災害を考慮したキャンピングカー購入が増えている
地震や台風などの災害で、避難所を避けて車中泊をするケースが話題になっている。しかし以前から報道されているように、一般的なミニバンや乗用車では不自然な姿勢での就寝となるため、エコノミー症候群の危険性もある。
そんな中、万一災害に遭った場合のことを考えて、キャンピングカーを購入するケースが増えているという。避難所ではプライバシーが保ち難い点や、様々な雑音からゆっくり寝られないという点、またペットを連れていけないという点に加え、昨今の新型コロナ禍の状況で、その傾向に拍車がかかかっている。
そこで、今回は災害時に役に立つであろうキャンピングカーをピックアップした。足を伸ばして就寝できること、サブバッテリーで電気が使えること、暖房にFFヒーターが使えることはキャンピングカーとしては当たり前なので、これらの条件は省き、以下の条件で抽出した。
・最低大人2名+子供2名が就寝できること
・ソーラーシステムが装備できること
・ギャレー、冷蔵庫、電子レンジが使えること
・できればエアコンなど冷房装置が付いていること
・できれば個室とトイレが付いていること
・できれば温水シャワーが付いていること
もちろん、ギャレーやトイレが付いていなくても、ベッドだけでも十分有用なのだが、ベッドは全てのキャンピングカーに付いているので、あえて上記の条件に当てはまるモデルを抽出している。
実際にこのような災害を経験された方々の考えと異なる点があるだろうし軽々には語れないが、様々な報道や情報からどのような装備が必要なのかを想定し、当サイトのキャンピングカーデータから選択した。
目 次
給電くん:オートワン
給電くんはオートワンが製作する、スズキ エブリイ バンをベース車に、ポップアップルーフを架装した軽バンコン。2名がフロアベッドで、2名がルーフベッドで就寝できる。
給電くんの特徴は車名の通り、内外部に100V電源を給電できること。ソーラーシステムでサブバッテリーに蓄えた電気を、車外に100Vで出力できる。ただし、もちろんプリウスPHVなどのEVのように家庭の電気を賄えるものではない。
それでもソーラーパネルで発電できるので、停電時でも照明を点灯したりスマートフォンの充電をしたりできる。
給電くんの室内
更に、電子レンジもオプションで装備できるので、簡単な温めもできる。またコンパクトな折り畳み式のギャレーをオプションで装備できるので、手を洗ったり洗面をしたりも可能。ただし冷蔵庫はポータブル式を持ち込むことになるが、設置場所は用意されていない。狭い室内がなお狭くなってしまうのが難点。
最大100Ahのサブバッテリーや2000Wのインバーターが搭載できるので、ドライヤーなども使える。(ただし長時間は使えない)
また、軽バンコンなので本格的な冷房装置は搭載できず、夜にスポットクーラーなどで暑さを凌ぐしかない。
コンパクトなギャレーも装備される
その他、給電くんには、軽バンコンには類まれな多くの収納スペースが用意されている。多くの荷物を持って車内で暮らす場合、収納スペースが少ないと車内が煩雑になってしまう。
給電くんはスペース的には厳しいが、軽バンコンの中では比較的豊富に、車内で生活するための装備が詰め込まれているモデルだ。
⇨ 詳しい記事はこちら
ディアラ ジュニア:マックレー
ディアラジュニアはマックレーが製作する、スズキ キャリイトラックをベース車にし、FRPシェルを架装した軽キャブコン。ただし、シェルの車幅がキャブ部より広く、ナンバー区分は普通車の8ナンバーになる。
従って、もちろん税金面では軽8ナンバーに比べ多少不利になる(1万数千円/年)が、車内は軽8ナンバーに比べ格段に広い。そのため、シンクはもちろん、33L上蓋式据え置き冷蔵庫や家庭用の電子レンジもオプションで設置できる。
ディアラジュニアの室内
室内は断熱性の高いシェルで囲われているため、外気温の影響を受けにくいほか、天井高も1720mmあり、大人が立って歩ける。そのため圧迫感が少なくストレスもたまりにくい。
空調は100Vで動作するウインドウエアコンをオプションで設置できる。本格的なエアコンなので、夏場の日中も十分冷房効果がある。
排気処理も可能な発電機収納
更に特筆できるのは、オプションで発電機(ヤマハ1.6KW)を搭載できること。発電機の収納スペースが用意されているということだけではなく、吸排気の処理や車両との燃料の共有もできる。軽キャブコンながら、ガソリンさえ手に入れば、エアコンを含めかなり快適な車内生活ができる。(もちろん、騒音は考慮する必要がある)
⇨ 詳しい記事はこちら
なお、軽キャブコンではMYSミスティックのレジストロと、stage21のリゾートデュオバンビーノオハナも候補にあがる。これらも普通車8ナンバーでファミリーで就寝でき、クーラーも装備できる。
ただしレジストロの冷蔵庫はポータブル、電子レンジは12Vのウェーブボックスになる。
リゾートデュオバンビーノオハナはディアラジュニアのように発電機は搭載できないものの、ポータブル冷蔵庫、100V電子レンジ、200Ahリチウムイオンバッテリー、2000Wインバーター、360Wソーラーシステム、家庭用ウインドウエアコンが標準装備される。
Dテントむし:バンショップミカミ
Dテントむしはバンショップミカミが製作する、ライトエーストラックをベース車に、アルミパネル製のシェルを架装したライトキャブコン。天井全体がポップアップするエレベーションルーフも標準で装備される。
ライトエースベースのキャブコンはもちろん普通車8ナンバー登録で、全体的に軽キャンパーよりも一回り広くなるので、長期を車中で暮らす場合、軽キャンパーより有利だ。
Dテントむしの室内
就寝はダイネットを展開するフロアベッドと、エレベーションルーフをアップするルーフベッドで計4名が就寝できる。
ギャレーは比較的大きく、深いシンクと18Lの上蓋式冷蔵庫が標準装備される。またオプションで電子レンジが設定されており、冷蔵庫の上か最後部に設置できる。
比較的広いギャレー
冷房にはAC100 Vのクーラーがオプション設定されているが、どのようなものかは不明。発電機も含めて外部電源が取れれば夏の日中でも使用できるかもしれない。なお、ソーラーシステムは120Wが装備できる。
⇨ 詳しい記事はこちら
このスタイルでは他にstage21のリゾートデュオバンビーノプラスが挙げられる。これは2000Wのインバーターや180Wのソーラーシステムが標準装備されるなど充実した装備が特徴。ただし冷房装置は氷を使った簡易的なもので、日中の厚さに対応できるものではない。
プリウスリラックスキャビンPHV:かーいんてりあ高橋
プリウスは言わずと知れたハイブリッドカーだが、プリウスPHVは外部電源で充電できるのがプリウスと異なるところ。またプリウスPHVは8800Whの大容量リチウムイオンバッテリーを搭載しているのも特徴だ。
かーいんてりあ高橋は、このプリウスやプリウスPHVをベースにFRPシェルを架装しプリウスリラックスキャビンを製作している。
セダンにシェルを架装するという他のキャンピングカーでは見られない手法で、また他にはない独特のスタイリングだ。それゆえ、外観での評価は分かれるところかもしれない。
しかし、プリウスPHVをベース車にするのは、キャンピングカーとして実に理にかなっている。それは発電機(クルマのエンジン)で発電し、通常のキャンピングカーとは比べ物にならない大容量リチウムバッテリーに充電することにより、電気の心配が要らない自立したキャンピングカーになるからだ。
プリウスリラックスキャビンPHV
室内は上下段に分かれており、合わせて4名が就寝できる。また、後部は大人が立って着替えをすることもでき、ここにギャレーを設置することも可能。家庭用100V電子レンジも搭載できるが、もとより大容量、大電力が可能なのでバッテリーで駆動できる。
後部のギャレー
空調も特別に装備する必要はなく、ベース車のエアコンを使えばエンジンを止めていても冷房できる。ただし暖房はFFヒーターを使用した方が効率が良く、そのためべバストのFFヒーターがオプション設定されている。
ただし、プリウスリラックスキャビンで天井高が高いのは後部だけで、限られたスペースだ。ここにファミリーで長時間滞在するのは厳しい。どちらかというと就寝に使うのがメインとなるだろう。
⇨ 詳しい記事はこちら
PHVベースのモデルには他に西尾張三菱自動車販売のアウトランダーPHEVポップも考えられる。通常のクルマに見えるがポップアップルーフを上げると大人が4名就寝できる。搭載するリチウムイオンバッテリーはプリウスより大きい。
ただし、ギャレーや冷蔵庫、電子レンジなどは無く、ファミリーでフラットなベッドに就寝できるに留まる。
フィール:オートショップアズマ
フィールはオートショップアズマが製作するライトキャブコン。ライトトラックをベース車にし、FRPシェルを架装したライトキャブコンながら、本格的なレイアウトを持ち、防水処理されたトイレルームまで存在するのが特徴。
このクラスになると冷蔵庫も49L横開き式の本格的なものになり、冷蔵と冷凍が同時にできる。即ち、冷蔵しながら製氷もできるので、家庭用冷蔵庫と同じように使える。(ポータブル冷蔵庫は冷蔵か製氷かどちらか)また電子レンジはオプションでギャレー上部に設置できる。
フィールの室内
ギャレーは調理スペースもあり、鍋などの調理道具も収納できるスペースがあるので、実用的に料理ができる。冷蔵庫や電子レンジに食材を保存し、簡単に食事が作れる。
冷房はウインドウクーラーがオプションで設置できる。 家庭用100V仕様なので、日中でも十分冷える。バッテリーでの運転も可能。
ただしリチウムイオンバッテリーは設定されていないのが残念なところ。電子レンジやクーラーなど大電力を必要とする装備があるので、これらを実用的に使うのに、200Ahのディープサイクルバッテリーでは心もとない。
従って外部100V電源が必要だが、外部電源が取れない場合は発電機を積んでおいて、状況に応じて車外で運転することになる。
実用的なギャレーも装備されている
車内はダイネットを展開するフロアベッドで2名、バンクベッドで2名の計4名が就寝できる。フロアベッドでセミダブルサイズ、バンクベッドはクイーンサイズくらいの幅があるので、各2名ならゆったりと就寝できる。
ポータブルトイレを置くとトイレルームになる
フィールには独立したトイレルームがあり、これは大きなメリットだ。災害時、避難所のトイレが使い難い状況になった場合、自車にトイレがあるのは心強い。ラップポンを置くと、後処理も不要だ。
⇨ 詳しい記事はこちら
ZERO:オーエムシー
ZERはオーエムシーが製作する、ハイエース標準ボディ標準ルーフをベース車にしたバンコンで、その特長はまさに災害を想定した仕様。具体的には大人3名が就寝でき、ギャレー、冷蔵庫、電子レンジを装備し、ラップポントイレ、スポットクーラー、リチウムイオンバッテリー、ソーラーシステムを標準装備している。
ZEROの室内
縦置き2段ベッドと2名対座ダイネットを展開したベッドで大人3名が就寝できる。また、下段ベッドとダイネット展開ベッドの間にオプションのベッドマットを置ければ、大人2名と子供2名が就寝できる。
ギャレー(左)とラップポントイレ
ギャレーコンソールが最後部に置かれ、ここには100Vの電子レンジが収納される。また前部の収納ラックに40Lの横開き冷凍冷蔵庫が収納されている。
そして注目すべきはラップポントイレを標準装備していることで、災害時のトイレの問題を解決している。完全な個室ではなくカーテンで仕切られているだけだが、災害時にこのトイレがあるのは非常に心強い。
更に冷房用にスポットクーラーが標準装備されている。これは簡易クーラーで昼間に強力に冷却できるものではないが、夜の就寝前などには効果がある。
電装系も充実しており、200Ahのリチウムイオンバッテリー、1500Wインバーター、215Wのソーラーシステムが標準装備される。もちろん外部100V入力と充電機能も標準装備だ。
⇨ 詳しい記事はこちら
オーロラ エクスクルーシブ:ケイワークス
オーロラシリーズはハイエース標準ボディとワイドロングボディが選択でき、どちらもポップアップルーフが架装される。シリーズの中でもエクスクルーシブは、フラグシップに位置付けられており、装備も充実している。
2列目にマルチモードシートを持つ対座ダイネット
オーロラエクスクルーシブの特徴は、本来なら高品質のインテリアが筆頭に来るが、災害時の機能をメインに考えると、コンパクトな車内に、本格的なギャレー、49L横開き式冷凍冷蔵庫、家庭用100V仕様電子レンジ、家庭用一体型エアコンを標準装備している点が挙げられる。
ダイネットは2列目のマルチモードシートを後ろ向きにした対座タイプ。前向きにすると全員が前向きでドライブできるが、長期に車内で過ごす場合は、前後の動線が途切れ、窮屈感がある。従って、常時フラットベッド状態にしておく方が寛げるだろう。
後部にギャレーやエアコンを備える
ギャレーは後部にあり、対座ダイネット状態にしてあると、移動が面倒だ。ギャレーには一口だがコンロが常設されており、毎日の調理も可能。横置き冷凍冷蔵庫と電子レンジも装備されているので、冷凍食品もすぐに食べられる。
また、一体型のエアコンが据え付けられており、更に「Mevius」と名付けられた同社オリジナルの100Ahリチウムイオンバッテリーを3個標準装備しているため、エアコンや電子レンジを実用的に使える。
更に、270Wのソーラーシステムも標準装備しているので、停電時も最小限の発電ができる。
欠点は収納スペースがほとんどないこと。大きめのものは3列目シート下のスペースに置いておくしかないが、調理道具などはギャレー近くに置いておくしかないだろう。ベッド状態にすると、ベッド下が収納スペースになるが、車内で取り出すのは簡単ではない。
トイレルームは無いが、ポータブルトイレを置くことはできるので、後部をカーテンで仕切ったり、使用する場合は他の同乗者は車外に出てもらうなどで対応できるだろう。ベンチレーターがあれば臭いの対応ができっるが、ベンチレーターのオプションが設定されていないのは残念なところ。
⇨ 詳しい記事はこちら
カントリークラブ:レクビィ
カントリークラブはハイエーススーパーロングを使用したバンコンキャンピングカー。スーパーロングなので車体は大きくなるが、その分室内は余裕があり、最後部にFRP製の完全防水シャワールームまで装備するのが大きな特徴。もちろんトイレルームとしても使用できる。
完全防水されたトイレ/シャワールーム
災害時、風呂はもちろんシャワーも使えない状況になった場合、キャンピングカーでシャワーが使えるのは大きなメリットとなる。
ただし、同社のシャングリラは60Lの温水装置があるが、カントリークラブはギャレー用とは別の19Lの給排水タンクがある。また、ヒートエクスチェンジャーで湯を沸かすので、走行しなければならないのが制限となる。電気でも沸かせるが、時間と電力を消耗する。災害時はコンロで湯を沸かしてシャワー用のタンクに入れるというのが現実的かもしれない。
ファミリーで寛げるダイネット
ダイネットは基本2名対座だが、2段ベッドが横座りシートとして使用できるので、比較的広いダイネットになる。しかし、災害時に車内生活をするには荷物が多くなるため、常にフルベッド状態にしてベッド下のスペースを収納に使うのが現実的だろう。
フルベッド状態では4名が就寝できる
カントリークラブのベッドは縦置き2段ベッドと2名対座ダイネットを展開するシングルベッド、そして下段ベッドとダイネット展開ベッドの隙間を埋めると広いダブルベッドになり、大人3名が就寝できるので、計4名が就寝できる。
広い調理スペースのギャレー
ギャレーは前部に配置されており、49Lの横置き冷凍冷蔵庫が標準装備される。また電子レンジもビルトインできるので、食材の保管や電子レンジでの温めもすぐにできる。
更に家庭用エアコンを装備することもでき、この場合は100Ahのリチウムイオンバッテリー2個も装備されるので、実用的にエアコンを使うことができる。215Wソーラーシステムも装備可能だ。
収納はオーバーヘッド収納やベッド下収納、3列目シート下の収納が用意されており、多い荷物を収納できる。
⇨ 詳しい記事はこちら
スタンダードキャブコン全般
カムロードベースやハイエースベースのキャブコンなら、居住性は理想的なレベルになる。ただし、家庭用エアコンやそれに相当するクーラーが装備できないモデルも存在するので、やはり装備できるモデルを選びたい。
ファミリーが就寝でき、トイレ/温水シャワールームを持ち、エアコンが装備できるキャブコンは数多くあるが、中でもアネックスのリバティ52DB/52SP、ダイレクトカーズのトリップ、マックレーのバレンシア520を挙げておきたい。
バレンシア520の室内
これらはソーラーシステム、大容量リチウムイオンバッテリー、エアコンを搭載し、瞬間湯沸かし装置付き温水シャワーで家族全員が待つことなく温水シャワーを使うことができる、国産の最新鋭のキャブコンだ。バレンシア520は大容量発電機も標準搭載する。
もちろん、水やガソリン、あるいはカセットガスが手に入ることが前提になるが、キャンピングカーは移動できるので、道路さえつながっていれば調達に行くことができる。
車内は広く、天井高も高く、ほぼモーターホームのレベルにあるので、車内で長期間暮らしてもストレスは少ない。
リバティ52DBのギャレー
ギャレーは広く、冷蔵庫は大型で、もちろん電子レンジも装備されているのでキッチンを実用的に使え、毎日の料理も家庭のように行うことができる。
トリップのベッドとサニタリールーム
サニタリールームには電動カセットトイレ、瞬間湯沸かし付き温水シャワー、専用手洗いもあり、快適そのものだ。ただし、トイレで注意しておきたいのは、処理の問題。処理する場所が無い場合、困ることになる。災害をメインに考えるなら、初めからラップポンを置くことを検討した方が良いかもしれない。
まとめ
災害にキャンピングカーが注目されていると言っても、単に簡易ベッドを積んだバンから、温水シャワーまで装備したキャブコンまで様々ある。もちろん快適な装備を持つモデルが暮らしやすいのに違いは無い。
しかし、最低限フラットなベッドで体を休めることができるだけでも、乗用車の通常のシートをリクライニングさせて寝ているのとは全く異なる。災害は起こらないことが一番望ましいが、災害が頻発する昨今、キャンピングカーの備えがあれば安心ではある。
ただし、ここに挙げたモデルは全てガソリンが手に入る場合に限り、各装備が機能する。もしガソリンが手に入らなければ、ソーラーパネルで発電する以外電気の調達はできない。
なお、実際の災害現場によっては、上記の内容が当てはまらない場合もあると思われる。上記に取り上げたモデルは一般的に報道されている状況に対する一例と考えていただき、当てはまらない場合はご容赦いただきたい。