寝する場合は、前部で車幅方向に就寝する必要がある。
この場合のベッドサイズは1800x1050mmで、家庭用ではシングルベッドの幅(970mm)より多少広い程度。更に身長方向は両方が壁なので、長身のユーザーは窮屈かもしれない。購入する前に、実際に全員で横になってみることをお勧めする。
ギャレー
ギャレーセクション
ギャレーはエントランスの対面にあり、キャビネットの前は広いスペースなので調理しやすい。
シンクとフォーセットがビルトインされている
ギャレーキャビネットの天板には、シンクとフォーセットがビルトインされている。ポータブルカセットコンロを置くスペースも用意されているが、置いてしまうと調理スペースはなくなる。
各10Lの給排水タンクが収納されている
ギャレーキャビネットの下には、各10Lの給排水タンクが収納されている。車外から直接出し入れはできないが、エントランスや後部のバゲッジドアに近いので、ポリタンクの移動は比較的楽にできるだろう。
冷蔵庫/電子レンジ
40L横開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は40L横開き式が標準装備される。冷凍と冷蔵が同時にでき、飲み物を冷やしながら、冷凍食品の保冷や製氷ができる。クルマ旅には必要な機能だ。
電子レンジも標準装備される
家庭用の100V仕様の電子レンジが標準装備される。ちょっとした温めものや冷凍食品の調理に重宝する。1500W正弦波インバーターも標準装備されるので、外部電源のないところでも電子レンジを使うことができる。
多目的ルーム
スライドして拡張できる多目的ルーム
多目的ルームは左サイドに配置されており、ポータブルトイレを置いてトイレルームとして使用することができる。トイレとして使用する場合はスライドしてスペースを拡張する。扉は横にスライドするジャバラの扉を採用している。
スライドしてスペースを拡張するトイレルームのアイデアはスペースを有効利用する面では有用だが、急いでトイレを使用したいのに、その前にスライドする作業をしなければならないのは面倒ではある。
なお、ベッドモードでも拡張するスペースは確保されているので、夜中にトイレを使用することは可能だ。
収納
ダイネット上のオーバーヘッド収納
ダイネット上部右サイドにオーバーヘッド収納が設置されている。
フロントシート上のバンク収納
フロントシートの上部はバンクベッドではなく棚収納になっている。大きな収納なので寝具などを収納しておくのに便利だ。ただ、多くの同種類のモデル同様、少なくとも子供が就寝できるようになっていれば良かったのだが。
最後部のバゲッジドア
最後部にはバゲッジドアが付いていて、車外から直接荷物を積み込めるようになっている。ただし、荷室がある訳ではなく、積み込んだ荷物はギャレーの前に置かれることになる。
空調
車載用セパレートクーラーを標準装備
冷房は車載用セパレートクーラーが標準装備される。300Ahのリチウムイオンバッテリーも標準装備されるので、クーラーを長時間運転することができる。
暖房用のFFヒーターとベンチレーターも標準装備される。最新のモデルに相応しく、空調は完璧に標準装備されている。
テレビ/ナビ
テレビは特にオプション設定されていないが、設置することは可能だろう。ナビもオプション設定は無いが好みのものを取り付けることができるだろう。
電装系
先述のように300Ahのリチウムイオンバッテリーが標準装備される他、外部100V電源入力と充電機能、1500W正弦波インバーター、計400W(100W x4枚)のソーラーシステムも標準装備される。即ち、電装系は完璧だ。
価格(2024年6月現在:千円台切り上げ:税込)
フリッパーは2WD/4ATと4WD/4ATが選択でき、2WDは770万円~、4WDは799万円~となっている。
全ての必需オプションが標準装備されているので、加えて付けておくべき必需オプションは無い。(ナビ関連は除く)
必要に応じてサイドオーニング(165,000円)などが選択できる。
他モデル
タウンエースやその姉妹車をベース車にするキャブコンは多数存在するが、リアエントランスのモデルは、AtoZのアレン-H LE(594万円~)、ムーンスターエキスポートのJP STAR トレジャーワン Mタイプ(630万円~:4WDのみ)、オートショップアズマのフィール(534万円~)が挙げられる。
いずれもクーラーが設置できるが、アレン-H LEとフィールはオプション。トレジャー1は、クーラー、400Ahリチウムイオンバッテリーなど全てが標準装備で、温水シャワーがオプションで設置できる。
まとめ
フリッパーは、ほとんどの必需装備が標準で付いている意欲的なモデルだ。コンパクトで運転しやすいうえ、広い室内空間を持っているので、クルマ旅にも十分対応できるだろう。
ただし、ライトキャブコンのマーケットは競争が激しく、強力な競合モデルが多数存在する。多くのモデルはクーラーやリチウムイオンバッテリーは標準装備ではないにせよ、設置が可能だ。
JP Star トレジャー1は温水シャワーまで可能でかつ価格的にも安価なので別格ではあるが、その他のモデルもフリッパーと同等の装備を追加しても価格的は同等以下だ。
疑問点は、やはりレイアウトだ。多目的ルームを左中央に持ってきたことにより、リアエントランスで広く取れるはずのダイネットベッドは異形になってしまい、さらにバンクベッドが無いので、子供も一緒に就寝しなければならない。
更にトイレルームはこの位置に置いたため、スライド機能が必要になった。スライド機構は話題性があるかもしれないが、スライドする作業無しにトイレが使える方が使い勝手が良いのは明白だ。
2列目にマルチモードシートを配置したことにより、対座ダイネットのスペースが広くなったことのトレードオフかもしれないが、折角意欲的なライトキャブコンができたので、是非リアエントランスでスタンダードなレイアウトのバリエーションも期待したい。
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