ツートップがフルモデルチェンジ
今回はカムロードベースのキャブコンのうち、全長5m以下のスタンダードキャブコンを特集する。多くのビルダーが製作しており競争の激しいカテゴリーで、2020年にはナッツRVのクレソンが「クレソンジャーニー」となって全面改良された。またもう一つのキャブコン大手ビルダーバンテックも「コルドバンクス」を全面改良した。
ナッツRVのクレソンジャーニー5.0Type-X
その他のビルダーにも魅力的なキャブコンが多くある。有名なビルダーのモデルに目が行ってしまうのも事実だが、小規模なビルダーならではの「痒い所に手が届く」モデルも見逃せない。
なお、今回は最新のカムロードベースで5m以下のキャブコンをピックアップしたが、エアコンが標準装備、あるいはオプションで装着できるモデルのみとした。キャブコンでエアコンはもはや当たり前と考える。
目 次
アンセイエ MYSミスティック
MYSミスティックは山梨県甲斐市に本社を置き、トラックキャンパーで有名なビルダー。軽キャンパーからキャブコンまでラインアップし、「アンセイエ」は同社のフラグシップにして唯一のスタンダードキャブコン。
波板のアルミボディとシェル形状が独特だが、それにより軽量化と広い室内を実現している。特にクリアランスに余裕があるバンクベッドは特筆で、前面に大きな窓(OP)もあり圧迫感は皆無だ。
前部に対座ダイネット、後部に横置き2段ベッドを置くレイアウトで、中央には2口コンロ一体型のシンクがビルトインされたギャレーと、オプションで温水シャワーも可能なユーティリティールームも用意されている。
65L冷蔵庫、電子レンジ、家庭用エアコンが標準装備される。また、カセットトイレ、温水シャワー、追加バッテリー、ソーラーシステムなどはオプションとして用意されている他、リアスタビライザーが標準装備されている。
家庭用エアコンは標準装備だが、サブバッテリーは105Ahが1個だけなので、追加バッテリーは必要。リチウムイオンバッテリーのオプション設定が欲しいところだ。
アンセイエは2列目シートを前向きにしてドライブでき、また広いバンクベッドがあるので、どちらかというとファミリー向きと言える。エクステリアは好みが分かれるところかもしれないが、他とは違うキャブコンを求めるなら良い選択だろう。
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アンソニーLE エートゥゼット
エートゥゼットは埼玉県春日部市に本社があり、ライトキャブコンからスタンダードキャブコンまで主にキャブコンを手掛けている。以前はビーカムを採用した「アルビオン」や「アラモ」を生産していたが、現在ビーカムベースのモデルは無い。
現在はカムロードをベースのアンソニーが同社のフラグシップで、3種類のレイアウトが存在する。ただし家庭用エアコンが装備できるのは「アンソニーLE」だけとなっている。
アンソニーの特長は3種類から選べるインテリア。春秋をイメージした「橙香」、夏をイメージした「朱夏」、冬をイメージした「銀花」が用意されている。
レイアウト面では、リアエントランスを生かした前部の広大なダイネットスペースが魅力。展開すると広大なベッドになりファミリーでも使えるが、バンクベッドをメインベッドにして、ゆったりとした二人旅が似合う。
リアエントランスながら、ギャレーは最後部ではなくエントランスのダイネット側にあり、比較的広く大きめのシンクがビルトインされている。ただしコンロを置くスペースは無く、調理は標準装備の電子レンジがメインになりそうだ。
電装面ではエアコンを実用的に使えるリチウムイオンバッテリーが選択できるのも良い。高価なオプションだが車両価格が比較的安価なので、導入しやすい。同社のモデルに共通する白木の家具は、3種類のインテリアコーディネーションとうまくマッチしている。
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イグアス ファンルーチェ
ファンルーチェは愛知県日進市に本拠を置くビルダーで、キャブコン専門メーカー。ハイエース、カムロード、ボンゴをベース車にしたスタンダードバンコンをラインアップしており、特にハイエースワイドロングを使用した「セレンゲティ」は有名なモデル。
イグアスはカムロードをベース車にしたキャブコンで、後部に2段ベッドを持つTypeWと、バブルベッドを持つTypeXのレイアウトが選択できる。どちらもセンターエントランスで標準的なレイアウトで、TypeXはユーティリティルームを持たない割り切ったレイアウトとなっている。
イグアスの特徴はユーティリティールームを持たないTypeXの存在。思い切ってユーティリティールームを無くしたことにより、広いダブルベッドと窮屈でないダイネットを両立させている。このレイアウトは、他にナッツRVの「クレソンジャーニーTypeX」と「クレア/スティングTypeXX」だけだ。
また、TypeXの後部ベッド下の収納は広大で、これがハイマウントダブルベッドのメリット、更にTypeWでは2段ベッドの下段を取り去ると自転車も積める収納庫となる。
家庭用エアコンやFFヒーターなど高額装備がオプションなのが気になるが、車両価格は安価な部類に入る。ただし、リチウムイオンバッテリーの選択肢は欲しいところだ。
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ヴォーン ノイン 東和モータース
東和モータースは東京都杉並区に本社を置き、輸入モーターホームから軽キャンパーまで扱う総合ビルダー。キャブコンラインアップはカムロードをベースにするヴォーンとボンゴベースのカービィ、それと軽キャブコンのインディ108がラインアップされる。
ヴォーンノインには後部に2段ベッドを持つR2Bと、リアエントランスのDCの二つのレイアウトがあり、現在は9つの標準装備を持つ「ノイン」と名付けられたモデルがラインアップされている。更に、R2Bレイアウトに電装系を更に強化したEXC仕様も選択できるがこちらは5m超の車長なので、今回は対象外。
ヴォーンノインの特徴はアルミ軽量シェルと、選べる2種類のレイアウト。特にDCのリアエントランスレイアウトは他にエートゥゼットのアンソニーLEとバンテックのコルドリーブス以外になく、前部の広いダイネットが魅力。二人旅で使用するなら、バンクベッドで就寝し、フロアは全て生活スペースとして使用できる。
ヴォーンノインには家庭用エアコン、CTEK電装システム、トリプルバッテリー、電子レンジ、1500W正弦波インバーター、200Wソーラーパネルなどが標準装備される。なおEXCには「EVOシステム」システムが装備され、アイドリングでトリプルサブバッテリーをほぼ満充電できる。
これはナッツRVのEvolitionシステムと同じもので、またノインのCTEKシステムもナッツRVの「Evolite」システムと同じものが搭載されている。
インテリアカラーは「シュタイン」と「ショコラーデ」の2色から選択でき、どちらも高品質感がありナチュラルトーンのインテリアとなっている。
電装系はCTEKシステムにより、アイドリングだけでサブバッテリーを満充電できる。これは通常では十分に充電できない走行充電を改善するためのもの。またリチウムイオンバッテリーもオプションで選べるので、夜はバッテリーでエアコンを実用的に使うことができる。電装系に関してはほぼ完ぺきといえる。
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クレア5.0/スティング5.0 Evolution ナッツRV
ナッツRVは福岡県遠賀郡に本社を置き、セミフルコンから軽キャンパーまで手掛ける総合ビルダー。クレア/スティングは同社の中核を担うスタンダードキャブコンで、5m以下の5.0と、5m超の5.3の車長が選べる。
クレアとスティングの違いはバンクの有無で、スティングはバンクレスのスマートなシルエットを持つ。スティングもバンクベッドは存在するが、もちろんクレアの方が広く大きい。どちらかと言えばクレアがファミリーに、スティングは二人旅に向いている。
クレア/スティング5.0にはTypeX、TypeW、TypeXXのレイアウトが用意されている。
TypeX:ロングソファダイネット+ハイマウントダブルベッド+ユーティリティールーム
TypeW:対座ダイネット+横置き2段ベッド+ユーティリティールーム
TypeXX:対座ダイネット+ハイマウントダブルベッド(ユーティリティルームは無し)
TypeXは他に無いロングソファダイネットで、完全な二人旅仕様。対座ダイネットにこだわらない優雅さがある。なお、エントランス部に補助シートをセットすると対座も可能。TypeXXは思い切ってユーティリティールームを排したレイアウトで、その分開放感と広いダブルベッドを持つ。
PVC家具の色は、4種類から選択することができる。
スティング5.0XXのインテリア(ウォールナット)
クレア/スティングには電装系に「Evolution」システムを標準装備したエボリューション仕様があり、アイドリングだけでサブバッテリーを満充電にしたり、バッテリーを消費することなくエアコンを動作させることができる。
クレア/スティングは、主流のレイアウトとターゲットユーザー(バンクの有無でファミリーと二人仕様)をカバーし、装備やインテリアデザインも抜けが無い。その上Evolutionシステムやダブルタイヤといった新技術を牽引し、全方位に対応している。
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クレソンジャーニー Evolite ナッツRV
クレソンシリーズはナッツRVの普及クラスキャブコンで、2020年に従来のクレソンヴォヤージュをフルモデルチェンジし、「クレソンジャーニー」となった。 新たにFRPコンポジットパネルを採用し、高断熱、軽量化を実現している。
クレアとクレソンの違いは、シェルのパネルがアルミ素材かFRPの違いと、電装系がEvolutionかEvoliteの違いだ。しかしクレソンがモデルチェンジされこの差はそれほど大きくないと感じられる。
クレソンジャーニーには、レイアウトの違いで、TypeW、TypeX、TypeRが選択できる。
TypeW:対座ダイネット+後部横置き2段ベッド+ユーティリティールーム
TypeX:対座ダイネット+後部に広いハイマウントダブルベッド(ユーティリティルーム無し)
TypeR:ソファダイネット+ハイマウントダブルベッド+ユーティリティルーム
呼び方が異なるので紛らわしいが、要はクレア/スティングと同じ構成だ。
PVC家具を使用したインテリアは2種類から選択できる。
クレソンジャーニー5.0Wのインテリア(ダークオーク)
もう一点クレア/スティングと異なるのは電装系で、クレア/スティングにはEvolutionシステム仕様があるが、クレソンジャーニーにはEvoliteシステムとなる。(違いはこちらを参照)
いずれもオルタネーターで発電する電気を有効活用するシステムで、従来走行充電では十分に充電できなかったが、これを比較的短時間で充電できるようになる。Evolite仕様には家庭用エアコンが標準装備されるため、Evolite仕様がお勧めだ。
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コルド バンクス/リーブス/ランディ バンテック
バンテックは埼玉県所沢市に本拠を置き、キャブコンをメインに製作しているビルダー。「ジル」シリーズは同社の顔ともいうべき人気のカムロードベースキャブコンで、最近は国産初のデュカトベースフラグシップモデルV670も発売した。
コルドシリーズは同社の普及モデルで全て5m以下の車長を持つ。コルドシリーズには、後部に横置き2段ベッドを持つコルドバンクス、リアエントランスのコルドリーブス、土足で上がっても水で流せるFRP床を持つコルドランディの3モデルが用意されている。
なおここでは、バンテックの3モデルをまとめて解説する。
コルドシリーズ3モデルのうちコルドバンクスは後部に横置き2段ベッドを持つ、最も一般的なレイアウト。2020年に全面改良後は、後部2段ベッドスペースは大きな収納庫としての機能性を表に出している。
2段ベッドにするともちろんファミリーでも使用できるが、自転車を積んでの二人旅といったコンセプトで二人使用もアピールしている。床はFRP化されており、水を流して洗うことができる。
コルドバンクスのダイネット
コルドリーブスはリアエントランスのメリットを生かして、前部に対座とサイドシートによる広いダイネットを持つ。その分ギャレーは最後部に追いやられているが、2口コンロが一体になったシンクが用意されており、調理もしやすい。
コルドリーブスもエントランスから対面のユーティリティールームまでFRPフロアになっている。
コルドリーブスのインテリア
コルドランディはエントランスから正面のユーティリティールームまで通しでFRPフロアになっており、土足で上がったり、ペットがそのまま上がっても、水を流して洗い落とせるコンセプト。
運転席、助手席のすぐ後ろにはベンチが設けられており、ペットの居場所や作業ベンチとして使えるようになっている。
後部は居心地の良い横座りロングシートで、前部とは独立したくつろげる空間になっている。
コルドランディのインテリア
3モデルとも家庭用エアコンやFFヒーターが標準装備。またどのモデルにも2口コンロが備えられており、キャブコンらしいギャレーなのも高級感を出している。一方、どのモデルも冷蔵庫がオプションなのは珍しい。
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ジル 480スキップ
なお、バンテックにはもうひとつ「ジル 480スキップ」というモデルがある。今回は映像資料が無いため、ビデオにでの紹介はできなかったが、家庭用エアコンを標準搭載する5mを切るモデルだ。
ジル 480スキップはジルのラインアップに入るが、唯一5mを切るキャブコン。やはりFRP一体型のCSボディを架装する。
特徴はナッツのスティングのような、スマートなバンクとユニークなレイアウト。バンクは小さいが一応バンクベッドとして機能する。
レイアウトは前部一刈川にギャレー、右側にカセットトイレを標準装備したトイレルーム、後部は広いコの字型ラウンジダイネットとユニークな構成。常設ベッドは無いが、テーブルを下げてシートバックを乗せるだけで比較的簡単に広いベッドになる。
ただしギャレーは、他の同社のモデルと異なり、コンロは常設ではなくシンクのみがビルトインされたコンパクトなスペース。また冷蔵庫も40Lの上蓋式に割り切られている。なお電子レンジは標準装備。サブバッテリーはジルシリーズらしく100Ahが3個標準装備される。
ジル480スキップは、前向き乗車は2名のみなので二人旅仕様に位置付けられる。後部の豪華なラウンジのユニークなレイアウトとスマートなバンクで魅力的なモデルだが、やはりキャブコンで常設ベッドを持たないことと上蓋式冷蔵庫は弱点ではある。価格は606万円(ガソリン
2WD/4AT:税別)
まとめ
特に5m以下のキャブコンの場合、ダイネット、後部ベッド、ユーティリティルームの配分でジレンマがある。後部のベッドを広いダブルベッドにすると、ユーティリティールームやダイネットにしわ寄せがくる。
その意味では、2段ベッドは効率が良い。ダブルベッドのように前に侵食しないので、全てがバランスよく収まる。ただし、2段ベッドにも弱点がある。それは高さがあるので年配オーナーには多少不便なことと、ベッド下に大きな外部収納が設置できないこと。ただし、下段ベッドボードを取り除くと自転車が積載できるメリットはある。
このジレンマを解消するのに二つの選択肢がある。一つはリアエントランスにすること。もう一つはユーティリティールームを無くしてしまう方法だ。前者は常設ベッドが無くなるという大きな弱点があるが、ほぼ常設と言えるバンクベッドを利用すれば、二人旅には問題ない。また、ダイネットを展開すればキングサイズクラスのベッドが得られる。
後者はユーティリティールームが無いと言う弱点になるが、そもそもトイレは不要というユーザーなら、広いダブルベッドと、制約を受けないダイネットが得られる。
上記ジレンマを解消するもう一つの手がある。それは対座ダイネットでなくソファダイネットにすること。前向き乗車はできなくなるが、二人旅なら問題ない。
各モデルを見ると、まず注意しておくべきは車幅の違い。イグアス、ヴォーン、クレア/スティング、クレソンは2mをわずかに超える。5x2mの一般車枠に駐車しにくい場合がある
。
価格面ではアンソニーLEが600万円を切るが、このままではエアコンは外部電源が無いと実用的に使えないので、オプションのリチウムイオンバッテリーを搭載すると、他車とあまり変わらない価格となる。これはヴォーンとクレア/クレソンを除くと他車も同じ。バンテックのモデルはデュアルソースシステムが搭載されているが、バッテリーは標準は1個のみ。リチウムイオンバッテリーでなければ3個搭載しておけば理想的だ。
注目はやはり新型になったコルドバンクスとクレソンジャーニーだろう。クレア/スティングは申し分ないが高価だし、クレソンジャニーとの差が価格分ほどは感じられない。
コルドバンクスはFFヒーターが標準装備されるがサブバッテリーの増設が必要だ。一方クレソンジャーニーはサブバッテリーは3個標準だがFFヒーターはオプション。
そんな中、ダークホース的なのがヴォーンノイン。シェルがクレア/スティングと同じアルミパネルで価格はクレソンより安価と、双方の良いとこ取りをしている。しかも200Wソーラーパネルも標準装備されている。温水シャワーもオプションなうえ、リチウムイオンバッテリーの搭載も可能だ。
もちろん、これはスペックと価格だけを比較したもので、インテリアや使い勝手など、自分に合ったモデルを選択するのが最も重要だ。アンセイエの大きなバンクベッドや、コルドランディのペットや趣味を考慮したアイデアなどが琴線に触れるユーザーもおられるだろう。