ステルナ540KMは、ホワイトトップが製造、トーザイアテオが販売する、フィアット デュカトをベース車にしたバン・コンバージョン キャンピングカー。
ホワイトトップは熊本県を拠点にするビルダーで、オリジナルのモデルはハイエースベースのバンコン、アジサシとシーガルの2モデルだが、魅力的なモデルを製作している。トーザイアテオは埼玉県を拠点にし、ホビーやスイフトなど海外ビルダーのモデルを主にラインアップし、多くのトラベルトレーラーも輸入している。
今回発表されたステルナ 540KMはホワイトトップが製作し、トーザイアテオが販売を担当するとしている。この記事を書いている2024年2月の時点では、このモデルに関する詳細情報はどちらのウェブサイトにもないが、ジャパンキャンピングカーショー2024での情報をお伝えしたい。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
日本に正規輸入されているフィアット デュカトのL2H2サイズのベース車を使用したバンコンモデル。ホワイトトップのオリジナルモデルの「アジサシ」のレイアウトのイメージをデュカトに展開したとしている。
特徴は、ラウンジソファタイプのダイネット。多くのデュカトベースのモデルが対座タイプのダイネットを採用している中で、ステルナ540KMはラウンジソファタイプのダイネットを採用。
前向きシートは運転席と助手席のみ、また就寝人数も2名+1名(ダイネットベッド)としているため、主に二人旅を想定していることが分かる。ちなみに、ステルナとは「つがいの渡り鳥」であるアジサシのイタリア語とのこと。
アピールポイント
・広い室内と高い室内高を持つデュカトがベース車
・その中でも最もコンパクトなボディサイズで比較的運転しやすい
・ラウンジソファタイプのダイネットを採用
・二人旅に最適化したレイアウト
・家庭用エアコンとリチウムイオンバッテリーをオプション設定
・FFヒーターによる床暖房を標準装備
・ルーフウインドウを標準装備
・デュカトベースのバンコンの中では比較的手頃な価格設定
ベース車とエクステリア
ステルナ 540KMのエクステリア
ベース車は、輸入されるデュカトの最も小最サイズで全長5410mmのL2H2を選択。それでも全長はハイエーススーパーロング(5380mm)よりも長い。幅も2050mmで2mを超える。
デュカトのベース車は、加工前は後部に窓はなく、ビルダーが窓を作る必要がある。そのためビルダーにより窓の位置や大きさは様々だが、ステルナ 540KMは両側に1か所ずつと左側のリアゲートに設けているが、あまり大きな窓ではない。
なお、デュカトは2WDのみで4WDは存在しない。
インテリア
ステルナ540KMのインテリア
明るい木目の家具とベージュ系のシート色の組み合わせ。グリーンの壁色がアクセントになっている。カジュアルなインテリアだが、窓が少なく小さいのが気になるところではある。
スカイルーフが標準装備される
スカイルーフが標準装備されているので、窓が小さい分ここから採光することができ、室内を明るくしている。もちろんフルオープンにすることができるので、爽快感が得られ、換気もできる。網戸とシェードも内蔵されている。
レイアウト
前部にダイネット、後部に横置き2段ベッド、中央にギャレーと多目的ルームを配置。ダイネットは対座ではなくラウンジソファスタイルで、前向き乗車は運転席と助手席の2名のみ。従って、二人旅に適したレイアウトとなっている。
ダイネットのソファにも2名が乗車できるので計4名が乗車定員となっているが、一般的に横座りでの長距離ドライブはあまり快適ではない。
後部の2段ベッドは上下段に各1名が就寝できる。ダイネットもベッドに展開できるが大きさは子供用で、従って就寝定員は2名+子供1名となっている。
ダイネット
ラウンジソファのダイネット
ラウンジソファが特徴のダイネットで、ダイネットと言うよりはリビングの印象が強い。食事をするよりコーヒーやカクテルを楽しむのが似合っている。なおデュカトのお決まりの回転する運転席と助手席もあり、ダイネットシートとして使える。
ダイネットテーブルは簡単に押し下げることができ、ベッド展開も短時間であまり労力を使うことなくできる。
ベッド
後部の2段ベッド
後部の横置き2段ベッドは、上下段とも1800x800mmの大きさ。家庭用のシングルベッドの幅は1000mmなので、これに比べるとやや狭いが、キャンピングカーのベッドサイズとしては十分な幅だ。ただし、身長方向は1800mmなので、長身のユーザーは実際に横になって確認することをお勧めする。
各段には読書灯が備えられており、本を読んだりして就寝前にプライベートな時間を過ごすことができる。パートナーに影響されず自分の時間が持てるのが2段ベッドの良いところだ。
ギャレー
ギャレーセクション
左側中央に設置されたギャレーキャビネットには大き目の丸形シンクとシャワーフォーセットが埋め込まれている。シャワーフォーセットは引き伸ばして車外で使うことができる。
シンクの下の給排水タンク
各19Lの給排水タンクはシンクの下に収納されているが、扉は車外に向けて取り付けられている。これにより、車外から直接出し入れでき、大変便利だ。便利ついでに言うと、近くにキャリーカートが収納できるスペースがあると、なお嬉しいのだが。
豊富なギャレーキャビネットの引き出し収納
ギャレーキャビネットには、大きな3段の引き出し収納が用意されている。大きく深い収納なので、食器や調理用具などを多く収納できる。
冷蔵庫/電子レンジ
60L横開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は、ギャレーキャビネットの隣の収納タワーに60L横開き式が標準装備される。冷凍室もあるので、製氷・冷凍と冷蔵が同時にできる。 クルマ旅のように、冷凍食品を保冷しながら飲み物も冷やしたい場合には必須の機能だ。
電子レンジも標準装備される
家庭用の100V仕様の電子レンジが標準装備される。ただし、1500Wインバーターはオプションなので、外部100V電源が取れないところでもサブバッテリーで駆動するためには(ほとんどのユーザーがそうだと思うが)インバーターを装備する必要がある。
電子レンジが標準装備なので、インバーターも標準装備にして欲しいところだ。なお、電子レンジは最も高いところに置かれているが、使いにくいようなら収納の高さの順番を変えることは可能だろう。
IHクッキングヒーター
収納タワーの引き出しには、IHクッキングヒーターが標準で収納されている。電源の配線もされており、引き出して使用する想定となっている。IHクッキングヒーターは火を使わないので安全で便利だが、これもインバーターがオプションなので、そのままでは外部電源があるところでしか使用できない。
また、たとえインバーターがあったとしても、標準装備のディープサイクルバッテリー1個で使用するのはお勧めしない。オプションの300Ahのリチウムイオンバッテリーを装備することをお勧めする。
収納タワー下の引き出し収納
収納タワーの最下部には引き出し収納が用意されている。最下部だが引き出し式になっているのでアクセスしやすい。
多目的ルーム
ラップトイレ(OP)が置かれた多目的ルーム
多目的ルームにはラップトイレ(ラップポントレッカー)がオプションで設置できる。設置する場合は、電源コンセントも追加される。このトイレを置いた場合、上の写真のようにジャストサイズで収まり、手前の床下収納もスムースに使える。
多目的ルームの床下収納
多目的ルームの床はかさ上げされており、床下収納が用意されている。もともと天井高が高いデュカトならではのアイデアだ。
収納
ダイネット上部のオーバーヘッド収納
ダイネットの上部にはオーバーヘッド収納が設置されている。オーバーヘッド収納の下部にも小さな棚が設けられている。
運転席、助手席上部の収納
運転席、助手席上部にも扉付きの収納が用意されている。こちらは高さが低いので収納するものが限られるが、収納は多いほど良い。
最後部ベッド下の外部収納
後部ベッド下は大きな外部収納になっている。下段ベッドボードを跳ね上げると、更に背の高い荷物も積めるようになる。
空調
家庭用エアコンを標準装備
家庭用エアコンがオプション設定され、室内機はギャレー上部に設置される。室外機は床下に設置されている。エアコンを設置する場合は、オプションのリチウムイオンバッテリーと1500Wインバーターも設置する必要がある。リチウムイオンバッテリーは300Ahなので、昼間でも5~6時間は運転できるだろう。(外気温や設定温度、他の電気製品の使用によって変化する)
FFヒーターによる床暖房を標準装備
FFヒーターは標準装備されている。ダイネット部の床がかさ上げされているので、温風の吹き出し口は段差の部分に取り付けられている。床暖房の構造は不明だが、ダイネット部の床暖房が可能だ。
テレビ/ナビ
19インチのテレビがオプションで用意されている。展示車に取り付けられていなかったので、位置や取り付け方法は不明だが、ある程度オーダーはできるだろう。ナビはオプション設定されていないが、好みのものを取り付けできる。
電装系
先述のように、標準ではディープサイクルバッテリーが1個搭載されている。走行充電や外部電源入力も標準装備されるが、外部電源による充電機能は不明。1500W正弦波インバーターはオプション。また、350Wソーラーシステムもオプションで設置できる。
サブバッテリーは先述の通り300Ahのリチウムイオンバッテリーが用意されている。エアコンを装備した場合はもちろんだが、IHクッキングヒーターや電子レンジが標準装備されているので、リチウムイオンバッテリーを装備することをお勧めする。
価格(2024年2月現在:千円台切り上げ:税込)
ステルナ540KMの車両本体価格は990万円~。付けておきたい必需オプションは、1500W正弦波インバーター(165,000円)が挙げられるが、家庭用エアコン(330,000円)、300Ahリチウムイオンバッテリー(396,000円)もほぼ必需装備だ。
その他必要に応じて、350Wソーラーシステム(220,000円)、ラップポントレッカー(電源コンセント付:198,000円)などが挙げられる。予算が許せば、ソーラーシステムは是非取り付けておきたい。
他モデル
装備的にも価格的にも最も近いのはナッツRVのフォルトナTypeM(1030万円~)と、その姉妹車の東和モータース販売のスペランツァ540M(979万円~)だろう。これらは200Ahリチウムイオンバッテリーと1500W正弦波インバーターを標準装備しているが、家庭用エアコンとFFヒーターはオプション。
また、温水シャワーの装備が可能で、後部に横置きダブルベッドを装備。オプションで電動で昇降する上段ベッドを装備できる。前部のダイネットは対座スタイルで、4名が前向き乗車できる。2名が就寝でき、オプションの上段ベッドを装備すると大人が4名就寝できる。即ち、ファミリーでの用途にも対応する。
家庭用エアコン、リチウムイオンバッテリー、FFヒーター、1500Wインバーターを入れた価格を比較すると、ステルナ 540KMは1080万円~、フォルトナTypeMは1111万円~、スペランツァ540Mは1058万円~となる。ただしステルナ540KMのリチウムイオンバッテリーは300Ah、フォルトナとスペランツァは200Ahだ。
その他のオプションの比較は下の比較表を参照いただきたい。
まとめ
ステルナ540KMの魅力は、広いデュカトの室内を二人旅専用と割り切ってレイアウトした点だろう。特にラウンジソファダイネットは優雅な時間を過ごすことができる。比較的安価(といっても1000万円クラスだが・・)なのも魅力的だ。
ただし、ダイネットを除くとフォルトナやスペランツァに似てしまった感がある。その結果、同列に比べられてしまい、オプションの幅が広いこれらのモデルに対し劣勢になる可能性がある。
ハイエースベースのアジサシ(622万円~)は独特のレイアウトで、優雅で広々とした室内や高いところに上らなくてよく、厚いマットレスのローマウント縦置きダブルベッドなどを評価するユーザーは一定数いたのではないだろうか。
ハイエースベースでは冷蔵庫が小さいとか、通路が狭いとかベッドが狭いといった問題があったが、広いスペースを持つデュカトならこれらの問題を解決できたかもしれない。アジサシのレイアウトをそのまま再現したデュカトベースのモデルも見たいものだ。
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