Puppy480と同価格帯のファミリー向けモデルを比較
バンテック厚木のPuppy(パピー)480はカムロードキャブコンでありながら車幅がミニバンと同じ程度の1740mmしかないため、今まで自宅の駐車場に入らないからとキャブコンを諦めていたユーザーへのソリューションとなった。
車幅が1740mmでミニバン並みのPuppy480
また、Puppy480の車両本体価格がエアコンを搭載して598万円~(税別)ということから、バンコンを考えていたユーザーもPuppy480が気になるのではないだろうか。そこで今回はPuppy480と比較する形で、車両本体価格がエアコン装備で600万円程度のキャブコンとバンコンを特集した。
Puppy480と条件をできるだけ同じにするため、全てエアコンを装備し、ユーティリティールームを持ち、ファミリーに対応できる(3名以上が前向き乗車できる)モデルをピックアップしている。
ただし、実際に購入する場合は、その他のオプションや税金で更に高価になる。ここで提示した600万円というのは、あくまでも車両本体価格+エアコン搭載+実用的なエアコン使用(2~3個のサブバッテリー、1500Wインバーター)の最低限の税別価格とした。
目 次
アンソニーLE エートゥーゼット
エートゥーゼットはカムロードキャブコンから軽バンコンまで手掛ける総合ビルダーで、5m以下のカムロードキャブコン、「アンソニー」シリーズが同社のフラグシップになる。見栄えの良いインテリアながら低価格設定で、人気の高い5m以下のカムロードキャブコンだ。
アンソニーLEのダイネット
Puppy480以外のカムロードキャブコンで、エアコンを装備して600万円を切るモデルは、5m超のものはもちろん存在しないが、5m以下でもアンソニーLEのみ。
アンソニーLEは、エートゥーゼットのカムロードキャブコン「アンソニー」シリーズで唯一の家庭用エアコン搭載モデル。またインテリアもカラーコーディネートされた3種類の中から選択でき、極めてコストパフォーマンスの良いモデルだ。
車長は5m以下、車幅は1910mmなのでハイエースワイド幅(1880mm)よりも広いが、他の5m未満キャブコンは2mを超えるので、従来のカムロードキャブコンの中では車幅が狭い方になる。
アンソニーLEの後部レイアウト
Puppy480に対する利点は、当然、大きなシェルの分広い室内空間。ベース車がワイドトレッドでもある。特にリアエントランスなので広いダイネットが目を引く。
しかし電装系は105Ahのサブバッテリーが1個のみなので、エアコンを実用的に運転するにはサブバッテリーやインバーターの強化が必要で、その分Puppy480よりも高価になる。またPuppy480では標準装備のFFヒーターもオプションだ。なおリチウムイオンバッテリーが選択できるのは優位点。
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Puppy480 バンテック厚木
バンテック厚木はバンテックモデルを中心に販売する販売会社だが、オリジナルモデルも製作しているユニークな会社。今までは小型バンコンのみだったが、Puppy480で本格的なキャブコンモデルへも進出した。
Puppy480はカムロードベースのキャブコンでありながら、車幅が1740mmとコンパクトで、ミニバンと変わらない。それゆえ、今まで家庭の駐車場に入らないのでキャブコンを諦めていたユーザーにもアピールしている。
Puppy480のダイネット
最大の特徴はそのコンパクトさだが、価格も特筆できる。家庭用エアコン、FFヒーター、65L横開き式冷蔵庫、トリプルバッテリー、1500W+122Wツインインバーター、昇圧走行充電システムを標準装備して車両本体価格598万円(ガソリン2WDシングルタイヤ)は間違いなくカムロードキャブコン最低価格だ。
あえてPuppy480の弱点を考えてみると、室内が狭いということになるだろう。しかし、これはあえてコンパクトなキャブコンということを利点としているので、仕方のないことではある。
Puppy480の後部
常設ベッドが無いのも弱点ではあるが、アンソニーLEやベリーも常設ベッドは無い。また、バンクベッドは準常設ベッドなので、フロアに常設ベッドが無くてもあまり大きな問題ではない。
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ベリーRE タコス
タコスはカムロードキャブコンからライトエースベースのコンパクトなバンコン、あるいはFRPハードルーフを架装したバンコンなど、幅広いモデルを開発しているビルダー。ベリーもその一つで、高価になりがちなハイエースベースキャブコンを比較的低価格で実現している。ベリーREはベリーのリアエントランスモデル。
ハイエースベースのキャブコンはワイドボディをベース車にするものと、標準ボディをベース車にするものとに分けられる。ワイドボディベースは動力性能、居住スペースともに申し分ないが、600万円台にはとても収まらない。
ベリーREのダイネット
従って、標準ボディベースで考えると、セキソーボディのトム200やファンルーチェのウラルがあるが、600万円程度でエアコンを装備するのはタコスのベリーのみだ。ハイエースベースのキャブコンはどうしても高くなってしまう。
ベリーが比較的安価なのは他のハイエースキャブコンと異なる構造のため。ボディカットせず、骨格を残して、その上からシェルを架装するという方法を採用している。そのため大掛かりな加工コストが発生せずボディの強度的にも有利な構造だ。車内は、多少元のボディの存在を感じるところはあるが、言われなければ分からないだろう。
Puppy480に対するベリーの優位点は、「ハイエースベース」ということが挙げられる。トラック臭さがあるカムロードと違って、ハイエースはお洒落に乗る車としても使われており、商用車でありながら、ドライブフィールや運転席周りはカムロードより洗練されている。
ベリーREのギャレー
また、サイズ的にもコンパクトで、車幅は1,890mm。Puppy480より15cm広いが、ハイエースワイドボディ(1,880mm)とほぼ同じだ。
価格はPuppy480に比べて30万円安価。ただしエアコンを実用的に使うため、サブバッテリー増設と1500Wインバーターを装備する必要がある。またFFヒーターもオプションだ。これらの装備を追加すると、Puppy480の価格以上になる。
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キャブコンにするかバンコンにするか?
以上はキャブコンモデルだが、ここからはバンコンモデルで600万円近辺のモデルをピックアップする。600万円前後でエアコンを装備し、ユーティリティールームを持ち、ファミリーに対応できるモデルとして下の3モデルを選択した。
・銀河 オーエムシー
・GT トイファクトリー
・プラスDD レクビィ
トイファクトリーのモデルではGTを代表例に挙げたが、ハイマウントベッドのコルドバクルーズや、縦置き2段ベッドのアルコーバも条件に当てはまる。
ピックアップした3モデルは全てスーパーロングなので、5mをはるかに超える全長(5,380mm)になってしまい、取り回しのし易さという面ではPuppy480に比べて不利になる。またハイルーフと言えども天井高はキャブコンほど高くなく、断熱性もキャブコンには及ばない。
しかし2,700ccのガソリンエンジンはPuppy480の2,000ccに比べパワフルで走行性能も良い。また先にも書いたが、ハイエースはカムロードより運転席周りの洗練度が高く、トラック臭さが少ないのも利点ではある。キャンピングカー然とした外観は避けたい、という場合は必然的にバンコンになる。
また、ここに挙げた3モデルはいずれも常設ベッドを持つので、これもPuppy480に対して利点となる。
銀河(エアコンモデル) オーエムシー
オーエムシーはハイエースとNV350キャラバンをベースにしたバンコン専門ビルダーで、手作り感があるインテリアだがレイアウトやインテリアの自由度が高い。銀河は同社の看板モデルかつフラグシップで、リチウムイオンバッテリーでのエアコン対応も早くから行っている。
銀河は縦置き2段ベッドと、単座シート2脚を向かい合わせた対座ダイネットのレイアウト。これだけでは二人旅仕様限定になってしまうが、2段ベッドの上段ベッドを下ろすと、これがシートバックになり、下段ベッドが横座りシートに早変わりする。即ち、ファミリーでも使用できる。
銀河のインテリア
更にダイネットを展開すると一人用ベッドになり、計3名が就寝できる。乗車定員は7名だが、前向き乗車できるのは3名。
ギャレーは前部に配置されており、コンロはカセットタイプ。40Lの横開き式冷蔵庫が標準装備され、電子レンジもギャレーコンソール上に標準装備される。
最後部にはドアで仕切られたトイレルームがあり、ポータブルトイレが標準装備される。車幅いっぱいにスペースが取られているので、トイレルームとしてだけでなく、収納スペースとしても使用できる。
エアコンはギャレーコンソールの上に配置されている。室外機もギャレーコンソールの奥に置かれている。即ちボディ中央だ。このため、ボディ右側にエアコンの排気口が設けられている。しかし、室内機と室外機が極めて近いためロスは少ない。
銀河の縦置き2段ベッド
エアコンオプションは家庭用エアコン本体の他に、200Ahリチウムイオンバッテリー、40A急速充電バッテリーチャージャー、1500W正弦波インバーターが含まれる。リチウムイオンバッテリーはディープサイクルバッテリ300Ah以上の実質容量があるので、エアコンをより現実的に使える。経年変化も少ないので、2年ほど経つとその差は大きくなる。
銀河はエアコンオプションを含めても比較的低価格で、今回ノミネートした中でも最も安価だ。また同社は製作の自由度が高いので、自分好みに仕上げることができるのも嬉しいポイント。
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GT(クールコンプシステム付き) トイファクトリー
トイファクトリーはハイエースバンコンを中心とするバンコン専門ビルダーで、特にハイエーススーパーハイルーフやスーパーロングのレイアウトを各種揃えている。洗練された現代的なインテリアは同社の特徴で、Casa仕様などスペシャルなインテリアも選択できる
GTの他にもスーパーロングで様々なレイアウトが選べる。ハイマウントダブルベッドのコルドバクルーズや縦置き2段ベッドのアルコーバも、対座ダイネット、ギャレー、ユーティリティールームを持ち、エアコンを搭載して600万円程度の選択肢に入る。
GTのインテリア
GTのレイアウトは、前部に対座ダイネット、後部に横置き2段ベッド、中央にギャレーとユーティリティールームを配置する。
ギャレーはコンパクトで、冷蔵庫は40L上蓋式が採用されている。電子レンジはオプションだが、収納スペースは用意されている。
エアコンは「クールコンプシステム」という名前のオプションで用意されている。室内機はバーデンでは左後方に付くが、GTでは2段ベッドがあるので、ギャレー上に装着される。また、室外機は後部床下に装着される。
GTの後部横置き2段ベッド
なお、エアコンを装着すると、クールコンプシステムの他に電源の強化も必要になる。サブバッテリーを増設し、1500W以上のインバーターも装備すると、価格はあと数十万円高価になる。リチウムイオンバッテリーはオプション設定されていない。
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プラスDD Superior+AC仕様 レクビィ
レクビィはバンコン専門ビルダーで、ハイエーススーパーハイルーフのハイエンドモデルから軽バンコンまでラインアップしているが、中心はハイエースをベースにするモデル。同社の洗練されたインテリアとよく考えられたレイアウトは定評がある。
プラスシリーズはレクビィの中核モデルで、標準ボディハイルーフとスーパーロングボディが用意されている。
スーパーロングボディの後部に、二の字型ロングシートダイネットを持つのが「プラスSL」、この片側を2人対座ダイネットにしたものが「プラスSLプラスワン」、更にベッドを2段にしたものがプラスDD(ダブルダッカ―)だ。
プラスDDのインテリア
即ち、同社のカントリークラブと似たレイアウト構成がプラスシリーズでも選択できるようになった。カントリークラブは上位モデルなのでインテリアは更に高級感があるが、プラスDDもプラスシリーズ共通に使われている「網代(あじろ)」仕立ての家具を採用し、お洒落で高級感のあるインテリアになっている。
レイアウトは縦置き2段ベッドと2名対座のダイネットの組み合わせ。プラスDDの特長は、2列目の単座シートが前向きになるが、このときレッグレストをセットでき、足が非常に楽なこと。長時間のドライブでも疲れが少ない。
もう一つは、ダイネットを展開してベッド状態にした場合、ダイネットとベッド間の通路にもベッドシートを置き、車幅いっぱいにベッドを広げられること。これで上段ベッドも入れて4名が就寝できる。
プラスDDのベッド展開
ギャレーは前部にあり、調理スペースは広く、長期旅での料理も楽しめる。冷蔵庫は49L横開きで、バンコンの中では大きいのも嬉しい。AC仕様には電子レンジも標準装備される。
エアコンの室内機は後部左側に設置される。また室外機は後部床下に取り付けられる。AC仕様ではエアコン本体の他、電子レンジ、サブバッテリー(115Ah×3)、走行充電装置(CTEK強化型)、外部AC入力&充電装置(25A)、1500W正弦波インバーター、215Wソーラーパネルシステムが標準装備となる。従ってエアコン関連に関しては、これ以上の追加出費は必要ない。
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まとめ
今回の比較は、「600万円のカムロードキャブコン」Puppy480を、同じ価格帯のキャブコンやバンコンと比較した。
まずアンソニーLEと比べると、Puppy480の優位点は車幅が狭く家庭の車庫にも入れやすい点。しかしそれが争点でない場合、一転、それは広さの面で弱点になる。価格が同じで車幅が問題でなければ、当然広い室内の方が良い。
ただし、アンソニーLEはサブバッテリーやインバーターの増設が必要で、更に数十万円の出費が必要となる。
ベリーREはハイエースベースであることが利点になる。ガソリンエンジンはどちらも2000ccなので、走行性能はそれほど変わらないが、やはりトラック臭くないハイエースを好むユーザーは多いだろう。6速ATの優位性もある。
ベリーの弱点はバンクベッドが子供用で、就寝には必ずダイネットを展開する必要があること。また、エアコンを実用的に使うには、バッテリーやインバーターの増設が必要で、数十万円の追加費用がかかる。しかしベースが30万円安価なので、それほど大きな価格差にはならない。車幅も15cm広いだけだ。
ハイエースバンコンの3モデルは、それぞれに個性があり、どれが優れているとは一概に言えないが、プラスDDとGTはインテリアの洗練度では優位性がある。また銀河はリチウムイオンバッテリーを搭載しても他の2モデルより低価格なところが利点。GTは上開き冷蔵庫なのが多少不利。
車体に関しては3モデルとも同じなので、Puppy480 に対する優劣も同じだが、まずエンジンが2700ccである優位点があり、当然走行性は優れている。また外観がキャンピングカー然としているキャブコンは抵抗がある、というユーザーは必然的にバンコンになる。
弱点は車長と断熱性。5mを超えるスーパーロングは、扱いやすいとは言えない。また鉄板で囲われたボディは断熱処理がされているとはいえ、キャブコンには及ばない。
Puppy480はコンパクトで扱いやすく、装備が充実し、低価格なカムロードキャブコンとして極めて優れたモデルなのは間違いない。今までカムロードキャブコンを上記の理由の幾つかで諦めていたユーザーへの福音でもある。
しかしコンパクトであることが条件で無い場合や、ベース車はハイエースが良い、ということであれば、ほぼ似たような金額で購入でき、そしてPuppy480に対抗できるキャブコンやバンコンの選択肢もある。残念ながら多くはないが。