PULSE T6811EBはドイツのビルダーデスレフ(Dethleffs)が製作する、フィアット デュカトをベースにしたキャブコン。同社は多くのフル・コンバージョン(フルコン)とキャブコンキャンピングカーをラインアップしているが、日本に輸入されているうち、唯一のキャブコンスタイルのモデル。
なお、国内では東和モータースが取り扱っている。
PULSEは2019年モデルラインアップで新たに加えられたシリーズで、今回紹介するLow-Profile と呼ばれるキャブコンスタイルと、A-Classと呼ばれるフルコンモデルがラインアップされており、こちらは日本にはPULSE I7051EBのみが輸入されている。
PULSE T6811EBの室内
コンセプト:PULSEは5種類のレイアウトが輸入されており、T6811EBはその中でも最も車長が短い2つのレイアウトのひとつ。もう一つのレイアウトはアイランドダブルベッド仕様のT6651DBM。
車長が短いと言っても7mは日本では大きい方で、多少扱い難いし、フェリーなどでは一般車よりも高価になってしまうが、その大きさ故ゆったりした室内が確保できる。
エクステリア:PULSEのLow-Profileモデルは、小さなバンクがあるのが外観の特徴。これによりプルダウンベッドに余裕を持たせている。プルダウンベッドを含めて計3名が就寝できるので、ファミリー向けのモデルと位置付けられる。
ベース車は本国ではオプションの180psバージョンが日本では標準になる。また右ハンドルや衝突回避システムも標準装備される。またカラーリングはブラック、シルバー、ホワイトから選択できる。
インテリア:欧州車らしいナチュラルトーンの洗練されたインテリアで、高級感がある。ただし実際に使われている材質は、軽量化を図ったの比較的薄い合板で、言い換えれば実に見せ方がうまい。
なお、家具やシートのカラーバリエーションは記載されていない。
運転席、助手席が回転するダイネット(写真:Dethleffs)
レイアウト:前部にダイネット、最後部にベッドルーム、中央にギャレーとサニタリールームを配置する。サニタリールームはトイレとシャワーが同居している。
就寝員数の仕様は3名となっているが、これは、後部ツインベッドに2名とプルダウンベッドに1名の配分。プルダウンベッドに2名就寝できないのは残念なところ。
ダイネット:欧州車では定番だが、運転席、助手席が回転して後ろ向きになり、ダイネットチェアとして使用でき、3~4名がテーブルを囲める。テーブルは伸長する構造ではなく1枚のものだが、3~4名の食事なら十分対応できる大きさだ。
最後部のツインベッド
ベッド:後部の常設ツインベッドは、右側が1950x800mm、左側が2050x800mmの大きさ。家庭用シングルベッドが970mmの幅なので、これよりも狭い。ただし、中央を埋めるベッドマットも用意されており、これをはめ込むと、2100x1900mmの大きさになり、これは家庭用ベッドではキングサイズの幅(1800mm)よりも広くなる。
ダイネット上のプルダウンベッド
また、ダイネット上のプルダウンベッドは2000x1050/800mm(幅が変則)の大きさで、ここでは1名が就寝できる。なおプルダウンベッドは電動昇降が標準装備される。
左サイド中央にあるギャレー
ギャレー:3口コンロと丸形シンクがギャレーコンソールの上に埋め込まれている。コンロのガスはLPガスを使用しており、これは8Kgのボンベ2本から供給される。(カセットガスではない)
ギャレーコンソールの下には、カトラリー収納を含む3段の引き出し収納と、鍋なども収納できる扉付き収納があり、小さな食器から大きな調理器具まで豊富に収納できる。
冷蔵庫/電子レンジ:冷蔵庫は142Lの冷蔵庫と15Lの冷凍庫を持つ3Way冷凍冷蔵庫が標準装備される。3Wayというのは、DC12V、AC100V あるいはLPガスで冷却することができるもので、停泊中で外部電源が取れない場合はLPガスで冷やすこともできる。
また、電子レンジは100V仕様の国産品がオプションで用意されている。専用の設置スペースが用意されているわけではないので、オーバーヘッド収納などを改造して収納する必要があるだろう。
電子レンジをサブバッテリーで使うためには、オプションの追加サブバッテリーや1500Wか3000Wのインバーターも装備する必要がある。
シャワーとトイレがあるサニタリールーム
サニタリールーム:カセットトイレと温水シャワーが同居する一体型のサニタリールームが中央右側に配置される。ちなみに、PULSEシリーズの中でも7mを超えるモデルは、トイレルームとシャワールームが別になっている。7mを切るモデルでもシャワーを使う場合は、シャワースペースは扉で仕切られ、便器が濡れることはない。
温水ボイラーはTruma Combi6が標準装備され、これで10Lの湯を沸かし、水と混合して適温にする。ただし外気温にもよるが、2名分程度の湯量しかなく、それ以上の人数では再度湯を沸かす必要がある。
国産車ではアネックスのリバティ52シリーズやダイレクトカーズのトリップは瞬間湯沸かし装置が採用されており、連続してシャワーが使える。
サニタリールームが豪華でお洒落なところは欧州車の定石通りで、大きな鏡と、その裏には独立した収納棚も付いている。
大きな容量のオーバーヘッド収納
収納:ダイネット上、ギャレー上、ベッドルーム上にオーバーヘッド収納が設置されており、奥行きも深く大容量の収納スペースとなっている。
また、長いコートも収納できるクローゼットや冷蔵庫下の収納など、豊富な収納が用意されている。
更にベッド下には大きな外部収納があり、バイクや自転車も積み込むことができる。ただし、扉は右側にヒンジが付いており大きく開くので、横に十分なスペースが必要となる。このあたりは日本で開発されたバンテックV670のスライドドアのほうがはるかに使いやすい。
オプションのルーフエアコン
空調:温水ボイラーのTruma Combi6で暖房もできる。これはガス式だがオプションでTruma Combi6Dの軽油仕様が選択できる。また電気式の床暖房システムも標準装備される。こちらも外部電源でのみ使用できる。
冷房はルーフエアコンがオプション設定されているが、これは外部100V電源がある場合のみ使用可能。家庭用エアコンはDethleffs Japan
Electric Packageというセットオプションで用意されている。(電装系に詳細)
テレビ/ナビ:19型テレビがオプション設定されており、エントランス横に角度調整可能なブラケットが用意されている。なお、これはダイネットで視聴することが想定されており、ベッドルーム用のテレビは設定されていない。
電装系:95Ahのディープサイクルバッテリーが1個標準装備されるが、当然これだけでは不足で、オプションで追加できる。なお、200Ahと400Ahのリチウムイオンバッテリーがオプション設定されているので、高価ではあるができればこちらを選択することをお勧めする。
なお、Dethleffs Japan Electric Packageというオプションが用意されており、これには家庭用エアコンかルーフエアコン、115Ah
x4本のサブバッテリー、1500Wか3000Wのインバーター、急速走行充電、急速外部充電が含まれる。
このパッケージには、リチウムイオンバッテリーが含まれていないが、リチウムイオンバッテリーは別にオプション設定されているので、できればこれを使う方が良いだろう。
ソーラーシステムもオプションで設置可能。100Wパネル単位でオプション設定されており、複数枚設置できる。
価格:車両本体価格は1180万円(税別)。装備しておきたいオプションは、Dethleffs Japan Electric Package(110万円)と電子レンジ(42,000円)、それと必要に応じてリチウムイオンバッテリーとソーラーシステムも欲しいところ。
他車:国内におけるライバルであるアドリアでは、CORALとMATRIXの各シリーズがあるが、いずれも7mを切るレイアウトは輸入されていない。その意味ではPULSE T6811EBはT6651DBMともども貴重な存在だが、フルコンを選択するならGlobebus GT I6(1230万円)という手もある。こちらは7mを切りツインベッド+プルダウンベッド仕様で4名が就寝できるファミリー向けモデルだ。
またデスレフのセカンドブランド、サンライト (Sunlight)のLow-Profileモデル、T67S(880万円)もある。こちらもツインベッドとプルダウンベッド仕様で、4名就寝のファミリー向けモデルとなっている。
まとめ:約7mの全長、2mを超える車幅で、国内では扱いやすいとは言えない大きさと高額なことから、誰でも簡単に手が出せるモデルではないが、その点がクリアできれば欧州車の魅力を堪能できる。
ただし、キャンピングカーのインフラが整った欧州基準で作られたモーターホームは、そうでない日本国内では使い難い点も多々ある。右エントランス、駐車場の問題、LPガスの充填など、購入する場合には良く調べることをお勧めする。
なお、PULSE T6811EBは電動プルダウンベッドを持つが、ここでは1名しか就寝できず、ファミリー用には中途半端な印象がある。4名就寝したいならPULSEのA-ClassかGlobeBUS GT(いずれもフルコン)の方が適している。
また、輸入されているデスレフのモデルには二人旅仕様モデルが無くなってしまった。GlobeBUSのLow-Profileモデルのようなコンパクトな二人旅仕様車も輸入して欲しいところだ。
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