ジル ノーブルはバンテックが製作するカムロードをベース車にするキャブコンキャンピングカー。同社のスタンダードキャブコンには5m超のジルシリーズと5m以下のコルドシリーズがある。
ジルシリーズは、リアエントランスの「ジル」を筆頭に、後部に2段ベッドを持つ「ジル520」、そして広いハイマウントダブルベッドを持つ、この「ジル ノーブル」がある。

後部のレイアウト
コンセプト:5mを超えるフルサイズキャブコンで、後部に広いハイマウントベッドを持つ。家庭用エアコンはもちろん、サニタリールームには電動カセットトイレや温水シャワー、専用の手洗いを標準装備したハイグレードのキャブコン。
エクステリア:極めて標準的なキャブコンのスタイルを踏襲しながら、FRP一体成型による自由度の高い造形で、曲線を取り入れた外観を持つ。CSボディと名付けられたシェルは弾力性と剛性を併せ持ち、衝撃から乗員を守る。

ダイネット上に設けられたグラスケース
インテリア:ハイグレードモデルに相応しい高級感のあるインテリア。特にダイネット上に設置されたグラスケースは華がある。このようなワンポイントの演出を持つ国産車は少ない。間接照明とダウンライトを多用した室内は、夜の室内をゴージャスにする。
レイアウト:5,160mmの車長のため、後部に広いダブルベッドを置き、サニタリールームを配置しても窮屈感は無い。ダブルベッドの特徴は、高所に上る必要がないことと、ベッド下の大きな外部収納。特に年配にユーザーには、高い位置のベッドは危険でもあるため、二人で旅する年配ユーザーにはお勧めのレイアウトと言える。

対座ダイネット
ダイネット:ダイネットでは4名が対座できる。2段ベッドを持つジル520に比べるとダイネットは多少狭くなり、テーブルも小さめになるが十分なスペースがある。ダイネットを展開してベッドにすることは想定されていないが、ターゲットユーザーを考えれば問題ではない。

後部のダブルベッド
ベッド:後部のハイマウントダブルベッドの大きさは1400x1900mm。家庭用では標準のダブルベッドに相当する。このベッドはジルノーブルの最大のこだわりとされており、3段階に硬さが調整できる「軽量独立式プラスティックスプリング」を採用。その上に厚さ100mmで5層構造のウレタンマットを置いている。

ダイネット上のバンクベッド
前部のバンクベッドは1300x1880mmで、後部ベッドに比べると10cm幅が狭いが、大人2名が十分就寝できる。天井高は700mmあり、圧迫感はほとんどない。
二人旅の場合はここは荷物置き場になるので、荷物の落下防止機能があっても良いかもしれない。
ギャレー:2口コンロと独立したシンクをビルトイン。バンテックのキャブコンは、普及モデルのコルドシリーズでも2口コンロがしっかりビルトインされている。コンロが無くシンクだけのキャブコンが増えてきた中、同社のキャブコンはキャンピングカーらしさを失っていない。
清水用蛇口と生活水用蛇口が分かれているのも高級感がある。生活水用蛇口からは温水も出る。
ただ、料理はしないというユーザーが存在するのも確か。であれば、マイナスオプションであっても良いかもしれない。

2口コンロと独立したシンクを持つギャレー
冷蔵庫/電子レンジ:90L冷蔵庫が標準装備される。ただ電子レンジはオプション。電子レンジの需要は多いと思われるので、標準装備にして、どこに、どんな風に電子レンジが収まるのかを見たいところ。
1500Wインバーターは標準装備なので、電子レンジだけで44,000円(税込)は高価。標準装備にすればコストも下がるのではないだろうか。

温水シャワーや専用手洗いがあるサニタリールーム
サニタリールーム:電動式カセットトイレ、温水シャワー、専用手洗い、大きな鏡、専用収納キャビネットなど、「ノーブル:高潔な、気高い」という名前に相応しいスペース。ジル520と並んで欧州車に対抗できる内容だ。
ただ、温水設備は22Lの熱交換ボイラー式。60℃程度まで温めた湯を55タンクの水と混合して使うが、2名でも十分とは言えない。リバティ52DBやトリップ、あるいはバレンシア520では瞬間湯沸かし方式を採用しており、対応が望まれる。

ベッド下の外部収納
収納:ダイネット両側、ギャレー上、ベッドルーム両側にオーバーヘッド収納が設けられており、奥行きも十分あるので収納力は大きい。またギャレーコンソールには引き出し収納を含め食器や鍋なども十分収納できるスペースが用意されている。
更に、ベッド下の外部収納は広大で、多量のキャンプ道具などを積み込める。ただし、室内からのアクセスが難しいのが難点ではある。
空調:暖房はFFヒーターが標準装備。後部ベッドの窓側やサニタリールームにも吹き出し口があり、細かいところまで配慮されている。
また家庭用エアコンはもちろん標準装備。同社はオルタネーターで発電した電気とサブバッテリーに充電された電気を選択してエアコンを稼働する「デュアルソース・エアコンシステム」という方式を採用している。
考え方はナッツRVのEvolution/Evoliteシステムと同じで、オルタネーター(走行充電)の機能を強化して、バッテリーに負荷をかけずにエアコンを稼働しようというもの。走行充電でサブバッテリーが満充電できるメリットも大きい。
テレビ/ナビ:19インチテレビを持ち込みで設置できる。またナビはオプション。
電装系:100Ahのディープサイクルバッテリー3個を標準装備。エアコンを含めた実使用を考えると、これくらいの容量が必要になる。この容量で同社は昼間なら4時間、夜間なら10時間程エアコンを運転可能としている。ただしリチウムイオンバッテリーのオプション設定は無い。
なお、440Wのソーラーシステムがオプションで装着でき、これを使うと昼間のエアコン使用時間を延長したり、バッテリーの消費を防げる。
なお、ホンダ18iを搭載できるスペース(iBox)も後部車外に設けられており、防音対策もされている。

価格:ガソリン2WD/4ATで722万円(税別)。ディーゼル2WD/4ATダブルタイヤは792万円(同)。エアコンをはじめ大きな大型装備はほとんど標準なので、高額の追加装備はソーラーシステム(51万円:同)くらいだろう。(足回りの強化などは除く)
他車:カムロードベースで全長5m超、家庭用エアコンと温水シャワーが可能なキャブコンは、下のモデルがある。(価格は全て税別)
クレア・スティング5.3Z Evolution ナッツRV 755万円~(温水シャワーはOP)
トリップ ダイレクトカーズ 869万円~
リバティ52SP アネックス 801万円~
上記4モデルはいずれもレベルの高いキャブコンでどれをとっても間違いは無いが、温水シャワーを重視するなら瞬間湯沸かし方式のトリップとリバティ52SP、バンクレスならスティング5.3Z、コストパフォーマンスならジルノーブルとリバティ52SPが挙げられる。
なお、キャンターベースのバレンシア520(マックレー)とBe-CamベースのSAKURA(NTB)、あるいはハイエースベースのキャブコンもあるが、いずれもカムロードベースより高価になる。ハイエースベースのフルサイズキャブコン特集の記事もあるので参照いただきたい。
まとめ:ジルシリーズはキャブコンで定評のあるバンテックの上位モデルだけあって、多くの点で不満が無い。走行充電が強化されていても発電機を実用的に使えるiBoxをオプションで用意しているところなどは、現実性も考えられている。
あとはリチウムイオンバッテリーのソリューションと瞬間湯沸かしがあれば完璧だろう。
二人旅に使いやすいレイアウトで、かつ気品あるインテリアは目の肥えた年配ユーザーにも満足感が高い。
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