アンナ モデルEはAtoZが製作する、マツダ ボンゴ バンをベース車にしたバンコンキャンピングカー。
同社は埼玉県春日部市に本拠を置くビルダーで、カムロードベースのキャブコン「アンソニー」から、ハイエースベースのバンコン「アメリア」や「アズサ」、あるいは軽バンコン「アメリア ワン」までラインアップしている。
「アンナ」は同社のラインアップの中で、マツダ ボンゴ バンをベース車に使用するバンコンの総称で、充実装備の「アンナ モデルL」や、ハイルーフを架装した「アンナ モデルM」が選択できる。
アンナ モデルEは、アンナシリーズの中でも最もシンプルな装備のモデル。なお、アンナ モデルEには、「ローダウンカスタム」や「リフトアップカスタム」と言った、外観をカスタマイズしたモデルも用意されている。
アンナ モデルE リフトアップカスタム
なお、この記事とビデオでは、展示車がリフトアップカスタムモデルだったため、一部これを使用している。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
マツダ ボンゴ バンをベース車にするコンパクトなバンコン。軽キャンパー以上ハイエース未満のサイズで、取り回しが良く、街中でも運転しやすいので、日常用途のファーストカーとしても使用できる。
アンナ モデルEはアンナシリーズの中で最もシンプルな装備で、2列目に3人掛けのマルチモードシートと後部にベッドボードを備えるのみ。電装系や空調はもちろん、照明も省かれている。
登録は4ナンバーながら、新たに設置されたギャレーユニットオプションを設置することにより、8ナンバー登録も可能になった。
アピールポイント
・軽キャンパーより室内が広く、ハイエースより取り回しが良い
・2列目にマルチモードシートを配置
・5名乗車で、日常使用も可能
・対座ダイネットが可能
・2名が就寝できるフラットベッド
・ギャレーユニット(OP)で8ナンバー登録も可能
ベース車とエクステリア
アンナ モデルEのエクステリア
ベース車はマツダ ボンゴ バン。トヨタ タウンエース バンもオプションで選択できる。ボディ外側への架装は無く、見た目はノーマルのタウンエースバンと変わらない。2WDと4WDが選択でき、衝突回避支援システム(スマートアシスト)も標準装備される。
ボンゴ バンのグレードはDXが標準になり、写真のようにボディ同色カラードバンパーが標準装備される。少しややこしいが、ボンゴ バンではDXが上級グレードになる。(タウンエースでは標準グレードがDX、上級グレードはGL)
インテリア
アンナ モデルEのインテリア
アンナ モデルEのインテリは上の写真のようなものだが、家具色やシート生地の選択はなさそうだ。また、車内に鉄板がむき出しになっているところがあるので、ボディカラーがインテリアに影響することには注意したい。
オプションの合成皮革のシート
なお、オプションで合成皮革のシート地を選ぶことができる。水や汚れに強く、耐久性に優れ、ペット同伴の場合などに有用だ。色はブルーとイエローを選択できる。
ルーフに照明が設置されていない(写真はリフトアップカスタム)
なお、ルーフに照明が装備されていない。電装系が用意されていないので照明も付けなかったのかもしれないが、車中泊では照明は必須のアイテムだ。電装系とオプション設定、あるいはルーフにバッテリー内蔵の照明器具を固定できるような工夫があれば良かったのだが。
レイアウト
2列目の3名掛けマルチモードシート
2列目に3名掛けマルチモードシートを配置し、前向きにすると運転席、助手席を合わせて5名が前向き乗車できる。3点式シートベルトは、2列目シートの両側で可能なので、計4名が3点式シートベルトを使用できる。
シートを後向きにすると、後部の簡易シートと向き合い、4~5名でテーブルを囲むことができる。また、シートをフラットにすると、2名が就寝できる。
後部を使ったダイネット
なお、2列目シートを前向きにしたままで、後部にダイネットを作ることができる。この状態にしておくと、いちいち2列目シートを後ろ向きにしなくても、ちょっとしたコーヒータイムやパソコンで仕事をすることができる。
細長いサイドテーブルも用意されているので、コーヒーカップなどを置くのに便利だ。
ダイネット
4~5名が対座できるダイネット(リフトアップカスタム)
2列目シートを後ろ向きにすると、後部のベッドボードで簡易的な3列目シートと向き合い、対座ダイネットが形成される。テーブルは標準装備される。
また、後部をベッドモードにして、後ろ向きにした2列目シートと組み合わせると、足を伸ばしてリクライニングでき、リラックスモードになる。
ベッド
家庭用セミダブルベッドの幅のベッド
シートを全てフラットにすると、2150x1200mm(後部は1360mm幅)のベッドになる。1200mmは、家庭用ではセミダブルベッドの幅と同じで、2名が就寝できる。
ギャレー
アンナ モデルEはシンプル装備がコンセプトなので、ギャレーは装備されていない。ただし、改定されたキャンピングカー要件に伴い、ギャレーユニットがオプション化され、8ナンバー登録が可能になった。
写真は無いが、ギャレーユニットは後部左側に設置でき、シンクとフォーセットは実用的なものだ。ギャレーユニットが設置されることにより、ベッドの足元は狭くなる。
アンナ モデルEはシンプルな装備で広いベッドが特徴だったので、8ナンバー取得のためのギャレーは、ベッドボードの下に隠れてしまうような、もっと簡易的なもので良かったかもしれない。
冷蔵庫/電子レンジ
18Lのポータブル冷蔵庫(OP)
18Lのポータブル冷蔵庫がオプションで用意されている。左側の細長いマットを取り外すと、そのスペースにうまく収まる。ただし、サブバッテリーが用意されていないので、電源はポータブル電源が必要になる。
また、電子レンジのオプション設定は無いが、このモデルのコンセプトから考えると、必要性は高くないだろう。
多目的ルーム
アンナ モデルEにはもちろん多目的ルームは無いが、子供がいる場合は緊急用にポータブルトイレを積んでおくことは可能だ。ただ、就寝定員が2名なので、子供連れのファミリーはこのモデルの対象ユーザーではない。
収納
ベッド下の収納スペース
収納用のキャビネットが無いので、小物の収納は無い。収納は主にベッド下のスペースになる。
大きなカーゴスペース
後部のベッドボードを取り外すと大きなカーゴスペースになり、背の高いものも積み込むことができる。
空調
暖房はFFヒーターがオプション設定されている。と、展示会の仕様表にはあったが、電源が無いので、実際にどのように動作させるのかは不明。ポータブル電源を持ち込んでFFヒーターに給電するというのも難しい気がする。
なお、冷房装置はオプション設定されていない。
テレビ/ナビ
テレビのオプション設定は無いが、今日ではタブレットなどでテレビや、自宅で録画した番組も見られるので、あえてテレビを据え付ける必要性は少ないだろう。またナビは好みの機種を選択できる。
電装系
固定のサブバッテリーはオプション設定されていない。電源はポータブル電源を持ち込むことが想定されており、展示車にはEcoFlowのポータブル電源
EFDELTA 350000mAh /1260Whが乗せられていた。
ポータブル電源は特にクルマのシステム電源にプラグインできるというものではなく(照明やコンセントが無いのでプラグイン電源の意味はないが)、ポータブル電源のコンセントを使って家電品などに給電するというもの。
シンプル装備が特徴ではあるが、やはり車中泊を想定するなら、照明や電源コンセントは車内に用意し、ポータブル電源をプラグインできるようにして欲しいところだ。
なお、ポータブル電源を設置するスペースが特に用意されているわけではないので、好みのポータブル電源を選べばよいだろう。
価格(2023年1月現在:千円台切り上げ:税込)
マツダ ボンゴ バンDXグレードの2WD 4ATで284万円~、4WDで398万円~となっている。車中泊をするなら、必須のオプションとして、ポータブル電源、走行充電、外部100V電源入力と充電機能、FFヒーターは欲しいところだが、ポータブル電源以外オプション設定は無い。
他モデル
マツダボンゴやトヨタタウンエースをベース車にしたシンプル装備モデルは、リンエイプロダクトのコンパクトバカンチェス T リッツ(345万円~:GL/2WD)、マリナRVのハーフ(295万円~:GL/2WD)、キャンパーアシストのペコラ(価格不明)が挙げられる。
これらはどれも照明やサブバッテリーが標準装備されている。またコンパクトバカンチェス T リッツはベッド下に収納されるギャレーを持ち、8ナンバー登録が標準、ペコラはAGM高性能バッテリー、走行充電、外部電源入力と充電機能、18Lポータブル冷蔵庫が標準装備される。またどのモデルもFFヒーターはオプションで設定されている。
まとめ
アンナ モデルEは照明や電源を持たない、徹底したシンプル装備のバンコンと言える。従って、価格も他モデルより安価だ。これから車中泊をしてみたいというユーザーには魅力的かもしれない。
しかしこのようなモデルは、初心者向けというよりは、むしろ上級者向けだろう。上級者なら、何が必要かを理解しているので、自分で必需装備を用意することができる。十分な知識や、最低限の装備が無い状態で初心者が車中泊をするのはお勧めしない。
車中泊には、照明と電源、そしてFFヒーターは必需装備と言える。照明は言うまでもないが、春先や秋口でも寒い日があるし、冬は当然相当寒い。しかしアイドリングで暖を取ることは、環境やマナー上やるべきではない。
アンナ モデルEは、ポータブル電源のプラグイン機能や照明、FFヒーターのオプションが望まれる。そうすれば、広いベッドと必需装備のみがあるシンプルなキャンピングカーとなる。
また、コンパクトで簡易的なギャレーがあれば、ベッド面積を侵食しないで8ナンバー登録もできる。
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