ヴォーノはレクビィが製作する、ハイエースワイドロングワゴンをベース車に使用したバンコンキャンピングカー。同社はハイエースを中心に多くのバンコンをラインアップするが、洗練されたインテリアと、常に先進性のあるレイアウトで注目されている。
ヴォーノもその一つで、2009年に発表された前モデルのヴォーノは、当時では珍しいL字型のラウンジソファを持ち、「マンションの一室のような」と形容されるインテリアを持っていた。
今回発表された新型ヴォーノはそのコンセプトを受け継ぎ、更に完成度を高めた、高品質なインテリアを纏っている。
リビングのようなインテリア
コンセプト:「リビングを持ち歩く」がコンセプト。ラウンジソファやミニシアター的なオーディオビジュアルも装備し、リビングのような快適な室内をハイエースワイドロングワゴンで実現。気軽に移動でき、かつ車内での時間を大切に考えたバンコンモデル。
エクステリア:外装には手を加えていないため、外観は通常のハイエースと変わらない。ワイドロングワゴンは一般的な5x2mの駐車枠に収まるため、コインパーキングにも駐車可能。また車高は2100mmなので、高さ制限のある駐車場にも入っていける可能性が高い。
曲線を多用した家具とソファ
インテリア:ヴォーノの最大の特徴は洗練されたインテリア。L字型のラウンジソファをはじめギャレーやクローゼットなどの家具も曲線を多用した、優雅なデザインで仕上げられている。
新型ヴォーノでは同社の上位モデルに使用されているダーク系のインテリアカラーが採用され、先代のモデルの明るいインテリアカラーから一新された。
また、シート素材も改良され、耐久性、対候性に優れた素材が使用されている。ペット同伴でも強く汚れ難いシートとなっている。
間接照明を多用し照明にも凝っている
更に照明もヴォーノの特徴のひとつ。特に間接照明は7段階の調光が可能で、夜は雰囲気の良い室内となる。またダイネット上に新設されたインテリアライトは絶妙。非常に効果的なアクセントになっている。
レイアウト:曲線を多用したシートや家具は動線にも貢献しており、ダイネットから後部のギャレーやクローゼットへの移動も容易。もちろん二人旅に特化したレイアウトは無理が無く、ハイルーフではないが圧迫感は少ない。
一点気になったのは、運転席、助手席から後部への移動。シートバックを乗り超えなければならず、やはり年配のユーザーは一度車外に出て、スライドドアから入りなおすのが安全だ。なお、ベッド状態では中央が低くなっており、行き来はスムースにできる。
L字型ソファなので後部への移動は楽
ダイネット:L字型ラウンジソファは運転席、助手席の後ろと右サイドにソファ面を持つ、逆L字ともいえる配置で、ソファから車内が斜めに見渡せるため広く感じる。24型テレビ画面も対角になっており、ソファのどの位置からも画面が見やすい。
また、テーブルが可動式になり、テーブルとポールが回転するため、テーブルの位置を広い範囲で動かすことができるようになった。
なお、テーブルを残したままでもベッド展開でき、ちゃぶ台スタイルで寛ぐこともできる。
ダイネットを展開したベッド
ベッド:ベッドはダイネットのシートバックを2つ動かしてベッドメークする。シートバックは軽い方ではないので、多少労力が必要。万年ベッド状態にしておくユーザーも少なくないと思われるが、ヴォーノのインテリアを考えると、それはもったいない気がする。
ベッドは1,960×1,650mmの大きさで、家庭用ではクイーンサイズよりも広い幅を持つ。更に、キャンピングカーの要件で身長方向は1800mmのモデルが多いが、ヴォーノは1,960mmもあり、長身のユーザーでも窮屈感無く就寝できる。
なお、取り外したテーブルは、クローゼットの後方に収納しておくことができるので邪魔にならない。
49L冷蔵庫をビルトインしたギャレー
ギャレー:ギャレーは後部右側に配置される。上面には丸形シンクが埋め込まれており、隣にカセットガスコンロを置くスペースが用意されている。前モデルには陶器製のシンクが採用されていたが、新型では通常の金属製に変更された。ただしサイズは大きく、深くなったので、こちらのほうが実用性がある。
冷蔵庫/電子レンジ:49Lの横開き式冷蔵庫がSuperior仕様に標準装備される。この冷蔵庫は ギャレーコンソールの扉を閉めてしまうと完全に隠れてしまう。ビデオでの説明にもあるように、確かに2重に扉を開けなければならないので不便という考えもあるかもしれないが、そこまでインテリアにこだわった決定を支持したい。
電子レンジはオプションで用意されるが、設置場所はシンクの隣かクローゼットの中が想定されている。インテリアやギャレーの使い勝手、そして何よりインテリアを考えるとシンクの横はあり得ないので、クローゼットの中となるだろう。
シート下の収納スペース
収納:前部ソファ下が大きな収納スペースになる。座面はロックヒンジが付いているので開閉が楽なうえ、手を離しても開いたままになっているので使いやすい。
また、ギャレーには上部に観音開きの収納と、下には引き出し収納が用意されており、食器や小物の収納に便利だ。
後部に設けられたクローゼット
ヴォーノの特徴のひとつが、大きなクローゼット。これだけ大きなクローゼットが付いているモデルはバンコンはもちろん、キャブコンでもほとんど無い。このクローゼットが意味するのは長期旅で、旅の合間に少し高級なレストランに行くことを想定しているのかもしれない。
ギャレー前の床下収納
なお、ギャレー前に床下収納が用意されている。これは8ナンバー登録のため、ギャレー前の高さ要件を満たすためのものだが、もちろん収納として使える。前モデルではここにスペアタイヤが収納できたが、新型ではスペアタイヤを積む必要性は無いと考え、床下収納を小さくした。その分家具が大きくなっており、小さな点だが有用な変更点だ。
空調:暖房はFFヒーターがオプションで用意されている。これは必需品に近いので是非装備しておきたい。
残念ながら、冷房系は用意されていない。同社の標準ボディハイルーフベースのプラスLVに装着できるので、何とかヴォーノにも付けて欲しかったところだが、やはりミドルルーフでは難しいのかもしれない。しかし、小型で高性能のクーラーも開発されているので、是非今後に期待したい。
24型テレビとJBLスピーカー
テレビ/ナビ:24型(前モデルでは19型だった)のテレビとJBLのサウンドバー(横長スピーカー)がSuperior仕様に標準装備され、ラウンジソファとの組み合わせで、ちょっとしたミニシアター風になる。これなら家が狭くても、自宅の駐車場のヴォーノをシアタールームにできる。(従って、やはりエアコンが欲しい)
シート下に収納された電装系
電装系:115Ahのサブバッテリーが1個と、走行充電が標準装備される。走行充電はCTEKシステムが標準で搭載されるのは特筆できる。目立たないところでも手抜きされておらず、これにより走行充電でもしっかり充電できる。また外部100V入力と、これによるサブバッテリーの充電機能も装備しておきたい。これらはSuperior仕様に標準装備される。
また、215Wのソーラーシステムをオプションで装着できる。自宅の駐車場で外部電源を取れない場合にはソーラーシステムを装着しておくと良い。
なお、100V電源コンセントとUSB、12V電源コネクターがギャレーコンソールに用意されている。欲を言えば100V電源コンセントとUSB電源は、パソコンやUSB機器の電源としてダイネット近くにも欲しいところではある。
価格:ガソリン2WD/6ATで432万円~(税別)。Superior仕様は457万円~(同)なので25万円高だ。もちろんSuperior仕様を選ぶべき。またFFヒーターとインバーターもほぼ必需品。更に必要に応じて、電子レンジ、ソーラーシステム、ベンチレーターなどのオプション設定が考えられる。
他車:ハイエースワイドロングワゴンをベース車にした二人旅仕様で、お洒落なインテリアを持つモデルはこちらの比較記事を参考いただきたいが、最も近いレイアウトはFOCS Ds L-style(435万円~:税別)だろう。もちろんFOCS Ds L-styleはミニシアターや大きなクローゼットは無い。またアネックスのリコルソ(456万円~:同)やキャンピングカー長野のスペースキャンパーCOOL(560万円~エアコン付き:同)も挙げられるが、これらもコンセプトが異なる。
即ち、ヴォーノはコンセプトにおいて全く別物だし、他モデルと直接比較するのはあまり意味のないことかもしれない。
まとめ:ヴォーノはキャンピングカーというより、居心地の良いリビングルームと言える。上のビデオで「コロナの時代のキャンピングカーの提案」という話があったが、「リビングを持ち歩く」というコンセプトはまさにそれに当てはまる。しかし、そもそも旅行に行くにも気を付けなければならない状況では、自宅の(お洒落な)別室と考えると、まさにコロナ時代のキャンピングカーかもしれない。
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