ユーロバーデンは、トイファクトリーが製作する、フィアットデュカトをベース車にしたバンコンキャンピングカー。
同社は岐阜県可児市に拠点を置くビルダーで、ハイエースベースのバンコンを中心にラインアップを展開している。2023年には、正式輸入が始まったフィアットのデュカトをベースにしたバンコンラインアップも加わった。
デュカトベースのモデルは”EURO-TOY”ブランドで販売されており、ここには「Etrusco(エトルスコ)」や「LAIKA(ライカ)」といった海外他社のブランドも扱っている。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
正規輸入されるフィアット デュカトをベース車にしたバンコンキャンピングカー。最もコンパクトなL2H2ボディを採用している。
レイアウトは車名の通り、ハイエースベースのバーデンをデュカトのボディに展開したもので、多目的ルームを無くすことにより、リクライニングができる広いダイネットと後部の常設横置きハイマウントダブルベッドを無理なく配置している。
バーデンは同社を代表するモデルで好評を博しているが、ユーロバーデンでは、その特徴を更に発展させ、ファミリーでもストレスのない広い車内を実現している。
アピールポイント
・デュカトL2H2を使用し、多目的ルームを廃したことによる広い室内
・バーデンで好評のレイアウトをデュカトに展開
・2列目にマルチモードシートを使用し、6名が前向き乗車可能
・後部のダブルベッドは横置きでも1950mmの長さをい確保
・70Lの両開き式冷蔵庫を標準装備
ベース車とエクステリア
ユーロバーデンのエクステリア
ベース車はフィアット デュカト L2H2。輸入されるデュカトの最もコンパクトなサイズだが、それでも全長はハイエーススーパーロング(5380mm)より長い5410mmとなっている。
エンジンは2184ccの直列4気筒マルチジェットディーゼルインタクーラー付きターボで、ミッションは9速AT。輸入されるベース車は全て最上位の180psバージョンとなっている。なお、デュカトには4WDは無く、2WDのみ。
架装前のデュカトはキャブ部以外にウインドウが無いため、モデルによってさまざまな位置に様々な大きさの窓が開けられる。ユーロバーデンでは、右側に1か所、左側のスライドドアに1か所、観音開きのリアゲートに各1か所の窓が設けられている。
運転席周りの窓を除き、後部の窓は全てアクリル2重窓になっている。各窓には網戸とシェードが組み込まれている。
電動ステップが標準装備され、サイドオーニングはオプションで設置できる。ポップアップルーフも選択でき、就寝人数は2名追加される。
インテリア
ユーロバーデンのインテリア
明るい木目の家具とCasaブラックエディションと同じようなブラックのシート地の組み合わせ。明るい室内をブラックのシートが引き締めている感じだ。
ユーロバーデンの照明
照明はスポットライトと間接光の組み合わせ。上の写真では点灯していないが、ダイネット上部のオーバーヘッド収納上下のも間接光が仕込まれている。
レイアウト
ユーロバーデンのレイアウト
レイアウトは車名の通り、バーデンのレイアウトを模したもの。2列目と3列目にマルチモードシートを使用、左サイドにギャレーキャビネット、後部に横置きハイマウントダブルベッドを配置している。
このレイアウトの特徴は多目的ルームを廃することにより、広いダイネットとダブルベッドを共存させること。更に多目的ルームにより視界が遮られることを無くし、車内の広々感を出してる。
ダイネット
ユーロバーデンのダイネット
ダイネットには2列目、3列目に900mmのREVOシートを設置している。これも多目的ルームを無くした恩恵で、両シートともリクライニングが可能。更に、2列目シートを前向きにすることにより、全員が前向き乗車できる。
なお、デュカトでおなじみの回転する運転席、助手席の機能は想定されていないようだ。回転機能そのものは生きているので、後ろ向きにはなる。
ベッド
後部の横置きダブルベッド
後部の横置きダブルベッドのベッドサイズは1950x1460mm。1460mmの幅は家庭用ではレギュラーダブルベッドの幅(1400mm)より広い。
デュカトを選択したメリットは身長方向(車幅方向)の長さで、ハイエースベースではエクステンションウインドウを付けても1800mmしか取れず、長身のユーザーは窮屈感があった。デュカトベースでは1950mmなので、この問題は解決されている。
ダイネットベッド
2列目と3列目のマルチモードシートをフラットにすると、1950x1200mmのベッドになる。1200mmの幅は、家庭用ではセミダブルベッドの幅に相当し、ここでも2名が就寝できる。
ギャレー
ギャレーセクション
左サイドに設置されたギャレーキャビネットにはシンクとフォーセットが設置されている。調理面もあるが、常設コンロはバーデン同様設置されていない。調理をするユーザーにとっては、1000万円をはるかに超えるモデルにしては物足りないギャレーだ。
ギャレーキャビネットの引き出し収納
ギャレーキャビネットには3段の引き出し収納が用意されている。食器や調理用具の収納に大変便利だ。
車外から直接出し入れできる給水タンク
13Lの給水タンクは最後部に収納されており、リアゲートを開けると車外から直接出し入れできる。排水タンクは75Lで、固定式となっている。
冷蔵庫/電子レンジ
70L両開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は70L両開き式が標準装備される。両開き式なので左右どちらからでも開くことができ、車内からでも車外からでもアクセスしやすい。バーデンでは上開き式の冷蔵庫だったが、ユーロバーデンでは冷凍室と冷蔵室が独立した冷蔵庫になった。
電子レンジはオプション
電子レンジはオプションで設置できる。クルマ旅にはほぼ必需装備なので標準装備にして欲しいところだ。また、電子レンジの設置場所はバーデンと同じ後部のベッドの下なので、使いやすい位置とは言えない。
多目的ルーム
ユーロバーデンでは多目的ルームを無くしたのが特徴なので、多目的ルームは無いが、ポータブルトイレを緊急用に積んでおくことはできる。後部ベッド下は広いスペースなので、子供ならトイレスペースとして使うこともできるだろう。
収納
両側にオーバーヘッド収納が設置される
オーバーヘッド収納はダイネットとベッドルームの両側に設置されている。容量も大きいので、車内が荷物で煩雑になることはないだろう。
キャブ上部のオーバーヘッド収納
運転席、助手席の上部にもオーバーヘッド収納が設置されている。扉は無いが、寝具などの収納に便利だろう。
後部ベッド下の収納
後部のベッド下は大きな収納スペースになっている。小型の自転車等の荷物も積み込むことができるだろう。更にベッドボードを取り外せば背の高い荷物も積載可能だ。
後部左側の収納
ベッド下の左右にも収納が設置されている。中央の収納スペースと分類して収納できる。左側の収納スペースにはスライド式の扉が付いている。中央のスペースに荷物があっても開けることができるので大変使いやすい。
後部右側の収納
右側の収納には、左側のようなスライド扉ではなく、上下に伸縮するメッシュ状の”帯”が付いている。両側を引っ張って上下させる必要があり、あまり使いやすいとは言えない。
空調
ルーフクーラー(OP)
冷房はルーフクーラーか家庭用エアコン(クールコンプシステム)がオプションで選択できる。ルーフクーラーを選択すると、ルーフウインドウは付けられない。また、家庭用エアコンを選択するとオーバーヘッド収納の一部が犠牲になる。
マックスファンベンチレーターとルーフウインドウ
マックスファンベンチレーターはオプション、ルーフウインドウは標準装備となっている。また、暖房用のFFヒーターもオプションとなっている。FFヒーターはほぼ必需装備なので標準装備が望ましい。
テレビ/ナビ
19型のテレビがオプションで用意されている。ナビは好みのものが設置できるだろう。
電装系
標準では100Ahのディープサイクルバッテリーが2個搭載される。リチウムイオンバッテリーは150Ahのものが最大2個(=300Ah相当)を選択できる。クーラーやエアコン設置時はリチウムイオンバッテリーが望まれる。
その他の電装系では、走行充電、外部電源入力とチャージャー、1500W正弦波インバーターが標準装備される。ソーラーシステムはオプション。
価格(2024年8月現在:千円台切り上げ:税込)
ディーゼル 2WDのみが選択可能で、1210万円~となっている。付けておきたい必需オプションは、ルーフクーラー(418,000円)/家庭用エアコン(506,000円)、FFヒーター(290,400円)、マックスファンベンチレーター(153,700円)、150Ahリチウムイオンバッテリー(396,000円)、電子レンジ(46,000円)が挙げられる。(ナビ関連は除く)
他モデル
デュカトをベース車にし、多目的ルームが無く、前向きシートがあり、ファミリーにも対応できるレイアウトを持つモデルをピックアップすると、デルタリンクのブレス54DD(1307万円~)とブレス54SL(1318万円~)、そしてRVランドのタイムレストラベル(1177万円~)が挙げられる。
ブレス54DDは運転席と助手席のシートを回転して後ろ向きにし、2列目シートとで対座ダイネットが作れる。一方ブレス54SLはユーロバーデンと同じく2列目と3列目のシートで対座ダイネットを形成する。
ブレス54DDは後部に横置き2段ダブルベッドを持つが、ブレス54SLは後部に横置きダブルベッドを持ち、よりユーロバーデンに近いレイアウトとなっている。
タイムレストラベルも2列目にマルチモードシートを持つが、ダイネットは後ろ向きにした2列目と、3列目の横座り対座ベンチシートとでコの字型のダイネットを形成する。後部には横置き型のダブルベッドを設置している。
2023年に発表されたデュカトベースの全12モデル特集記事はこちら。
まとめ
ハイエースベースのバーデンは、あえて多目的ルームを無くすことにより、広い室内を実現し、これが好評を得た。しかし、まだ不満が残る点もあった。例えば後部ダブルベッドの身長方向は1800mmしかなく長身のユーザーは窮屈な点。あるいは、これはベース車の問題だが、ハイルーフと言えども頭がつかえてしまう点などだ。
ユーロバーデンでは、この不満点を全て解決した、本来のバーデンのレイアウトのコンセプトの良さをすべて満たしたモデルと言える。全体的に広いので、4名のファミリーで使ってもストレスは少ないだろう。
懸案点を挙げておくと、多くの必需装備がオプションであること。FFヒーター、電子レンジ、リチウムイオンバッテリー、ソーラーシステムなどは、1000万円を超えるモデルであれば標準装備が望まれる。(クーラーとエアコンは選択肢があるためオプションとなっている)
また、デュカトが持つフロントシートの回転機構が生かされていないのはもったいない気がする。フロントの対座ダイネットをこの機能を生かして形成するなら、後部は更に広いスペースを有効活用できる。
例えばブレス54DDはその一例だろう。ユーロバーデンはバーデンのレイアウトを忠実に再現することが優先されているように思える。デュカトならではのバーデンがあっても良かったかもしれない。
関連記事