ハイエースワイドボディベースのキャブコン
キャブコンと言えば、やはりカムロードベースのモデルが一般的だが、ハイエースをベース車にするキャブコンも存在する。モデル数はカムロードキャブコンに遠く及ばないし、価格的にもカムロードベースより高価になる傾向にある。
しかしハイエース、特にここで取り上げるワイドボディのハイエースは動力性能の優位性はさることながら、トラックベースとは一味異なるスタイリッシュ感がある。そのような背景から、ハイエースベースのキャブコンは一定の人気がある。
今回は、特にハイエースワイドボディをベース車にするキャブコン8モデル取り上げた。記事の最後に比較表と価格情報もあるので、参考いただきたい。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
目 次
ACSプルミエM5.7:RVビックフット
ACSプルミエM5.7はハイエーススーパーロングをベース車にし、全長は名前の通り5.7m。バンクを持たないスマートなシルエットが魅力だ。RVビックフットでは唯一のキャブコンながら、同社のセミフルコンの流れを汲む洗練された仕上がりを見せる。
ACSプルミエM5.7のインテリア
インテリアは同社のACSシリーズに共通のホワイトを基調にしたもので、日常とは違った室内となっている。また、ダイネットはソファタイプで、ダイネットというよりはラウンジという方が適しているような優雅さを持つ。
137Lの大型冷蔵庫とIHコンロを採用
後部にはハイマウントダブルベッドを配し、5.7mの全長を生かし、多目的ルームも無理なく配置している。ギャレーにはIHコンロを採用し、また137Lの大型冷蔵庫は二人旅では十分すぎる容量を持つ。
最大828Wになるソーラーパネル
標準でも180Wのパネルを3枚(=540W)、オプションで最大828Wにもなるソーラーパネルを装備でき、クリーンな電装系を持つとともに、冷蔵庫やIHコンロ、家庭用エアコンなど100Vで駆動するのが特徴。
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セレンゲティ/525:ファンルーチェ
ファンルーチェはキャブコン専門ビルダーで、セレンゲティは同社の看板モデルともいうべきモデル。ハイエースキャブコンの草分け的存在でもあり、万人向きのレイアウトと比較的手ごろな価格で人気のあるモデルだ。
セレンゲティ525のインテリア
バンクを持つ典型的なキャブコンのシルエットで、全長は5m未満の「セレンゲティ」と5245mmの「セレンゲティ525」を選択できる。レイアウトはほぼ同じで後部の2段ベッドの幅が270mm広くなる。
全長5m未満と5m超を選択できる
横置き2段ベッドを採用することによりスペース効率をあげ、5m未満でも多目的ルームを設置している。なお、セレンゲティ525には家庭用エアコンが標準装備される。
キングサイズのバンクベッド
バンクベッドも用意されており、1900x1900mmの大きさ。家庭用ではキングサイズの幅に相当し、大人が3名就寝できる。ファミリーにも二人旅にも対応できるモデルだ。
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TR500 C-LH:RVトラスト
RVトラストは、ラインアップが3モデルのみだが、どれもユニークな魅力を持っている。TR500 C-LHはハイエースワゴンGLをベース車にし、5mを切る全長は運転しやすい。
ホテルの一室を思わせるC-LHのインテリア
TR500 C-LHの特徴は、ホテルの一室を思わせるインテリア。ツインベッドを配した室内は、まさにホテルの一室だ。コンパクトながらギャレーもあり、冷蔵庫はもちろん電子レンジも標準装備。また、家庭用エアコンも標準装備される。
多目的ルームを廃したレイアウトも製作可能
C-LHには多目的ルームも配置されているが、これを廃したレイアウトも製作可能。このスペースはペットの遊び場や収納として様々な用途に使用できる。
コンパクトなギャレーを搭載
ギャレーはコンパクトながら横開き式冷蔵庫と電子レンジも標準装備され、長期旅にも対応する。二人旅に適したモデルだが、バンクベッドも用意されているので、ゲスト宿泊者があっても対応できる。
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TR550L Bolero-v.max :RVトラスト
TR550L Bolero-v.maxはRVトラストのフラグシップモデルで、ハイエースワイドミドルワゴンをベース車にしている。全長は5,480mmで、C-LHが5m未満なのに対し、これは5mを超える。
Bolero-v.maxのインテリア
「国産最上級キャブコン」と謳われているだけあって、インテリアは豪華。質感にこだわったダイネットソファーや落ち着いた木目の家具など、最高級に相応しいインテリアが与えられている。
レイアウトはソファダイネットと縦置きダブルベッドの組み合わせ。他にあまり見ないレイアウトだが、低い位置のダブルベッドは安全に昇り降りでき、二人旅なら余裕のあるレイアウトだ。
独立した常設2口コンロが装備されるギャレー
ギャレーにはシンクと、独立した常設2口コンロが装備されており、旅先での調理も可能だ。冷蔵庫と電子レンジも当然標準装備される。
カセットトイレと温水シャワーが標準装備
サニタリールームにはカセットトイレと温水シャワーが標準装備され、専用の手洗いも設けられている。まさにモーターホームともいえる装備内容だ。
FFヒーターと家庭用エアコンも標準装備されており、サブバッテリーは100Ahのリチウムイオンバッテリーが4個標準装備される。これ以上望むべきものは無いが、価格もそれなりに高価だ。
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トムタンデム:セキソーボディ
セキソーボディはバンコンからキャブコンまで製作しているビルダーで、トムタンデムはスーパーロングをベース車にした全長5600mmのモデル。同社のキャブコンの特徴は、アルミ素材を使用し、シェルの軽量化を図っていること。
トムタンデムのインテリア
レイアウトは前部に対座ダイネット、後部に横置き2段ベッド、中央にギャレーと多目的ルームを配置する。バンクを持たないスマートなシルエットのため、バンクベッドは無い。
2列目にマルチモードシートを採用している
トムタンデムの特徴は、2列目シートがマルチモードシートを採用しており、前向きにもなる点。これにより、乗車人数の7名全員が前向き乗車できる。
2段ベッドの下段は2名が就寝できる
もう一つの特徴は、後部2段ベッドの下段は2名就寝できる点。2段ベッドと言うよりは、ハイマウントダブルベッドに上段ベッドが付いた形と言った方が分かりやすいかもしれない。ダイネットベッドと後部2段ベッドで、計5名が就寝できる。
トムタンデムは、5名のファミリーが全員前向き乗車でき、5名が就寝できるため、ファミリーでの長距離ドライブと車中泊に対応したモデルだ。
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トムバロン:セキソーボディ
トムバロンはセキソーボディのフラグシップモデルで、ハイエーススーパーロングをベース車にして、実に5970mmのロングボディを持つ。
トムバロンのインテリア
この大きな室内を使用したレイアウトは、前部に対座ダイネット、後部にハイマウントダブルベッド、中央にギャレーとトイレルームを無理なく配置する。
電動で上下するハイマウントダブルベッド
後部のハイマウントダブルベッドは、電動で上下するのが特徴。ベッド下の収納の荷量により、ベッド高さを変えられる。荷物が少ないときは、下に下げておくとベッドへのアクセスがしやすくなる。
90Lの冷蔵庫があるギャレー
ギャレーも広く取られており、調理もしやすい。ギャレーキャビネットには90Lの冷蔵庫と電子レンジが標準装備されるが、コンロはポータブルカセットコンロを使用する度にセットする必要がある。
二人旅に適したモデルだが、4名が前向き乗車できるので、ファミリーでの使用にも対応できる。
パタゴニア:ファンルーチェ
ファンルーチェは、先のセレンゲティとこのパタゴニアをハイエースワイドボディべースのキャブコンとしてラインアップしている。セレンゲティがセンターエントランスなのに対し、パタゴニアはリアエントランスのレイアウトを採用している。
前部に広いダイネットがある
リアエントランスレイアウトの特徴は、前部に広いダイネットを取れること。パタゴニアも対座シートとラウンジシートの組み合わせで、ファミリーでもゆったりテーブルが囲める広さになっている。
後部にはギャレーを配置
後部にはギャレーと多目的ルームが配置されているが、リアエントランスのレイアウトでは一般的に常設ベッドは設置されていない。しかしパタゴニアにはキングサイズ以上のバンクベッドがあり、これがメインベッドになる。
大きなクローゼットをが設置されている
収納で特筆できるのが大きなクローゼット。大切なジャケットやコートを、シワにならないよう吊り下げておくことができる。また家庭用エアコンがオプションで用意されている。
パタゴニアはファミリーでの使用に適しているが、広いダイネットはゆったりした二人旅にもお勧めできる。
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モビリティホーム:ダイレクトカーズ
ダイレクトカーズはハイエースバンコンを中心にラインアップしているが、現在ではキャブコンのラインアップも充実している。その皮切りになったのが、2019年に発表されたモビリティホームだ。
後部にエントランスを持つ
モビリティホームはハイエーススーパーロングをベース車にした、全長5760mmのハイエースキャブコンで、ユニークなのは後部にもエントランスを持つ点。網戸を備えたエントランスドアがあり、後部を開放して外気を通すことができる。
2列目にマルチモードシートを配置
レイアウトは2列目にマルチモードシートを配置し、これを前向きにセットすると、乗車定員の7名が全員前向きに乗車できるのが特徴。後ろ向きにセットすると5名が対座できるダイネットになる。
後部に横置き2段ベッドが設置されているが、特筆できるのは、上下段とも1850x1050mmの大きさで、家庭用シングルベッドの標準幅よりも広いこと。
車外でも使えるギャレーが用意されている
ギャレーには2口コンロと一体のシンクがビルトインされており、常設コンロで調理もしやすくなっている。また車外でも使えるギャレーが用意されており、アウトドアダイニングも楽しめるようになっている。
モビリティホームは7名が全員が前向き乗車できるので、ファミリーで長距離のクルマ旅に適している。
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まとめ
今回取り上げたハイエースワイドボディをベース車にするキャブコンは、どれも異なったコンセプトで、異なったレイアウトを採用している。まず、大きく、二人旅に適しているかファミリーに適しているかで分けることができる。
例えば、二人旅に適しているのは、ACSプルミエM5.7 、C-LH、Bolero-v.max、ファミリー用途に適しているのは、トムタンデム、モビリティホーム、どちらでも使えるのは、セレンゲティ/525、トムバロン、パタゴニアだ。
まず、二人旅に適しているモデルでを見ると、Bolero-v.maxはほぼ完璧の装備を備えているが、価格は突出している。ACSプルミエM5.7はC-LHより70万円程度高価だが、更にエアコンはオプションとなっている。L-CHはエアコンが標準装備なので価格的には最も安価だ。ただしベース車が異なり、ACSプルミエM5.7は5mを超えるため広い室内を持つ。
ファミリー向けのモデルでは、モビリティホームはトムタンデムより約100万円高価だ。しかしモビリティホームは家庭用エアコンとリチウムイオンバッテリーを標準装備しているため、価格的にはほぼ同等と言える。
どちらにも使えるモデルでは、価格的にはほぼ横並びだが、トム バロンは豪華さの点で1歩先んじている。ただし、ファンルーチェの2モデルが家庭用エアコンを標準装備するのに対し、トムバロンはオプションとなっている。即ち、トムバロンは豪華でグレード的にも上位になるが、価格もその分高価になる。
上記の分類や比較は当方の考えによるもので、ビルダーやユーザーの考えは異なるかもしれないが、参考までとお考えいただきたい。いずれにしても各モデルはビルダーのコンセプトに基づいて作られており、自分の使い方にあったモデルを選べば、どのモデルを選んでも後悔することは無い。
二人旅向けのレイアウト