ジャパンキャンピングカーショーに見る2018年のトレンド


ジャパンキャンピングカーショー2018が、2月2日~4日、千葉県幕張にある幕張メッセで開催された。国内で最大のキャンピングカーショーで、毎年この時期に行われている。業界の成長に伴って年々参加社が増えており、今年も多くの展示車両数が一同に出展された。


キャンピングカーは普通の乗用車と違って、明確なモデルチェンジが分かりにくく、従ってトレンドというものも今ひとつ掴みにくいが、あえて各カテゴリーのトピックスを見てみよう。

バスコン/セミフルコン
トヨタコースターがフルモデルチェンジして1年が経ち、各社からニューモデルが出揃った。トイファクトリーはコースターのモデルチェンジ後、先陣を切って「ビッグバン620」を発表したが、今回は同社のフラグシップ「Seven Seas:セブンシーズ」を発表。名実ともにバスコンの最高峰となっている。(前モデルはこちら

 トイファクトリーのバスコン セブンシーズ

また、RVビックフットは新発表の「ACSオアシスLL」と「ACSオアシスSH」を含む3モデルを展示。バスコンのラインアップの充実を見せた。
一方、セミフルコンではナッツRVが3モデルをラインアップ、中でも「ボーダーバンクスTypeT」はシリーズ初となるツインベッド仕様で、待たれていたレイアウトが実現した。RVランドの「ランドホームコースター」を含め、バスベースのニューモデルが出そろった。

スタンダードキャブコン
スタンダードキャブコンではバンテックが、フィアット・デュカトベースのキャブコン「V670」を参考展示した。

 フィアットデュカトをベース車にしたバンテックのV670

国産キャブコンのベース車といえばトヨタカムロードかいすゞビーカムが定番だが、欧州車ではデュカトがほぼ独占している。トラック臭さが残る国産モデルに対してデュカトはスマートなイメージがあるが、バンテックのニューモデルはこのベース車を使って国産キャンピングカーを作ったわけだ。詳細は発表されていないが、輸入モデルとも競合することになるだろう。ただし、輸入モデルは比較的安価なセカンドブランドを中心に人気が高まっている。ジルシリーズよりもあまりにも高価な価格帯になると、逆に輸入車の割安感が強調されるかもしれない。

輸入モデル
その輸入モーターホームでは、先に書いたようにセカンドブランドの人気が高まっている。アドリアを販売するデルタリンクはセカンドブランドのサンリビング(SunLiving)ブランドを中心に展示、またデスレフを販売する東和モータース販売もサンライト(SunLight)ブランドを多数展示した。更にトリガノグループに属するローラーチームブランドを販売するフジカーズジャパンは、今までバンコンのリビングストン1車種だったが、今回はキャブコンの「ゼフィーロ」と「リビエラ」の2モデルを追加した。

 デルタリンクが販売するSunLiving V65SL

欧州車のセカンドブランドモデルは洗練されたインテリアと安価な価格で、今後も人気が高まるだろう。ただ、右ハンドル、左エントランスをはじめ、エアコン、ガスなどのインフラや、維持費、メンテナンス面などでの充実が今後の課題となる。

ライトキャブコン
マツダボンゴ、ハイエース標準ボディ、日産NV200バネットライトエース/タウンエースをベース車とするライトキャブコンは、キャンピングカーのメインカテゴリーのひとつだが、昨年新型車が多く発表されただけに、今年は一休みといった感じ。このカテゴリーの今後の課題は家庭用エアコンのソリューションが挙げられる。

バンコン
レイアウトやインテリアの変更が中心で、大きな変革のようなものはあまり無いが、そんな中で目にとまったのがレクビィのプラスLV。ハイエース標準ボディながら家庭用エアコンを搭載したバンコンだ。

 家庭用エアコンを搭載するレクビィ プラスLV/AC仕様

バンコンは数あれど、このサイズでは唯一となる。いよいよハイエース標準ボディにも家庭用エアコンが搭載され始めた。なお、ハイエース標準ボディにハイルーフを架装したモデルなら、RVビックフットの「エールーム」とテッツRVの「ナローエース」が存在している。
ただし、エアコンを実用的に使用するためには大容量のバッテリーやリチウムバッテリーが必要になる。コンパクトなボディに大容量のバッテリーを積むソリューションも必要になってくるだろう。

軽キャンパー
軽キャンパーはスペースに限りがあるだけに、大きな変革は難しい。しかしそんな中にあって、カーショップスリーセブンの「パーム」は注目できる。軽キャンパーながら1000Whのリチウムイオンバッテリーを搭載しているのだ。それほど大きな容量ではないが、100Ahのディープサイクルバッテリー(1200Wh)よりも実質的には長持ちする。現在はボックス状態で邪魔になる感じだが、形状を平たくするなどしてシート下に入れば、軽キャンパーの電装系が相当強化されるだろう。リチウムバッテリーと言えば、大容量のものが話題に上がるが、このように小型のものが普及すれば、軽キャンパーやコンパクトキャンパーの電源事情はかなり改善されるだろう。

 カーショップスリーセブンのパームに搭載されたリチウムイオンバッテリー

ミニバンベースキャンパー
唯一ハイブリッドやPHEV化が進んでいるのがこのカテゴリーだが、その中でも実用性が高いのが西尾張三菱自動車販売が出展した「アウトランダーPHEV POP」。市販のアウトランダーPHEVにポップアップルーフを架装している。

 西尾張三菱自動車販売のアウトランダーPHEV POP

どう実用的かというと、発電機(エンジン)と大容量バッテリー(12KWh)を持つので自ずから自立型キャンピングカーになっているという点。バッテリーが減ってくれば、自動で発電機(エンジン)が始動する。充電は全国に普及しつつある急速充電機が使える。ベース車自体がクルマの電気を走行以外に積極的に使うというコンセプトなので、キャンピングカーに向いていない訳がない。
なお、EVは今のところキャンピングカーに向かないだろう。電気毛布のような暖房はできても、FFヒーターのように車内全体を暖房できない。

トラベルトレーラー
残念ながら日本でトラベルトレーラーの需要はあまり多くないが、それでも近年小型トレーラーが増えつつある。今回のショーでも多くのトレーラーが出展されたが、高級大型トレーラーのイメージがあるエアストリームも小型トレーラー「Base Camp」を出展したのが興味深い。

 エアストリームのBase Camp

インテリア
NTB(日本特殊ボディ)の「SHINOBI」のインテリアは、今回の展示会で最も話題に上がったものの一つだろう。いすゞビーカムのキャブコンシェルに和室が構築されており、その完成度は完璧と言ってよいほど。しかも襖を開けると、赤と黒でコーディネイトされた超モダンなキッチンが現れ、和室とのコントラストが実に美しい。

 NTB SHINOBIの室内

「SHINOBI」は完全なワンオフモデルで、既存のものにとらわれずレイアウトやインテリアをオーダーすることができるが、和室は実に素晴らしいアイデアだ。
和室と言えばバンテック新潟(VanRevo)の「クエスト」と「クエスト雅」がある。これらはバンコンに架装し、狭い空間ながら美しい和室を再現しているが、やはり「SHINOBI」の大きな和室は、そこがクルマの中だと忘れさせてしまうほどだ。
ドイツのデュッセルドルフで開催される世界最大のモーターホームショー「キャラバンサロン」に出せば、大きな注目を浴びるだろう。(売れるかどうかは別にして。。)

電装系
日産のリチウムイオンバッテリー搭載コンセプトモデル「グランピングカー」が、今回は容量を8KWhにして展示された。グランピングカーは昨年も12KWhのバッテリーを乗せて展示されていたが、様々な意見から、8KWh程度で十分という結論になったとのこと。小型になったのでフロントシートの後部に横置きにしている。それでも100Ah(1.2KWh)ディープサイクルバッテリーの6個以上の容量で、実質的な差はもっと大きくなる。これだけの容量があれば、数日間のクルマ旅なら充電無しで乗り切れるし、この容量なら充電は一晩で済む。

 グランピングカーのリチウムバッテリー

このシステムを実販売車に採用したのが日産ピーズフィールドクラフトの「リチウムバッテリー搭載モデル」だが、まだモデル名が決まっていない。
大容量リチウムイオンバッテリーでは、キャンパー鹿児島が先行し、今回もKUROS搭載の初のキャブコン「rem REPOSE(レム レポーズ)」を発表した。
ただ、大容量のリチウムバッテリーで持続時間は長くなるが、長期旅では充電を行う必要がある。即ち、数日に1回は外部100V電源を探して停泊する必要がある。



2018.2.8